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帰郷

 

待ちに待った正月休み。

"小鳥"は、福島を目指し、"赤鬼"から借りた車を走らせた。
 
交通費を安く抑える為に下道を進み、

( 標識を頼りにして行けば大丈夫だろう・・)

せっかく借りた地図は軽く眺める程度。

その結果、

( あれっ・・)

まんまと道に迷う。

「 すいませ~ん、福島まで行きたいんですけど・・」

歩行者やガソリンスタンドの店員、そして食事に立ち寄ったファミレスの店員などにすがり、何とか福島の実家に到着出来たのは出発から14時間後の事だった。

予想していたよりも体力は奪われ、実家でゆっくりと体を休めるのが懸命な場面である。

しかし、不思議と街に行きたい衝動に駆られ、止まったままの自分の部屋から適当な服を引っ張り出すと、まるで何かに引き寄せられる様に実家を出た。
 
歩く視界に福島駅が見える。

( むきになって過ごしたもんだ・・)

つい最近の自分をまるで懐かしく振り返る。

福島駅の西口から地下道を進み、東口の広場へと続く階段を昇る所まで来た時、高校生活最終年度のある出来事を思い出した。

午後の始業が英語だったあの日は、チャイムがなっても教師が現れず、

「 何かあったんじゃない?」

「 忘れてんじゃないの?」

教室は何と無く浮かれてざわついていた。

間も無くして、

" ガラガラ・・ "

ドアを開いて現れたのは担当では無い教師。

「 えぇと、 みなさん・・ "丸太"先生は急用が出来てしまいまして本日は自習となります 」

それだけを言い残してその教師が立ち去ると、その後はおかしな空気に包まれた。
 
 

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So cute

 

本来来るはずの"丸太"という英語の教師は、身長は低くお腹はポッコリと出ていて、弾けんばかりの顔とくりくりの目玉、禿げ上がった前頭部にはちょこんと一掴み程の髪の毛が残る50代半ば程の男。
 
まるで赤ん坊のままでかくなった様なビジュアルはまさに So cute.

「 ええかねぇ~」

授業中には、この言葉を合いの手の様に頻繁に繰り出し、その心地良い響きは決まって"小鳥"の眠気を誘い、たまに居眠りをしてしまう事もあったが怒られた事は一度も無く、そんな"丸太"に好意を持っていた"小鳥"は、不自然な自習が気になる所となった。

部活で汗を流し、いつもと似た様な疲労を抱えての帰宅。

「 ただいまぁ~」

「 おかえりなさい・・」
 
まだ帰らない父親よりも先に済ませる夕飯時。

「 "小鳥"ぃ、今日ね、東口広場で自殺があったらしいけど・・」

母親が言う。

「 えっ?」

「 あら、知らないの?」

「 うん・・」

特に食い付く事はなかった。
 
 

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