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なぜこんなことに気付かなかったのか。

駅前にナンパに繰り出すも
3時間何も出来ずにウロウロしていた鈴木。

鈴木の心は折れ始めていた。


いい加減、ティッシュ配りの
お兄さんに気づかれているかもしれない。

携帯ショップの呼び込みの前も
多分5,6回通りすぎた。


「ドコモの新機種でましたー」

とか叫ぶ合間にこちらを見、
ニヤニヤする始末・・


鈴木は打ちひしがれた。



ただの営業スマイルだけどね。



ありとあらゆるネガティブな
感情が頭のなかを占め、

鈴木はついに心が折れた。



「もういいや、帰ろー・・・」



自宅まで35分の自転車の道のり。


途中まで、自分がどうやって
自転車をこいできたのか

それすらも覚えていないような
放心状態だった。


「ああ、なんで俺は生まれてきたのかなー」

とか意味不明なことまで考え始めた。


そしてイライラしてきた。

ちっくしょー、あの呼び込み野郎
ぜってぇお前も出来ねぇだろ!

ティッシュ野郎!
お前とはハードルが違うんじゃ!!



くそー、あいつらさえいなければ・・


完全なる被害妄想である。



だが、この被害妄想が
鈴木にヒントを与えた。


「ん?」


「あいつらさえいなければ?」



鈴木は、ひらめいた。



「あ!!」



「そうだ!!」






「知らない街にいけばいいんじゃね!?」






なぜこんなことに気付かなかったのか。



連絡網の恐怖を体感した鈴木は
こんな地元でナンパなんて出来るわけがない。


結局のところ
一番大きなブレーキは


「知り合いがいるかもしれない」

「知り合いに見られているかもしれない」

「声をかけた子が同じ高校かもしれない」


ということだったのだ。



鈴木はすぐさま、
最寄り駅から5,6個離れた
大きめの駅を思い浮かべた。


あそこしかねぇ!!!



なぜか、今なら余裕で
ナンパ出来そうな気がしてきた。



鈴木はさっそく次の休日に
狙いを定めた。


鈴木は横から話しかけた!!こちらを見る女子!!!

最寄り駅から5,6個
離れた駅に来た鈴木。


「よし、ここなら
知り合いもいないだろ」

以前とは驚くほど違い、
余裕でナンパが出来そうな気がした。


ネット上で、
匿名だと大胆な発言ができちゃう、
あの感じに似ていた。


「さっそく行くか」


自分を熟練のナンパ師だと思い込み、
そういう奴になりきって歩いた。

はたから見たら怪しい奴に見えただろう。



よし、あの子だ!!


鈴木は気合を入れた



駅からちょっと離れた歩道。
人通りは少ない。


信号待ちをしているその子に
後ろから、すーっと近づいていく鈴木。



ドクンドクンドクンドクン



心音がバカみたいにでかくなる。
だが、鈴木は止まらなかった。



ここまで来たら
もう、まわりに誰がいようが、
声をかけるのみ!!




(うおおおおいっけぇええええええ)





「ね、ねぇ」





鈴木は横から話しかけた!!





こちらを見る女子!!!





そして、





鈴木は言った!!!!













「あの、お茶・・お茶・・」









言葉がそれ以上出てこなかった!!!!!









女の子「(・・?」




苦笑いをし、軽く頭を下げ
前へと歩く女子。




鈴木はそれ以上足が動かなかった。




ドキドキドキドキドキドキドキドキ
ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・・・・



10分くらい心臓が
ドキドキしていた。



頭のてっぺんからつま先まで
血液がバカみたいに流れているのを
前身で感じた。



そして少し落ち着いた鈴木は思った。






「あんまりやな顔されなかった!!!!」






鈴木にとっては衝撃的だった。


いきなり横に来た
意味不明な奴が「お茶・・お茶・・」
とか言っているのに、

ごめんなさいね
って感じで頭を下げて歩いて行った。




鈴木は思った。



やっぱ顔の印象だよ!!!!




鈴木は

行ける!多分行ける!!
と思った。


なにが行けるのかはよくわかってない。

ナンパして、どうなれば
目的達成なのかもよくわかってない。


女の子に声をかけるだけが
鈴木のその日のミッションだった。


その日鈴木は
ものすごい満足感を手にした。



あとで考えれば、

声をかけた女の子が
単に人のいい子だっただけかもしれない。


でも、


今までの顔でこんなことは一度も無かった。


この出来事が

鈴木を今までと違う人物に変えていった。




初期設定で「下の下」

第一印象が悪ければ

その後何をしてもあまり評価は変わらない。


たとえ普段はかなり紳士的な
人間だったとしても


初対面で酔っ払いまくっており

「ぐへぇぇーお姉ちゃん、グヘヘぇぇ」

とかひたすら言ってれば、

その後いくら紳士的な態度で
いいことをしようが、

その人物の評価は滅多に覆されない。


これを鈴木は高校生の頃から
感じていた。


顔がね、もう

「ぐへぇぇ」

とか言いそうな感じだったから。


もう何をしようとグヘヘ顔の
印象は抜けないんです。



そのため、
アイプチを付けて外見を変えても、

すでに以前の鈴木を知っている人間の
反応は変わらないことに気づいていた。



だが

これは逆にチャンスでもあると思った。



すでに以前の鈴木を知っている人物は、

鈴木がたとえ、整形しまくって
キムタク的な顔になろうとも、

何も思わないのだ。


つまり、

初期設定で「下の下」と思われていれば
滅多なことでは、評価は上がらない。


そのため逆を言えば、


アイプチ付けて登校しようが、

「また鈴木がテンパって
なんかやってる。ー┐(´∀`)┌ヤレヤレ」

で、済むのだ。


むしろ、ほとんどの人物が
気にもとめていない。


これはチャンスだった。




つまり、鈴木は

高校生の間は、
定着した平民以下という
ポジションに甘んじ、

二重を定着させることのみに費やそうと
考えた。


そして、


卒業後、素の状態で二重を作り
新しいキャラで過ごそうと考えたのだ。



だが、


鈴木は欲張りである。



定着させてる途中の、高校生の間でも、

外見を変えたことの反応を見たくて
ウズウズしていたのだ。




ナンパor出会い系サイト・・
鈴木の頭を2つのキーワードがよぎった。




「あれ?友だちの紹介とかもあるんじゃない?」




と思うかもしれない。










そこは








お察しください








鈴木は一番手っ取り早そうな
出会い系サイトに目をつけた。



今度の土曜、会おうよ

アイプチを付け、
外見を変えた鈴木は

出会い系サイトを使ってみようと思った。


なにがどうなればOKなのか?

そんなこともよくわかっておらず、

とりあえずプロフィールを作り、
同じ県内の女の子にメッセージを送る

そんな感じを2,3やってみた。



すると、3人くらいメッセージを
送った時点で、

変なメールが来た。


詳しくは覚えていないが、

要は

「シャチョサーン、シャチョサーン
お金頂戴よ~」


みたいな感じだった。


スルーした。


そして、5人くらいにメッセージを
送った時に

いい感じに明るそうな
女子から返信が来た。


「○○市?2個となりだ!結構近い!」


さっそくメールを返す鈴木。


結局メールは5,6日続き、
鈴木は思った。


やっぱ、お互い顔知らないのって
俺にとってはいいことだ。

顔がわからない状態なら
全然そこら辺のやつと同じ
土俵にたてるじゃねーか。


そう。


メールは第一印象が文章。

顔は関係ないのだ。


もしこの人物に、

鈴木の初期の顔で、

「実際に会った後、メール交換」

という流れなら

間違いなく、メールなど
続かなかっただろう。



学校でも、バイトの休憩中も、
とにかくメールを交換しまくり


ついに、



今度の土曜、会おうよ



みたいなメールが来た。



鈴木は焦った。



「まじですか!!!!」



「何を話せばいいの!?」

「何を着ていけばいいの!?」

「えっと、えっと・・とりあえず

その日は3,4時間だったら時間作れるよ。送信・・」



「ふぅ・・」



鈴木にとって最大の試練が
襲いかかる。



行き当たりばったりで当日を迎えた鈴木

出会い系サイトで
メールをしていた女子から

「今度の土曜、会おうよ」

というメールを貰った鈴木。


鈴木はナンパした時以上に
ドキドキを抑えきれずにいた。

なぜなら、

どこかのお店とかに入って、
二人きりで1,2時間話すことになる。


「とりあえず女の子に声をかければOK」

というものとは
まったく別次元のハードルに思えた。


「何を話せばいいんだああああ!!??」


鈴木は脳内でいろんな妄想をし、
勝手に打ちひしがれていた。



「あっ、えっと、あ、あ、あのー」


「キモ、帰る」


うわあああああああ



「あのさ、えっと、あの、その・・」


「あんた何人?」


うわあああああああ



「えっと、えーと。え、え、」


「バルス」


うわあああああああ




想像はやめた方がいい。鈴木は思った。

身が持たなくなるからだ。



行動を起こさないよりは
何倍もマシなのだが

鈴木はいつも行き当たりばったりだった。


今回もとりあえず
思いつきで始めた出会い系サイト。


当然、事前の対策も無いし
情報収集も一切行っていない。



結局、

何の対策も立てることができないまま
当日を迎えた鈴木。



待ち合わせの駅に向かっている
電車の中で






鈴木は下痢と戦っていた。





うわあああああああ




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