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 ラフィアン

 



 ギュンターはその後気になり、父ラフィアンの経歴や仕事内容を知る為、公領地護衛連隊の隊長ライオネスを呼び出す。

ディンダーデンは横のソファで沈んでいた。
兄、ライオネスが姿を見せても、まだ。

ライオネスは室内に足踏み入れると、一つ礼をし、執務室の机の前に座るギュンターへと進み来る。
「公領地護衛連隊特殊機構のラフィアン。
その経歴について、調査が済みました」

ギュンターは机を挟んで立つ、隙無い美男を見上げる。
全く…見事に礼儀正しく、気品もありかつ、頼りがいのある申し分無い幾らか年上の男。

暫くライオネスを惚けて見つめる。
ライオネスは一つ、咳ばらうと告げる。
「報告を、してよろしいんで?」

ギュンターはつい、頬染めて顔下げる。
ライオネスは微笑むと、そっと言った。
「私に何か、ご意見がおありで?」

ギュンターはとうとう、音を上げた。
「…頼む。
他では長としてちゃんとするから…人の居ないここでは、俺に敬語は使わないでくれるか?」
「…それは、命令で?」
「…そうだ」

ライオネスは、では。
と居ずまいを崩すと、斜め横のソファに沈み込む、弟をチラと見る。
ギュンターは気づき、呟く。
「…あいつも美男だが、あんたとは全然印象が違う」
ライオネスは肩竦めると
「まさか私が美男だったから、惚けて見てたのか?」
「…そうだ。
ディンダーデンは見慣れてるが、あんたは違う」

ライオネスはとうとう、クスクス笑い出す。
「君の方が、やりにくそうだな?」
ギュンターはふて切った。
「当たり前だ!
補佐は二人まで据えていいと言われたから、出来ればあんたに補佐になって貰いたいが…」

「が?」
「それを言った人事部長が、途端真っ青に成った。
…あんたが公領地護衛連隊から抜けたら…暫くは凄い混乱が起こるし…あんたにぞっこんの公領地の身分高いご婦人達らに怒鳴り込まれ、どうして移動させたのか!
とどれだけ嫌味を言われる事か。と。
説得役が居ないと、無理だそうだ」

ライオネスはくすり。と笑い
「…それで、特殊機構ですか?」
ギュンターは父の経歴が知りたかっただけだったが、面倒事の収拾とはまさに、こんな場合だと突然思い当たる。
「…まあな。
ラフィアンの、顔はあんた、知らないのか?」

ライオネスは肩竦めると
「特殊機構は本当に特別な部署なので。
束ねる役職も、長が付かずに担当官。と呼ぶし」

「…どんな部署か、詳しく知りたい」
と目でライオネスの横の椅子を目で指す。
ライオネスは直ぐ察し、椅子にかけて口を開く。

「さっき君が言ったように、面倒な案件を受け持つ。
中央護衛連隊は宮中護衛連隊、公領地護衛連隊と、身分の高い者らを大勢相手にするから。
もめ事ですら、ほんとに些細な事でも大事になりやすい。
そう言った場合、特殊機構に依頼すると、こちらの都合の良いように収めてくれる。
あらゆるツテやコネを使って。
…時には、贈り物も欠かせないので、小さな部署だがかなりの予算を使う事を認められている。
…時には小さな火種が原因で、中央護衛連隊長ですら辞任に追い込まれる場合すらあるので…」

「…辞任を回避する為なら、どれだけでも予算を使え。
と命じるだろうな。
歴代中央護衛連隊長らも、皆揃って」
「今は君だ」

ギュンターは頷く。
「出動は少ないと聞いた」
「ラフィアンは知り合いなのか?」
「俺の実父だ。表向きは他人だが。
顔がそっくりだから、一発で親子だとバレる」

ライオネスは一瞬惚け、だが真顔に戻る。
「…つまり正式な親子じゃなく…」
「ああ。
母は結婚せず彼の子の俺を産んだ。
だが俺の実父だからって特別扱いする必要は無い。
その…給料上げるとか、特別待遇するとか」

ライオネスはくすり。と笑う。
「特殊機構を、全く知らないな?
特殊機構の要員は少ない。
だがその給料は馬鹿高いし、待遇だって今更良くしなくても、十分いい。
勿論表だって動かないから、中央護衛連隊の騎士らと面識は無く、尊敬も受けないが」

「……………」
ギュンターは机に肘付き、両手を目の前で重ね、囁く。
「馬鹿高い?」
「私はまた、その小さな部署が一連隊程の予算を使ってるから、削る為に内情を調べろ。と言われたのかと思った」
「いや」

「私も公領地ではかなりのコネがあるし、不祥事は出来るだけ収めるようにしてる。
だがそれでは済まない、滅茶苦茶な言いがかりをつける身分の高い御仁も居る」

「そんな時、特殊機構部隊は動くんだな」
ディンダーデンがのそり。とソファから上体起こし、後の言葉をかっさらう。

 



ギュンターが、ディンダーデンがにやり。と笑うので、顔下げる。
「俺の懐刀の意見では…あんたにもう一人の補佐になって貰って、堅実な事はあんたに頼み、女を垂らす必要がある時と、脅しが必要な時、ディンダーデンに出向いて貰えと」

ライオネスはかったるそうにソファの上で上半身起こし首回してる、弟ディンダーデンを横目に言った。
「だがあいつが、私と一緒に肩並べて仕事をするかと、懸念してるんだな?」

ギュンターは顔揺らし、ディンダーデンを見る。
ディンダーデンは顔下げるが、すっ。とライオネスを見る。
「肩並べろと、ギュンターは言わない。
殆どの仕事はあんたがやる。と。
俺は楽出来るそうだ」

ライオネスは吐息吐くと
「多分、そうなるな」

だがディンダーデンは顎、しゃくる。
「奴の親父の、話続けたらどうだ?」
ライオネスはギュンターを、見る。
「何を、聞きたかった?」

「………この間、俺が親父の上司になった。
と不機嫌だったから…その、体面を保つようにした方がいいのかな。と思って。
つまり親父の」

「昇進か?」
ディンダーデンが上体すっかり起こし、片膝立ててその上に腕乗せる。

が、ライオネスが首竦めた。
「必要無いでしょう?
だって給料は一連隊長より高い。
酷く面倒な案件なら、報奨金も上乗せされる。
つまり一年間、仕事が無くても給料は支払われ、報奨金に拠っては君より高い給料を受け取る」

「…………………………………つまり………」
「中央護衛連隊長も大変な役職だが、特殊機構も、やれる人材はそうそう居ない」

「…宮中護衛連隊長より高いのか?」
「そうだ。仕事内容が丸で違う。
宮中護衛連隊は現在殆どがご婦人の相手。
以前宮中警護は『光の塔』付き連隊も手伝っていたが、今はほぼ『光の塔』付き連隊がしてる。
それで給料を、上げられる筈が無い。
結果特殊機構が動き話を付けて、今の宮中護衛連隊長に支払われる給料は、実は「左の王家」が払ってる」

「そんなとこでも特殊機構が動くのか?」
「以前の中央護衛連隊長が困ってね。
補佐が依頼してみる。
と言った所、見事に片づいた。
但し、「左の王家」から支払われるのは、グーデンが宮中護衛連隊長の時だけだ」

ギュンターは呆れた。
「「左の王家」に、グーデンの給料支払えと?
そんな交渉、成立させるのか?」
ディンダーデンも笑う。
「凄腕だな。
で何人居るんだ?今現在」

「四人」
ライオネスの即答に、ディンダーデンもギュンターを見たが、ギュンターもディンダーデンに振り向く。

「…そんな少数で、足りるのか?」
ライオネスは肩竦める。
「人手が足りない場合は、中央護衛連隊の指名された手隙の騎士が駆り出される」

「なる程」
ライオネスは言ったディンダーデンに振り向く。
「興味あるなら、特殊機構が指名出来る騎士の人員表に、名を乗せるか?」
ディンダーデンは笑った。
「面白そうだな」

「出番があるかは、解らんがな」
戸口からのその声に、三人が一斉に振り向く。

が、ライオネスとディンダーデンはびっくりし過ぎて声も出ない。
ギュンターだけが
「親父…」
と声かける。

ラフィアンが三人の元に歩を運ぶ間中、ライオネスとディンダーデンはその人物を見つめ続けた。

「…どうして…」
ライオネスの横に並び正面から見つめ来るラフィアンに、ギュンターが呟く。

「担当官が。
お前が特殊機構の調査をしてるって。
で、大抵就任したての中央護衛連隊長からウチは毎度、予算を使い過ぎてる。
と疑惑を抱かれる。
息子に必要性をちゃんと、説いて来い!
と送り出された」

言って横をのライオネスを見る。
「君、ウチの担当官に調査は予算を削る為かも。
とほのめかしたろ?」

ライオネスは横でその男を見、正面のギュンターを見…。
やっと、違いを見つけてほっとする。
「ああ瞳の色が…!」

ディンダーデンもソファの上から、首振って二人を…間違い探しのように見つめ、呻く。
「確かに…!
ブルーと紫だな…!」

ラフィアンは一気に安堵するライオネスに頷く。
「違いが分かって、良かったな…!
で?どこ迄話した?」
「…貴方の給料が、ヘタしたら中央護衛連隊長より多い。と」
「でその理由は言ったのか?」

が途端ディンダーデンが、ほぼ叫ぶ。
「首振る仕草も、そっくりだな…!」
ライオネスは心からほっとして
「だが目を見れば解る。
これで上司を間違えなくて済む!」

ギュンターは二人の反応に俯き、ぼそり…。とラフィアンに言った。
「じいさん迄来たら…二人は気が狂ってないか?
もしかして」
「目の色の違いに安堵するさ!
質問の答えは?」
そうライオネスに催促する。

ライオネスが返事しようと口開くが、ディンダーデンが怒鳴った。
「じいさん?
まさかじいさんも、そっくりだってのか?!」

ライオネスは言いそびれ、開けた口から吐息吐き出す。
ギュンターがすかさず言う。
「エシャルを食ってるから、年だってせいぜい、長男に見える位若々しい。
だがじいさんの目はグリンだ」

「…………つまり顔はそっくりで、仕草や雰囲気も似てるが、目の色だけは違うんだな?」
ディンダーデンの言葉に、ラフィアンはギュンターを見る。
「そっくりか?
俺の方が、こいつよりクールだ。
奴のじいさんで俺の親父は、こいつや俺より陽気だしな」

ギュンターもおもむろに口開く。
「「右の王家」の血を継いでるだけあって、そっち系だな」

が、ディンダーデンは眉寄せる。
「それだって僅かで、比べてみて初めて解るんだろう?
個別じゃ目の色以外は、ほぼ一見では判別できないぞ?」

ギュンターとラフィアンが顔、見合わせる。
が、ラフィアンはライオネスをじっ。と見る。
「…失礼。
調査と言われ担当官より概要は聞かされたが…。
実は今日は、詳細な調査条項をききに来たんです。
正式な調査依頼は今日で」

ラフィアンは上から目線でジロリ…。
とライオネスを見る。
「なる程。流石公領地護衛連隊長だけあって、打つ手が早いな」

そしてギュンターを見る。
「長のお前より給料が多くたって、必要経費が馬鹿高いし給料から出す。
ってのが昔からの決まりだとかで…。
つまり自前がありゃ、多く給料を受け取れる。
ってだけだ」

「自前?」
ギュンター、ライオネス、ディンダーデンの声が揃う。
「どこに出入りして話付けると思う?
時には王宮舞踏会だ。
いつも早々同じ服も着ていられない。
衣服や装飾品にどれだけかかると思う?
王族に会いに行く服だって、見窄らしい服で行けるか?!」

「…つまり…そう言う礼服は自分で用意しろと?」
ライオネスが聞くと、ラフィアンは頷く。
「贈り物は必要経費で計上できるが、衣服はサイズがあるから自前で用意しろとぬかす。
装飾品は一応偽物が幾つか用意されてるが…。
出動がかかると全員で取り合いになる。
それに偽物を直ぐ見破る相手には、本物付けてかなきゃならん」

「……………………」
三人が押し黙り、ギュンターが囁く。
「結果、自分で買うしか無いのか?」
ラフィアンは頷く。
「本物の宝石なんて、そうそう借りれないからな」

そしてギュンターを見る。
「お前だって、舞踏会に頻繁に呼ばれる。
隊服で押し通すか、そうでなけりゃかなり衣服代がかかるし、迂闊な格好すると身分高い奴らに舐められる」

「……………そんなに高いのか?
俺は一応、否応なしに押しつけられた形だから、エルベス大公とダーフス大公が用意してくれる」
「いつ迄だ?
任期中ずっとか?
いずれ自分で用意する日が来る。
まあそれがかなり先なら、礼服も溜まるから使い回しも出来るかもな!」

ギュンターが、ライオネスをそっ…と見る。
「あんた、公領地護衛連隊長だろう?
やっぱ、舞踏会は頻繁に出てるんだろう?
礼服ってそんなに、高いのか?」

ライオネスがじっ…とギュンターを、見た。
「…一通り用意出来るまでは、結構かかる。
が、20着程作っておけば、後は…順繰りに変えて行けばなんとか凌げる」

ギュンターは今度はディンダーデンに顔向ける。
ディンダーデンはむっ。として言った。
「…お前の就任舞踏会だって、大公家の借り物だ。
一枚だって、持ってないぞ?
近衛時代は隊服にしか、金かけて無かったからな!
それだって王宮舞踏会に出る礼服と比べれば、うんと安い!」

ギュンターは俯くと、呟く。
「…つまり中央護衛連隊の隊服を少し高級にすれば、それで何とか凌げるんだな?」

ラフィアンは、頷く。
「隊服ってのは、一種のステイタスだから、礼服ほど高くなくても皆直ぐ連隊が解って、敬意を払うからな」

ギュンターは、ほっと吐息を吐いた。
「…つまり親父は、連隊を堂々と名乗れないから、自前で馬鹿高い礼服、毎度用意しないと駄目なんだな?」
ラフィアンは大きく、頷いた。

が、ライオネスがラフィアンにそっと言う。
「けれどそれだけの予算を使うだけの仕事をする部署だと、貴方の子息は理解してますよ」
「本当か?」

ギュンターは、ゆっくり頷いた。
「…今の説明で更に、良く理解出来た。
が、一年仕事が無くても高い給料払うんだろう?」

が、ラフィアンが唸る。
「馬鹿か?お前」
ギュンターは今度は真顔で言った。
「あんたとじいさんの、俺への評価はそれ、ばっかだな」

「一年出動が無いからと言って、あちこちに顔出さない訳に行くか?!
出動かかって突然顔出して、相手がこちらの言う事を聞くか?!」

ディンダーデンが、ぼそっ…と言った。
「つまり日頃の根回しが重要で、交際費がかかる。と?」

ライオネスが俯いた。
「そういう相手なら大抵、費用のかかる場所ばかりでしょうね?
お付き合いするのは」
ラフィアンは流石。と大きく頷く。
そしてギュンターに振り向く。
「お前、こんなデキる年上の部下で大丈夫か?
お前よりこいつの方が、よっぽど相応しい。
そう言われる日が、絶対来るぞ?」

ギュンターは机に両手付いて項垂れ、呟く。
「俺だってそう、思い知ってる」

ラフィアンが、大きく頷く。
「だがそれでライオネスが次期中央護衛連隊長になる迄の腰掛け気分で務まる、役職じゃ無いぞ?」

「…………ちゃんと、真面目にやる」
「それじゃ全然足りない!」

言われて、ギュンターは顔上げ、怒鳴る。
「真剣に!全力でやるさ!!!」

ラフィアンはライオネスに向き直ると
「あんたよりうんと馬鹿だが、こう言ってる。
出来すぎのあんたにとって、大層歯がゆいだろうとも思う。
が、悪いが奴を、助けてやってくれないか?」

ライオネスは感じ良く笑って
「上司なので。
助けるのは当然です」

と言い、ラフィアンは感極まってライオネスの腕をぽん。と叩き俯き…そしてギュンターに、向いて言った。
「お前よりよっぽど、中央護衛連隊長の器だ」
ギュンターは反射的に怒鳴った。
「あんたに言われなくても、痛感してる…!!!」

が、ディンダーデンがぼそり…。と呟く。
「兄貴大好きな母は、ライオネスの中央護衛連隊長就任を心から望んでるが…兄貴は
『あんな大変な役職に就かずに済んで良かった』
って言ってるの、聞いたぞ?
本心か?」

皆が一斉に、再び長椅子に背を倒してるディンダーデンを、見つめる。

ライオネスはギュンターとラフィアンにじっ。と見られ、顔下げる。
「ああその…。
つまり母は、私の身分が高ければ高い程自慢出来る。
が、歴代の中央護衛連隊長らは皆、家庭が巧く行かず、結婚しててもほぼ、別居状態で双方愛人に走ってる。
子息らは皆
『父が大嫌いだから、中央護衛連隊にだけは入隊したく無い』
と、口揃えて言う。
私は妻を愛してるし、将来子が出来たら出来るだけ関わりたいから、そんな状態には成りたくなくてね…」

ラフィアンがギュンターを、再び見ると、ギュンターは思いきり顔下げた。
「…つまり、愛する女との結婚生活は諦めろと?」

ライオネスも俯き加減で頷く。
「大抵、中央護衛連隊長の重圧で性格が激しく非情に成って、妻はついて行けなくなるそうだ…」

ギュンターはもっと、顔下げた。
「そうか………」

ラフィアンは吐息吐くと半ば、怒鳴った。
「良かったな!
惚れてる相手が同様地方護衛連隊の長で!
どんな良く出来た嫁より、お前の苦労を解ってくれるぞ!」

が、その励ましにも、ギュンターは顔上げなかった。

ライオネスは戸惑うように弟に首振り、尋ねる。
「その噂は聞いたが…その…ローランデが北領地[シェンダー・ラーデン]地方護衛連隊長に納まっても、二人の仲は続いていたのか?
ギュンターがフラれて、二人は切れたと聞いたが」

ディンダーデンは兄に見つめられ、首横に振る。
「ローランデの地方護衛連隊長就任祝い代わりに、この馬鹿は“振られ男”の汚名を引き受け、彼を自分との不名誉な関係から、庇ったんだ」

ラフィアンは一つ、吐息吐く。
「お前を馬鹿と思ってるのは、俺やじいさんばかりじゃないんだな?」
言って、長椅子のディンダーデンに振り向く。
「一般論か?」

ディンダーデンはギュンターそっくりの実父に見つめられ、頷く。
「左将軍補佐で奴の長年の悪友も、同意見だ」

(やっぱりそうか…)
の代わりに、実父ラフィアンに長い、深い溜息を吐かれ、ギュンターはきっ!と父を見る。
「俺をどれだけ馬鹿よばわりすれば、気が済むんだ!」

が、ライオネスが即座に言った。
「私は同様の溜息を弟から聞いた。
見捨てられる相手なら、溜息は付かない。
馬鹿だと知っていても、見捨てられないから皆、溜息を吐くんだ」

ギュンターは実父を見、中央護衛連隊長に成りたくない事情を、バラした代わりにライオネスに本心をバラされ、顔背けるディンダーデンを、見た。

「…見捨てる気は、無いのか?」

聞いた同時に、ラフィアンとディンダーデンは俯き、やはり深く長い溜息で、それに返した。




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