閉じる


「見えないウェブ」

 あるところにとても優秀なウェブエンジニアがいた。名前はM氏という。得意なプログラミング言語は数知れない。パソコンのモニタはもちろんマルチスクリーンで、毎日深夜まで一生懸命仕事をしている。友人は彼のことを「スーパーマン」とも呼んでいた。いつも深夜にオンラインチャットで話しかけても必ず返事が帰ってくるからだ。
 彼はウェブが大好きだった。特に広告プログラムが大好きだった。自分のサイトに広告を掲載するとお金になるのだ。いわゆるコンテンツマッチ型広告というやつである。自分のウェブサイトに最適な広告を掲載することができ、ウェブエンジニアにとってこのサービスはまたと言ってないほど、画期的なものだった。このコンテンツマッチ型広告というのは自身のウェブコンテンツに合う最適な広告がウェブサイト上に掲載されるというものであった。もし「豊胸」に関する記事を書けば、「豊胸」に関する広告が掲載され、もし「大学受験」に関する記事を書けば、「大学受験」に関する広告が掲載される。まさに夢のような広告プログラムだった。 彼は来る日も来る日も自分のウェブサイトのコンテンツを増やすために記事を書き続けた。寝る間も惜しんで。この広告プログラムは3000円以上広告掲載費が貯まると自分の銀行口座にお金が振り込まれる。その日はM氏にも訪れた。ついに彼のウェブサイト上における広告掲載料が3000円を超えたのだ。そのお金は自分が持つ都市銀行の口座に即座に振り込まれた。
 しかし、二度と広告費が振り込まれることはなかった。自分の広告プログラムのアカウントが停止になったのだ。でもそれでもM氏はその広告プログラムが再開されることを信じて、自分のウェブサイトに記事を公開し続けたのである。ある時、M氏が街を歩いていると警察官に止められ、「君の職業は何だ?」と尋ねられた。彼はとっさに「ウェブエンジニアです」と答えた。本当は無職にも関わらず。今の彼にとって広告プログラムを使うこともできず、ただただ昔貯めたおこづかいを使っていくしかない。それでも彼は幸せだった。高価な食事ができるわけでもなく、きれいな女性を連れて歩くわけでもない。でも自分の大好きなウェブに毎日接することができるのだから。 


1
最終更新日 : 2014-11-23 10:08:48

「美女画像」

 あるところにグラビアや美女が大好きなY氏がいた。彼は美女やグラビアには本当に目がない。子供の頃から雑誌に載っているグラビアアイドルが好きだった。週刊誌の巻頭に好きなアイドルが出ていれば必ず買っていた。ある日もある日もウェブ上において美女画像を見つけてはクリッピングをしていた。新聞紙を切り抜いて集めることと同じように、自分のクラウド上の情報を蓄積するサービスにクリッピングしていたのだ。これはぼけーと元気が無い時に眺めるときもあれば、今晩のおかずに使うこともあった。その用途は様々だった。MAVERまとめというウェブサイトにアップロードされている画像を収集することが彼の日課になっていた。
 この世に著作権がないものならば、この写真を大勢の人と共有したいと考えた。そして、ある晩、彼は公開に踏み切ったのだ。巨大掲示板において。彼がクリッピングしてきた写真のクオリティは高く、多くの男性を魅了した。そしてウェブ上で爆発的な人気になった。みんながシェアしようと考えたからだ。ありとあらゆるSNS上でその写真を含むデータがシェアされたのだ。巨大掲示板では彼は「ウェブ界の篠山K信」と崇められるようになっていた。 


2
最終更新日 : 2014-11-23 10:10:56

「不思議な推薦」

 あるところに推薦サービスを愛する男がいた。彼の名前はT氏。いろんなものの推薦に関するサービスを開発している。彼の推薦アルゴリズムはいたってシンプルだった。「協調フィルタリング」という手法だ。これはいわゆる「あなたと同じ商品を見ている人は、こんな商品も見ていますよ」と推薦する手法だ。大手書籍販売のウェブサイトで用いられる推薦手法だ。人々はその推薦手法をこよなく愛した。なんせ、自分が知らないけれど興味がある商品を次々と推薦してくれるから。自分の好みにあったものが次々と推薦される。友達にも「Tくんがいつも読んでいる本っておもしろそうだよね。僕にも読ませてよ。」と言われる機会が増えてきてうれしくなった。それから半年後、おかしなことが起こった。ある時、T氏が通勤のため電車に乗った時のことである。T氏はいつものように自分がお気に入りの本を読もうと通勤カバンから本を取り出した。でもその電車に乗っている全員がその本を取り出したのだ。なぜか?それは書籍販売のウェブサイトでその本が推薦されたからみんな買っただけなのだ。みんなの「これを読みたい」という意思を失ってしまい、全員がとりあえずこれでいいかと推薦された本を買ってしまったのだ。ウェブ上には売れ筋ランキングがよくある。家電然り、レストラン然り。でもその推薦手法が蔓延してしまうと全員が同じ服装、同じ食生活になってしまったのだ。自分自身とは本当は何なのか?推薦は本当に推薦してくれているのか?それを改めて考え直す時かもしれない。 


3
最終更新日 : 2014-11-23 10:11:54

「南の島」

 あるところに「Threetriangle」というウェブサービスが大好きな男がいた。彼の名前はS氏がいた。このサービスどんなことができるかというとSNS上に「イ今、S氏はT駅にいます」とタイムライン上に流すことができるのだ。でも彼は位置偽装が好きだった。本当は彼は家にいるにも関わらず、ウェブ上ではT駅にいることができるのだ。それをソーシャルネット上で流すと多くの友人は彼は東京駅にいるのかと思い込む。そして、彼はこんなこともしてみた。「今日はバカンスで南の島のH島に来ています」とつぶやいてみることもあった。彼の友人の多くはS氏はハワイにいるのか、仕事を頑張らないとなと思い、さらに仕事を頑張る。その友人が納めた税金が彼のもとに生活保護費として流れているとも知らずに。 


4
最終更新日 : 2014-11-23 10:12:37

「ゴキブリホイホイ」

 ある時、毎日毎日ゴキブリに悩まされる主婦M子がいた。彼女は別に雑な正確ではなく、至って几帳面だ。しかし、なぜか彼女に家にはゴキブリが出るのだ。そこで彼女はゴキブリを捕獲するためにゴキブリ捕獲装置を設置することに決めた。最初は台所に。ある程度のゴキブリはひっかかり、彼女は少し満足げだった。でも彼女は満足しなかった。家に出るゴキブリを一網打尽にしたいのだ。そこで彼女は考えた。ゴキブリが侵入する大元にゴキブリ捕獲装置を置けばいいということに。そこで彼女は次の日から自宅の玄関にゴキブリ捕獲装置を設置することに決めた。すると驚くほどにゴキブリがよく取れる。ゴキブリが侵入する大元に設置すれば取れるのだ。これでM子はゴキブリに悩まされることがなくなった。平穏な生活が訪れたのだ。 


5
最終更新日 : 2014-11-23 10:19:48


読者登録

かずきち。さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について