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 先生の都合で部活が休みになり、私は良い気分で自転車を走らせていた。

 途中、いつも通る道が工事で塞がっていたので、別の道を通ることにした。この道は途中で大きな公園にぶつかる。中央に大きな池があり、野良猫がたくさんいるのだ。あの公園にいくのは、何ヶ月ぶりだろうか、猫も見てみたいな。

 そんなことを考え、私は自転車のまま公園の入り口へと入った。

 いつも猫がたむろしていたベンチの辺りには、3、4匹ほどの猫が集まっていた。縞猫に斑猫、黒猫に白猫。

 

「・・・・・・あれ?」


 だが、全ての猫にしっぽがない。尻からちょっと先の辺りで、切り落とされたような風になっていて、血が止まらず赤く腫れ上がった切断面がすごく痛々しい。

 

 誰がこんなことを!と心中憤っていると、後ろから声を掛けられた。

 

 振り返ると、薄茶色の服を着た丸っこいおばさんがいた。

「お嬢ちゃん、何してるの?」

 

「いえ、猫が好きなんで、ちょっと見てたんです」

「そうなの。私も猫が好きでねえ、いつも餌をやってるの」


 片手に下げたビニール袋越しに、干したササミのようなものが見える。

 おばさんがベンチに腰掛けると、草むらから尻尾を立てた大人の三毛猫が現れ、ちょこんとその膝の上に飛び乗った。

 

「なついてるんですね」

「そうかしら?」

「しっぽが立ってますもん、猫がしっぽを立ててる時はなついてるってことでしょ? 確か」

「ご名答、猫ちゃん流の愛情表現ね」

 おばさんは小さく拍手した後、三毛猫の頭を撫でた。

「・・・でも、猫ちゃんを苛めようとする悪い人は、こうしてなついてきた猫ちゃんのしっぽを思いっきり掴んで捕まえちゃうのよ。そうすると、猫ちゃんは逃げられなくなっちゃうの。この子も最近ここに来たんだけど、悪いことされないか心配で心配で・・・」


 やっぱり、猫を虐める人がいるんだ!

 おばさんは悲しそうな表情になった。

「昨日もね、可愛らしいクロちゃんが口から餌を吐いて死んでたの。きっと、毒を食べさせられたのよ・・・」

「ひどい!」

 本気で腹が立った。

 何にも悪いことしてない猫に対して、最低だ。多分、罪の意識なんてこれっぽちも感じない人間なんだろう。

 

「おばさんも悲しいわ。猫ちゃんを虐めたって、何の得にもならないのに・・・」

「警察には言ったんですか?」


「ダメだったわ、全然相手にしてくれないの。所詮、動物のことだからって」

「そんな・・・」

「悲しいけど、これが現実」

 おばさんは少し間を置いた後、私の方を見つめて話し始めた。

「お嬢ちゃん、お名前は?」

「奈美です」

 

「もしよかったら、奈美ちゃんも暇な時に猫ちゃんに会いに来て欲しいのよ。人の目が増えるだけでも、大分違ってくるからね」

 

「猫ちゃんのボディガードですね!」

 

「その通り、いいかしら?」

「はい、喜んで!」



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