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 そして、己の行為がどれだけ狂気の沙汰であるかを、何時間もかけ説明した。

 彼女は涙を流しながら憎しみの眼を向けていたが、僕の熱意にほだされ次第に目元が緩んでいき、とうとう大泣きして僕に抱きつき、もうしない、二度としないと誓ってくれた。

 

 そう、これでいいのだ。

 

 僕の愛が、彼女を悪魔的な愚行から救ったのだ。

 それ以来、彼女は僕の家に同居するようになった。

「いつまでも、私を守ってほしい」だってさ。


 これからは、一緒にご飯を食べるんだ。

 ちゃぶ台の向こうで微笑んでいる彼女に微笑みを返し、僕自身が選んだ食材を使った自慢の料理を見渡す。

 

 うわあ、何とも美味しそうなこと!

  

 いただきます!

 僕は、小皿に盛った採れたての白カビに、マヨネーズをふんだんにかけた。

(第5話 完)


第6話

のろけ話


 僕は毎年お盆に、東京から帰省してきた友人と会う。

 その時決まって彼が話すのは、今付き合っているという彼女の話。

 

「昔の菅野美穂に似てる、すごくいい娘なんだ」

「毎日メールしてる。話題が尽きないんだよ」

「この間水族館に行ったら、彼女ペンギンの水槽の前から離れなくて」

 

「プレゼントをすると、すごく喜んでくれるんだ」

「手を繋いで街を歩くと、皆俺達を見るんだよね」

「夜なんか、本当に可愛いんだぜ」


 この話を聞かされる度、僕はうんざりするというよりも、寒気がする。

 

 なぜならその彼女というのは、彼が大学生の頃に自殺した筈だからだ。

(第6話 完)



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