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無くした鍵で開けられたもの

著者 : たなかひまわり
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プロローグ

私は人の心が読める。

 

その能力は、単に考えている事が想像できるというニュアンスのものではない。

 

目を瞑ると、今見ている光景がモノクロになって脳裏に浮かび、人の表情だけが変化し、言葉を放つ。

 

 

表と裏の顔を巧妙に使い分ける人々。この世の中にはいろいろな性格を持った人がいるから、その手の人間がいたって何の不思議もない。

 

だが、自分の身近にこれ程までに存在しているとは思いも寄らなかった。

 

 

何でもかんでも「あなたが正しい」と、さも味方のような振る舞いをする人は、裏では人を馬鹿にし、嘲笑っている。

 

心配顔で何かを聞きだそうとする人は、そこから暇つぶしの種がないか探りを入れ、何かを得たと同時に方々に噂を流す。

 

マイナスイメージを極端に嫌う人は、本当は鋼の神経を持っているくせに、他人の前で弱者を演じる。

 

 

何が本当で何が嘘か。目に映るもの、特に優しさに満ちているものほど裏があるのではないかと思えてくる。

 

 

それまでの私は、バカが付くほどまっすぐに人を信じていた。

 

自分を取り囲む人々を疑うくらいなら、信じて裏切られた方がいいと、綺麗事を並べては浮かれていた。

 

 

そんな私に、ある能力が芽生えた。

 

その能力によって、これまでに抱いていた周囲に対する固定観念を覆す、多くの現実を突きつけられた。悪夢でも見ているかのようだった。

 

 

私の世界は一転し、失意の底に突き落とされた。

 

信頼は、裏切りという凶器でずたずたにされた。

 

胸の奥の柔らかい部分を抉り取られた私は、人と心を通わせる事を一切やめた。


サイクリングロード1

高校二年の九月、十七歳の時のことだった。

 

部活の帰り、私は友達の桐島香里と二人で、学校から程近い川沿いのサイクリングロードを歩いていた。

 

通学に必ず使っている道で、樹齢三十年の桜が両岸から川に向かって枝を伸ばし、春には数百メートルもの距離で淡いピンクのトンネルを作る。今は秋なので、深緑の葉が頭上から私達を見下ろしている。葉の隙間から見える空には、まだらに割いた綿のような雲が橙色の光で彩られ、地上には火照った体に丁度いいくらいの風が吹いていた。

 

「今日の練習はめちゃくちゃハードだったねー」

 

 ちょっとやそっとの練習ではスタミナの切れない香里が、足元をふらつかせ、くたびれた声を出した。おそらく、本当に疲れているわけではないだろう。いつもの目力が残っている。私達はバレー部だった。

 

「ホントだよねー」

 

 私も彼女に調子を合わせ、ふらついてみせた。

 

そこへ、後ろから来た自転車が、けたたましくベルを鳴らした。

 

香里と私はすぐに道を開けたのだが、自転車のベルは鳴り止まない。彼女の表情が瞬時に変り、振り向き様に「うるさいなぁ」と小声で文句を言った。

 

「鳴らし過ぎだよね」

 

 私は香里に同調しながら、彼女の背中にそっと手を当てた。眉間に皺を寄せた彼女をクールダウンさせる為だ。もし、自転車の主が何か言って来たら、香里は喧嘩をしかねない。

 

彼女は可愛いというより綺麗な部類に入る女の子で、男女隔たりなく友達がいて明るく活発な反面、非常に短気な一面を持っていた。自分から仕掛けることはしないが、売られた喧嘩は必ず買う。特に、自分に非がない時の反撃は半端ではない。中学の時に一年間だけボクシングジムに通っていたとかいないとか。以前、本人にその真相を確かめたところ、「あんな激しいスポーツ、疲れるからやらない」と否定していたが、敵を前にした時の構えはボクサーそのものだった。そして、強い。私は時々、香里が女だということを忘れる。

 

「恭子先輩、機嫌悪くなかった? 八つ当たりっぽくボール投げてた気がする」

 

 自転車から目を離さない香里に、私はさっきの話の続きをした。

 

「ホントだよね。尋常じゃないよ、あの剛速球」

 

自転車から喧嘩をしかけられることもなく、香里もこの一件を問題にしなかった為、会話が元に戻った。

 

私はホッとして、彼女に気付かれないように小さく鼻から息を吸い込み、その分だけ小さく息を吐いた。

 

「香里、集中打受けてなかった?」

 

「絢那でしょ、それ」

 

「お互いだね」

 

「恨まれてんのかね、私達」

 

「なんでー? 何にも悪いことしてないよ」

 

 先輩後輩の壁はあるものの、このバレー部ではフランクな会話の出来る雰囲気があった。何か気に触るような事をしていたら、誰かしらが直接忠告してくるはずだ。頭の切れる恭子先輩なら尚更、後輩の過ちを角を立てないように伝えてくるだろう。だから、集中打の原因が、自分達に関係しているとは思えない。


サイクリングロード2

「何かあったのかなぁ、恭子先輩。部活が始まる前、一人でふさぎ込んでたんだよね」

 

「そうなんだ? ……あ」

 

 香里に恭子先輩の様子を知らされ、私は二、三日前の放課後に、校舎の裏手にある『チューリップ』で遭遇した出来事を思い出した。

 

『チューリップ』とは校内にある広場のことだ。その名が付けられているが、この広場に一年中チューリップが咲いているというわけではない。春になると、この広場の象徴のように咲き誇るのがチューリップで、その数はどこかの森林公園を思わせ、入学金のかなりの額がチューリップ代に当てられているらしいのだ。そんな状況から入学時、『チューリップの咲いてる広場に行こう』と誰かが言い始めたのが、『チューリップ広場』になり、夏になる頃には『チューリップ』に略された。右へ倣えが嫌いな人は、あえてチューリップという名前を口にしなかったりするが、友達から『チューリップで待ってる』と言われれば必ずこの広場に来る。

 

「そういえばね」

 

「どした?」

 

 一瞬、動きを止めた私に香里が訊いた。

 

「チューリップで恭子先輩が泣いてるとこ見たんだよね」

 

「いつー」

 

「一昨日だったか、その前だったか」

 

「なんでー」

 

 香里はいちいち素っ頓狂な声を出しながら語尾を伸ばす。

 

「知らないよ。でも、木村先輩が凄く怖い顔して校門から出てったんだ。私、忘れ物したのに気が付いて、戻って来たらすれ違ったの」

 

 木村先輩は、恭子先輩と付き合っているサッカー部のキャプテンだ。細身で背が高く、髪は襟に掛かるくらいの長さで、ジェルでセットしたようなウエーブがかかっている。日本人離れした顔をしているなと思っていたら、やはり母親がスペイン人のハーフだった。

 

二人が付き合う前、木村先輩には彼女がいた。が、恭子先輩の一目惚れで、あの手この手の頭脳作戦で、見事彼女から奪い取った。反感を買っていた時期もあったが、最終的に選んだのは彼だからと弱みを見せなかった。しかし、現世の間だけで因果応報が発生したとでもいうのだろうか。やはり、人を不幸にしてまで奪い取った幸せは、そう長くは続かない。

 

「一緒にいたのかな」

 

「そうなんじゃない? 私が見た時はもうバラバラだったけど」

 

「別れの瞬間を目撃?」

 

「かもね」

 

「マジで? どうりで最近、口数が少ないと思った」

 

「香里もそう思ってた?」

 

「無口な恭子先輩なんて普通じゃないもん」

 

 恭子先輩は、そこにいるだけで周りの空気が華やぐくらい存在感のある人だった。賑やかな集団の中でも絶えず声を響かせているせいでもあったが、姉御肌で誰からも頼りにされ、試合ではムードメーカーとなって皆を引っ張っていた。


サイクリングロード3

「ずっと揉めてたんじゃないかな」

 

「なぜに?」

 

 香里は語尾を上げて、変なイントネーションで言った。

 

「二股掛けてたのがバレたんだって。三股じゃないかって言ってた人もいたけど」

 

 風の噂は、尾鰭をつけて瞬く間に広がる。

 

「え? どっちが? 木村先輩?」

 

「ううん、恭子先輩」

 

「うひゃあ、そりゃいかんねー」

 

「こっ酷くなじられて、軽蔑されてポイよ」

 

「見てたみたいだね」

 

「だいたい、こういう場合はそうでしょ」

 

「そうなの?」

 

「自業自得」

 

「あら、キツイ」

 

「だって、二股だよ? 許されていい訳がないよ」

 

「恭子先輩、美人だから誘惑多そうだもんなぁ」

 

「だからって、同時進行しちゃダメでしょ」

 

「あんたは男に一途だもんね」

 

 知っている限りの情報と自分の理念を語っていたら、香里が標的を私に変えた。

 

「当たり前でしょ。何があっても一人の人に想いを貫くのがホントの愛ってもんじゃない。好きな人がいるのに違う人ともなんて私には考えられないよ」

 

 勢いは治まらない。これだけは自信を持って言える。しかしだ。

 

「ホントの愛か。魁とはうまくやってんの?」

 

「う、うん」

 

 その名前を出されると、途端に歯切れの悪い私になる。

 

井原魁は、高校一年の夏から付き合っている私の彼だ。野球部でキャッチャーをしていて、がっちり体型、木村先輩に負けず劣らず濃い顔をしている。野球となると他の事が目に入らなくなり、試合が近かったりすると独り言のように野球の話しかしない。デートもプロアマ問わず野球観戦が多く、それに同行している私は、色白とは程遠い肌になってしまった。でも、魁の楽しそうな顔を見ているのが嬉しくて、彼の野球解説をいつも夢中になって聞いていた。が、それも高二になるまでの話だった。

 

「やってるよ。つかず離れずいい距離保ってんだ」

 

「毎日会ってないの?」

 

「会ってないよ。クラス違うし、部活あるし。最近はお互い自由にしてるから」

 

お互い自由にしている、というのは強がりだった。

 

魁は、一人で自由気ままに行動するのが好きだった。だが、それが出来ない現状がある。コンビニのバイトや友達との付き合い、後輩からの相談などで、自分の時間を大幅に削っている。付き合い初めこそ私とも会う時間をたくさん割いてくれたが、無理はそう続くものではない。彼は自分のペースを取り戻すために、私を優先順位の一番最後に持ってくるようになった。



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