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 ところが、このあと急に、ハヤトはコースを変えてしまいます。
「今日は遠回りをさせられて、タイムも参考にならないし、そろそろもどればちょうどいいはずだよ」
 選んだ道は、急に暗い路地(ろじ)でした。おまけに舗装(ほそう)がつぎはぎで、何度もつまずきそうになりました。
「なんだよ。この道!」
 すると今度は右足が、「ベチャン」と水たまりを踏(ふ)んづけます。
「冷たっ! 一生この道走らないからな」
 そのあとも、ネコが目の前を飛び出してきたり、イヌの散歩とはちあわせしたり。
「ワンワンワン」
「わぁー」
「あらちょっと! ごめんなさい」
「はっはっすー、はっはっすー」
 たまらずため息をつきそうになり、あわてて呼吸を整えました。


 道を右や左に遠回りして、国道の、さっきわたった横断歩道へもどることが出来ました。信号を待つ間、足ぶみしながらなんとなく、まだいた人だかりをながめていたのです。
「ハヤト君だよね。二組の」
「ああっ〈はやしばらユイカ〉……」
 クラスが四組の、前からすごく気になる女子でした。部屋着(へやぎ)の上に綿入れ(わたいれ)を着て、髪(かみ)が少しぬれて見えました。ハヤトは、シャンプーの良い香(かお)りがしたような気がします。

「あの事故のせいよ。もう、がっかり」
 おいしいパンを売る店の、閉店時間がせまり、あわてて車で向かおうとしたのに、道が渋滞(じゅうたい)していて間に合わなかったことや、それで仕方なく、コンビニへ歩いて何か探しに行くことが、よほどくやしかったのだろう。初めて口をきくハヤトをつかまえ、聞かせていたのです。


「トレーニング? がんばってね」
「ああ。じゃあ」
 信号が青に変わり、ハヤトは、うしろ髪(がみ)を引かれる思いで走り出しました。

「はやしばらの家って、今来た道にあるのかな。またここを走れば会えるかも……よっしゃあ!」

 家の前までもどると、お父さんが外で待っていました。
「おそかったっしょ」
「はぁはぁ、スーパーの前で事故あってさ! それで」
 ハヤトはそう言うと、深くため息をつきました。しかしそれは、横断歩道で別れぎわ、のぞいた笑顔が忘れられずにいたからです。

「いやーまいった」      
            (終わり)


奥付



雨のち晴れた。


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著者 : しびよ
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