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団談

 

帰郷二日目。

"小鳥"は"小熊"に連絡を入れた。

すぐに二人は落ち合う事を決め、そのやり取りの中で、

「 海を見に行こう!」

と提案したのは"小熊"。

電話を切る間際、

「 "桜"にも連絡してみっからさ・・」

と言った"小熊"は、やがて愛車をいつかの白いセダンから薄い栗色のワンボックスに変えて"小鳥"を迎えに来た時、その言葉通り助手席に"桜"を乗せていた。

「 "コトキン(小鳥)"久しぶり~」

と笑顔を見せる"桜"。

「 おぉ・・」

と"小鳥"は応え、後ろのシートへと乗り込む。
 
相馬の海を目指して走り出し、

「 "クロキン(小鳥)"、山梨はどう?」

「 思ったよりも田舎でさぁ・・」

「 へぇ、そうなんだぁ 」

" ガヤガヤ・・ウハハ・・ "

三人は久しぶりの再会に盛り上がる。

「 "小熊"も"桜"も相変わらず仲良さそうで良かったよ・・ "りんご"が居ないのは残念だけどね 」

「 いやいや俺らも久しぶりでさぁ、"クロキン(小鳥)"に会いに栃木まで行った後はずぅっとつるんでねがったからさぁ 」

「 んなの?( そうなの?)」

思わず"小鳥"が聞き返す。

「 んだよ~、コイツ全然電話に出ねぇしさ、出たと思って誘ったって断るんだがんね( だからね )!」

「 違うってばぁ、たまたま予定が合わなかっただけだって!」

「 今日だって"クロキン(小鳥)"が来るって言ったがら来たんだベこの~」

少しばかりむきになる"小熊"。車内の雰囲気が重く変わる。

「 ハハ・・」

と"小鳥"が笑いを挟んでもその勢いは止まらず、

「 せっかく"クロキン(小鳥)"が来るっつぅのに、アイツは来ねぇってどういう事なんだよぉ!」

一際大きな声で"りんご"への不満を"桜"にぶつけ、

「 知らないってぇ~、アタシらだってアレっから会ってないんだからぁ 」

"桜"も負けじと声を荒げる。

( 会いづらくなっちまったのかなぁ・・)

"小鳥"は"りんご"との過去を振り返る。
 
 

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ウラハラ

 

あれは友人のアパートで時間を潰す様に過ごしていた東京生活の頃。

友人は進学を果たしたはずの大学には行かずに、人材派遣の会社に出向いては宛がわれる肉体労働で日払いの賃金を手にする生活を送っていて、

( 夢よりもまずは衣食住・・)

福島で描いていたものとはあまりにも掛け離れた都会暮らしの実像を知る事になった。

( このままじゃまずい・・)

そんな予感が込み上げる。
 
都会を象徴するフローリングの部屋で夜な夜な友人と語らいながらも、働きに出掛けた友人を待つ昼間は仰向けの思考に焦りを覚えた。

( 働くっつってもなぁ・・)

働くには住民票なる書類提出が必要だと友人から聞かされてしまうと、

「 ハァ・・」

そんなものを用意して来たはずも無く、溜息が呼気を乱していた。

「 もしもし、"クロキン(小鳥)"元気にしてる?」

"りんご"が電話を掛けて来たのはちょうどそんな時だった。

「 おぉ、"りんご"ぉ! 俺はバリバリ元気だよ!」

心とは裏腹に即席の威勢を披露していたのは、福島を去るまでの終盤に、二人だけが知る出来事があったからである。

親との折り合いがつかず、車中泊をしていた頃、共働きの親の留守を狙って風呂なり着替えなりを済ませていた"小鳥"は、その日遅れて合流予定だった"小熊"と"桜"を待つ時間を消化する為に、"りんご"を連れて自分の部屋に忍び込んだ。

この時の"小鳥"は、

「 出て行け!」

父親から言われたこの一言によって見捨てられたという被害妄想に陥り、すでに東京行きを決意して周囲に伝えていたのだが、そんな"小鳥"に対して"りんご"は、

「 "クロキン(小鳥)"、東京に行かないでよ・・」

灯りを点けない夕暮れ時の部屋が表情を隠す中、小さな輪郭から優しい言葉を奏でた。

返事を躊躇する"小鳥"に、

「 ねぇ、行かないで・・」

更に擦り寄り距離を縮めた"りんご"。
 
その温もりが"小鳥"の威勢を抑え込みながら、異性であると知らしめる。

ソファがわりのベットの上、鼓動は高鳴り、小さくとも柔らかな"りんご"の唇に"小鳥"の唇が向かって行く。

「 行かないでくれるなら・・」

「 えっ?」

細くかすれた"りんご"の囁き。

「 行かないでくれるなら、いいよ・・」

「 あぁ・・」

二人の体は強く重なる事に。
 
 

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