閉じる


桜の飴。

『桜あめ、どうぞ。』

 

春らしい言葉に安心しきった表情を浮かべる少年。

 

少年が現実的な夢を語りだすと、

文学少女は一時の安らぎを得る。

 

『非』日常の世界を体験したら、

イマジネーションの海へダイブ。

ユートピア的な世界観を持つ、

少年はリアルに夢を見ている。

 

しかし、

多くの矛盾を感じながら、

心では自問自答を繰り返す。

 

『桜あめ、、、要らない。』

 

少年は精一杯の強がりを言ってみた。

弱い心をひた隠しにして生きているのだ。

心が震えるたびに溢れ出る涙の味ならば、

一生分味わったのだから涙も枯れ果てた。

 

文学少女は優しく問う。

 

『あめは好きじゃないのかな??』と少年に問う。

 


色とりどりの飴。

色とりどりの甘い飴玉が入ったカンカン。

 

幼心に、『ワクワク』を覚えた日の事。

 

僕は飴玉の入ったカンカンを手にして、

それを思い切り振ってみた。すると、

 

カンカンの中で飴玉が踊っているイメージが湧き、

今すぐにでも飴玉を取り出して食べたい!と思った。

 

僕はカンカンのフタを開けようと、

大人のマネをして手で開けようとした。

いくら力を入れても全然空く気配もないしなぁ~。

(僕じゃあけられないのかな??)と諦めムード。

 

大人たちはニコニコして観ているけれども、

(僕でもあけられる方法をしってるのかな?)

 

『あかないよ??』

 

覚えたての言葉を言ってみる。すると、

 

『定規を使ってごらん!』と父は言う。

 

おばぁちゃんの家はモノサシがいっぱいある。

長いものさし、短いものさし、中くらいのものさし。

たくさんあってどれを使えばいいの??と悩み、

 

『どれ~??』と僕は言った。

 

『全部試してみたらいいさ。』

 


幼き日の回想

自分の背よりもおおきなものさしに魅かれ、

これを使うことにしたのだが、、、

おおきすぎてダメだし、みじかいものさしを手にした。

 

父はビール瓶を開けるようなしぐさをして『こんな感じ』と言う。

 

『温めてみたら??』とおばぁちゃんが言うので、

コタツでカンカンを温めてものさしでチャレンジ。

 

(このカンカンは誰にもあけられない)と、

『あけてください。』と、すなおにおねがいをした。

 

~筋肉モリモリの父が迫真の演技で開けられない事をアピール。~

 

~母もニコニコしてチャレンジ。あかない。おばぁちゃんもあけられない。~

 

『おおきいおばぁちゃんにあけてもらいなさい。』と父は言う。

 

(だれにもあけられないや。このカンカン。)

 

ねたきりのおおきいおばぁちゃんにカンカンを渡す。

なんとびっくり!!ちからがなさそうなおおきいおばぁちゃん。

いともかんたんに~ぱこっ。~っとあけてしまったからびっくり。

 

『食べ過ぎちゃだめだよ??一日3粒。今日は寝る前だから一粒ね。』

 

(まほう??このおばぁちゃんはまほうのてをもってる。)

 

~うん。~とうなずき、飴玉をもらうとうれしくてうれしくて。

おおきなおばぁちゃんのまわりを、

なんかいも、なんかいも、ぐるぐるとはしってまわった。

 

~少年は幼き日の自分を鮮明に思い出す。~

 


ミント味の飴ちゃん。

白いミントの味の飴が苦手だった。

白の飴がでるたびに『ハズレ』だと思ってた。

白の飴を避けて、『黄色』『桃色』『桜色』

最後には白い飴玉だけがカンカンに残った。

 

(食べられないし。。。)と、わがままなクセ。

 

(食べず嫌い。わがままなクセに。。。)

 

少年はさっきからずっと空想にふけっている様子で、

文学少女は直観的に多くを感じとっているようなのだ。

 

『桜アメ、、、きらい??』

 

文学少女は不思議そうな顔してシンプルに聞く。

少年は(好きだけどさ)と、複雑な心境でいる。

 

好きなクセに。(キライ)なふりして、大人のふりを。

大人のフリして、(キライ)をなくすオセロゲーム。

モノクロの世界では、白か?黒か?のつまらない物語。


精神世界、現実世界

少年は、しばらくの間、眼を閉じて自分自身の感情と必死に向きあっている。

文学少女との出逢いの意味やこれまでの出来事の意味を繋げようとしている

時間にすれば、たった3分位の出来事だろう。

けれど、少年にはその3分間が、永遠にも感じられているようである。

 

 

眼に見える全てが、夢の中の出来事のように思えて、

天国と地獄が心の中を彷徨っている。

 

少年は、再び眼を閉じた。

 

その時、

(アタマの中でシュミレーションするクセに。)

と、少年を陰で嘲笑う悪魔の声が脳裏をかすめていった。

 

意識が朦朧とする中、

まさに陰が極まって、死にたいという誰かの叫び声が襲ってくる。

 

少年が人を信じる心を失いかけた瞬間。

 

(幸せのシュミレーションなら得意でしょう?)

と、天使のように無邪気に笑い飛ばしていく声が聞こえた。

 

少年は、ぱっと眼を見開いた。

 

金色のショートヘア。

黒のモード系スタイルが印象的な女性が椅子に座っている。

何事もなかったかのように、ただ、微笑んでコーヒーを飲んでいる。

 

テレビのスクリーンには映画マトリックスが映し出されている。

確か、精神世界と現実世界の存在をテーマにした映画だっただろうか。

 

『目覚めた?コーヒー飲むでしょ?』

女性は少年に声をかける。

高級フランスレストランで観るようなお洒落な場面が発生している。

 

 

(あぁこれは現実だ。)

異質な空間こそが文学少女というイメージを勝手に植え付けてしまったのだ。

手紙を頼りに、僕は文学少女に逢いにきてしまった。

外には高級外車が止まっている。犬もいる。

お話ししたことや手紙に書かれていたことは全て事実だったのだ。

 



読者登録

橋本 昂祈さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について