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 翌朝起きたら瞼が重くて、鏡を見たら憔悴しきった顔をしていた。


 心の中はスッキリしたものだというのに。

 

 仕事に行くと、事務の佐倉ちゃんに「風邪ですか? 大丈夫ですか?」と割と本気で心配そうな顔をされてしまって、こんなどうでもいいことで心配を掛けてしまうぼくは本当にかっこわるいし、申し訳ない。

 

 でもそうじゃなくて、佐倉ちゃんはぼくを心配するに値する人間だって言う事を、伝えてくれているわけで、だからもうぼくは自分を卑下する必要なんてない。

 

 そして、そういうのは佐倉ちゃんに限ったことじゃなく、休憩に誘ってくれる同僚や、コンビ二で手を握っておつりをくれる女の子、それからインスタでいつも♡をくれる人たちとか。

 

 ぼくを赦してくれている人は沢山いて、ぼくがぼくを赦さなくたって、ぼくは赦されてるんだなってことを感じてる。

 

  誰かの恋愛話を聞いても、街で高校生のカップルを見ても、ぼくは何とも思わなくなった。

 

 自分と彼らを比べなくなった。

 

 それはきっと、ぼくが過去の自分を赦せるようになったからなんだと思う。

 

 柚佳のことを思い出すと、やっぱり少し切なくなるけど、もう悲しくはない。

 

 そうして気持ちが軽くなったのは、あの神社でお願いしたことが関係あるのかどうか分からないけど、少なくともあの日以来、ラクになったのは事実だから、ぼくはお礼参りに行こうと、すっかり春めいた日曜日、街をぶらぶら歩いてみる。

 

 北口の雑貨屋を右に曲がって……そこからはマイナーな路地を曲がりに曲がったことしか覚えてないから、手当たり次第、しらみつぶしで路地を行く。

 

 けれど、神社なんてどこにもなかった。

 

 酔っ払って夢を見たのか。それとも、記憶違いなのか。

 

 一日中探しても、ぼくは神社を見付けることが出来なかった。

 

 まあいいか。あれが何だったとしても。

 

 街を彷徨っている間、ぼくは何人か金髪おかっぱ頭の女の子を見かけるけれど、みんな彼女とは似てもにつかない顔立ちをしていた。

 

 あの日、ぼくは出会うべくして出会ったような気がする。

 

 神社にも、彼女にも。

 

 だからきっと出会わなくちゃいけない時が来たら、ぼくはまた、あの神社にも彼女にも出会えると思う。

 

 だってしょうがないだろう。自分の記憶を責めたって。それに、そういうのって、すべてを自分でコントロールしようとするみたいでおこがましい。頑張ってもダメなことは、ぼくは何だって神様にぶん投げるよ。

 

 またいつか、あの子にも会えますよーに。

 

 暮れかけた空に、ぼくは祈りを捧げる。

 

 

 

● おしまい ●

 

街のイメージは下北沢です。

 

 


奥付

 

生きるためのお仕事

(2014年11月)
http://p.booklog.jp/book/95350


著者 : 蜂子(はちこ)
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/cure-pop/profile


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