下巻タイトル一覧
2004年
1 銀河鉄道69 桐壺ステーション <下>
2 豪 と バスキア
3 世界の車窓から
4 豪 と ヴァニラウエハー ①
5 ラ フランス
6 ラジオソープの末裔
7 歯の指輪 ⑥
8 歯の指輪 ⑦
9 歯の指輪 ⑧
10 豪 と バスキア (続)
11 沖田恋愛総司
12 こなゆき。愛する
13 BEETHOVENTRILOQISM
14 味わいにきた。
15 ドライアイスエイジ
16 土星の環のハイウェイ
17 ゆゆの夢
18 お菓子をくれる人の系譜
19 ヒライワ君 moi non plus
20 マッキントッシュ
21 バスキアン・スイート ⑥
22 たまねぎ
23 ふかひれ
24 シュラフ
25 まぐろ
26 バスキアン・スイート ⑦
27 鼻水の結晶
28 舌が切れる
29 苺の腰
30 ぼくのお嫁さん
31 きみがすきだ、名まえはまだない。
32 歯の指輪 ⑨
33 雛祭
34 歯の指輪 ⑩
35 レトリバー
36 めざめの梨
37 風の塔
38 ワルキューレのおしっこ
39 恋人の島
40 ヰタ セクスアリス
41 クリトリスドリーム
42 林檎と泥
43 歯の指輪 ⑪
44 レモンつぶし
45 アイスクリームの天ぷら
46 ネフェルティティ
47 観光客
48 とぶとりをおとすいきおい 海へ
49 モンシロチョウの卵色の夜
50 いつか船を買う夜
51 ジャパニーズ・ミント・スピリット
52 惑星強制給餌
53 魚は戻ってきていた
54 海 と クリームパン
55 幸福な囚人
56 熊 と 鮭
57 恋人の滝
58 コロンフォーミー コロンフォーユー
59 バスキアン・スイート ⑧
60 モンスターと夜景
61 海南記
62 歯の指輪 ⑫
63 ラムネの舟 飴の舟 鉄の舟
64 あかいタツノオトシゴ
65 ワイルドブランケット
66 チーズくさい指
67 幸福か死か
68 WANDERER 天衣無縫
69 果汁はひとみしり
70 青い蜘蛛の魔法使い
71 小林の湖
72 七月の壁のない家
73 梅サイレントナイト
74 地下3階のモンシロチョウ
75 ビガロポリスの冷奴
76 水のまじわり お湯のまじわり
77 夜という夜
78 きらきらはあはあ
79 最高級液体墨 古心
80 歯の指輪 ⑬
81 歯の指輪 ⑭
82 歯の指輪 ⑮
83 羽根のはえた奴との戦い
84 歯の指輪 ⑯
85 ミーと二人
86 サマータイム
87 クーリエ
88 もどれない汽車のご飯
89 心臓からコイン
90 ミャー ミャー
91 ノーフューチャー ノーシスターズ
92 おはじき水
93 歯の指輪 ⑰
94 ジャイアンの錘
95 歯の指輪 ⑱
96 熊なつやすみ・前夜
97 ひこるき
98 猫なんか可愛がんないで
99 ひこるき 2
100 ひこるき 3
101 日向匂主甘塩短太指命 (ひなたにおいぬしあまじおみじかふとゆびのみこと)
102 ぺろり森 うさぎ
103 魔物のように幸せに
104 うさぎの香水
105 歯の指輪 ⑲
106 片羽の道
107 台風の兄さん
108 みてただけ
109 わたしの写真
110 ランニング・ナイト・ジンジャー
111 心臓に住むガブローシュ
112 お墓をよむ
113 秋ゆゆ
114 far east small ear
115 シャービックが冷えるまでの100の質問
116 マラソンリーディング2004-終了しました。
117 マラソンリーディング2004 テキスト
118 補聴器屋の金魚
119 ビール
120 歯の指輪 ⑳
121 おどる十二人の王女
122 かならず花火がみられるよ
123 歯の指輪 21
124 綺麗なひどい力
125 ボサノバがくるうとき
126 臨月第3水曜日
127 火の川、宝石を語る。
128 耳の後ろをまもれへのオマージュ
129 青い蟹
130 歯の指輪 22
131 フランスパンロード
132 コスモゾーンもしくは福島駅
133 蛇つかいとその弟子
134 オリオン
135 ノヴェンバー・ツキユビランドの春
136 地球がくる
137 とりにく
2005年
138 ひよこ色のカヌー
139 花柄の忍者
140 ガラパゴス
141 大戸屋メメント・モリ
142 エビテラル・グイの飼い方
143 歯の指輪 23
144 目をこすらない約束
145 砂糖をくれる男
146 ウサギちゃん夜のしめしめ
147 梅の花
148 ツィーザー・ワルツ
149 ハワイアン ヒーリング ジャーニー
150 綿ぼこり占い
151 はい色の丘さよなら
152 ミシンウォーカー
153 すみれ職人 と 泥の車
154 きゅうくつなばしょ千夜一夜
155 どこからきたの
156 幼な心の君
157 マナティー オン ザ プラネット
158 夜の左手のための練習曲
159 他人が心に住んでしまう瞬間
160 二重らせんマーカー
161 モリブデンの夜
162 双葉と巨人
163 梅雨のなかの砂糖
164 歯の指輪 24
165 ユーカラ
166 歯の指輪 25
167 馬のピアノ
168 火 と feu
169 歯の指輪 26
170 にんにの歌
171 どんなにか……ことでしょう
172 卵をときます
173 可愛くない
174 心を持った落書き
175 ぬー太 と ダイヤモンドマン
176 銀色の耳
177 うさぎのおじさん
2006年
178 精緻郎 と 楽子
179 精緻郎かく語りき
180 楽子かく語りき
181 何でもする
182 真夜中の洗濯
183 シンバルの上でチーズを切った
184 オリオン
185 鉱脈
186 竜を放した庭
187 もじおんぷ とび
188 ばら色のかかと
189 恋人たちの相撲
190 猫耳 パイ耳
191 夏は4時
192 ゆんたん
193 猯 (声と裸)
194 スイートララバイソースイート
195 大佐の桃
196 数ノ森 と 蔵
197 蔵かく語りき
198 明け方のきゅうり
199 視力0.02の世界
200 サブマリンとファクシミリ
201 恋びとへ羽根の星より100の質問
202 つじうら
203 すみれくんの夜
204 数ノ森 と 蔵 ②
205 オータム・ライス・フィールド・アンダー・ハート
206 きみとぼく・ほどの・水のあつまり
207 二つの世界
208 ベルナール
209 明るい崖
210 腕が凍るまえに
211 シガール
212 天秤座
213 遠野
214 森雅之
215 去年は月に住んでいた
216 からえずきの女王
217 いらないかもしれないもの
218 両目をハートにしたドラえもん
2007、2008年
219 時を越えて赤い飲み物
220 いってもむだ
221 オリーブ
222 アンチョビーフィレー
223 am 5:40
224 ヒヤシンスのケーキ
225 心臓の中で
226 ちからをあわせよう?
227 ラッキョウオパール
228 すくない夜の
229 魔女とともに
230 流氷にのる
231 流氷にのる・2
232 だんなさん 金魚
233 竜●糖を食べにゆく
234 無尽蔵ルマンド
235 夢中味覚
236 十一月の骨の森
237 新・武蔵春駅
238 にしん漬け
239 ビョークの料理
240 生まれかわりの遊び
241 ほー猫
242 海の子
243 スペインの死の8番
244 にんにく
245 かれを焼く
そのなかでわたしは雪舟作品の愛読者のことを「ユキフネーゼ」と呼んでいるが、「地球の恋人たちの朝食」は、その内容もボリュームも、まさに「ユキフネーゼのバイブル」と言うにふさわしい、奇跡の作品集だと思う。
もともとwebニッキという体裁で2001年7月から更新されていた「地恋」は、ちょうど7年後の2008年7月に非公開となったので、2011年に刊行された歌集『たんぽるぽる』(短歌研究社)や、その翌年に刊行された小説集『タラチネ・ドリーム・マイン』(PARCO出版)以降の読者にとっては「幻の作品」としてその影をちらつかされるばかりで、なかなかお目にかかることのできないものだった。
その反面「地恋」からの愛読者という方々も一定数いて、ネット上などでもたびたび「『地恋』の書籍化はまだですか」という声があがっているのを目撃した。最後に読んだのが7年前だとか10年前だとか14年前だとかそんなことは関係なく、あの「聖書」を手元に置いておきたい、というユキフネーゼたちの切実な想いは、本書をお読みになった方にはよく理解していただけると思う。
わたしが「地球の恋人たちの朝食」を初めて知ったのは2007年の12月なので、かなり後期だ。短歌に興味を持ちだしたばかりのころで、京都のワークショップで知り合った歌人の穂村弘さんに、彼の著書である『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』(小学館)にはモデルがいるのか質問して、「雪舟えま」というふしぎな名前を教えてもらった。
そうして出会った「地恋」は、わたしの想像をはるかに越えるものだった。まずはその作品の量に圧倒され、読んでみると文体のごくナチュラルな奇抜さと、そこに描かれる唯一無二の世界観に圧倒された。初期のほうから順番に読んだり、最近の更新からさかのぼって読んだりしてその全貌を捉えようとしたが、続けて読んでいくうちにそのエネルギーに酔ってしまい、何がなにやらわからなくなる。最終的には目についたタイトルをクリックして、時系列にこだわらず読むことに決めた。そのため同じものを何度も読んだり、一度も読まない作品もあった。もったいないことだが、そうする他なかった。
いま改めて最初から最後まで読み通してみると、当時とはまた違った感慨がある。雪舟さん本人も「2003、4年ごろの自分がカオスで黄金時代すぎて、もう自分なのに怖かった」と発言しているように、やはりそのころの作品はこの地球を生き抜く上でのひとつの答えを提示されたような、絶対不可侵領域的な輝きがある。
その後ももちろんコンスタントに魅力的な作品を発表されていて、2007年に「地恋」読者であった星四朗さんとご結婚されるすこし前からは、今の作風にかなり近い、満ち足りた雰囲気の物語が増えているように思う。愛を求める表現から、それを得て、愛を与える表現に切り替わったのかもしれない。このあたりの変遷は、ほぼ編年体を採用した歌集『たんぽるぽる』の流れとも一致するので、読み比べてみるのも面白い。
「地恋」には、完結していない作品も多い。また、完結したかのように見えて、していない作品も多いだろう。そもそも同じキャラクターが別の作品に姿を変えて登場したり、パラレルワールドが描かれたりする雪舟作品に「完結」という概念はない。地球は丸く、運命は円環的で、始まりと終わりは繋がっている。
2014年に刊行された小説『プラトニック・プラネッツ』(KADOKAWA)の紹介文には、「雪舟えま版『火の鳥』」という表現が使われている。
――ひとりで歩いてゆける力を、つけてやるのが愛なら。君は愛をくれた――
『プラトニック・プラネッツ』(雪舟えま/KADOKAWA)より
その血を飲むことで永遠の命を手に入れられる「火の鳥」のように、これからも多くの人が雪舟作品を読むことで、永遠に生きていける力を手に入れることになるだろう。それは雪舟さんを通して宇宙から伝えられる「愛」なのかもしれない。