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取捨

 

車のカギを受け取る時、

「 おぉそれとなぁ、原付は会社で使うからその辺に置いとけし・・」

"赤鬼"に言われ、手放す事になった原付バイクに未練は無い。

" 何かを手に入れるには何かを手放さなければならない "

事態も、二輪が四輪に変わるのなら苦にならない。

数日後の夜。
 
大分遅い時間になって携帯電話が鳴り出した。

( えっ、これから?)

てっきり"山野"からの飲みの誘いと思い込んで、表示も見ずに携帯を耳に当てる。

「 もしもし 」

「 "小鳥"かぁ~?」

声を伝えて来たのは、"とんぼのおやじ"と自分を繋いでくれた"もぐら"。

「 あっ!"もぐら"さん 」

「 どうだぁ、元気でやってるか?」

「 はい、なんとか・・」
 
「 そうかぁ 、ところで頼みがあって電話したんだけどなぁ・・」

「 えっ、俺にっすか?」

「 あぁ 」

「 俺に出来る事なら・・」

「 そうか・・ 実はな、車を欲しがってる奴がいたら紹介して欲しくてな・・」

「 あぁ・・」

なんというタイミングなのか、すでにマイカーを手に入れてしまった後の"小鳥"。

「 自分が買います 」

と言いたいがそれが言えず、

「・・・」

それでも恩人の為に何とか力になりたいと思い直して詳しい説明を求めた。

すると驚く事に、"もぐら"の売ろうとしている車は、

「 車体ナンバーと車検証が偽造されてっけど、その分だいぶ安く手に入る高級車なんだ・・」

以前"キビヤマ"から解説を受けていたニコイチと呼ぶ車そのもの。

( 本当にそんな車があったんだ・・)

あの時、それを欲しいと思った"小鳥"にしてみれば、

( 友達に勧めれば喜ぶだろう・・)

そんな風に思える。

「 わかりました! ちょっと友達に聞いて連絡します 」

「 悪いな!仕事がんばれよ!」

「 はい、失礼します 」

携帯のメモリーを眺め、あ行から順に地元の友達に連絡を取る。

「 もしもし、あぁ俺だけど、んん、まぁね・・ ところでさぁ、俺の兄貴分がさぁ・・」

「 うん、考えとくよ 」

・・・

ほとんどが難色を示す結果となったが、な行にて掛けた一人が後日連絡をくれた。

「 もしもし、どう?」

「 あのよぉ~ 俺、知り合いに組の人がいてよ、お前の話をしてみたんだぁ・・ そしたら、「 友達にそんなものを売ろうとしてるなら、ソイツは友達なんかじゃねぇ 」 って言ってたぞ?」

「・・・」

" ガツンッ "

そんな音が響いた様な気がした。

それは、決して痛みこそ無いが心を深く沈める強烈なショック。
 
( 俺は自ら、友達を放棄した事になるのか・・)

うなだれて掛けた"もぐら"への電話。

「 すいません、力になれなくて・・ すいません 」

「 いいって、ありがとうな、また連絡するからがんばんだぞ!」

「 はい、失礼します・・」

その後ややしばらく、ぼんやりと携帯を見つめていた"小鳥"は、

( 今の俺があるのは、"もぐら"さんのおかげだ・・)

そう自分に言い聞かせると、携帯のメモリーから福島の友達を消去した。
 
 

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あたり八-1

 

「 今日から俺~ 山梨の人になる~ うぅ~」

自分を励ます様に、こんな鼻歌を口ずさむ。

 
間も無くして、お馴染みの"山野"と酒を飲む事に。
 
そして。
 
20号バイパスを走る帰りの車中、

( 何故、誘ったんだろう・・)

助手席でだんまりと考え込んでしまう。

最初のチェックが来た時に、

「 じゃぁ、あと一時間だな、イヒヒヒィ~」

延長を決めたのは"山野"だった。
 
しかし、

「 "小鳥"ぃ、へぇいいらぁ?」

「 はい 」

その延長が終わり、ボーイが持って来た伝票を受け取った"山野"は、

「 あいよぉ、どれ、いくらでぇ?」

と言いながらも、

「 "小鳥"ぃ、悪ぃ今日はコレしかねえだぁ~」

「 へっ?」

セカンドバックからたった3枚の千円札を出しただけだった。

「 マジっすか?」

「 今度埋め合わせするからここは頼むじゃん!イヒヒヒィ~」

「 はぁ・・」

隣で見つめる女と膝を付いたままのボーイは、あわよくばの延長を期待している様だったが、

( やってらんねぇなぁ・・)

割り勘の歩合に不満を言った所でどうにもならないと思った"小鳥"は、黙って2万円近くを払った。

( 俺を誘っていたのは・・)

"山野"が頻繁に自分を誘っていた本当の理由。

( 飲み代を払わせる為だったのか?)

そんな疑いが強まる。
 
"山野"の懐を当てにして飲もうと思った事など無かっただけに、これまでの酒の全てが急に悔しく変わって行く。

とその時、

" キ、キィ~~ "

"山野"が車を急停止させて外へと飛び出し、

( ? )

"小鳥"がルームミラーを覗き込むと、すぐ後ろには大型のトラックが斜めに止まっているのが見えた。

一体何が起きたものかと取り敢えず外へと出る。

「 コノヤロ~、降りてこぉ~」

と怒鳴る"山野"に、

「 うるせぇ!はやく車をどかせぇ~」

スキンヘッドに捻りはちまきをした大型トラックの運転手が高い窓に腕を掛けながら怒鳴り返している。
 
その瞬間、"小鳥"は咄嗟に大型トラックの前輪に足を掛けてヒョィッと飛び上がると、スキンヘッドの襟首を捕まえて体重を車外へと掛けていた。

「 ひぃ~~」

スキンヘッドが変な声を漏らす。

「 うるせえんだよコノヤロ~!降りてこぉ~!」

"小鳥"が怒鳴る。

「 ひぃ~~、かんべんしてください、かんべんして 「 うるせぇ~~」

ハンドルにしがみついて必死に謝るばかりのスキンヘッドに顔色は無い。

それをお構い無しに窓から乗り込もうとした時、

「 わぁ~~った、わぁ~~ったから、もう辞めろっちこと!」

慌てて止めに入ったのは"山野"だった。

「 わかってんのかコノヤロ~!」

"小鳥"が耳元に大声を浴びせる。

「 はい! もうしません、勘弁してください!」

最初の威勢を完全に無くしたスキンヘッドは、ただただ詫びて震えている。

「 ホレッ、いいから乗れ 」

まるで端から喧嘩の仲裁人としてそこにいた様な"山野"によって車に戻される。
 
 

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奥付


 
  著者 : k.kaminari
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