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僕がスモールハウスをやめた訳

映画に宛てたラブレター2月号発行が遅れてしまい、ご愛読の皆様にご心配をおかけしましたことお詫び申し上げます。

昨年末より、心身の調子がよくなく(僕はうつ病患者でもあり、神戸市から3級精神障害者という認定までもらっている障害者でもあります)引きこもり生活を送るようになっております。現在は夜昼逆転の生活を送っております。

部屋の外に出るのが億劫、というより、やや恐怖に感じることさえある状況です。

このような心理状態を引き起こした、直接の原因、引き金として思い当たるのは、昨年11月の出来事でした。

二年前から熱心に活動しておりました「スモールハウス」をつくるプロジェクトを「自らの判断」で「降りることにした」のです。

スモールハウスは棟上が終わり、屋根の下地工事もほぼ完了していました。

ぼくは足場に登り、試しに屋根の東南の角を持って揺すってみました。

なんと、ゆれるのです。

手で揺すっただけなのに、屋根全体が簡単に揺れる。

「これは危ない!!」

施主であるY君は、この屋根に土を盛って、草屋根にしようとしていました。

それはY君の強いこだわりでした。

こんな弱い構造物の屋根に、重い土と草を乗せ、その上に雨が降ったらどうなるか? 雨を吸い取り、水分を蓄える草屋根。それは瓦屋根よりはるかに重くなることでしょう。

私は、かつてハウスメーカーに勤務した建築の「業界人」でもあります。

その常識として、素人の家づくりであっても、やはり「安全面だけは最優先しよう」と、施主である友人のYくんに提案しました。

具体的には東南の角に筋交いを増設し、構造的により強い建物にしようと提案したのです。

(スモールハウス室内側から東南角を見ています。ここに筋交いがないことに注目です。一部斜めに見える材料は足場のための筋交いです)

しかし、僕の提案はあっさり却下されてしまいました。

Y君としては、安全は多少犠牲にしてでも、「見た目」など、自分の作りたいような家を作る事を優先したのでした。

施主であるY君はあの「阪神大震災」を体験しています。同じ神戸生まれの僕は、ちょうどその時、名古屋に住んでおり、あの大地震の揺れを体験していません。あの大地震を体験した人なら地震に強い家をつくる、という提案はきっと「当たり前のように」受け入れてくれるはずだ、と思っていました。

しかし、あの大地震を生身の体で体験しているはずの彼は、耐震性や建物の安全ということを優先しなかったのです。

「安全第一」という「当たり前」と思われることが、当たり前として通用しなかったのです。

衝撃でした。

愕然としました。

「いったい自分は、そして僕たちは、いったい何をやってきたんだろう?」

思わず、炎天下の中での作業を思い出しました。

持って来た2ℓのスポーツドリンク2本を、あっという間に飲み干すほどの、過酷な状況でした。酷暑の中、少しでもよい作業環境にしようと、現場の地面に這いつくばるようにして雑草をむしり取る日々。あっという間に一輪車いっぱいになる雑草。

こんなこともありました。

Y君の意向で竹墨を入れる穴を敷地のど真ん中に掘りました。しかし、作業の工程は彼の思いつきで進みます。肝心の竹墨はまだ手に入るメドも立っていなかったのです。

 

結局3ヶ月ほどの間、敷地のど真ん中に「落とし穴」があるという、信じられない現場となりました。(もちろん穴の上には落下防止のためコンパネを置きましたが)

また、その周りには余った石材が山済み。これは犬走り施工用の石材を仮置きしているのです。結局、後の作業の際、この不安定な石を上を歩かなければならず、何度も捻挫しそうになりました。

 

現場の基本は「整理・整頓・清潔・清掃」これは「4S」と呼ばれます。

「現場をよくしたい」

それはかつて建築業界で働いた自分の経験を目の前のY君に、どれだけ伝えられるか? ということでもありました。

作業をする僕の背中から、僕の発するメッセージを受け取ってほしい、そう願っていました。

しかし、結果として何にも伝わらなかったようです。

Y君は現場の清掃、安全など気にも留めていなかったのです。

同じ目標を掲げてきた仲間と思っていた者同志でさえ「思いを伝える」という、本当にカンタンで単純なことが、こんなにも難しいことなのか? 

ひいては、言葉というツールはこんなにも「伝わらない」ものなのか? と愕然としました。

「文章を書く」「言葉を操る者」の端くれとして、無力感に陥ったわけです。

更に、もっと悪いことは、言葉は「まちがった情報を広めてしまう」危険もあるということを思い知らされました。

このスモールハウスを作る過程を公開したブログは、1日で1000アクセスを記録するような人気ブログになっていました。

「僕はまちがった家づくりをファンに広めてしまったのではないか?」

その責任の重さに押し潰されそうになりました。

 

今回のスモールハウスは「都市計画区域外」(要するにど田舎ですね)で建てております。このため建築確認を役所に出す義務はありません。しかし、だからといって「何を建ててもいい」ということではないのです。建物の安全の「最低基準」である「建築基準法」を無視していいということではないのです。

「建築基準法」は建物の「最低」守らなければならない基準なのです。

また、家を建てる前に当たり前に行われる地盤調査も今回は行っておりません。

そのため最悪の場合、建物の重さで地盤面が不均等に沈み込む「不同沈下」を起こす恐れさえあるのです。

僕自身がこのプロジェクトに本格的に参加したのは2013年の11月でした。設計図も事前に見る機会もありました。

しかし、「小さい家・スモールハウス」だし、「都市計画区域外」だし、まあ、こんなもんだろ、なんて甘い認識をしてしまったのです。「スモールハウス」という言葉のイメージに、僕自身が惑わされてしまったのです。

この場をお借りして申し上げます。

「家はいざという時、人を守らなければならない」

これは絶対の条件です。

そして何よりも大切なこと。

 

「家は人を殺してはならない!!!」のです。

 

いま、このように文章を書けるようになった、ということは、僕自身の精神状態は、若干回復傾向にあるということでもあります。まだまだ、自分の闇夜は続くのでしょうが、うっすらとした朝焼けが見えることを期待して、日々を過ごしております。

 


奥付



僕がスモールハウスをやめた訳


http://p.booklog.jp/book/95035


著者 : 天見谷行人
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/mussesow/profile


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