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彼女の名はここあ

【ココア】(名詞)

 カカオマスから、油脂であるココアバターを除いてできる「ココアパウダー」を溶かして飲む飲料。これに砂糖や粉乳を加えたものを調整ココアと言う。

 健康に良いとされたことで、日本で爆発的ブームとなったこともある。

 

【-、という女】(本題)

 彼女の名前は「ここあ」だと思っていた。でも本当の名前など今となってはどうでもいい。彼女のことを「ここあ」で認識しておけば、今のボクは容易にそのことについて思い出せる。そしてそれが一番重要なことなのだ。

 

 ボクは地味に大学生活を送っている19歳で、通っている大学は志望していた大学のうち、常に合格率判定Cだった難関だ(ボクにしては、だけど)。いつもは本番に弱いボクだったけれど、試験の日はいつになく調子が良かったせいで何とか潜り込めた。

 高校時代に仲の良かったヤツらは、判定「A」の大学に無難に流れて行って、ボクは全く知り合いのいない状態で学生生活をスタートさせることになる。

 実家から通うには少々遠かったので、無理を言って一人暮らしを始めた。近くの小さなレンタル屋でのアルバイトも決めた。

 ボクは高校時代ではその他大勢の冴えないヤツで、仲のいい奴らとはそれなりに楽しくやってきたけれど、彼女もできず、不発の青春だった。とにかく何かを変えたい、その一心で周りのヤツらが「同じ大学に行こうぜ」としつこく誘ってきたのを全て振り切って、誰も知らない世界に飛び込んだ。

 そこにはこれまでとは違う輝かしい未来が待っている。

 はずだった。

 けれど、もともと人見知りだし、初対面が苦手ときて、サークルにも入り損ねた。何に対しても自分から動くことは出来ない性分で、誰とも顔見知り以上になれない。その上アルバイト先で組まされるのは、ボクよりも人見知りのオタク野郎ときていて、こちらも見込みが薄い。オーナーである店長(頭頂部の寂しい36歳という微妙加減)は、だいたい二階の事務所にいて、「何かあったら呼べ」と言うだけでさほど交流もない。

 結果一人暮らしのアパートでゲームと漫画に浸り、アルバイト、自宅、学校のトライアングルに見事に取り込まれたボクは、半年を過ぎた頃にはもう諦めが先行していた。高校時代に仲の良かった奴らとは大学が違うせいで会話が合わず、早くも後悔してくる。これじゃあアルバイト先の社交性皆無のオタクくんと変わらない。

 そんな頃に、学食で見かけたのが「ここあ」だったのだ。


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