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またね、ラシャ!

 そんなわけで、ぼくは退屈でも、家でラシャの帰りを待つって約束した。
 例の運び屋さんは、もう暗くなっているのに親切にも、ぼくを迎えに来てくれた。
 ラシャは「わざわざありがとうございます」とお礼を言っている。ぼくを運び屋さんに渡すつもりなんだ。何かおもしろくないな。 
 ぼくは一匹でも帰れるよ。
「道中また人間か動物に襲われるかもしれないだろ」
 う……。
「今すぐに紐をつけるから、よろしくお願いします」
「はい、わかりました」
 えっ? 紐? ラシャ、どこ行くの?
 あ、戻ってきた。紐を持ってる!
 ああん。ラシャ、紐はいらないよ~。
「おとなしくしろ! お前が信用できないんじゃない。でも、お前を預かる人間には必要なものなんだ」
 そんなこと言って、ぼくを言いくるめようったって……。あうっ、気持ち悪い。やだよう~。
「そんなにジタバタすると、もっときつく結ぶぞ!」
 痛いよ! そんなにギュウッとしないで! わかった、わかった、もう、動かない。止まります。ピタッ!
「剣山からの帰りに見かけたものですから、シエラさまにご報告したのですよ。珍しい動物ですからねえ。いやあ、それにしても、このイタチ……じゃなくて何でしたっけ? とにかく、私のせいで外に出てしまったようで……気がつかなくて、まことに申し訳ありませんでした。お家ではレイさまが、ミミがいなくなったと大泣きでしたし、山のことは何でもおわかりになるはずのシエラさまも大型動物ならともかく小動物の動きは鳳凰山内でもわかりにくいとおっしゃって……、ご報告したときには大変お喜びでした」
「すみません」
 ラシャ、謝らなくてもいいよ。ぼくは何も悪いことしてないんだから。
「これで大丈夫かな。ミミ、おとなしくするんだぞ!」
 わかったよ。
(でも、こんな細い紐、ロジャの歯にかかれば……)
「紐をかじって切ったりしたら、次は檻だぞ!」
 ……。ラシャはぼくの言葉だけじゃなくて、心の中もわかるの?
 あれっ、袋? 紐だけじゃないの? ラシャ~、ぼくを袋の中に閉じ込めるの? 息がつまっちゃうよ。
「贅沢言うな! お前を安全に運ぶためだ」
 今日のラシャ、ちょっと恐い。
「ごめん。本当は自由にさせてやりたいんだけど……。家につくまでの辛抱だ。がまんしてくれ。僕が自由に動ければ、こんなことをしないのに……」
 あ、お別れのハグ? ラシャ、泣いてるの? ぼくも辛いよ。でも、いつかまた会えるよね。
「ああ、それまで待っていてくれ!」
 うん。ラシャの辛そうな顔は見たくないな。袋の奥に入ってしまえ。ひょいっ。
 あ、袋の口が閉まった。真っ暗。でも、意外と居心地がいいな。きっと、そういう袋をラシャが選んでくれたんだな。
 ふわあああ。また眠くなってきた。おやすみなさい。


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ただいま!

「わあ、ミミ~、おかえり~」
 うぎゃっ、いい気持ちで寝てたのに、いきなりびっくりするじゃないか。レイはいっつも、こっちの都合なんか関係なく、ムギュウッだもんな。わかっているときはいいけど、寝込みを襲われちゃあかなわない。おい、紐、ひっぱるなって。
 あ、シエラが来る。レイを、なんとかしてよ~。
「よかったわね、レイ。
紐はほどいてあげましょうね」
「うん」
 よかった~。やっと晴れて自由の身! これ以上、レイにぐじゃぐじゃにされる前に逃げ……。
 おっ? レイの手は不器用だけど、ほおずりは、ぷにゅぷにゅして気持ちいい。
 ひゃひゃひゃひゃひゃ。

 でも、それ以来、外に出るときは紐をつけられるようになってしまった。トホホ。もっとも、人間の家なんて隙間だらけ、勝手に出ようと思えば出られるんだけどね。この上、檻に入れられたらたまらないから、おとなしくしておくんだ。
 ふわあああ、今日は何をしようかな……。テケテケテ。
 あっ、あれはネズミじゃないか? 追っかけるぞ。ヒュウウウッ。
 あれっ、ネズミ、穴から出ちゃった。こんな穴、ここにあったっけ? ぼくも抜けられそうだ。でも外に出たりしたら、次から檻に入れられちゃうかな?
 まっ、いいか。レイやシエラが戻ってくるまでにまた戻ってくれば、バレない。
 テケテケテ。う~ん、む~ん、よっこらしょ。抜けた。よし! テケテケテ。
 待てえ~、ねずみ~!

 第八章 『ミミの冒険 ラシャを訪ねて三千里……ではなく三里』 完


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奥付



鳳凰の舞9 ~ミミの冒険~


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著者 : 慈鈴(じりん)
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/jirin/profile


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