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 僕は毎年お盆に、東京から帰省してきた友人と会う。

 その時決まって彼が話すのは、今付き合っているという彼女の話。

 

「昔の菅野美穂に似てる、すごくいい娘なんだ」

「毎日メールしてる。話題が尽きないんだよ」

「この間水族館に行ったら、彼女ペンギンの水槽の前から離れなくて」

 

「プレゼントをすると、すごく喜んでくれるんだ」

「手を繋いで街を歩くと、皆俺達を見るんだよね」

「夜なんか、本当に可愛いんだぜ」


 この話を聞かされる度、僕はうんざりするというよりも、寒気がする。

 

 なぜならその彼女というのは、彼が大学生の頃に自殺した筈だからだ。

(第6話 完)


第七話

財布の中の紙切れ

 


 その日の朝、会社から突然の解雇通知を受け、どうしようもない気分で駅前を徘徊していた。

 

 誰もいない公園のベンチで塞いでいると、向こうから知恵遅れらしき男がやってきた。40代にしか見えない癖に、所々が茶色く汚れた子供向けの帽子や服を着て、訳の分からない言葉を呟きながらヘラヘラ笑っている。


 それを見て無性に腹が立った俺は、そいつの小汚いケツを思いっきり蹴り上げてやった。

 

 笑い声とも泣き声とも付かぬ素っ頓狂な叫び声を上げ、そいつは一目散に逃げていった。


 ふと地面を見ると、財布が落ちていた。あの男が落としていったもののようだ。いかにも安物の長財布だが、手にとってみると結構な厚みがある。

 

 



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