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栃木からの訪問者

 

大人の仲間入りとされる大きな節目である二十歳の誕生日をただの一日として過ごしてから数日後、かつて栃木で出会った"イズミ"から連絡が来た。

「 もしもぉ~し"小鳥"かぁ?」

「 あっ、おひさしぶりっす 」

「 おぉ、元気にしてっかぁ?」

「 はい、なんとか・・」

「 そっかぁ・・ あのよぉ~ 仕事でそっちに行くんだけど積み込みは明日の朝でさぁ、たまにはお前と酒でも飲もうかと思って電話したんだけど、今夜空いてっかぁ?」

「 はい、8時以降なら大丈夫っす 」

「 そっかぁ、そしたらそっち着いたら電話すっからよぉ、トラック止めるトコまで迎えに来てくれるか?」

「 はい、じゃっまた後で、失礼します、はい・・」
 
不発に終わった二十歳の誕生日を反動にして、浮き足立って迎えたその夜。

「 どぅも、おひさしぶりっす 」

「 おぉ、なんだお前、ずいぶんと良いもん食ってるみてぇだなぁ 」

「 へっ?そうっすか?」

「 おぉ、だいぶぽっちゃりしてんぞぉ 」

「 ははっ、すいません 」

"イズミ"と栃木で出会った頃は栄養が不足していた時で、その後、夏場の青果で再会した時も多少ウェイトを戻してはいたものの大量の汗を流した衰弱期だった。

それがこの所、"大蛇"宅での豪華な料理と夜な夜な詰め込む酒やら何やらで体重は98kgにまで増えていて、そんな"小鳥"を久々に見る"イズミ"にはその変化が真っ先に気になったのだろう。

普段着がスウェットやジャージになると不思議とデブ化が加速する事や、トラックの乗降にも息が切れる事、排便の量も回数も日に日に増える事、時折鏡の前で悩む事などを会話にしながら、

「 近くで飲みたい 」

という"イズミ"の意向に沿って山梨市に向かった"小鳥"は、知らないながらも酒場の雰囲気を探して車を走らせた。

すると、

「 あそこはどうだぁ?」

隣に座る"イズミ"が指差す方向に、

" スナック ゆりこ "

紫色のネオンサインが淋しく夜に浮いているのが見えた。

「 了解っす!」

扉を開けて店内に入る。

気だるい感じが漂うママと偶然遊びに来ていた様な真面目そうな女がカウンターに座っているだけで客らしき姿は無く、盛り上がりそうもない雰囲気ばかりが漂っている。

「 "イズミ"さん、此処で大丈夫っすかぁ?」

「 おぉ、俺は何処でもいいんだよ、まぁ飲むべぇ 」

二人は小さなボックス席に腰を下ろした。

すると真面目そうな女が酒を用意して"小鳥"の隣に座り、

( なんだコイツ・・)

悪気も無く空気を読めない人はどこにでもいるものである。

「 あのさぁ、こっちじゃなくて・・」

"イズミ"を不機嫌にさせてしまう事を恐れた"小鳥"が慌てて女の肩を叩いて移動を促す。

「 いや、いいよいいよ 」

しかし"イズミ"はそれを止め、結局女は"小鳥"の隣に落ち着いた。

「 名前は何て言うの?」

「 "ミミ"です 」

「 あぁ、そう・・」

やや気まずく始まった再会の宴。

「 カカシ(商運)で上手くやってんのかぁ?」

「 はい、何とか・・」

「 そっかぁ 」

・・・

最近の報告も尽きてしまうと場は静まり、

( やっぱりな・・)

会話を盛り上げる気配も無い"ミミ"を横にして、入る時に感じた嫌な予感がまんまと的中してしまった事に焦る"小鳥"は、

( 何かねぇか・・)

このまま盛り下がる事を回避する為に高速に思考を働かせていた。
 
 

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真似事

 

( そうだ!)

ここで思い出したのは、ケラケラ笑いながら場を明るくして、いつのまにかのスキンシップを成し遂げていた"キビヤマ"の姿。

( "イズミ"さんも喜んでくれるに違いない・・)

この配置を逆手に取ってあの日の"キビヤマ"を真似れば、今更の席替えよりも遥かに盛り上がる様に思えた。
 
「 あのさぁ、実は俺、女の子の歳がわかっちゃうんだよねぇ 」

「 えぇ~、本当ですかぁ?」

「 嘘だと思ってるでしょ?」

「 だって嘘っぽぃもん・・」

「 わははははぁ~、じゃぁ当てちゃってもいいけ?」

「 いいよ、言ってみて 」

いきなり摩り替わった話題に、注目はしているものの"イズミ"にはまだ笑顔が見えない。

( 何とか三人が盛り上がる方向へ・・)

「 それじゃぁさ、当てたら店が終わった後付き合ってよ 」

「 えっ?」

「 それくらい約束してもよくね? 当たったらの話だし 」

「 そうだよ、当たらなきゃいい話だべ?」

ここで"イズミ"が会話に加わり、

「 う、うん・・ わかった 」

二人の男に押されては、"ミミ"も受け入れざるを得なかったのだろう。

酒も程よく入った"小鳥"は普段よりも大胆な気分に任せ、

「 いいけぇ~、実はおっちゃんは乳首を触れば歳がわかっちまうんだ 」

「・・・」

固まる"ミミ"を見て"イズミ"が鼻で笑う。

あの日の"小鳥"がそうであった様に"イズミ"もある訳がないと思っているに違いない。

「 大丈夫大丈夫、ちょっと触ればすぐわかるから・・」

"小鳥"が隣に座る"ミミ"の肩に手を廻す。

その指先が上着の袂に延びた辺りで"ミミ"は両手でその手を押さえ付けた。

「 駄目け?」

「・・・」

「 ちょっとだからマジで・・」

嫌とは言わせられない緊張感が伝わったのかどうか、その手に絶対的な抵抗は無く、次の瞬間には"ミミ"の両手を潜り抜けた"小鳥"の指先は胸元へと飛び込んでいた。

"イズミ"の視界から隠れた世界で、"小鳥"の先端がブラジャーを捕える。

( あと少し・・)

そしてようやく辿り着いたふくらみの頂点で浮き輪の空気注入口の様な突起を、

" ちょんちょん "

すると、

「 むふん・・」

恥ずかしそうに目を細める"ミミ"。そしてその光景に釘付けになっている"イズミ"。

"小鳥"は両者を視界に捉えながら、

「 わかっつ! 26!」

その途端、

「 あのぉ、違うんですけど・・」

"ミミ"は目をぱっちりと開き、寸前の表情が嘘の様な正気を見せた。

「・・・」

とその時、

「 ぎゃはははぁ~」

"イズミ"は大きな笑い声を上げていた。

酔いの当てずっぽうは見事に外れたが、スキンシップの効力は凄まじく、その後の三人はだいぶ打ち解けてしばらく盛り上がり、そして明日を気にした"イズミ"に従っての去り際、

「 ほいじゃぁ、外で待ってるから終わったら電話してぇ 」

"小鳥"は歳を言い外しておきながら、約束を果たして貰おうとするボケをかまして店を出た。

二人になった車の中では、

「 明日は早いからよ・・」

トラックで寝ると言う"イズミ"に、

「 今日はお誘いありがとうございました、マジで嬉しかったです、けど変な酒になってすみません 」

"小鳥"は改まってお礼を伝えた。

「 楽しかったよ、お前も元気そうで安心したし、まぁ色々あんだろうけど、がんばれなぁ・・」

「 はい 」

「 ところで最近"もぐら"から連絡来てるかぁ?」

「 いや、最近はまったく無いっすね 」

「 そっかぁ・・」

「 何かあったすか?」

「 いや、別になんもねぇけどな・・」

その時、"小鳥"の携帯が音を立てた。

「 ちっとすみません 」

急ぎ早に携帯を耳に当てると、

「 もしもし、今終わったけど・・」

まさかの"ミミ"である。

「 あらっ、ちっと待って・・」

携帯を太ももに伏せて、

「 "イズミ"さん・・」

「 どうした?」

「 さっきの女っす 」

期待せずに書き残して来た携帯番号のメモがまさかのご利益となり、

「 戻れ~~」

「 はい!」「 もしもし? すぐに迎えに行くから待ってて 」

終わりそうだった夜が吹き返した。
 
 

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奥付


 
  著者 : k.kaminari
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