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講評

2014年の映画を振り返って

2014年の映画を振り返って

 

2014年は、僕の映画鑑賞にとっては随分とバランスの悪い年でした。洋画については大当たり!! 豊作!! 邦画については「スッカスカ」と言ってもよい不作の年だなぁ~、と感じました。

まずは洋画部門。

ベスト5を選ぶのに、そんなに迷いはありませんでした。

僕のダントツ、一押し作品は「ジャージー・ボーイズ」なんですね。クリント・イーストウッド監督作品です。

とにかく楽しい! 音楽がいい!! 映画館で思わず体を揺すってしまうほどノリノリの楽しい映画です。クリント監督、なんでこんな傑作を、次から次へとヒョイヒョイ作れるんでしょうかねぇ、しかもあのご高齢で(失礼!)そのパワフルさは、まったく衰えを見せませんねぇ。

第2位に入った「鑑定士と顔のない依頼人」

これは皆さん、ちょっと意外だったかもしれませんね。完全に僕の趣味です。

アート作品を題材とした映画、僕は大好きなのです。映画のスクリーンで美術鑑賞をするというような体験は楽しいものです。しかも本作は、気難しい天才鑑定士など、登場人物の作り込み、設定が絶妙。ストーリー終盤の大どんでん返しなど、観客をあっと驚かせる巧妙な仕掛け。映画の最後の最後まで観客を騙しおおせたジュゼッペ・トルナトーレ監督の手腕の見事さに拍手です。

第3位の「チョコレートドーナッツ」

映画レビュー本編で書きましたが、「2014年、最も美しい人間ドラマ」だと断言できます。ダウン症という障害をもって生まれたマルコという少年の、なんという愛らしさ!! 騙されたと思って、黙ってレンタルビデオでご鑑賞くださいませ。なお、ご覧になるときはハンカチのご用意をお忘れなく。

第4位と第5位はディズニーアニメ作品となりました。

「ベイマックス」については、この原稿を書いている2月中旬でも、僕の行きつけのシネコンでは、今だに1日4回上映中です。

「子供と大人が同時に楽しめて何が悪い」「わかりやすい映画で何が悪い」「ハッピーエンドで何が悪い?」まさに理屈抜きに楽しめるのが本作なのです。

さて昨年、日本中をブームに巻き込み、社会現象とまで言われた「アナと雪の女王」

僕のような、ひねくれた映画オヤジでも、やはりベスト5に入れざるを得ませんでした。映像の美しさ、作品としての完成度も抜群でした。僕は映画が公開された3月に鑑賞していました。しかし本作は半年以上という異例の大ロングラン、大ヒット映画となりました。昨年のとある夏の日、バスに乗った僕は、前に座った小さな女の子がいきなり

「レリゴー、レリッゴー!!」と唄い始めたのにびっくりいたしました。

「こんなにヒットしてたんだ」と改めて「アナ雪」現象のインパクトに驚かされました。この映画だけを見たくて映画館に何度も通うリピーターまで出現しましたね。これをきっかけに「やっぱり、映画は映画館で観るのがいいよね」と思う方が増えたのではないか?と思います。そういう意味で本作は、映画界への貢献度が極めて大きな作品となりました。

次点とさせて頂いたのは2作品、しかし、作品のクオリティーということではベスト5に引けを取りません。

「それでも夜は明ける」は黒人奴隷制度、並びにアメリカの歴史の暗部を真正面から描く見応えのある力作、秀作です。

また「パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間」は、ケネディ暗殺事件の当日、偶然に8ミリキャメラに歴史的瞬間を映しとってしまった一市民、そして、銃撃された大統領が搬送された、地方病院の状況をドキュメンタリータッチで描いた作品です。その息もつかせぬ緊迫感あふれる描写は、観客の目を釘付けにしてしまいます。

さて、2014年の洋画は僕にとっての当たり年。ベスト5では収まりきらないのです。そこで今回、どうしてもオススメしたい作品として「おすすめde賞」を特別に設けました。

LUCY/ルーシー」はリュック・ベッソン監督の、乾いたタッチの映像感覚が抜群です。スカーレット・ヨハンソンのアクションシーンも魅力ですね。

「グランド・ブダペスト・ホテル」は、ウェス・アンダーソン監督ファンなら絶対、外せないでしょう。万人向けとは言えませんが、この監督の映像感覚、タッチ、そして豪華俳優陣。まだウェス・アンダーソン監督作品を一度も観たことがないという方へ、お試しになられてはいかがでしょうか。

次に邦画部門です。

残念ながら2014年の邦画で1位は該当作なしとさせていただきました。これはあくまでも僕の独断と偏見で選んでおりますので、ご了承くださいませ。

第2位となりました「蜩の記」これは日本の原風景と言いましょうか、スクリーンに映る風景の美しさに心惹かれました。監督は黒澤組で長く助監督を務められ「雨あがる」などの作品で知られる小泉堯史監督です。黒澤組で培われた美しい絵の作り込みが継承されていることを嬉しく思いました。

第3位は山田洋次監督作品「小さいおうち」です。松たか子さん、そしてベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)に輝いた黒木華さんの演技は注目ですよ。僕は彼女が出演した「シャニダールの花」もいいなぁ~と思っています。

第4位に入りました「WOOD JOB!(ウッジョブ)~神去なあなあ日常~」

矢口史靖監督作品です。矢口監督は、そのキャリアの当初、かなりマニアックな映画を撮っていて、コアな矢口映画ファンを生み出してきました。しかし「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」とたて続けに大ヒット作品を連発。いまや、矢口監督が撮る映画は「必ずヒットする」という、映画会社にとってはハズレの危険性が極めて少ない、それだけ安心して映画制作を任せることのできる日本人監督となりました。

矢口監督の目の付け所、映画の題材はいつもユニークで注目を浴びることでも有名ですね。今回、矢口監督が取り上げるのはなんと「林業」

そんなもん、映画になるんかいな? と思うでしょうが、矢口監督の手にかかればこんなにも面白い作品になるんですね、なにより、こういう作品にありがちな「地方再生」「里山の暮らしの素晴らしさ」「エコな暮らしで環境に優しい」などという空々しい「お題目」、押し付けがましさが全くありません。

スカッと笑える。あくまでも「エンターテインメント」であることに徹する「プロ根性」と「すがすがしさ」があるのです。

それこそが矢口監督作品の真骨頂といえるでしょう。

第5位には3Dアニメ作品「STAND BY ME ドラえもん」を選んでみました。「永遠の0」を撮った山崎貴監督作品ですね。共同監督は八木竜一さんです。この時期に敢えて「永遠の0」をどうして撮らねばならなかったのか? 僕には理解不能でした。国策映画、プロパガンダ映画と受け止められかねない。山崎監督はそんな体制べったりの監督さんだったんだろうか? そう疑問に思っていました。しかし、その山崎監督が「ドラえもん」を映画化したことによって、なんだか僕の方も肩の力が抜けたように思いましたね。子供たちや大人まで巻き込んでしまうドラえもんの魅力。

「タケコプターで空を飛んでみたい」

誰もが一度は想像したことでしょう。あたかも自分が空を飛んでいるような爽快感。それは本作を劇場で3D鑑賞した人だけが味わうことのできる特別な体験です。いやぁ〜、本当に気持ちよかった!!

次点となりました「超高速!参覲交代」これは小気味良いコメディー時代劇に仕上がりましたね。もっと言えば、舞台となったあの福島、「フクシマ」からの、中央政権への強烈な批判精神とちゃぶ台返し、それこそ「100倍返し」の怨念。それを笑いで吹き飛ばすように表現したところに、この作品の痛快さがあるのだとおもいます。

なお、おすすめde賞には「テルマエロマエⅡ」「青天の霹靂」を選んでみました。

特に「青天の霹靂」を撮った「劇団ひとり」さんの映画監督としての手腕は、極めて非凡なものがあると思います。前作「陰日向に咲く」では原作、俳優としての参加でしたが、これも強く印象に残りました。今後とも注目ですよ。