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「すげぇ!俺の目、キムタクみたい!!!!」

アイプチを購入しようとするも、

あえなく女子高生に撃退された鈴木。


こうなっては仕方ない。
おばちゃんタイムを狙うしかない。


おばちゃんタイムとは、

コンビニもスーパーもドラッグストアも
レジがだいたいおばちゃん一色になる

そんな、平日朝から昼過ぎまでの
おばちゃんパラダイスの事を指す。

たまにフリーターが潜んでいるので
注意が必要。


おばちゃんタイムを制し、

先日とは打って変わって
あっけなくアイプチを
手に入れることが出来た鈴木。


やった!
ついに手に入れたぞッッッ!!!


家に帰り、まぶたに
アイプチを塗りたくる鈴木。



「すげぇ!俺の目、キムタクみたい!!!!」



教えてもらった使い方を
完全そっちのけでひたすら
目に塗りたくった。


まぶたを極限まで奥の方に押し込み、
その上からアイプチで塗り固める

「一回、どれだけ大きくなるのか見てみたい」

という衝動に駆られ、アイプチを
手にした人物が一度はやる行為だ。



普通の人なら、ここで


「これは明らかに不自然だな、
素の状態でこの大きさはまず無理」

と、自分の目にあった二重ラインを
見つける段階に入る。



だが鈴木はそんな単純なことにも気づかず、

そのうちこの大きさで定着
したらいいな、と思った。



次の日にアイプチテクニシャンである
クラスメイトに

この感動と、
自分の目がメッチャ大きくなるかもしれない
未来のワクワクを話した。



そしたら

「ありえない」

と一蹴された。



鈴木は打ちひしがれた。




リベンジしてやる・・!!

目にアイプチを塗りたくり、
まぶたをとにかく押し込みまくる。

この方法ではダメなことを
なんとか理解した鈴木。

とりあえず目が自然に開くラインを
見据えてアイプチを付けることにした。


「うーん、これなら自然か??」


今まで一重だった人間が

二重っぽい自分の目を見て
自然かどうか?を判断するのは難しい。

ただ、

アイプチ塗りたくって作った
異常な大きさの二重よりはだいぶマシに見えた。



「よし・・・


リベンジしてやる!!」



以前友人に無理やりやらされたナンパ。

その時は女子高生2人組に


「はい?」
「何こいつ?」


という対応をされた鈴木。



あの時の記憶を早く脳内から
消し去って上書きしてやりたい。




頭の片隅でずっとそのことを
考えていた鈴木は、

早くもリベンジしようと企んだのだ。



アイプチつければ、とりあえず
はたから見た顔の雰囲気はすぐ変わる。

その状態でどうなるか?
試したくて仕方なかったのだ。



休日、駅前へと自転車を走らせる鈴木。



ドクンドクンドクンドクン・・・


鈴木の心臓は
以前ヤンキーに絡まれた時以上に
心拍数が上がっていた。


ちなみにその時のヤンキー


ヤンキーA「どうする?こいつらやっちまう!?」

ヤンキーB「え?ど、どっちでもいいよ」


鈴木(どっちでもいいんかい!!)(ドキドキ・・)


片方は「クローズ」に出てきそうな
犯人顔の大男だったが、

片方がヘタレで助かったのだ。


それにしても


サイドメニューにポテトでもつけとく?


みたいなノリで、人を殴るかどうか
決めるのはやめて欲しい。



そんなことがあった現場を
通り過ぎながら


鈴木は駅前の駐車場へと自転車を止め

人通りの多いメインストリートへ
歩いて行くのだった。


インテリ型モンスター

駅前のメインストリートに
到着した鈴木。


毎週歩いている慣れた道が
いつもとは全く違う景色に見える。

何故か通る人、通る人全てが
自分の一挙一動を観察するために
歩いているようにすら、思える。


そして鈴木は思った。



ナンパ師、ハート超強ぇぇぇぇぇ!!



ナンパ師達は一人残らず
こんなドキドキを乗り越えていってんの!?


ナンパ師に尊敬の念すら覚えた。


道を歩いているうち、

鈴木は吐きそうになった。
頭もふらふらしてきた。


「ぐぅぅ・・いざやるとなると
こんなに緊張するもんなのか・・」


そしてつかの間


頭の中で家に帰ってだらだらしている
自分の姿がイメージされ始めた。


「マズイマズイマズイマズイ」


ここで家に帰ったら
この先、一生コソコソ生きてく
ハメになるよ!!!

自分に言い聞かせた。



だが、辺りを見回すと
モンスターが街を闊歩しているようにしか
見えなかった。


どいつもこいつも

ナンパ野郎が玉砕するところを観察し、
それを何よりの糧として生きる
インテリ型モンスターにしか見えなくなってきた。


そうそういるわけないのに

「知り合いがいるかもしれない・・!!」

とかも思い始めてきた。


知り合いに見られる

→例の連絡網でクラス中に広まる

→鈴木の評価がさらに落ちる



最悪のパターンが延々と
脳内で再生され始めていた。


そして

























3時間が過ぎた


















鈴木はまだ


「絶対やらなきゃ!!」

と「メッチャ怖ぇぇぇ」


を繰り返していた。




なぜこんなことに気付かなかったのか。

駅前にナンパに繰り出すも
3時間何も出来ずにウロウロしていた鈴木。

鈴木の心は折れ始めていた。


いい加減、ティッシュ配りの
お兄さんに気づかれているかもしれない。

携帯ショップの呼び込みの前も
多分5,6回通りすぎた。


「ドコモの新機種でましたー」

とか叫ぶ合間にこちらを見、
ニヤニヤする始末・・


鈴木は打ちひしがれた。



ただの営業スマイルだけどね。



ありとあらゆるネガティブな
感情が頭のなかを占め、

鈴木はついに心が折れた。



「もういいや、帰ろー・・・」



自宅まで35分の自転車の道のり。


途中まで、自分がどうやって
自転車をこいできたのか

それすらも覚えていないような
放心状態だった。


「ああ、なんで俺は生まれてきたのかなー」

とか意味不明なことまで考え始めた。


そしてイライラしてきた。

ちっくしょー、あの呼び込み野郎
ぜってぇお前も出来ねぇだろ!

ティッシュ野郎!
お前とはハードルが違うんじゃ!!



くそー、あいつらさえいなければ・・


完全なる被害妄想である。



だが、この被害妄想が
鈴木にヒントを与えた。


「ん?」


「あいつらさえいなければ?」



鈴木は、ひらめいた。



「あ!!」



「そうだ!!」






「知らない街にいけばいいんじゃね!?」






なぜこんなことに気付かなかったのか。



連絡網の恐怖を体感した鈴木は
こんな地元でナンパなんて出来るわけがない。


結局のところ
一番大きなブレーキは


「知り合いがいるかもしれない」

「知り合いに見られているかもしれない」

「声をかけた子が同じ高校かもしれない」


ということだったのだ。



鈴木はすぐさま、
最寄り駅から5,6個離れた
大きめの駅を思い浮かべた。


あそこしかねぇ!!!



なぜか、今なら余裕で
ナンパ出来そうな気がしてきた。



鈴木はさっそく次の休日に
狙いを定めた。


鈴木は横から話しかけた!!こちらを見る女子!!!

最寄り駅から5,6個
離れた駅に来た鈴木。


「よし、ここなら
知り合いもいないだろ」

以前とは驚くほど違い、
余裕でナンパが出来そうな気がした。


ネット上で、
匿名だと大胆な発言ができちゃう、
あの感じに似ていた。


「さっそく行くか」


自分を熟練のナンパ師だと思い込み、
そういう奴になりきって歩いた。

はたから見たら怪しい奴に見えただろう。



よし、あの子だ!!


鈴木は気合を入れた



駅からちょっと離れた歩道。
人通りは少ない。


信号待ちをしているその子に
後ろから、すーっと近づいていく鈴木。



ドクンドクンドクンドクン



心音がバカみたいにでかくなる。
だが、鈴木は止まらなかった。



ここまで来たら
もう、まわりに誰がいようが、
声をかけるのみ!!




(うおおおおいっけぇええええええ)





「ね、ねぇ」





鈴木は横から話しかけた!!





こちらを見る女子!!!





そして、





鈴木は言った!!!!













「あの、お茶・・お茶・・」









言葉がそれ以上出てこなかった!!!!!









女の子「(・・?」




苦笑いをし、軽く頭を下げ
前へと歩く女子。




鈴木はそれ以上足が動かなかった。




ドキドキドキドキドキドキドキドキ
ドキドキドキドキドキドキドキドキ・・・・・・



10分くらい心臓が
ドキドキしていた。



頭のてっぺんからつま先まで
血液がバカみたいに流れているのを
前身で感じた。



そして少し落ち着いた鈴木は思った。






「あんまりやな顔されなかった!!!!」






鈴木にとっては衝撃的だった。


いきなり横に来た
意味不明な奴が「お茶・・お茶・・」
とか言っているのに、

ごめんなさいね
って感じで頭を下げて歩いて行った。




鈴木は思った。



やっぱ顔の印象だよ!!!!




鈴木は

行ける!多分行ける!!
と思った。


なにが行けるのかはよくわかってない。

ナンパして、どうなれば
目的達成なのかもよくわかってない。


女の子に声をかけるだけが
鈴木のその日のミッションだった。


その日鈴木は
ものすごい満足感を手にした。



あとで考えれば、

声をかけた女の子が
単に人のいい子だっただけかもしれない。


でも、


今までの顔でこんなことは一度も無かった。


この出来事が

鈴木を今までと違う人物に変えていった。





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