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霹靂、残響

79. 霹靂、残響


 アンコールを受けての再入場。だが、オープニングと違って、これといった設定は考えてなかったので、散漫な入り方にならざるを得ない。何となく笑いも起きているようだが、至って温か。そして優しく大きな拍手が包む。
 ステージ挨拶に立つのは勿論この女性(ひと)
 「皆さん、ほんとにありがとうございます。こういうこともあろうかとちゃんと曲の方、用意してますので、ご安心を...」
 一つ年をとったことで、茶目っ気も些か控えめに。それでも古くから櫻を知る人物らを中心に小笑いは起こる。そして話が進むにつれ、その笑いは客席全体へ。カラオケ会でのエピソード、ASSEMBLYの名の由来、重低音志向な理由など、話しようによっちゃ、どれもウケそうなものばかり。本日の主役である以上、このまま延々とスピーチしてもらっても構わないのだが、旅立つ人をいつまでも引き止めていく訳にもいかない。話は途中から一転する。
 「さて、流域サックス奏者の南実さんですが、良き現場指導者であり、掃部先生をも唸らせる実力派研究者でもあります。この程、ご研究の成果が認められて留学されることになり...」
 配置に付いてリラックスしていた六人はこれを聞いて一斉に、
 「ナヌ?」
 空はまだまだ青いので、その名の通り、青天の霹靂(へきれき)に遭ったような状態に陥ることになる。実際に雷でも落ちてきたら、それは嵐を呼ぶ誰かさんのせい? だが、その陽気なルフロンさん、すでに髪にボサボサ観が戻っている。「ポケビ」ではしゃいだせいもあろうが、今受けた衝撃がそのまま髪を走った、ということのようである。

 「中盤でお聴きいただいた『晩夏に捧ぐ』は静かな想い、今からお届けする曲はその逆、と言いますか、前に出る気持ちを書いたものです。実はどちらも南実さんにちょっと関わりがありまして。ネ?」
 留学渡航の件は今明かされたが、この想いにまつわる話はまだ三人の内緒事項。櫻の振りに千歳はドキリとなるも、「という訳で、彼女への感謝と歓送の気持ちを込めて。『届けたい・・・』聴いてください」
 胸をなで下ろしつつ、そのまとめに感服するばかり。

 練習通りということであれば、ドラムがカウントを打って、元気良く始めるパターンになるのだが、半ば放心状態のメンバーの動きは鈍く、しばし間が空くことになる。が、自身の発言でこうなることを見越していた櫻は、ピアノソロで前奏を弾き始めた。時に強く時に柔らかいその旋律に、八人はついうっとり。そして櫻の手が止まり、残響が消え始めた時、思い出したようにカウントが打たれる。ここからはいつも通り。歌姫の声はいつになくよく伸びる。詞に込めた想いと歌唱が今まさに同調、そんな感じである。
 南実にもそれはよく届いているようで、思いの丈をサックスに吹き込んでいるようだ。その演奏、爽快にして壮快。勢いそのままにエンディングに突入するも、最後は蒼葉がウィンドベルをサラリ。動と静を織り交ぜた名曲がこうして完成するのであった。

 「じゃ、南実さんこれ」
 「千兄さん...」
 ガーベラ、スプレーマム、ミスカンサスといったところは市販品だが、それにさりげなく地場のスミレとオオジシバリが交ぜてあるところが憎い。
 舞台袖で、花束贈呈の様子を眺めていたシスターズは、
こ「あれぇ、櫻さんに渡すんじゃ?」
は「そういうことなら、コマツヨイグサにするんだった?」
こ「ってまだ咲いてないし」
 てな具合。少々面食らうも、ミッションを果たし、それが好い形で完結したことが何より嬉しかった。

(参考情報→地場の花々

 「南実さんに大きな拍手を」
 と櫻が呼びかけている間、南実の手をつい握ってしまうプレゼンター氏である。が、思いがけない彼女の握力にタジタジ。これじゃ拍手も握手もあったものではない。
 櫻からマイクを受け取ると、御礼の言葉もそこそこに曲紹介。
 「テーマは自然の恩返し、というか微笑み返しです」
 目に手を当てながら、南実は千歳にマイクを渡す。

 泣いてちゃいけない。ラストは『Smileful』である。メンバー六人もどことなく俯き加減ではあったが、千歳の「1,2,3…」で目が覚める。俄かにスマイル、南実もえくぼを作る。これは曲の為せる業なんだろう。
 永代はいつもの如く泣いたり笑ったりだったが、今は一緒に口ずさんでいる。「Smilefulぅ!」 どこでどう話が伝わったのか不思議だが、自分の思いつき単語が曲名になっているのがよほど嬉しかったようで、終始ニコニコ。先生の教え子諸君も思わず頬が緩む。客席にスマイルが広がっているのがステージからもわかるので、当曲のシンガーソングライターも至ってにこやか。Wonderful Beautiful Smilefulの順番をつい間違えてしまうが、そのまま笑って誤魔化してしまうのであった。
 「どうも、ありがとう! またお会いしましょう」とのセリフともども演奏は終了。大歓声残る中、『Pocket Beach』ボサノヴァver.が流れる。メンバーはASSEMBLY+Gの順番で並んでステージ前方へ。G氏は、バンドマネージャーを見つけると、その列に加える。そして一礼。
 「こまっちゃーん」に混じって、「おふみさーん!」と聞こえたのはこの時。文花のファンと思しき一行は、何とかつての職場の同僚連中だった。南実の一件で幾許かの動揺はあったが、これでさらに動揺加速? いやいや、事務局長はちゃっかり法人紹介用のリーフレットを手にしていて、それを振って堂々と応えている。が、そのままマイクを渡すと違う展開になってしまう。最後はしっかりバンマスに一言いただくのが順当だろう。
 「スタッフの皆さん、ご協賛いただいた各社・各位の皆様、そしてご来場いただいた皆々様、ありがとうございましたっ!」
 次回のステージは未定だが、この調子だと問合せは必至。スクリーンには関係先のホームページアドレスなどが映っているが、それだけじゃ心許(こころもと)ない気もする。

 知己どうしで雑談する場面もなくはなかったが、メンバーの気はそぞろ。いつしか、higata@メンバーの集会のような格好になっていた。
 「練習とか本番にね、支障が出ちゃマズイと思って」
 伏せていたのには然るべき理由がある。誰もそれを責めたりはしない。女性陣はただ涙目。男性陣も黙々。南実を囲んで静かな時間が流れている。
さ「そういう訳で、三人だけの話ってことにしてました。皆さん、ゴメン」
ま「それはそうと、歓送会とか、記念品贈呈とか、そういうのは?」
み「この後、発っちゃうから」
 ここで再び霹靂状態になったのは言うに及ばず。
 「記念品と言えるかどうかだけど、ご依頼の写真は持ってきたから...」
 それは蘇我駅で撮ったポートレート。ハガキサイズに伸ばしてあってご丁寧に額入りである。千歳はそれを取り出すと、櫻に託す。
 「ありがと、櫻姉、千兄」
 固い握手を交わす二人。櫻の顔が強(こわ)張っているのは言わずもがな、握力の差を体感したため、である。そのまま、メンバーおよび関係者、シスターズとも。即ち、握手会である。
 「あ、それでね、これを初音さんに」
 「え、ウソ?」
 今度はサックスの受け渡し式。
 「きっと上達すると思う」
 「大事にします。で、とにかく練習して、バンドメンバーに...」
 両親からの入学祝い品がこれで変更となった。楽器現物でなければ、教材、いや教室代か。リードは自分で買えばいい。ともあれ、新メンバーは満場一致で迎え入れられることになる。
ま「MをHにとか、この際、なしネ」
は「二代目南実とか。それとも、バンド活動中はMをいただいて舞恵にしちゃおっかな」
ご「ま、練習が先、かな」

ち「そういや出国する時に花束ってもしかして...」
さ「あ、逆外来?」
み「はぁ、それもそうか。じゃあ...」
 石島姉妹はキョトンとしているが、先の花束は櫻に渡る。
 「大事な発表、聞きたかったけど、これはお誕生日祝いってことで」
 「ハハ、ありがとう」

こ「なぁんだ、やっぱ櫻さん用?」
は「これぞリユース」
 シスターズ納得の帰結である。

 潮時を弁えている研究員は、清や緑との挨拶も至って軽め。名残惜しそうではあったが、最後は努めて快活。
 「現地で新しいアドレス取ったら、皆さんにお知らせします。higata@は継続ってことで」
 少しばかり風が出てきた。舞う花弁が増える中、南実は小走りで駅方面に向かった。これで夕日が照らす時間だったら、また目に何かが沁みることになるが、これ以上の演出は無用。彼女の後姿は常に絵になるのだった。

 しんみりした感じ漂う中だが、空気を変えるのは難しいことではない。
 「ところでルフロンさん、またいつものボサボサ調なんですけどぉ?」
 「おっかしいなぁ、ストレートにしたはずなんに...」
 「やっぱ、その方がアーティストぽくていいと思うよ。電撃を表現した感じ...」 一同の笑いとともに、八クンはバチバチ。その衝撃は電気のそれ以上である。

漂着モノがたり

80. 漂着モノがたり


 展示を見学する客もそこそこいたが、その姿がなくなり、ステージともども片付けが済んだのは十七時過ぎ。その頃までには金森氏、寿(ひさし)ご三代、石島夫妻が、そして辰巳と太平の長身コンビも程なくご退場となった。お相手がいなくなり、つまらないことこの上ない文花ではあるが、おクルマゆえ呑みたくても呑めない。このやるせなさ、どう晴らしたらいいものか。
 河原桜の一隅に祝いの席が設けられるも、宴席世話係のご機嫌があまりよろしくないので、静かなスタートとなる。ともあれ、桜色舞うころ、桜の木の下で、である。櫻さんにとって、絶好のシチュエーションであることに違いない。
 ステージのふりかえりは追い追いするとして、まずは、
 「誕生日おめでとう!」
 だろう。アコースティック系楽器が手元にあれば話は変わってくるが、バースデイソングはやはり大合唱に限る。
 「皆さん、ありがとう...」
 通常ならこのまま一言頂戴するところだが、事情を知る一団は、発表云々を待つことにして、ひとまずパス。さっさと花見モードに切り替えてしまうのであった。
 さすがにケーキは用意できなかったものの、永代(ひさよ)が持ってきた手土産がある。クリームたっぷり系の逸品、櫻が目を輝かさない訳がない。と、おば様も自家製の品とやらを恭しく献上する。
 「やっぱり、桜と来ればこれでしょう」
 「桜餅? うへぇ」
 このリアクションに一番驚いたのは、緑ではなく彼氏。好き嫌い情報は云わば基本である。まだまだ知らないことがあった、というのが先ずショックだったようだ。
 「あれ、ダメだったんだっけ?」
 「へへ、葉っぱがちょっと...」
 コマツナ、千歳飴、桜餅... 誰しも苦手食品というのがあるものである。葉を取り除いてから、静々と頬張る櫻を見ながら、千歳は今、妙な感慨に耽っている。

 スーパーからの差し入れ飲料にはアルコール類も含まれる。このまま飲み進むと、発表がいい加減になってしまう虞があるので、そろそろ始めるのが良さそうだ。文花は気を取り直し、毎度のお節介を打つ。
 「では、宴もたけなわではございますが、ちょっとしたセレモニーをこの辺で。ね、隅田さん?」
 近くではイベント会社関係者の一部が打上げしている程度。花が減った今、辺りは至って静か。そこいらで遊んでいる六月と小梅の声が時々聞こえる程度である。
 千歳は普段よりちょっと良さげなバッグを持って来ていて、ガサゴソ。で、まず出てきたのは金色の仔豚?
 「あ、あれって」
 クリスマス専門店で買ってもらったブタコインである。櫻は白いのを付けてニッコリ。
 「ある時、このブタさんと目が合ってピンと来ました。ブタに何とかって言いますが、いや、あの女性(ひと)にはきっと似合うだろうなぁってね。それでご本人の希望を採り入れつつ、本場の人に聞いて調達したのがこちら」
 それは白色と淡い桜色の二色の真珠をつないだ首飾り。
 「そのブタさんから、いえ、僕からのプレゼント。改めまして、おめでとう!」
 「謹んでお受けします」
 「?」
 「あ、間違えた。ありがたく頂戴、します」
 彼と彼女でセリフがチグハグ。顔を見ながら思わず吹き出すも、櫻の方はちょっと様子がおかしい。微笑を湛えたその頬を伝うは真珠ほどの大粒の涙。西日が反射して、一瞬煌く。その輝きは真珠の如く、である。
ま「ハハ、こりゃ食品トレイ、いやいやバケツが要るワ」
さ「いえ、目にゴミが、うぅ」
あ「じゃ早速、拾って、調べなきゃ」
さ「もうっ! 蒼葉までぇ」
は「ホラホラ、櫻姉さん、スマイル、スマイル」
 こういう時、彼氏には相応の対処が求められる訳だが、ハンカチ等の代わりに予備の軍手を出しちゃう辺りが、千両役者たる所以である。
 「千ちゃん、ここは笑いをとる場面じゃないと思うけど」
 弥生から突っ込まれるのならわかるが、業平にこう云われちゃ詮方(せんかた)なしである。そうこうしてたら、涙も干(かわ)いたようで、ようやく先の続きに戻る。

 機嫌の良し悪しも何もない。文花はついもらい泣きしていたが、ここで我に返る。
 「じゃ、櫻さん、一言どーぞ」
 実はこれが終わらないと緊張から解放されることはない。今にして思えば、ステージなんて楽々。
 「え、えー...」
 それにしても、この緊張感の大きさはいったい? 櫻にしては珍しく言葉が進まない。と、一陣の風、そして、桜吹雪が彼女を後押しする。
 「桜はこの通り散ってまいりましたが、私達は今が満開...」
 次の言葉は、さすがに誰も予想していなかった。
 「結婚します!」
 千歳はピピと来るものがあったが、時すでに遅し。目が真珠、いや点になっている。
あ「あれ? プロポーズは?」
さ「これぞ千歳流プロセス短縮、なんちゃって」
 夕日が当たっているせいか、単に紅潮しているためかはわからないが、櫻は赤面しつつも、千歳の顔を見遣る。
ち「言いそびれちゃったかも知れないけど、異存ありません。ふつつか者ですが、よろしくお願いします」
さ「誕生日祝い=プロポーズ代わり、なんですよ、ね? まぁ、私からも千歳さんにはまた改めて。とびきりいいものを」
 満場の拍手は無論、祝賀の念を込めてのものではあるが、千歳にとってはまた違った聴こえ方が重なる。それは一連の恋愛プロセスの帰着点で、櫻が一発逆転をやってのけたことへの喝采...。
 万々歳ではあるが、ただ苦笑いするしかない千歳である。この際、千歳でも万歳でも何でもよかろう。
き「するってぇと、千住の桜が隅田の桜になる訳かい。風流だねぇ」
さ「いえ、表向きは別姓のままで、と」
 「千住千歳説は?」 弥生がニコニコしながら尋ねると、
 「千×千かぁ。チョーおめでたい感じすっけど、名前書く度にいろいろ言われそう」 舞恵が冷笑気味に答える。
 そのうち、メガだギガだと違う話になってきたが、詩人は努めて冷静。
八「漂流する恋、漂着する愛~」
ひ「漂着ラブかぁ。それで新作とか?」
さ「漂着? いえいえ、これからですヨ」
ふ「じゃ二人で漂流でもする気?」
さ「人生、川あり干潟あり、なんですの。漂流と漂着の繰り返し、かな。ね、千歳さん♪」
 いつもの談議かと思いきや、さりげなく名言めいたものが織り込んである。正にこれから、という文花にとっては、深く重いフレーズ。言葉に詰まるのも無理はない。
 「どったの矢ノ倉? クリームプリンならまだあるわよ」
 「エ? くりくり? ルフロンがどうかした?」
 「あぁ、そっか。気が利きませんで、失礼。今日はアタシが運転したげる。パァっとやんなさいな」
 「そうそう、ツマミもサカナもあるからさ。おふみさん、呑もうぜ」
 「へ? 魚?」
 「魚類が良けりゃ、今から釣ってくっけど」
 冗談だか本気だかよくわからないが、センセのおかげで段々と宴席らしくはなってきた。

ひ「ラブストーリーも興味深いけど、こうして皆さんが集まったのって、きれいにしたから、なのか、逆に集まったからキレイになったのか...」
ふ「その両方じゃないの?」
ひ「どっちにしても、BeautifulもWonderfulも、あとSmilefulも、みんなあるってことよね」
は「小梅も言ってましたけど、喜怒哀楽の舞台なんじゃないかって。いろんな表情に出会えるって意味でもその通りだなぁって思います」
ふ「喜怒哀楽ねぇ。でもそれって堀之内のこと?」
ひ「ま、できるだけ喜と楽で行きたいけど、マップ作る時はやっぱいろいろじゃないとね」
さ「学校周辺でやる時とか、声かけてくださいね」
ひ「えぇ、卒業生にもゲスト講師として来てもらうつもりだし。総合の授業、今期は楽しくなりそう。これもここに来たおかげで、かな」

八「おかげってことじゃ、自分なんかもう何て言ったらいいか。見かけは変わらないスけど、ひとまわり、いやそれ以上かな。とにかく大きくなれた気がします」
ち「いやぁ、とにかく宝木さんは縁起者だから。名前の持つ力、そこからの波及効果というか相乗効果も大きかったと思うな」
八「ハハ、お宝持ってやってきたって訳にはなかなか行かないスけどね。ま、ゴミもお宝ですし、あと何よりの宝はやっぱこのつながりというか、地域貢献力? 場力(ばぢから)って言った方がいいスかね。だと思いますよ」
 舞恵は何か言いたそうにしていたが、おとなしく傾聴することにした。八広(やつひろ)はその間を拝借して言葉を続ける。視線の先には、その最愛の女性。
 「とにかく、そのお力を借りつつ、さらなる成長、いや持続可能な成長を、と思う次第です。自分でこれなら、って時期が来たら、その時はルフロンと...」
 すっかりいい雰囲気になってしまった。こうなってくると、他の男女にも飛び火しそうな予感があったが、空気を変える人物が顔を出してくる。発表を聞いてたかどうかも怪しい。少なくとも今さっきまでは近所の打上げ席に居た。
 同じ木でも、宝でも春でもない。ただ季節外れな冬木氏である。
 「宝木君の話を継ぐなら、いわゆるゴミ問題ってのは人をつなげるためにあるようなとこもあるなぁって。どうです?」
 「出会い系って誰かも言ってたけど、それが目的化しちゃうのはちょっとどうかしら?」
 その出会い系のおかげで新たな展開を得た文花だが、思わず異議を唱える。
 「でも、避けるものじゃないってのは言えますよね。前向きに考え、受け止める。とにかく自分の問題として考えてもらう人が増えれば何かが変わっていく、そんな気がするんですよ」
 「ジャーナリズムの原点もその辺のような...」 ここは千歳が同調。
 「そう、情報誌でもね、そういうの打ち出せそうだなって。皆さんのご協力もあってここんとこ評判いいんですよ。で、強力な新人にも来てもらえたことだし、そろそろね。今月・来月あたりはちょいと趣向を変えた記事も出ますけど、硬派なとこもと思ってます」
 諸々の連携が効いてきて、ソーシャルの部分も明確になってきた。協賛の方も引き続き、より広域な枠組みで実現できそうだと言う。だが、今の彼の関心事はズバリこれ。
 「バンド、続けますよね?」
 「まぁ、この藍色バンドもあることだし」
 本日の立役者は悠々としたものである。業平がすっとぼけたことを言うので、話はそのまま脱線。
さ「これって、着けてるの忘れちゃいますね。それだけフィットしてたって言うか」
や「気が付いたら溶けちゃってたりして? そしたら正しく『Melting Blue』~」
 静物の青は、憂鬱のブルーに通じる。それが溶け出す時、これ即ち自然界にとっては憂いが溶け込むことを指す。だが、溶けるも解けるも同じと考えれば、ブルーは違った見方ができるのではないか。そう、解き放たれる青、である。
 作詞した本人から、その心をいま一度聞いたりなんかしていたら、空のブルーが変化してきた。初音はより鋭く天を観(み)、そして、一同の気を望む。
 「弥生さん、何かブルー入っちゃいました?」
 自分から言っておいて何だが、弥生はその解釈に嵌ってしまったようである。お天気姉さんは、そのブルー加減に真っ先に気が付いた。
 「前にも言ったけど、クリーンアップってさ、本来はなくていい取り組みなんだよね。目処がついたらやっぱり終わっちゃうのかな?」
あ「でも、その目処を立てるのが今度の仕事だとすると、ねぇ」
 この件でずっと話し相手をしてきた蒼葉が、そのジレンマを代弁する。
や「憂いがなくなるってのよーくわかるんだけど、淋しい気もするんです」
 乙女の感傷に唸ってばかりもいられない。酒の勢いも手伝って、文花はここぞとばかりに逆ツッコミを仕掛ける。
 「エ? 淋しい? そりゃないんじゃないの?」
 「あ...」
 かくして、新たな宣誓が。
 「皆さん、特にご両人のおかげで、いい仕事、いい人とめぐり合うことができました。今後ともソリューション志向でガンバリます!」
 拍手が鳴り止んだところで、再びフォローが入る。
 「まぁまぁ、弥生ちゃん。ソリューションもいいけど、程々にね。かつての誰かさんみたいにダーッて突っ走ると倒れちゃうから。ね、櫻... あれ?」
 その誰かさんは、緊張から解き放たれてしばらく経ったこともあり、違った意味で倒れ気味。桜に凭れかかりながら、彼に寄り添うようにしている。
 「ま、いいや。これからもあるがまま、つまり、C'est la vie. 自然に取り組みが拡がればいいんじゃないでしょうか」
ま「でも、流域画家としては、何か抱負みたいのってあるっしょ?」
あ「原色あふれる環境にしたいって、そんな想いはあるし、画業を通じてそれが少しでも実現するなら、と。でもね...」
 木の下に居る二人を見遣りながら、蒼葉は続ける。
 「積もる話の続きをしてからじゃないと、何とも。ね、お兄様、お姉様?」
み「フフ、絵でも音でも、とにかく今後が楽しみネ」
あ「おば様の文学の方も乞うご期待!ですよね」
み「何かこう、小さな世界から大きく広がる云々ってのを見出しちゃったのよねぇ。特に抑制に向けた布石ってのを改めて実感した。あとは愛の力...」
 木の下でダラダラしてる場合ではない。千歳も櫻も上体を起こして、耳を立てる。
 「ミステリーどこじゃないわね。お二人を主役にして書かせてもらうわ。玉野井史上初、純愛路線!」
 もう一人の作家先生が口を挟むのよりも早く、業平が反応する。
 「とにかくゴミを拾って、調べて、結ばれたカップルってそうそういないと思う。サクセスストーリーとして紹介すると、クリーンアップももっと活発になるかもね」
 「でもそれって本末顛倒だって、さっきおふみさんも...」
 「いやぁ、出会いがないとか嘆く前にさ、とにかく川だ干潟だ、なんだよ。でなきゃ、こんなステキな女性と会うこともなかった訳だし」
 「Goさんたらぁ」
 これがきっかけで、やれ「独身男女に捧ぐ」だ、「漂流 漂着 恋物語」だ、と喧(やかま)しくなる。
 「じゃあ、その純愛ストーリーは『二人の漂着モノがたり』とかでどうです?」
 何故か文花がまとめに入っている。そっちのけ状態の主役の二人は、木の下で再び漂泊の時を過ごすばかり。
八「抑制策としても、最大級の対策になりそうスね」
ひ「何だかなぁ。これまでの議論の積み重ねが飛ンじゃいそう」
ふ「積み重ねてきたから、こうなったとも言えるわね」

 漂泊中の二人のもとに舞恵が近づく。
 「モノログにしろ、モノがたりにしろ、二人で一つ、そんなモノってのもあるわよね。とにかくお二人には感謝感謝」
 「ルフロンも詩人さんねぇ」
 「今度はお絵描きも習うつもり。めざすは総合アーティスト、Art(アール) Le Frontヨ」
 三人が談笑しているところに、小梅と六月が戻ってきた。
 「あら、小梅さん、その袋、何?」
 「エヘヘ、いいもの、です。ネ?」
 「バースデイプレ...」
 余ったレジ袋を活用して何かを拾い集めてきたようだが、中味は不明。小梅は六月の口を塞ぐと、連れ出すように、その場を離れる。
 「あの二人のことだから、また何かしでかすつもりでしょ。まぁ、舞恵からはこちらを。今日のところはお誕生日プレゼント」
 「ありがと! 開けていい?」
 「エコプロだっけ? そん時の資料見せてもらって支店オリジナルで作ってみたのさ」
 それは再生プラでできたカード電卓だった。
 「ルフロンからって言うより、貴行からって感じ?」
 「ま、くれぐれも漂流させたりしないように」
 「試してみる価値はありそうだけど?」
 この調子で仲良し言い合いが続くと思われたが、緑が割って入る。
 「そっか、須崎の課長殿もカード流しちゃえばいいんだ」
 「そんな、おば様ったら」
 正直なところ笑えない櫻である。
 「拾得者が増えると当行粗品なくなっちゃうから、生分解するカードにそのうち切り替えますワ」
 「あーら、そしたらラブストーリー成立しなくなっちゃうじゃないの」
 奥様とおば様が言い合い出したが最後、周囲は傍観するしかあるまい。櫻は仲裁するのを諦め、ただにこやかに見守っている。

 「まぁまぁ、新著のご相談はまたゆっくり、ね」
 締めに入るつもりではなさそうだったが、文花はそのまま談話発表モードに。いわゆる中締め、ということらしい。
 「これは皆さんにも言えることだけど、それぞれの持ち味を自然に活かしあう、それでもってお互いに高めあう、そんな取り組みを、あ、隅田マネージャーに言わせると、プロセスね、とにかく実体験、勉強させていただきました。ありがとうございます、です。改めてお二人に大きな拍手を...」
 「そんな、私、私達の方こそ」
 「そうですよ、おふみさん」
 「まぁね、それはよーくわかってます。情けは人の為ならずって言うけど、自分でお節介焼いた分、ちゃんとごほうびが届くってね。お互いさまさま」
 一同何となくジーンとなっていて、それが言った本人に倍加されて返ってくるもんだから、どうしても言葉が途切れがちになる。
 「これからも、よろしく、ネ。で、お祝いは...」
 「矢ノ倉、その件、ちょい待ち! 要相談...」
 永代の一喝で、文花はいつもの調子に戻る。
 「あら、センターに農園コーナー作ってそのまま差し上げよっか、とか思ってたんだけど、ダメ? あ、言っちゃった」
 有志によるお祝いはまた別途。おそらくは野菜の詰め合わせか何かがまずは贈られることになりそうだ。

 「なんか、皆さんの話聞いてると面白くってしょーがないんですけど」
 「なんのなんの、石島姉妹もなかなかよ」
 「それは櫻さん効果だと思う。おかげで最近のお姉ちゃん、切り返しがすごくて」
 「そりゃどうも。まぁ、話芸ってのは重要なんよ。あとはパッション、ですよね。ルフロンさん?」
 「Ha-ha, Would you like to study Mae’s English again?」
 「Mae pleasure, なんちって」

 この後、英語、フランス語、中国語がしばし混ぜこぜになるも、再び英語に、そして、
 「So, we have a good idea, えー、ご結婚の暁にはですね、荒川特製の夫婦岩を...」
 「ホラね、お姉ちゃん、おかしいんです」
 「やっぱり記念切符かしらん?」
 「そしたら、京王線がいいよ」
 「六月クン、その心は?」
 「桜と千歳がつく駅があるからさ。急行だとひと駅。ヘヘ」

(参考情報→千歳と桜を結ぶ線

 そろそろ暗くなってきたが、宴は終わらない。
 「落ち着いたらまた多摩センター、じゃないやセンターに遊びに」
 「遊び?」
 姉御衆から突っ込まれてタジタジのプレ中学生である。
 「学びに行きます」
さ「そう来なくちゃ」
ふ「そんな学び盛りの六月君。ご入学を明日に控え、何か決意とかあれば、ぜひ」
 衆目集まるも、彼には緊張も何もあったものではない。眼鏡越しに炯眼(けいがん)キラリ、そして、
 「文集にもちょっと書いたけど、皆がニコニコ、いきいきしてればきっとゴミも、他のいろんな問題とかも減ってくと思う。だからまず自分から元気いっぱい、Go Hey!します」
 ご箴言(しんげん)をサラリ、である。
 しばらく手を叩いていた清だったが、
 「皆、いいこと言うねぇ。泣けてきたよ」
 止めた手を目頭に当てて、咽(むせ)いでいる。今度ばかりは冗言ではなかったようだ。が、先生からはやはり何かお言葉を頂戴しないことには締まらない。
 「...やっぱ大事なのは現場と実体験ってことかな。それが生きる力を育む。で、その力が川や自然をいきいきさせてく。そして、それがまた人に、ってさ。あと忘れちゃいけないのは自然は人に余計なことを押し付けたりはしない、ってこと。正にあるがまま。で、それをわかってる人はこれが自然と謙虚になる。ま、皆さんはその辺りは弁えてらっしゃるし、こちとら逆に教わったようなもんだから。今後もよろしく頼みます...」

 こんな感じで、話が尽きないもんだから、手元にはまだ飲料の残りがチラホラ。容器をしかと回収するためにもここは少しでも飲み進んでおきたいところ。
 「じゃまた、せーので」
 「ハーイ」
 主役の二人の音頭に合わせ、小梅と六月はその袋を高々と放り上げた。「乾杯!」の声が一段と大きく響き、舞い落ちてくる無数の花弁を揺らす。桜のリユース、大成功である。

 仮に人の心の中に何かが漂着した時、それを取り払おうとする心理が無意識にゴミを生むこともあるかも知れない。ゴミも多様なれば、人の動きも多様。目に見えない漂着はおそらく止められまい。人が生きている限りは続くのだろう。
 だが、ゴミの放出によって救われるのは一時しのぎというもの。場合によっては悪循環にもなり得る。むしろそんなゴミを片付ける方が、心の中に漂着するものを取り払うことにつながるのではなかろうか。クリーンアップを繰り返すことで元気になる、というのは決して大仰な話ではないのだ。
 岩はあくまでつなぎ役。ご当地ソングやメッセージソングの効果の程も今のところはわからない。だが、現場たる点や面が広がり、人の息遣いが少なからず感じられる場所が増えることで、何らかの抑えは利いてくるだろう。それはやがて、地域、流域へと、じっくりとゆっくりと拡がる。そして内なる漂着が止まる時、目に見える漂流や漂着も止まる...そんな道理もあるのではないか。
 それまでは、その都度、リセット、リフレッシュすればいい。スロー&緩やか、とはそういうものである。

 発起人による答辞のような挨拶が歓談の合間から聞こえてくる。再使用された桜吹雪の一部は風に乗り、グランドを越え、干潟に漂着、または川を漂流し始める。
 そんな桜花に交じり、ゴミの漂流、漂着も続く。そしてまた新たなストーリーが生まれる。
 

(完) *「ふたたび、○月の巻」に続く?


こんなことがあった~結果、こうなった~この辺が特徴 など

 

 とにかく書き綴っていたらなんだかんだで一大長編小説になってしまった、というのが正直なところ。難航した時期もあるにはあったが、総じて順調かつ予定通りに完結に至ったのは、拙筆随筆などで書き癖がついていたことの賜物であり、かつ読者の皆さんの蔭ながらの応援・声援に支えられ、というのが大きかったと思う。(改めて、御礼申し上げます。) ここに締めくくりとしての「あとがき」を記しつつ、ネタばらしにならない程度でよもやま話を加えてタラタラと。ひとつご笑覧の程を。

 

《こんなことがあった》

 

 フィクションではあっても、リアリティを出す上で然るべき仕込みが必要になってくる。すると、日常生活に新たな視点が加わる、というか、ちゃんと調べようと思って、いろいろなものに目が向くようになる。これは今更ながらちょっとした発見だった。女性が多く出てくる都合上、その出で立ちを説明する場面も増える訳だが、店先で「あっ、この衣装・・・」と閃いても、その名称がわからないことがチラホラ。ファッション誌を立ち読みするのは何なので、通販のカタログにお世話になることになる。細君宛に届くものはもとより、コンビニ等の店頭で無料配布されているのもせっせと入手してきてはページを繰る。チュニックだプルオーバーだ、というのが文中に入り込んでいるのは、この新習慣(?)の成果である。

 

 もっとも、登場人物の服装をあれこれ書かざるを得なくなるのは、絵を使わない媒体だから、であり、他にもやたら説明が長くなるのはひとえに文章オンリーの為せる業。描写力が問われ、それなりに鍛えられた一年余りであった。(自分で言うのも何だが、絵が浮かぶような字面になっている可能性は大。つまりマンガ化 or ドラマ化しようと思えばできる、かも?!)

 

 基本的に、(1)MS-WORD上で下書き(=散文調)→(2)同じフォーマットでそのまま本文作成(=入稿)→(3)概ね「○月の巻」単位でプリントアウトしてチェック&修正→(4)話の区切りとタイトルを考える→(5)Web掲載(PDF化)の前に再度修正(これを毎週)→(6)一括PDF(横書き版)作成時に再度見直し(赤字補整)、といった具合で進めてきたので、推敲はそれなりに重ねているつもり。全80話につき、この一連のプロセスを完了したことになっているが、はてさてどうだろう?

 

 上記の流れのうち、何が楽しいと言えば、ズバリ「タイトル決め」である。ただし、初期の頃はどんなタイトルでもかぶることはなかったが、話数が増えてくると似たようなタイトルにならないよう腐心することになり、楽しいとばかりも言えなくなってくる。"アップ"と"ダウン"については数回出てくるが、苦慮の末、「スローダウンな師走」「クリーンアップ初め」「Warmin' Up」「カウントダウンが始まる」「新たなカウントダウン」と何とか最小限(?)に。ジェットコースター系ストーリーではないので、アップ&ダウンがあるとしたらこの程度、という捉え方をしていただければ幸いである。

 

 顔・形についてはあまり考えていなかったが、いつの頃からか夢に登場人物が出てくるようになって、勝手にイメージを起こしてくれたりもした。それでも、登場人物が文中で独創的に動き始める、ということはなく、某作家や某漫画家が語るようなエピソード(例…作者の予想不能な動きや展開etc.)は体感するに至らなかった。それだけ初期設定が綿密だった、ということだろうか。ただ、下書きから清書に至る過程で、人物の心理状況とかが露わになってくると、作者にもそれが移ってくるような感覚を覚え、キーボードを叩きながら、オロオロ。小説を書いてみないことにはわからない一種の不思議体験である。

 

 登場人物の下の名前が呼ばわれるのが聞こえるとつい反応してしまったり、イメージに近い人を見かけたりするとつい視線がついて行ってしまったり、街中で人物観察するのが楽しくなってしまったり、度が過ぎると奇天烈領域になってしまうが、小説を書くとこういう副作用が現れるものなのか、と一人納得した日々でもあった。

 

 小説だからではあるが、書き方の工夫が多少なりともできるようになったこともちょっとした進歩と言えるだろうか。ストーリーの途中から入って、回想シーンから始めるというのはさすがにできなかったが、ある日を起点に過去を語ったり、人物の会話の中で過去を引用したり、というのは覚えた。その過去の出来事を忠実に時系列の中に入れれば、それだけで一話になってしまうところ、ふりかえることにすればページを割かなくて済むし、謎(伏線)を残せるという点でも有効である。(おそらく小説の手ほどき本のようなものには、こうした手法とかが満載なんだろうと思うが、自分なりに考えながら実践するからいい、というのはあるだろう。小説には読むだけでなく、書く楽しみもある道理である。)

 

 長編になってしまった理由には、設定や布石があれこれ散りばめてあるから、というのもある。散らかし放しにしないよう、どこに転じさせるか、どこで落着させるか、を繰り返すことになる訳だが、終盤はその集大成。新たな設定は避け、ただひたすら集約方向をめざすことになる。と、終わらせるために書くような気分になり、段々何を書いてるんだか・・・状態に。ゴールに相当するシーンは見えているのだが、こうなると書き上げられるかどうかが疑わしくなる。はたまた終わった後のことを考えると一抹の寂しさも出てきて、遅筆に拍車がかかることに。

 

 セリフ回しの重複はその人物の口癖ということにすれば問題はない。だが、平叙文ではそうは行かないだろう。似たような言い回しや表現は、少なくとも同じ月の中ではあまり出したくないものである。これを避けようとすると行き詰るのは自明。終章はただでさえノロノロだったので、実に時間がかかった。

 

 用字や熟語についても同様。筆者の知る限りで当て字や難字を駆使したりもして、いろいろな言葉を意図的に織り込むようにしていたが、それも前半まで。途中から重複するようになってきたため、無理やり類義語辞典や国語辞典のお世話になることに。付随してルビを振る箇所も増えていった気がする。

 

 辞書を引けば済む話はいい。どうしようもないのは表記のゆらぎ問題である。平仮名にし過ぎるとかえって読みにくくなりそうな場合は、あえて漢字を入れたり、逆に漢字が続くとわかりにくくなる場合は開いたり、統一感があるようなないようなまま終えざるを得なかった。一例を挙げると、

  • ~来る(来た)<=> ~くる(きた)
  • ~行く(行った)<=> ~いく(いった)
  • 筈 <=> はず
  • 故 <=> ゆえ
  • 不可ない <=> いけない

 など、とにかく揺らいでいる。

 

 ちなみに、「言う」と「云う」も、混在しているが、通常の言動時は「言う」、何らかの含みを伴う場合は「云う」にしたつもりでいる。(その場のフィーリング任せなので、読み返すと、とんでもないことになっている可能性はある。)

 

 当「漂着モノログ」ならではの固有の表現も随所に出てくるが、これらについては「用語補足」ページを設けることでひとまず落ち着いた。作者としても使用上のブレを防ぐことができるので、こうした設定メモは重要だと思う。(言うなれば取扱説明書みたいなものである。)

 

 一大発見をもう一つ、それは「縦書きと横書きでは印象が変わる」ということである。基本、縦書きで打っているので、タテの長さ・テンポで読んで違和感がないようになっているのだが、これを一括PDFに変える、つまり横書きに入れ込み直すと、読み方(見え方)が変わり、歯切れが悪くなったり、文章が浮いたりするのだ。改行したり、段落を開けたり、で凌げることも多いが、結果的に赤入れ箇所が増えることになる。読み返すだけなら充実感があっていいのだが、一括PDFの作成は一大労働だったのである。

 

 その補整&確定作業も終えた。今、こうしてあとがきを書いているのが信じられない、と言ったら大げさか。(そのあとがきも何やら長文になりそうな予感)

 

《結果、こうなった》

 

 フルネームで登場する人物は最終的に22名(老若男女)になった。○月の巻ごとにメンバーが入れ替わるので、出番表は必須。これを早々に用意しておいたのは我ながら妙案だったと思う。「誰それは今回お休みで、誰々は何月以来で」というのをしっかりチェックしながら書いていったので、間違いはないものと思われる。(出番表を公開する予定は今のところなし。あしからず。)

 

 22人もいると人物相関図も複雑怪奇なことになるが、この最終形を掲載してしまうと面白味がなくなることに気付いたので見送り。十月の巻までの18人分止まり、ということにしてある。ご了承の程を。

 

 期間設定は予定通り一年余り(2007年3月下旬から2008年4月上旬まで)。ドキュメンタリータッチ&歳時記小説にするというのもプラン通り。想定外だったのは、社会派現代小説のつもりで書いていたら、コメディあり、青春要素あり、ロマンスいや純愛モノ?といった展開になってしまったこと。

 

 想定外のもう一つは、字数である。「第1章 春」~「第2章 夏」が170,043字、「第3章 秋」が209,238字、「第4章 冬」が160,693字、そして「第5章 ふたたび 、春」が105,261字。いずれも「スペースあり」で文字カウントをかけた結果だが、合計は何と約65万字。(会話文の末尾については、 」か 。」か で悩むところだが、確定時には"。"をとっているので、その分、字数は減っている。"。」"のままだと65万字超必至である。)

 ともあれ、長~いのがお好みの方にはたまらない一作の筈。プロセスを追いながら、じっくりお読みいただければ幸甚である。

 

《この辺が特徴》

 

  • 小説の舞台は、荒川下流の某所。荒川の特性を概ねふまえる形で書いてあるのが特徴。某所ゆえ、事実と異なる記述も多少はあるが、現実味を出すため、実際にある場所や施設を多分に参考にしている。
  • 街、鉄道、アーティスト(登場人物を除く)、イベントは実在のもの。
  • 漂着ゴミについても現場(川・干潟)での実態をもとに描写。漂流・漂着は海ばかりではないことを伝えるのが本旨だが、川ゴミのもととなる陸ゴミについては言及していない。
  • 2007~2008年の同月同日の天候や潮位をある程度考慮。印象を強めるため、誇張した表現になっている場合あり。
  • 登場人物および居住地等は架空。周辺地図もあくまで仮想設定。
  • 人物の氏名は、荒川流域等の学校名(当て字)の他、旧地名、現存地名を織り交ぜて設定。(読みは実際と異なる場合あり。)
  • 主役は20~30代の男女。基本的に親が出てくるシーンはなし。これはスヌーピーの世界(PEANUTS)に倣ったもの。(PEANUTSでは、親や先生は出てきても絵として描かれることはない。) 家族で出てくるのは一組のみ。
  • 「環境小説」というのはすでに数多あったが、「NPO小説」はありそうでなかったので、タイトルに組み入れた。(環境教育然り、環境と題することでテーマを狭めてしまうのもどうかと思い・・・)

 

《言いたかったこと・・・》

 

 登場人物にあれこれ語ってもらっているし、まとめは最終話「漂着モノがたり」の中に押し込んであるので、改めてどうこうという程ではない。一つ、申し訳のようになるが、かくも長く、やたら説明調になっていることについて書かせてもらうなら、

  • こうした市民由来のNPOの活動は地味だが着実なもので、即ち「地道」そのものであること
  • そうなると、自ずとプロセスをしっかり綴ることになり、文体も説明調になっていくこと

 小説の隠れテーマは正に「プロセス」であり、ゆっくりであっても着々と取り組んでいくことで、強固な何かができあがっていく、そして基礎さえしっかりできれば実を結ぶのは実は早い、そんなことを訴えたかった、というのはある。日頃の積み重ねありき、結果や成果は後からしっかりついてくる、そんなようなことである。

 

 主役の二人が大喧嘩したり、離れてしまったり、ということもなく、総じてアップダウンも控えめ。面白味はないかも知れないが、市民活動というのはこういうもの(筆者理想も含め)であり、実際にこんな感じで働いている人達もいる以上、こういう小説もアリなのである。

 

 プロセスには「過程」の他に「作用」の意味もある。そしてプロセスの複数形processesには、登場人物らが相互に触発され、充実感が拡がっていくイメージが重なった。全体の佳境とも言える「第3章 秋」の題はこのprocessesで文句なし。自分なりに小説の段取り、正にプロセスを確認できた上でも大きかった。

 

 文中随所で出てくるが、「スロー&緩やか」もテーマの一。そして、いい意味での「抑制」が、プロセスを逆に推し進めていく、というのもポイントだろうか。これは書いていて気付いたことで、言うなれば結果が後から、の一例とも言える。

 

 NGO/NPOに造詣の深い方からは一蹴されそうな論点も多々あるだろうが、先述した通り、多様なのもまたNPOの本分。失敗してまた次へ、というのが現実だが、この際、理想追求型でもよかろうということで、全体的には甘め(緩め)に書くことにした。C'est la vie.(あるがまま)の精神からすれば、これで十分とも思う。(NPOにまつわる議論を盛り込んだ話は、「先生を囲む夕べ」「名月あっての名案」「新しい私」「蒼氓」「Warmin' up」「新たなカウントダウン」といったあたり。)

 

 3Rやゴミに関する話題が中心だが、環境教育論やボランティア論もたまに出てくる。両者に共通するのは、
「趣味や特技の延長として、あるいは生涯学習や自己啓発の要素として、というのは決して否定はしないが、より利他的に取り組まれるべきものではないか」

 という問いかけとそれに対する答えを並べるような書き方になっていることだろう。

 

 他を利する、というのを基調としつつも、文中での数々の議論は至って自発的・自律的。

  • フィールドやアプローチは違っても、「何かせねば、何とかせねば」というのが根底にある
  • 微力でも経済や社会の綻びを直すなり、フォローするなりしたい、という意識を持っている

 そんな人物たちだからこそ、と置き換えることもできそうだ。とにかくコメディタッチではあっても、道楽的な見方にはならないよう、考えながら書いてきたつもりである。いかがだろうか?

 

《おまけ》

 

  • 女性主人公 千住櫻さんと妹 蒼葉さんの名前は足立区にある小・中学校
  • 女性研究員 小松南実さんは葛飾区の小学校
  • 女性行員 奥宮舞恵さんは荒川区の小学校

 校名を拝借し、漢字を書き換えて名前にしてみました。地図で探してみてください。

 

(2009.1.15)「東京モノローグ」第273話より抜粋


あらすじ

 河原の桜を見に行った千歳は、いつしか川辺にたどり着く。水際には干潟、そして多量のゴミ... その場で捨てられたものとは思えない。そう、それらは漂流・漂着ゴミだった。そこで偶然拾った一枚のキャッシュカードから、物語は動き始める。

 

 四月一日、キャッシュカードの主、櫻が登場。千歳と櫻の二人は初対面ながら意気投合し、クリーンアップを開始。千歳はその時の記録をブログを新設して掲載する。その名は「漂着モノログ」。

 

 五月六日、クリーンアップは二人から四人に。櫻はお約束の「いいもの」を持ってやって来る。調べ上げられたゴミの数々... それらは静かに、そして雄弁に何かを語りかけてくる。

 

 六月三日、2回目の調査型クリーンアップ。五月の回の三人のもとに、女性研究員が現われ、より充実した実地見聞が展開される。六月は環境月間。折々のイベントは出会いの場となっていく。

 

 七月一日、クリーンアップ参加者の年令層は広がり、干潟は「場」としての力を増していく。集う人々が互いに触発されていく流れは、夏休みの自由研究へとつながり、そこからまた新たな出会いやドラマが生まれていく。千歳と櫻の想いが形になっていくのもこの月から。

 

 八月五日、リーダー不在ながら、新メンバーの加勢もあり、何とかクリーンアップは終了。だが、櫻の不参加は波紋を呼び、それぞれの想いが動き出すことになる。川、干潟、ゴミへの想い、そして互いを想う気持ち。夏は長く、暑い...

 

 九月二日、干潟に集う人はさらに増え、経験知も増していく。巡視船ツアーや下見をはじめ、メーリングリストでの議論も活発になり、来る一般参加型クリーンアップに向け、準備は進む。さまざまなプロセス(過程、作用)が動く、そんな秋の始まり。

 

 十月七日、待望の一般参加型クリーンアップイベントが開催される。現場力が試されながらも、無事終了し、メンバーの結束は強まっていく。千歳と櫻の二人も新展開へ。確かなプロセスを経て、深まるは充実の秋、恋愛の秋...

 

 そして、十一月、十二月、一月... ゴミが流れれば、季節も流れる。だが、時は漫然と過ぎて行く訳ではない。春に向け、さまざまな要素が実を結んでいくのである。

 

 彼らにとってゴミとは何だったのか...漂い続けたその答えは「ふたたびの春」において漂着を見る。


登場人物

*登場順

 

隅田 千歳 (すみだ・ちとせ)

電機メーカーに勤めていたが、理由あって離職。webデザインの仕事を軸に独立。専ら市民系ニュース会社からの業務を請け負う。インタビュー記事など連載ネタも抱えるも、その内容はあくまで実直。ジャーナリスト志向はあるが、冒険はしない。(最近は足で稼ぐ部分はアシスタント任せ) 自分でドメインを持ち、メールの設定なども手馴れてはいるが、自作のwebサイトは仕事の記録程度。ブロガーデビューは「漂着モノログ」が最初。スローライフが信条なだけに鈍いところもあるが、PCに向かうとスピーディーになる。プロセス主義者(段取り屋)でもある。

 

ワンポイント:女性経験はなくはないようだが、交際は苦手。櫻との接し方も手探り状態。だが、少しずつ確実に変化が...

 

千住 櫻 (せんじゅ・さくら)

公務員だが、公設の環境情報センターに出向中。地域ネタが得意分野。直情型で一途なのがとりえだが、三十前後にして慎重に(?)。機転が利くのも長所だが、日常会話でもそれが頻発するため、相手は時についていけなくなることも。場を盛り立てるのが上手。理由あって、眼鏡を着用。

 

ワンポイント:浮き沈みはあるが、基本的にはお茶目。千歳に対しても、徐々に茶目っ気モードに。そして...

 

矢ノ倉 文花 (やのくら・ふみか)

研究機関の主任研究員だったが、思うところあって転職を決意。公募で環境情報センターに。センター運営団体のNPO法人化に向け、チーフとして切り盛りする。理系だが、事務・実務には強い。トークは不得手だったが、櫻と会話しているうちに上達していく。頼りになる情報源人物。地場野菜を育てるのが趣味。虫は平気だが、魚はダメ。

 

ワンポイント:さりげなくお節介、という評も。

 

千住 蒼葉 (せんじゅ・あおば)

櫻の妹。姉の浮き沈みなどに翻弄されるも、常に姉想い。フランス留学後、社会科学系の大学に。通販カタログのモデルの他、画業も。才色兼備。姉妹二人暮らし。

 

ワンポイント:基本的にはクールだが、時に日本人離れした大胆な行動に出ることも。

 

本多 業平 (ほんだ・ごうへい)

千歳とは同期入社の間柄。独立時期も同じ。会社を離れてからは音信不通だったが、「漂着モノログ」がきっかけで千歳との再会を果たす。お調子者だが、憎めない人物。ベンチャーの共同代表を務める。IT系よりも実機が専門分野。

 

ワンポイント:好奇心旺盛ゆえ、女性にも目がない?

 

桑川 弥生 (くわかわ・やよい)

専門学校でプログラミングを習得後、大学に中途編入。社会的にプログラミングを実践できる場を探しつつ、学業に励む。蒼葉より年下だが、大学では同学年。才気煥発なのはいいが、勢い余って毒舌になるのがチャームポイント(?)。どこへ行ってもツッコミ担当。

 

ワンポイント:姓・名をそのままイニシャルにすると、K.Y.になる。アンテナは高いが、空気の読みは...?

 

掃部 清澄 (かもん・きよすみ)

本名は、掃部 清。清澄はペンネーム。荒川下流をフィールドとする市民学者。著述家でもある。河川行政の監視役を買って出て、日々巡回する。五つの「カン」と在来の自然再生がテーマ。トーク(掃部節)には定評がある。

 

ワンポイント:「ひ」がうまく発音できないことから、周囲を惑わすも、お構いなし。

 

小松 南実 (こまつ・みなみ)

研究機関勤務。文花の後輩。専門は海洋環境関係。微細ゴミの発生源を探るべく、干潟に現われる。現場第一主義につき、駆け回るのに電動アシスト自転車が欠かせない。アスリートタイプ。強肩の持ち主。花言葉は「燃える想い」。

 

ワンポイント:一見淑やかだが、激情的な面も。孤高、かつ、どことなく翳があるのも魅力のうち?

 

須崎 辰巳 (すざき・たつみ)

地域振興関係部署の課長。櫻の元上司に当たる。櫻を気遣い、センターへの出向を勧めたのもこの人。清澄を師と仰ぐ。

 

ワンポイント:長身で紳士然としているが未婚。縁談もなくはなかったようだが...

 

宝木 八広 (たからぎ・やつひろ)

市民系ニュース会社で千歳と知り合う。アシスタント的に動いているが、実はちょっとした文筆家。フットワークの良さが持ち味。環境情報センターにも出没する。職業を聞かれれば、あえてフリーターと答える。しかして、その理由とは? 舞恵とは恋仲だが、小突かれること多し。

 

ワンポイント:あわてんぼうな一面も。風貌は中国人風だとか。

 

石島 小梅 (いしじま・こうめ)

自宅は環境情報センター側、週末に通う塾は橋を渡った先。塾の行き帰り、干潟に集う人々を橋から見かけたのがクリーンアップ参加のきっかけとなる。小学校高学年の頃から学校嫌いになり、中学に入ってからは姉の顔色をうかがう日々。だが、勇気を出して干潟に足を運んだことが転機となり、本来の快活さを取り戻していく。生き物への慈しみは強く、それらを観察し、イラスト化するのが得意。達筆でもある。ようやく背が伸び始めた中学二年生。

 

ワンポイント:お姉さんお兄さん達からは期待のニューフェースとして厚遇を受ける。

 

石島 初音 (いしじま・はつね)

小梅の実姉。高校三年生、つまり受験生。主に週末にプチ商店街のカフェめし店でバイト勤務。自覚はないもののお天気屋。そのせいか、天候の読みはピカ一。雨天時は機嫌が悪く、店の客にも時にとばっちりが行く。

 

ワンポイント:本当は妹思いなのだが、感情表現がうまく行かず、伝わらない。だが、年上の女性達と交流する中で、術を得ていく。

 

桑川 六月 (くわかわ・むつき)

小学六年生。弥生は年の離れた姉。実姉はさておき、大人の女性への憧憬は尽きず、蒼葉お姉さんが大のお気に入り。記憶力が良く、特に駅・路線関係は強い。種別があるものを調べるのがお得意。

 

ワンポイント:物怖じしない物言いは、姉譲り。大人がハッとするようなことを軽々と言ってのけるのも変わり者ゆえか?

 

石島 湊 (いしじま・みなと)

平日は河川事務所で課長職。週末は少年野球チームを率いる監督さん。野球第一、家族は二の次。試合のある日は、干潟近傍のグランドに現われるが、干潟には関心があるようなないような...

 

ワンポイント:掃部先生には頭が上がらない。長女にも手を焼いている。

 

奥宮 舞恵 (おくみや・まえ)

某銀行行員。八広の一応彼女。彼氏といる時はデレデレ、普段は無愛想でツンツン。週末はチャラチャラと装飾するのがお好き。叩いて音を出す系アーティストでもある。自称雨女。愛称はルフロン。

 

ワンポイント:とらえどころがないのが特徴。

 

石島 京 (いしじま・みやこ)

湊の妻。初音、小梅の母。一見セレブチックだが、アスリートっぽい一面も。かつては複合商業施設の衣料品部門で働いていた。

 

ワンポイント:夫への心配りもさることながら、何よりも心配なのは娘たち。

 

榎戸 冬木 (えど・ふゆき)

中堅広告代理店勤務。他社のCSRをサポートする部署から、社会的起業に携わる部署へ異動。現場を知る必要上、干潟に顔を出すようになったが、それはアフィリエイト関係で業平と接点ができたことがきっかけ。主な仕事は流域におけるソーシャルビジネスモデルの模索と情報誌の発行。仕事柄か、Edyと自称するため、気障に見受けられることも。

 

ワンポイント:業界人らしく、プロモーションは得意。だが、時に曲者と見られてしまう。これも業界人の為せる業?

 

堀之内 永代 (ほりのうち・ひさよ)

六月の現担任。小梅の元担任。文花の学友でもある。辰巳とも旧知のようだが、その間柄は謎。送迎バスに乗って、商業施設でお買い物、が趣味。装い同様、性格もサッパリしているが、喜怒哀楽は激しい。

 

ワンポイント:魚は平気だが、爬虫類がダメ。

 

*「十一月の巻」以降、実名登場分

 

金森 旭 (かなもり・あきら)

かつて清とは仕事仲間。リストラに遭い、一時は野宿生活に甘んじるも、廃材・廃品を元手にモノも自身も再生させることに成功。家内製静脈産業の一工場主となった。業平のよき指導者でもある。

 

玉野井 緑 (たまのい・みどり)

ミステリー専門ゆえ、どこか謎が多い女性作家。社会派小説も手がけることから、清と相通ずる部分もあるが、何かと絡みがち。探りを入れるのが得意で、探偵さながらの小道具の持ち主でもある。センターの世話人歴は長く、櫻と辰巳とは旧知。辰巳の縁談が関心事の一つ。

 

入船 寿 (いりふね・ひさし)

舞恵と同じ支店に勤めていたが、4月に定年退職。「入口の入船、奥には奥宮」の組合せの日に千歳が来店していたことから、ご縁が深まる。江戸っ子だが、"ひ"の発音はバッチリ。

 

本多 太平 (ほんだ・たいへい)

業平の双子の兄だが、弟とは対照的に引っ込み思案で暗め。ヲタク要素もチラホラだが、女性を見る目は確か。ITスキルは折り紙つき。



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