閉じる


<<最初から読む

3 / 5ページ

花宵道中

花宵道中

2014年11月12日鑑賞

女性の支持は得られるのか?

 

天才と呼ばれた子役にも、当然の事ながら「年齢」という厳しい壁が立ちはだかる訳です。そのあたりは芦田愛菜ちゃんなども、今後、女優業を続けていくならば、乗り越えなければならなくなる運命にあります。本作の主役は安達祐実。あの「同情するなら金をくれ!!」と言う名言を吐いた名子役でありました。

その人が本作ではついに脱ぐんであります。

濡れ場アリです。

まあ、映画興行を考慮すると、かなりのインパクトがあるのでしょう。劇場で鑑賞する限り、平日にも関わらず、6、7割客席が埋まっておりました。

物語は江戸時代の遊郭、吉原。ここに人気の遊女がいるのです。

男達の関心を浴びたこの遊女、高潮すると「肌に花が咲く」ともっぱらの評判なのです。

それを拝みたくて、彼女を指名してくる客が多いのです。

まあ、その遊郭にとっては看板のような存在です。

「遊女にとって大事なのは男に惚れない事」

それを守り続けてきた、この看板遊女「朝霧」

ところが、あるとき縁日で知り合った半次郎という男性に、心引かれてしまうのです。彼は、腕のいい、染め物職人。朝霧の切れた下駄の鼻緒をキレイに直してくれたりします。

朝霧はもうすぐ年季明けです。吉原の遊女という身分から、ついに解放か、と思いますが、名の知れた遊女ともなると、お金持ちの「旦那」さんが放っとかないわけですね。

旦那の方は朝霧を身請けするつもりですので、もう半分自分の所有物のように思っている。

ある日、この旦那の宴席に朝霧が呼ばれました。とろこが、その連れの客として、なんとあの半次郎がいるのです。半次郎にしても、まさか、幼顔の可憐な彼女が遊女であったとは、全く青天の霹靂。しかも、朝霧としては、スポンサーである旦那の宴席。旦那からのいやらし~い、あ~んなことや、こ~んなことも、つれの半次郎の目の前で演じてみせなくてはならない。こりゃ~、辛い状況ですな。

というわけで、その後どうなるのかは、劇場でお楽しみくださいませ。

本作の見所は、もちろん安達祐実がどのように大人の女、しかも遊女を妖艶に演じるか? にかかっている訳でして、実によく分かりすぎる展開の作品です。

吉原の遊女を扱った作品として、近年では蜷川実花監督、土屋アンナ主演の「さくらん」があります。あの作品は僕も劇場で鑑賞しました。

吉原の遊女を扱った作品として、どうしても本作と「さくらん」は見比べてしまいますね。本作「花宵道中」が原作は女性ながら、男性監督を起用したのに対し「さくらん」の場合、その特筆すべき点は、原作 安藤モヨコ、脚本 タナダユキ、監督 蜷川実花、主演 土屋アンナ、更には音楽さえも椎名林檎さんが担当。

まさに鉄壁の「女性チーム」を組んでいる事です。徹底して女性目線の「吉原、花魁映画」を作ろうとした蜷川実花監督の狙いは見事的中しました。僕としては蜷川実花ワールドを楽しめる佳作であると感じました。

では、本作「花宵道中」はどうでしょうか?

残念ながら、その点、男性の興味本位の部分があちこちに見え隠れする感じがあるのです。女性の観客の共感や支持を得られるのかなぁ~。この辺りは逆に僕が女性の観客にお訊きしたいところです。

え~、もちろん、R15指定なので「良い子の皆さん」は安達祐実さんぐらいの年齢になってから見てくださいね。

**************

天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

**********

作品データ

監督   豊島圭介

主演   安達祐実、渕上泰史、

製作   2014年 

上映時間 102分

予告編映像はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=S1yXIlrp00w

 


紙の月

紙の月

2014年11月20日鑑賞

黒と白の崖っぷちで

 

僕がバスに乗っていたときのこと。停留所が近づくと、せっかちな客が立ち上がって二三歩、降車口に向かってバス車内を歩いた。

「絶対に動かないでください!!バスはまだ動いています!!」

厳しい口調で注意したのは、バスの運転手、それは女性だった。

客が降り際に、再びその女性運転手は

「バスが止まるまで、席を離れないで!怪我をしますよ!!」

と実に厳しく忠告した。

僕はこの光景を一部始終見ていた。

もちろん、自分が運転するバスの中で、乗客に怪我でもされたら、それこそ場合によっては、自分の職を失うかもしれない。

このバスの女性運転手の指導は実に適切であり、客の安全を守ると言う、運転手としての責務を全うしていると言える。

しかし、ほとんどの乗客は、バスの中でアナウンスされる

「バスが停留所に止まってから席をお立ちください。運転中、席を移動する事は大変危険です」という忠告を聞こうとはしない。

あえて、危険な行為をバス車内で行って平気な顔をしている。

それは「ありがちな行為」だ。

それをひとつひとつ忠告しようとする女性運転手に、僕はある種の尊敬と愚直さと「女らしさ」を感じるのだ。

というのも、誤解と非難を恐れず、男目線から言わせて頂くと「女らしさ」の要素の一つとは「融通が効かない事」だと思うからだ。

本作「紙の月」で僕が最も注目したのは、宮沢りえ演じる主人公でもなく、やや子役臭さがいまだに残る、大島優子の演技でもなく、小林聡美演じる、実に融通の利かない銀行事務員「隅より子」という人物像だった。

本作は銀行員にとっておもわずやってしまいそうになる、誘惑に駆られる、そういった「ありがちな行為」にハマってしまった一女性銀行員の話である。宮沢りえ演じる主人公、梅澤梨花は、銀行の契約社員である。

仕事は外回りの営業だ。

個人客を訪問し、定期預金などの「商品」を販売し、客の財布から銀行に金を預けさせるのが彼女の仕事だ。彼女は、顧客の孫である、大学生と知り合いになる。夫は海外勤務が決まったばかりだ。彼女と大学生は男女の関係となった。彼女は若者との「甘い生活」その快楽に、どっぷりと浸ってしまう。男との危うい、しかし、魅力的な火遊びには「金」が必要だ。そこで彼女は顧客の金を私的に流用した。

最初は「ほんの数時間」借りるだけ。

後で自分の預金から返しておけば問題はない。

その事実は銀行の内部で発覚しなかった。

一度やってバレないのならば、何度やっても分からない。

やがて彼女の顧客資金流用は歯止めを失ってしまう。

本作はその顛末を丁寧に描いてゆく。

さて、僕が注目した「隅より子」と言う人物。

銀行勤続25年。いわゆるお局さんである。

この人は何を楽しみに生きているのだろう?

この人は銀行の仕事にどんなやりがいを感じて25年勤続しているのだろう?

そのあたりにスポットはあたっていないので、なおさら不思議な人物像に思えてしまう。きっと、腹の中では色々と溜まってそうな人物である。また、そう思わせる小林聡美の演技力が僕には光って見えた。

主人公の不正行為に最初に気づくのが、この「隅より子」である。

映画の終盤、主人公梅澤梨花と隅より子が対峙する場面がある。

「あなたはそのお金で好き放題やってきたんでしょ?」

と隅より子は梅澤を問いつめる。

しかしである。その言葉の中に、どこか主人公のタガを外した「オンナの生き方」に「自分には出来ない」と言う諦めと共に、一種の「あこがれ」を感じているかのようなのである。

「自分だって、彼女の様にオトコに走ってみたい」

「なにかに夢中になる生き方をしてみたい」

そう感じているかのようである。

それを許さないのはなぜか?

自分は「融通が効かないオンナ」だからにほかならない。

お金を融通する事。

それこそが「金融」である。

銀行の業務の最も根っこにあたる機能の一つだ。

銀行の一部の特権的なオトコ達は、その地位を利用してお金を「融通」させすぎた。結果として天文学的な金額が回収不能、不良債権となった。しかし、それが元でブタ箱に放り込まれた銀行経営陣はいないようである。ほとんど全ての不良債権は、代わりに赤ちゃんからお年寄りまで、国民の税金でチャラにしてしまった。

そういう「巨悪」はこの国では丁寧にオブラートで包まれている。

一人のある意味「哀れなオンナ」の一例として本作を見るのか?

あるいは誰しもが持っている「ありがちな」心に閉じ込めてある「悪」の扉を開いてみせるのか?

吉田大八監督が描く、無機質な白と黒しかない銀行内部の風景。その間のグレーを読み取れるのなら、本作の味わいはぐっと深まると思うのである。

**************

天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

**********

作品データ

監督   吉田大八

主演   宮沢りえ、池松壮亮、大島優子、小林聡美

製作   2014年 

上映時間 126分

予告編映像はこちら

 

https://www.youtube.com/watch?v=TcTe6m5U7ZI


奥付



映画に宛てたラブレター2014・12月号


http://p.booklog.jp/book/91921


著者 : 天見谷行人
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/mussesow/profile


感想はこちらのコメントへ
http://p.booklog.jp/book/91921

ブクログ本棚へ入れる
http://booklog.jp/item/3/91921



電子書籍プラットフォーム : ブクログのパブー(http://p.booklog.jp/
運営会社:株式会社ブクログ



この本の内容は以上です。


読者登録

天見谷行人さんの更新情報・新作情報をメールで受取りますか?(読者登録について