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城の見方

城の見方

  

・はじめに

 

 近年、艦艇を擬人化したキャラクターが登場するゲームが人気を博し、「艦艇ブーム」が巻き起こっている。ゲーム中の美少女から実際の艦艇にも興味を持つ方も多く、プラモデル業界等でも売り上げが伸びている。そうしたなかで、最近になって城郭を擬人化したゲームが登場したり、大河ドラマのロケ地になったことで探訪者が増えた城があったり、さまざまなことが「城郭ブーム」の到来を予感させる。そうなると、実際に城跡に行ってみようと思う方も多いだろう。この本は、そういった「これから城郭探訪をはじめよう」という方のための本である。

 

 

 

 

 

・城郭探訪の注意点

 

城跡を訪ねるにあたって注意することとして、まず服装が挙げられる。城は防御施設であるから、高い山の上にある場合が多い。正確には、城はその立地によって大きく三つに分けられる。高い山の上にある「山城」、小高い丘の上にある「平山城」、平地にある「平城」だ。基本的に古い城ほど山城が多く、新しくなるにつれて段々と平山城、平城と平地に近づいていく。有名な城では岐阜城や竹田城が山城、姫路城や熊本城が平山城、名古屋城や駿府城が平城にあたる。ただし、これらは、特に平山城と平城は厳密に分けられているわけではなく、江戸城や大阪城は平山城と平城のどちらにも分類されることがある。この中で平城や平山城はまだ良いが、山城を訪れる場合は、山を登らなければならないし、防御のために石段が登りづらくなっていることが多いので、出来るだけ動きやすい服装が望ましい。また、重要文化財に指定されているような城では、建物内は靴を脱がなければならない。特に大きな問題ではないが、一応考慮しておくと良い。他にも、そのような城は当時の建築様式がそのままに残っているため、かなり階段の角度が急である。女性の方は注意されたほうが良いだろう。

 

他には、城を訪れる際は、貴重な文化財を台無しにしてしまわないことが大切だ。石垣や城壁に登るのは、文化財を傷つけることになるし、落ちると危険なので絶対にやってはいけない。また、ゴミを持ち帰るのも重要だ。城を訪れる際は、ゴミ袋を持って行くと良い。他に、記念に柱等に落書きをしたり、石垣の石を持ち帰ったりするのも文化財保護のためにやめていただきたい。また、写真撮影は建物の外は基本自由だが、天守閣や櫓の中は資料館になっていることも多く、重要な資料は撮影禁止のものもあるので注意が必要だ。読者の皆さんには、マナーを守って、気持ちの良い城郭探訪を楽しんでいただきたい。

 

 

 

 

 

・城の見方

 

城の見方は人それぞれある。石垣を見たり、櫓を見たり、天守閣の上から景色を楽しんだり、色々ある。「何を見るか」以外にも、「どう見るか」というのも重要だ。城を造った当時の大工の仕事に感心してみたり、城主になった気分で城内を歩いてみたり、武将になったつもりでその城をどう攻めるか考えてみたりするのも面白い。これらは人それぞれ好みだし、いくつか同時にやってみても、この中に無いまったく別の見方をしても良い。しかし、初めて城跡を訪れる方は、どこをどう見たらよいかわからないことも多いのではないだろうか。そんなときに大事なのが下調べだ。下調べをせずに行って、初めて見る物と出会うのも面白いが、初めは特に目標もなく漠然と城跡を見るよりは、きちんと下調べをして、これから行く城の見どころや歴史を把握してから行くのが良い。そうすれば、せっかく行ったのに見損ねた、ということが起こらないし、その城に対する理解が下調べをしないときとまったく違う。より楽しむためには、下調べは必要不可欠だ。

 

ところで、下調べの中では城自体の見どころや歴史を調べるのが最優先だが、できれば周辺情報も調べておくとなお良い。特に遠くの城に行くならば、せっかくなら関連施設も訪れておきたい。このとき調べるのにおすすめなのは、地域の特産品だ。調べておけばお土産選びに困らないし、食べ物なら昼食にするのも良い。あまり多くはないが、城主にちなんだ食べ物や当時の武将の食事を出す店もあり、城主や武将の気分を味わいたい方にはもってこいだ。

 

城によっては、イベントを行っているところもある。城や季節によって内容は異なるが、例えば甲冑を来た武将のコスプレやその武将達による大名行列等がある。調べればいつやっているかわかるし、スケジュールが合えばぜひその時に行きたい。ただし、その時はイベントの無い時より混雑が予想されるので、イベントに興味が無い方や、静かに城跡探訪をしたい方は逆に避けた方がよいだろう。

 

天守閣は多くの城で見どころのひとつとなっているが、実は天守閣にも種類がある。現存天守、復元天守、復興天守、模擬天守の四つだ。現存天守は戦国時代や江戸時代に建造されたものがそのまま残っているもので、全部で十二城ありそのすべてが重要文化財や国宝、世界遺産に登録されている。復元天守は失われてしまった天守閣を資料をもとに復元したもので、復元の程度によって木造復元天守と外観復元天守に分けられる。復興天守は天守閣があったことは確かだが、資料が無い等の理由で推定により復元されたものをいう。模擬天守は元々天守閣が無い城や天守閣があったかどうかが不明な城に新たに天守閣を建てたものを指す。

 

この四つ(復元天守を二つに分けると五つ)は前のものほど当時の天守閣に近く、後のものほど遠い。復興天守や模擬天守が悪いというわけではないが、当時のままの城を楽しみたいなら現存天守や木造復元天守がおすすめだ。もちろん現存天守が当時のままの城を楽しむには最も良いが、いかんせん、数が少ない。現存天守が近くに無い方もいらっしゃるだろう。そんな方には木造復元天守がおすすめだ。近代に建てられたものとはいえ、素材も建築方法もなるべく当時のものに近付けられていて、当時の城の雰囲気を楽しむのにも十分だ。外観復元天守は外観こそ当時の様子が復元されているが、コンクリート造りなので中に入ったときの気分はまったく違う。しかし、コンクリート造り故の丈夫さで、大きい城が多い。というより、建築基準法の関係で大きな天守閣はコンクリート造りで復元するしかなかったのだ。その分外から見たときの迫力や最上階からの眺めは抜群なので、外観復元天守にもぜひ訪れておきたい。

 

・おすすめの城

 

ここでは筆者がおすすめの城を皆さんに紹介するが、有名な城は調べればすぐに情報が出るし、ここでわざわざ書く必要もないので、ここでは少しマイナーな、しかし見ごたえのある城をいくつか紹介しようと思う。

 

 

 

・竹田城

 

竹田城は、元々はあまり有名な城ではなかったが、2014年の大河ドラマ「軍師官兵衛」のロケ地になったことで一気に有名になった。実は竹田城はそれまでにも何度か映像作品に登場しているのだが、その多くが別の城としての登場という、少し可哀想な城だった。「軍師官兵衛」でも石垣山城としての登場だったが、雲海の上にそびえる石垣の美しさが評価され、一躍人気の城となった。その様子から「日本のマチュ・ピチュ」とも呼ばれる竹田城だが、筆者個人としてはこの呼び方はあまり好きではない。私は、城の魅力は戦闘施設としての機能美にあると考えているので、竹田城は都市であるマチュ・ピチュとは全く別の存在だと考えている。例えばマチュ・ピチュの石積みは段々畑と家なので、直線的な構成である。それに対し竹田城は、敵の侵入を防ぐために高く積まれた、絶妙なカーブを描く石垣を持つ。そういったわけで、竹田城に行かれる方には、雲海や景色の美しさとともにマチュ・ピチュとの違い、つまり竹田城の持つ戦闘施設としての「機能美」を味わっていただきたい。

 

 

 

・掛川城

 

掛川城は、日本で初めて木造で本格的に復元された城だ。山内一豊が掛川城を模して造らせたと伝えられる高知城天守を元に復元された天守閣は、復元ながら当時の雰囲気を十分楽しむことができる。だが、掛川城の見どころは天守閣だけではない。二の丸にある掛川城御殿は、全国でも四つしかない現存する城郭御殿のひとつだ。城というと、つい天守閣に目がいってしまいがちだが、実は御殿も天守閣と同等以上に重要な建造物なのだ。天守閣は城主の力を見せる象徴的な意味が強く、城主の生活空間は御殿であった。そのため、現存する御殿を見られるということは、城主の当時の生活の様子を感じられるということにつながる。掛川城に行った際は、御殿にも立ち寄ってみてはいかがだろうか。また、掛川城の二の丸には、御殿の他にも茶室がある。掛川市は、全国でも有数の生産量を誇る掛川茶で有名だ。この茶室では、美しい庭園や天守閣を眺めながら、掛川茶を味わうことができる。戦国時代には武将たちの間でも頻繁に茶会が開かれた。茶を通して、当時の武将の気分を味わうのも、面白いかもしれない。

 

 

 

・犬山城

 

国宝に指定された四つの城のうちの一つが、犬山城だ。だが、犬山城は他の三つの国宝、姫路城、彦根城、松本城に比べて知名度が低い。しかし、犬山城は豊臣秀吉が一時居城にした城でもあり、また、現存する天守閣のなかでは最も古く、資料的価値も高い。残念ながら天守閣以外の建物は残っていないが、国宝に指定された天守閣はそれだけで十分行く価値があるといえる。犬山城の天守閣は、望楼型天守という天守閣のなかでも古い様式で、そのなかでもさらに古い初期望楼型天守に分類される。こういった特徴を他の城の天守閣と見比べてみることで、城に対する理解をより深めることができる。犬山城に行かれる際は、その点を強く意識して天守閣を見ていただきたい。

 

 

 

 

 

・最後に

 

 城郭探訪は、きちんと準備をしてマナーを守って行えば、とても楽しいものである。そのために、ひとつ気をつけていただきたいことがある。見るもの、見方は個人の自由で、人それぞれ違っても良い。しかし、その根本は同じで、先人を敬う気持ちが大切なのだ。城は建設のときに事故で人が亡くなることもあるし、生贄として人柱をたてた城もある。戦場となった城ではそれ以上に大勢の人が亡くなっている。実際、怪談がある城も数多くある。しかし、怖がる必要はまったくない。先人に敬意を持って城郭探訪に臨めば、怨霊に何かされる、ということもないし、何より自然とマナー良く城郭探訪を楽しむことができる。だから、これから城を訪れようと思っている方には、先人を敬う気持ちを忘れずに、城郭探訪を楽しんでいただきたい。

 

 最後に、この本が少しでも皆さんの城郭探訪の助けになれば幸いである。

 


この本の内容は以上です。


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