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2.台風18・19号列島縦断!予測精度向上、次世代気象衛星「ひまわり8号」

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台風18・19号列島縦断!予測精度向上、次世代気象衛星「ひまわり8号」

 台風18号・19号の進路

 週末台風18号、19号と、2週続けての大型台風に日本列島は見舞われている。JRは夕方から全面ストップするらしい。こんなことは前代未聞である。

 こうした台風は今、どこにあって、どこに進むのだろうか?たしかに昔に比べて予報精度は上がっている。台風の進路もほぼ予想通りだ。だが、まだ台風の予報位置が大きな円だったり、突発する集中豪雨の特定などには精度が足りない。

 こうした問題は、観測衛星ひまわりの精度が上がればある程度改善できる。実は気象庁のひまわり映像は、リアルタイムで撮影していない。われわれは30分前の画像を見ている。これでは、突然発生する竜巻などは対処できない。

 しかし、科学技術は日々進歩している。台風18号で荒れた後の7日、種子島宇宙センターから、静止気象衛星「ひまわり8号」が、H2Aロケットで打ち上げられた。台風の画像を撮影する頻度は、現在の「ひまわり7号」が30分に1回なのに対し、「ひまわり8号」は12倍の2分半に1回となるため、より詳しい観測が可能になる。

 

 

 気象庁は、「ひまわり8号」によって台風の進路の予報の精度が向上し、誤差の範囲は24時間後の予報ではこれまでよりおよそ10キロ、72時間後では20キロ程度改善できると期待している。17日ごろには、赤道上空約3万5800キロの静止軌道に入り、来年7月ごろから本格観測の予定だ。

 

 ひまわり8号打上成功!H-2Aロケット成功率96%に!

 10月7日、種子島宇宙センターにて次期静止気象衛星「ひまわり8号」を搭載したH-IIAロケット25号機の打ち上げが実施された。10月5日から6日にかけて通過した大型台風18号の影響を危惧する声もあったが、無事打ち上げに成功した。

 H-2Aロケット25号機は打ち上げ後、第1段および第2段を順次切り離し、およそ30分後に「ひまわり8号」を分離した。打ち上げたロケットH2Aは7号機以降、19回連続の成功で、成功率は96%と世界トップクラス。11月30日には26号機で、小惑星探査機「はやぶさ2」を打ち上げる予定である。

 「7号」との違いは三つ。第1に、センサーの分解能力が可視光も赤外線も2倍になり、ぼやけていた部分が鮮明に見分けられる。第2に、観測時間が大幅に短縮。北極から南極まで帯状に撮影するのに、7号は30分かかったところ、8号なら10分。特に日本付近は、2分半ごとの観測が可能になる。最近、集中豪雨や竜巻の被害が出ているが、その原因となる積乱雲の急発達をいち早く捉えられる。

 第3は、画像が白黒だけでなくカラーになること。可視光の波長帯が増えることで赤・緑・青のカラー合成ができ、画像がカラーになる。白黒では雲との見分けが難しかった、春先に飛来する黄砂も、より判別できまる。また、赤外線の波長帯も増えるため、雲の動きや上空の風を観測する精度も格段に上がり、数値予報も高性能化、台風の進路予測精度の向上にもつながる。

 天気予報や防災対策だけではない。地球温暖化に伴う海面水温の上昇の計測、台風の巨大化や発生数推移、地球環境の監視にも役立つ。データ処理も、気象庁の開発ソフトになり品質向上する。

 2016年度には、同性能の「9号」も打ち上げ予定で、2機の「ひまわり」は、東アジアや西太平洋地域など国際的な気象観測ネットワークにも大いに役立つと、世界から注目されている。

 わが国の宇宙産業は市場が縮小し、従事者も減少傾向が続く。宇宙活動法の制定を急ぎ、技術の維持・発展、産業の振興を図りたい。

 

 気象衛星「ひまわり8号」の概要

 現在活躍する「ひまわり7号」に比べ、どれだけ観測の精度が上がるのだろうか?

 「ひまわり8号」は従来機よりも性能が飛躍的に向上し、データ量は50倍にもなる。7号との主な違いは3つある。まずは、分解能が2倍になること。「ひまわり」は可視光と赤外線の観測センサを搭載しているが、可視光のセンサの水平分解能が1kmから0.5kmへ、赤外線は4kmから2kmへと変わる。分解能が上がればそれだけ細かく見られるので、今までぼやけていた部分がより鮮明に分かるようになる。

 2つ目は、観測所要時間が30分から10分に短縮されること。ひまわりは、赤道上空の静止軌道から東アジアや西太平洋を観測する。地球全表面の約4分の1にあたるこの面積を、一般的なカメラのように1回でパシャッと撮影するのではなく、北極付近から南極付近まで、東西方向に帯状に少しずつスキャン(撮影)していく。

 これまではスキャンが完了するのに30分かかっていたが、10分でできるようになる。さらに、日本付近については2分半ごとの観測が可能になる。衛星から見える範囲の観測を10分間隔で行いながら、特定の領域を2分半間隔で観測できる。その結果、豪雨や竜巻をもたらす積乱雲の急発達のようすを、いち早く捉えることができると期待されている。

 3つ目は、観測種別が約3倍の16種類になること。観測センサの波長帯の数が、7号は可視光が1バンド、赤外線が4バンドの計5バンドだったが、「ひまわり8号」は可視光が3バンド、近赤外が3バンド、赤外が10バンドの計16バンドになる。

 その結果、雲のようすを、これまで以上に詳しく見ることができるようになる。また、可視光が3バンドになったことで赤・緑・青のカラー合成ができるので、白黒だった画像がカラーに変わる。春先に大陸から黄砂が飛んでくるが、白黒だと黄砂なのか雲なのかよく分からない。カラーになると黄砂は黄色く写るので、見ただだけで黄砂だと判別できる。

 

 豪雨をもたらす積乱雲を細かく見る

 まず、雲の高度を調べる。大気は地面に近いところほど温かく、上空に行くほど冷たくなるので、雲のいちばん上の温度を測れば、どのくらいの高さにある雲なのかが分かる。温度を測る赤外線のバンド数が増えたことで、より詳しく雲の高さが分かるようになった。

 雲は風に乗って時間とともに移動するが、どこにあった雲がどちらの方向に動いたかを調べると、上空の風向きや風速を正確に推定できる。また、雲が氷でできているのか水滴でできているのかも明らかにする。下の方の雲は水滴でできているが、温度が下がる上空ではそれが氷の粒になる。「ひまわり8号」では、そうした雲の特性も分かりやすくなると思われる。

 集中豪雨をもたらす積乱雲は寿命が短いので、観測所要時間が短縮されることで大きな効果が得られそう。1つの積乱雲は、発生して成長して衰弱するまで1時間くらい。集中豪雨や突風、竜巻など、急激に発達する積乱雲に伴う気象現象があるが、短い間隔で連続的に観測しなければ、積乱雲の発達に追いつかない。

 「ひまわり8号」では日本上空を2分半ごとに観測しますので、積乱雲の急激な発達を克明に捉えることができる。また、将来的には、30秒間隔で雲を観測することも考えているので、これまで見られなかった新しい発見があるかもしれない。

 どの人工衛星も、打ち上げてからデータ処理手法が安定するまでに時間がかかります。「ひまわり8号」についても、打ち上げてしばらくは、観測画像のデータ処理にあたり、衛星のブレを補正するための調整が必要になると見込まれます。

 「ひまわり」は、帯状にスキャンして撮った複数の画像を1枚に合成するが、各々のスキャンの画像が地球上のどの位置を見ているかを合わせるために、30秒に1回、海岸線を撮影する。

 海岸線は、海と陸地の境目で、非常に正確な線が引けるので、位置合わせの際にその線をきちんと合わせれば、ブレのない写真になるというわけだ。打ち上げからある程度経てば、衛星画像のデータ処理のプログラムが調整され位置合わせの補正が少なくて済むようになるので、この30秒ごとの観測機能の2つあるうちの一方を使って雲の動きを30秒間隔で観測する予定。

 

 「ひまわり8号」の観測で、台風の進路予測の精度は上がる

 赤外線のバンド数が増え、雲の動きや上空の風を観測する精度が格段に上がるので、数値予報に使うデータの質が良くなり、台風の進路予測精度も向上すると思う。台風という自然災害をもたらす気象現象を予測することは、気象庁の重要な任務の一つであり、その精度が上がることを非常に期待している。

  数値予報は、物理学や化学の法則に従って、風や気温などの時間変化をスーパーコンピュータで計算し、将来の大気の状態を予測する方法。数値予報では初期値(計算を開始する時点での大気の状態)が重要。それをより正確に把握するために世界中の気象観測データを利用している。

 気象庁では、「ひまわり」だけでなく、世界中で観測された気象データを集め、そのデータをスーパーコンピュータに入力して計算している。気象庁は1959年から数値予報を行っており、この結果は、一般の天気予報だけでなく航空や船舶の安全運航等さまざまな方面で利用されている。「ひまわり8号」により、数値予報の精度をさらに向上させたいと思う。

 観測機能が飛躍的に向上しますので、予報精度もきっと良くなる。ただし、「ひまわり」はあくまでも雲の上端を観測していて、雲の下で何が起きているのかを見ることはできない。雲の下でどれくらいの雨が降っているのか、竜巻が起きているのかを見られるのは、地上から観測する気象レーダーやアメダスなど。

 気象レーダーは、雨や雪の強さと動きを観測し、全国に20カ所配置されている。一方、アメダスは、地上の気温や降水量、風向・風速などを測定し、全国に約1,300カ所ある。天気の予報は、このような地上からの情報と、宇宙からの情報を組み合わせることでできる。

 

 自然災害の軽減のほかに、地球環境監視にも役立つ

 防災対策はもちろんのこと、地球環境の監視にも役立つ。地球の温暖化に伴って海面水温が上昇しているが、「ひまわり」に搭載される赤外線センサは、海面水温を測ることもできる。また、温暖化によって台風の巨大化や、発生数が増えるのではないかと言われている。「ひまわり」は台風の強さや発生域などを観測しているので、その統計データを見れば、地球上の台風がどう変化してきたかを見ることもできる。

 気象庁のデータは「ひまわり」に限らず、無料・無制約で公開している。また、天気予報や警報・注意報をはじめとする気象情報は即時性が強く求められるので、気象情報はリアルタイムで出している。例えば、現在の衛星画像は、気象庁のホームページでご覧いただけるほか、気象業務支援センターを仲介して民間の気象会社や報道機関に提供している。

 「ひまわり8号」のデータ量は従来機の50倍もあり、それをリアルタイムで提供していくためには、相当な情報処理能力が必要。

 データが溜まると計算機の処理が追いつかなくなるので、次の観測が始まる前までに、前回の観測データの処理を終える必要がある。

 「ひまわり8号」は10分間隔で繰り返し撮影するから、10分以内にデータ処理をしなければならない。実は、このデータ処理にも従来との違いがある。

 7号までは海外製のデータ処理ソフトウエアを使っていましたが、「ひまわり8号」では、気象庁の職員が開発したソフトウエアを使う。

 気象庁がこれまで蓄積してきたデータ処理のノウハウを活かし、自前でソフトウエアを開発することに挑戦したのだ。今後は自分たちでプログラムの改良もできるようになるので、データ品質の一層の向上に役立つ。

 

 アジア太平洋諸国の防災にも協力

 1977年に「ひまわり」の初号機が打ち上げられてから、観測精度はどれくらい向上したのだろうか?

 初号機の分解能は、可視光のセンサが1.25kmで、赤外線は5km。今の6号・7号は、可視光が1kmで、赤外線は4kmだから、この35年間で若干の向上。次の8号、9号では可視光が0.5km、赤外線が2kmになるので、過去35年間になかったほどの、技術的な大躍進を遂げることになる。

 「ひまわり9号」の打ち上げもすでに決まっていて、8号と同性能の9号を、2016年度に打ち上げる予定。8号、9号ともに観測は7年間で、今後14年間はこの2機で観測を行う。2022年までは、9号は8号のバックアップ。その後は8号から9号に観測を交代して8号がバックアップになる。気象観測は私たちの生活に欠かせないものだから、万が一の場合に備えて、観測が途切れないよう軌道上でバックアップの衛星を配備している。

 現在、軌道上に「ひまわり8号」と同レベルの気象衛星はない。「ひまわり8号」ほど高機能化した気象衛星を打ち上げるのは、世界で初めてだ。気象衛星の観測は地球を取り囲むように各国が協力して行う必要があり、どこの国の衛星も、できるだけ同等レベルのセンサを搭載しようという国際的な調整をしている。

 これから打ち上げる海外の気象衛星も、「ひまわり8号」と同じような次世代型になるが、打ち上げるタイミングとしては、日本が最初。7号の設計寿命が来るのが来年なので、それまでに次の「ひまわり8号」を打ち上げる必要があった。

 アメリカの次世代型衛星は2年後、ヨーロッパの衛星はさらに3年後に打ち上げられる予定。先陣を切って打ち上げられる「ひまわり8号」が、どんな観測データを我々に見せてくれるのか、日本だけでなく、海外の方々も大変注目している。

 大気は地球の周りをぐるっと回っているので、日本の上空の大気も、何日か前はヨーロッパやアメリカの上空にあったかもしれない。だから、世界中のいろいろな国が観測をして、その気象観測データを相互交換しないと、いい効果が生まれない。

 日本の天気予報や警報などを的確に発表するためには、国際的な協力が重要。世界各国の気象機関は、国連の専門機関である世界気象機関(WMO)などで協力関係を構築してきた。日本も1977年以来、「ひまわり」の運用を通して、宇宙からの気象観測という面で国際協力に貢献している。

 「ひまわり」のデータは、世界中の国々の気象機関に対して、現在は主に「ひまわり」に搭載された通信機能によって提供され、天気予報や防災などに役立てられてきた。

 「ひまわり8号・9号」ではデータ量が約50倍になることから、このような通信機能を搭載してなく、主に地上施設から提供する計画。一方、インターネット環境が脆弱な途上国には、一般の通信衛星を経由してデータを配信する計画を進めている。

 アジア太平洋諸国は台風等により自然災害が多いが、必ずしも気象観測の手段が発達していないので、「ひまわり」に頼っていると言っても過言ではない。それらの国の気象機関に対しては、単にデータを提供するだけでなく、データ解析の研修を行うなど支援している。

 

 途絶えることのない技術革新を

 気象庁では、JAXAの地球観測衛星のデータも利用している。例えばJAXAの水循環変動観測衛星「しずく」が捉えた台風では降水量を知ることができる。

 気象庁では、JAXAの地球観測衛星のみならず、海外の衛星や、関係府省や自治体等の地上の雨量計、気象レーダー、地震計、震度計、潮位観測など、国内外を問わず、世界中の使えるデータは何でも使わせてもらう。

 「ひまわり」は、初号機から5号機まで、JAXAの前身のNASDA(宇宙開発事業団)と気象庁で共同開発を行いました。だから、「ひまわり」の歴史はNASDAの協力抜きでは語れない。

 初号機の頃の宇宙開発はアメリカとソ連が中心で、日本はまだ黎明期でしたが、その時代から始めた「ひまわり」が、今や世界トップレベルの技術を持つまでになった。

 それはやはり、JAXAが、将来を見据えた先進的な技術開発を行ってきたからこそだと思う。「ひまわり」は次の8号・9号で終わりではなく、今後もレベルアップして継続していかなければならないものだ。未来の「ひまわり」のベースとなる宇宙技術のためにも、JAXAには引き続き、日本の宇宙開発および宇宙産業をけん引してほしいと思う。

 「ひまわり」は国民の皆さまの安全・安心に直結するものであり、我が国だけでなく、アジア太平洋諸国の自然災害の防止、地球環境の監視に役立つものだ。だから、「ひまわり」による観測が途絶えないようにし、有益な情報を提供できるよう、最新の科学技術・知見を取り入れた気象衛星観測を続けていきたいと思う。

 

参考 JAXA:http://fanfun.jaxa.jp/countdown/himawari8/ 朝日新聞:観測精度アップ「ひまわり8号」初の次世代型

 

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