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グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札

2014年10月21日鑑賞

おとぎ話と”愛”を信じるあなたに

 

モナコと聞くと、僕なんかはモータースポーツファンだったので、アイルトン・セナが走っていた頃の、モナコ・グランプリを懐かしく思い出します。

モナコ・マイスターと呼ばれたセナ。表彰台の横には恰幅のいいおじさんがいて、優勝トロフィーを渡していたっけ。

このおっちゃんこそ、モナコの一番エラい人。国家元首のレーニエ大公だったのですね。僕は後から知りました。

本作の主人公は、その奥様、グレース・ケリー王妃であります。

演じるのはニコール・キッドマン。

僕は特に彼女のファンではなかったけれど、本作での彼女は実に「上質な」演技だったと思います。

美貌と気品、そしてなにより、家族とモナコ公国を、誰よりも愛した「一人の女性」「一人の母親」を演じきっております。ニコール・キッドマンの女優人生にとって、本作はきっと記念碑的な作品になる事でしょうね。

舞台はモナコ公国の王室、ロイヤルファミリー。

当然、その舞台装置はたいへん豪華で、格調高いものです。その室内調度品や、美しい建築、モナコの風景を、スクリーンで鑑賞するだけでも見る価値ありです。

本作であらためてモナコ公国、その国の運営を学ぶ意味があると思いました。

Wikipediaで早速調べてみました。

モナコは国連加盟国中、2番目に小さい。ほんとうに「ちっぽけな国」なんですね。

国内産業については、なんと、日本の鳥取県の「県内」総生産の30% マジか!? ですよ。

それで国としてやっていけるの? と素朴な疑問がわきます。実はこの国、最大の産業は観光なんですね。

カジノがあります。そして何より、個人には課税されない「タックスヘヴン」なのです。つまりは大富豪達にとってはこんなに住み心地のいい、オイシイ国はないわけですね。

それらの大富豪が、住み着いてくれれば、暮らしてゆくのに当然、消費が見込める。それも大富豪の消費ですよ。僕ら、ワンルームの賃貸アパートに住んでいる人間とは、使うお金の桁が天文学的に違うでしょう。

まあ、そんなお金で、このモナコ公国が成り立つ訳であります。

さて、そんなモナコを快く思わない国がある。

お隣のフランス。

時の大統領はドゴール大統領。

モナコのことを苦々しく思っている。だって、フランスのお金持ちや、会社がみんなモナコへ逃げちゃうんだもん。

フランス政府の財布にお金が入らない。

アッタマに来たドゴール大統領。なんと、モナコとの国境線を封鎖し、軍隊を出動させます。

「言う事聞かないと、ぶっ放すぞ!!」とモナコに脅しをかけた訳です。

しかも、モナコにとってさらにまずい事がありました。モナコ公国は電気、ガス、水道などのライフラインを、全部フランスに頼り切っていたのです。これを止められたら、それこそ一巻の終わり。国家は消滅です。

そんな土壇場をグレース王妃、レーニエ大公は、どう対処していったのか? フランスの圧力に屈して、属国になるのか? そういえば、どっかの国は、首相が数年で交代する度に、真っ先にアメリカにご機嫌伺いに行ってますなぁ~。こういうのは実質的な属国ですね。まあ、いいです。

そういう選択を迫られる訳です。

僕がこの映画で教えられた事。

軍隊なんていらない。必要ない。

ましてや「ゲンシリョクむら」なんていう巨大産業体なんてまったくのナンセンス。

そんなものなくても「モナコ公国」というちっぽけな国は、見事に、実に見事に、絶体絶命の危機を乗り切りました。

モナコに軍隊はありません。

モナコは一発の弾も撃つ事なく、フランスを国境線から撤退させる事に成功しました。

モナコにとって、とっておき、最後の切り札。

それこそが「グレース王妃」の存在だったのです。

明日にもフランスから、爆弾の雨が降らされるかもしれない。そんな中、グレース王妃は、勇敢にも「大舞踏会」を催し、敵対するドゴール大統領さえ、ご招待してしまいます。

その舞踏会でのスピーチは絶品です。

あのチャップリンの「独裁者」でのラストシーンのスピーチ。あれに肉迫するような、ニコールキッドマンの熱演でした。

「私はおとぎ話を信じます。世界はきっと変えられる。人々の”愛”によって変えていけると信じます」

この力強いメッセージ。

おとぎ話と愛を信じるあなたに。

是非、スクリーンでご堪能頂きたい作品です。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   オリビエ・ダアン

主演   ニコール・キッドマン、ティム・ロス

製作   2012年 フランス

上映時間 103分

予告編映像はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=nfpwL8NEhR4


ジャージー・ボーイズ

ジャージー・ボーイズ

2014年10月23日鑑賞

なんて素敵な映画なんだろう

 

ああ、なんて素敵な映画なんだろう。

これを観たら「アナと雪の女王」さえ、かすんで見えてしまう。

ああ、なんて素敵な音楽映画なんだろう。

監督は、あの人です。

もう、映画界の巨匠と言っていいでしょうね、ここまで来ると。

クリント・イーストウッド監督であります。

クリント監督は「ハズレ」が、まあ、ほぼ、ないんです。

クリント監督の作った作品なら、どんな作品でもそれなりに面白い。

感動したり、泣けてきたり、複雑な感情を、いともたやすく映画の中に絶妙なブレンドで溶け込ませてくれる。

それは、とびっきりうまい、香り高いコーヒーを飲む時のよろこびや、極上のお酒をチビリとやって「うまいなぁ~」と舌を鳴らして感嘆する。そんな極上の時間を演出してくれるのです。

僕は以前、映画館で本作のチラシが置かれているのを観ました。

棚の下の方にひっそりと置かれていました。

チラシの片隅に四人の若者達。

暗がりの中、路上で、スポットライトを浴びてコーラスしている。

全然目立たない、これで宣伝用のチラシなの? と疑うような地味なチラシでした。

手に取ってみると、小さな文字で「監督 クリント・イーストウッド」とありました。

「うそでしょ?!」

もっと派手に宣伝しなさいよ! と思いました。同時に、これは絶対に観に行こうと思いました。

結果。観て損はありませんでした。

もう一度1800円払ってでも「もう一回観たい!!」と思わせてくれました。

僕みたいなヘタクソな物書きの感想文読んでる暇があったら、さっさと映画館へ鑑賞しに行ってくださいませ。

この映画を観るには、出来れば、とびっきりお洒落してゆくといいですよ。恋人やご夫婦で観るもオススメです。

観終わったら、美味しいワインでも傾けながら、この映画をお二人で語り合う、なんてのもいい趣味ですね。

本作は1950年代から60年代にかけて、まさにアメリカン・ポップスを席巻した「ザ・フォー・シーズンズ」というコーラスグループの結成のいきさつから、その解散、そして現在までを描いたものです。

2時間あまりの中に、それだけの内容を詰め込むのは無理があるのでは? とお思いでしょうが、そこはアナタ、巨匠「クリント監督」なんですよ。

脚本は抜群の出来。ストーリーは実によどみなく進みます。しかし、重要なポイントはじっくり描かれてます。

メリハリが効いてるんですね。だから、観ている観客は全然疲れない。

「ザ・フォー・シーズンズ」のメンバーはニュージャージー州の、ありふれた田舎町の不良少年でした。

どっかから、くすねてきたグッズを売りさばいては、それで遊ぶ金を稼いだりしている連中でした。

ただ、彼らの幸運は、たまたまメンバーだったフランキー・バリ(ジョン・ロイド・ヤング)の声が、実に「イカしていた」ことです。

彼の甘ぁ~い裏声(ファルセットといいますね)は、クラブの女の子達を虜にしちゃいます。誰もがうっとりする歌声。その声を聞いて、これも一人の才能あふれるピアノ弾きの若者が「ぜひ、こいつと組んで、バンドをやりたい」と思いたちます。こうして結成されたのが「ザ・フォー・シーズンズ」

やがて彼らはメジャーデビューを果たします。

レコードは売れる、売れる!! テレビ、ラジオには引っ張りだご。コンサートのチケットは即「SOLD OUT!!」

お金が入ってきます。

高級車も買った。群がりよってくる女の子は選び放題。

まさに、アメリカンドリーム、これこそ、サクセスストーリーの王道!!

と、思いきや、彼らにある災難が降り掛かります。それは彼らのグループ活動はおろか、人生を狂わせるほどの、深刻な事態でした。グループはあわや解散と言うところまで追い込まれるのですが……

本作を観ていて、ぼくはまるでコンサート会場にいるような錯覚を覚えました。本作で使われる音楽はまさに極上。

クリント監督は、自身でも作曲するほどの音楽好きで知られていますね。

音楽への造詣が深い、それも映画音楽について熟知している。

どこでどんな音楽を使ったら、この映画はもっと「美味しくなる」のか?

それをクリント監督は、もうねぇ、知り抜いてるのね、この人。

だからこれだけ素晴らしい音楽映画を作れたんですね。

アメリカンポップスを題材にした映画と言えば

ジェイミー・フォックス主演の「Ray」やマイケル・ジャクソンのドキュメンタリー映画「THIS IS IT」などがすぐに想い浮かびます。

これらがお好きな方には、本作はきっと受け入れられるでしょう。

どうぞ映画館で、素敵な4ビートの”ヨコノリ”で、スウィングしちゃってください。楽しい作品ですよ、

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   クリント・イーストウッド

主演   ジョン・ロイド・ヤング、エリック・バーゲン

製作   2014年 アメリカ

上映時間 134分

予告編映像はこちら

 

https://www.youtube.com/watch?v=hpBPUapfxag


蜩の記

蜩の記

2014年10月12日鑑賞

武士ならば弱いものを守りなさい

 

佇まいの良い作品だなぁ~。監督は小泉堯史氏である。

この人は山本周五郎原作、黒澤明監督の遺稿「雨あがる」を監督した。

僕は原作を読み終えた後、しばらく涙が止まらなかった。

ありふれた「市井の人たち」を映画作品として撮る。

しかし、ありふれたひとたちであっても、人の事を思いやる、弱い人の心に寄り添う。そんな生き方が出来る人は、それだけであっても、今の世の中、映画の主人公として撮る価値がある。

本作を観終わった後、小泉監督が表現したかった事が、自分の腹の奥底の方に、ストンと落ちてゆく。

後味が清々しく、美しい作品である。

どこかの国のエラい人が「美しいニッポン」と言った。

「ゲンパツ」とかいう「ホーシャノー」を垂れ流す「巨大湯沸かし器」は

「コントロールできています」と言いきった。

こういう人たちはきっと、「人の事を思いやる、弱い人の心に寄り添う」よりも「自分の出世を思いやる、そのためには、より強い人に寄り添う」のだろう。

そういう人たちに、この作品を見せてあげたいと思う。

まともな人間なら、きっと自分の生き様に「恥」を感じるだろう。

この映画の主人公のように三年先と言わず、今すぐ

「腹を召されよ!!!」

と厳に申し上げたい。

本作の主人公、戸田秋谷(とだしゅうこく・役所広司)は不祥事を起こし、三年後に切腹する運命を受け入れている。

今は自宅蟄居の身だ。その見張り役として、藩から命を受けたのが岡田准一演じる、壇野庄三郎である。壇野は、戸田の逃亡など、不審な行動がないかを常に監視する。しかし、壇野がそこで見たのは、同じ武士として、戸田が極めて尊敬すべき人物であったことだ。

彼は一つの疑問を抱くのである。

本当にこの戸田が「藩主の側室と一夜を共にした」という、驚嘆すべき大罪を犯した人物なのか?

やがて壇野庄三郎は、藩の根幹を揺るがすような事実を知るのだが………

この作品で特筆すべきは、何よりも美しい絵心だ。端正でしっとりとしている。しかし、決して浮つかず、がっしりとした「絵」をスクリーン上に投影させている。小泉監督は、黒澤明監督によって鍛え上げられた、いわゆる「黒澤組」出身である。本作の絵の美しさは、その黒澤作品を上回るのではないか? とさえ思えるほどだ。

かつて黒澤監督は映画の事を「シャシン」と呼んだ。

映像を、キャメラのレンズを通してフィルムに焼き付けること。その、なんとも手作業の感覚が、大切に大切に、小泉監督に受け継がれている感じがする。

スクリーンに映る、日本の風景。日本の家並み。そしてなにより、質素ではあるが、毎日の暮らしを丁寧に、丁寧に生きていた、江戸時代の「ニッポン人」そして「武士」の姿が印象的だ。

私は決して武士の生き方や、所作を美化しようとか、誉め称えようなどとは、これっぽっちも思わない。

「仏作って魂入れず」と言うたとえがある。

いくら武士として武術が優れようが、その所作が寸分なく完璧であろうが、関係ない。

自分より身分の低いもの、立場的に弱い者。そういった人たちに罪を被せたり、辛い暮らしを負担させたりする者は、すでに武士のココロを失っている。

「美しいニッポン」とか言っているエラい人や、どこかの大都会に「世界の運動会」を呼んだぞ!!と浮かれている人々よ。

武士ならば「弱いものを守ってこそ武士」である事をお忘れなく。

 

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   小泉堯史

主演   役所広司、岡田准一、堀北真希、原田美枝子

製作   2014年 

上映時間 129分

予告編映像はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=aS00mZIHWmo


ふしぎな岬の物語

ふしぎな岬の物語

2014年10月22日鑑賞

小百合マジックなんでしょうね

 

タイトル通り、実に不思議な作品でした。これはプロデュースも務めた「吉永小百合マジック」なのかな。

特にドラマチックなストーリーでもない。

原作は未読ですが、元々は、短編をいくつかまとめて連作としたお話らしいですね。それを元に一本の映画としてまとめているのですね。僕はそれを知らずに観ました。

道理で、なんか、悪く言えば、脚本の背骨がそもそも存在しないようなお話なんですね。

岬の端っこに人知れず佇む、ちっぽけな喫茶店。

そこに集まる、ご近所の人々。その日常を、カフェの店主である、吉永さん演じる主人公を中心として、淡々と描いてゆきます。

本作の監督は成島出氏。そのタッチは、本作で登場する虹の絵のように、ほんわかした、水彩画のよう。

こういう作品の場合、自分の興味のある部分だけに着目して楽しむと言う手もありです。

僕の場合は、主人公の甥の暮らしぶりに注目してしまいました。

彼は吉永さんの岬の喫茶店のすぐ隣に住んでいます。

演じるのは阿部寛さん。

ワイルドです。

なんと、お風呂はドラム缶、下は焚き火。

いわゆる五右衛門風呂。

それも青天井、屋外です。

ほとんど、原始的とも言える暮らしぶり。

庭で焚き火を燃やして、ぼーっとしてみたりする。こういう人の住む家は、もちろん牛小屋か、馬小屋を思わせる建物なんですね。その作り込みの面白い事。

また、主人公の喫茶店の横には、実に小さな、真っ白な家が建っています。よくみると、なんと掟破りの屋根。塗りで仕上げてあるんです。

雨漏りしないんだろうか? 

とにかく、かわいらしく、いじらしく、真っ白な姿で、けなげに建っているんですね、この白い家が……

 まあ、本編上映中、僕は正直、ストーリーそっちのけで、そんなところばかり観ていました。でも不思議。

エンドロールが流れる中、なぜか、ふと涙がこぼれました。

そういう映画なんですね。

主演の吉永さんが、コーヒーを入れる時のおまじない。

「美味しくなぁ~れ、おいしくなぁ~れ……」

人生、これもやんなきゃ、あれもやんなきゃ。

もっと、もっと、頑張らなくちゃ、と緊張を強いられる事ばかりですよね。

でもこの言葉を聞くと、

「ゆっくりになぁ~れ、ゆっくりになぁ~れ」と僕には聞こえたのでした。

そんな、ゆったりとした気分にさせてくれる作品ですよ。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   成島出

主演   吉永小百合、阿部寛、竹内結子、笑福亭鶴瓶

製作   2014年 

上映時間 117分

予告編映像はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=ZtgGLLdM2RM

 


奥付



映画に宛てたラブレター2014・11月号


http://p.booklog.jp/book/91103


著者 : 天見谷行人
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/mussesow/profile


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この本の内容は以上です。


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