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自然科学大好き!最新科学情報や、知っておきたい科学用語をわかりやすく解説します!

 

1.もくじ

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7.世にも不思議な“平板動物”を各地で確認!世界中どこにでも生息か?


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世にも不思議な“平板動物”を各地で確認!世界中どこにでも生息か?

 アメーバのような多細胞生物

 

 生物の世界は奥深い。世の中にはまだまだ、知られていない生物が存在する。平板動物もその一つ。前後、左右の区別はなく、体中に生えた繊毛を使って水槽の底をいろいろな方向にはい回る。大きさは約1mm。

 

 平板動物のなかまはセンモウヒラムシ (Trichoplax adhaerens)ただ一種。一見するとアメーバだが、アメーバのような単細胞ではない。多細胞である。また、目や神経系はないようだが、神経系を備えていた形跡がある。無性生殖をして雄雌の区別もないようだが、卵をつくることが報告されている。

 

 今回、平板動物を列島各地の海から採集するのに、筑波大学下田臨海実験センター(静岡県下田市)の中野裕昭(ひろあき)助教が成功し、温帯の海域に広く分布する可能性を示した。謎の多い平板動物に光を当てる発見で、6月19日付の英科学誌Scientific Reportsに発表した。

 

 

 世にも不思議な平板動物

 

 平板動物は3層に配置されたわずか5種類の細胞数千個からなる直径 0.5~3mmほどの海産動物。消化管や排出系、呼吸器、神経、筋肉もない。海水浴などで探し出すのは不可能だ。自由生活をする動物としては、世界で最も単純な体制(構造)を持つ動物とされ、古くから進化学者の関心を集めてきた。

 

 ゲノム(全遺伝情報)も2006年には解読され、大半の動物が属する左右相称動物に含まれない原始的な動物と判明した。栄養が豊富なら、分裂して増えて、群集にもなる。しかし、有性生殖過程や成熟精子などがまだ確認されておらず、種類も一つの種に分類されているだけで、なお深い謎に包まれている。

 

 野生からの採集は困難で、初めて報告されたのも、オーストリアの水族館の水槽から1883 年に発見された個体だった。世界で2例目の野生環境からの採集は1977年に日本大学下田臨界実験所(下田市)でなされた。その後、国内の数カ所で生息が確認されたが、研究はあまり進んでいなかった。

 

 中野裕昭さんは、平板動物がこれまで報告されていなかった筑波大下田臨海実験センターでいろいろな採集の仕方を試みた。ガラス板(11cm×7cm程度)をアクリル板の箱に入れて、水槽や海に沈めておき、1カ月ほど後に回収すれば、ガラス板に付いてくる平板動物を安定して採集できることを確かめた。また、石や貝殻を周りの海水とともに研究室に持ち帰り、顕微鏡下で観察することでも採集できることも確認した。こうして有効な採集方法をまず確立した。

 

 日本全国で生存を確認

 

 金沢大学能登臨海実験施設(石川県能登町)、お茶の水女子大学湾岸生物教育研究センター(千葉県館山市)、名古屋大学菅島臨海実験所(三重県鳥羽市)、京都大学瀬戸臨海実験所(和歌山県白浜町)、琉球大学瀬底研究施設(沖縄県本部町)を回り、これらの方法を使ったところ、どこでも採集できた。能登、館山、菅島からは初めての報告となった。

 

 北は日本海側の石川県から、南は沖縄まで採集できた事実からは、人に知られないまま、平板動物が日本の海の広い範囲で生息していることがうかがえる。下田では12月~2月、白浜では12月と、冬でも見つかった。

 

 熱帯から亜熱帯の動物とみられていた平板動物に、冬の海でも生存できる耐寒性があったのだ。イギリスやアメリカ北東部の海から採集されていることも加味すると、平板動物は熱帯や亜熱帯だけでなく、世界中の温帯や亜寒帯の海に分布している可能性が強まった。

 

 研究した筑波大の中野裕昭さんは「人間が知らなかっただけで、これまでも平板動物は意外にどの海にもいたのだろう。今回の成果は、その生態や進化、発生の研究を発展させるきっかけになる。平板動物の研究を通して、動物全体の進化を解明していきたい」と話している。

 

 発見の歴史

 

 1883年、オーストリアのシュッツ (Schuze) によって海水水槽中から発見された。学名である T. adhaerens は、ガラスピペットや顕微鏡のスライドガラスを含む基盤に付着する (adhere) 性質から命名された。

 

 これを中生動物とする説がある一方で、同様の動物を観察したStiasnyは、同じ水槽にEleutheria属のクラゲが出現したことに注目し、これを刺胞動物の幼生であるプラヌラの変形したものだと断定した。それ以降は記録がなかったため、種の存在自体が疑問視され、あるいは刺胞動物として決着済みとの文章も一人歩きする状態が続いていた。しかし、1960年代に再発見され、培養に成功したことにより詳細な研究が進んだ。この結果、他の動物群には属さないことが明らかになり、1971年、新たに設けられた平板動物門 (Placozoa) に分類された。

 

 センモウヒラムシは、器官と大部分の組織を欠いている。神経系も存在しないのだが、神経系を備えた種から進化したことを示唆する証拠もある。背と腹の区別があり、3層に分かれた2000-3000個の細胞から構成されている。背側表面は、1本の繊毛を持ち扁平な「扁平上皮細胞」からなる。腹側表面は、1本の繊毛を持ち柱状の「柱状上皮細胞」および、繊毛を持たない「腺細胞」からなる。腺細胞は消化酵素を分泌していると考えられる。これら2層の間には体液で満たされ、「間充織細胞」がある。

 

 謎に包まれた生態

 

 かつては無胚葉であると考えられていたが、その後の研究で二胚葉であると考えられるようになってきている。また、近年の分子生物学的な研究では、刺胞動物、有櫛動物(いずれも二胚葉の動物群)との類縁関係が指摘されている。DNA量は約1010ドルトン、小型の原生生物と同程度で、全動物中最も少ない。

 

 水深2-3mの海中にガラス板を沈めておくことで、そこに付着したセンモウヒラムシを容易に採集することができる。体表の繊毛によって移動が可能である。単細胞生物や藻類を食物としている。これらの食物を「腺細胞」から分泌された消化酵素で分解し、体表の細胞で養分を直接吸収している。エサを採るために一時的に体の一部を伸ばすことが観察されている。

 

 全体が2つに分かれる分裂によって無性生殖する。また、背面から多細胞の小塊を作りだす出芽も行なう。さらに、1個体当たり1個か2個の大きな卵細胞を生じることが知られていることから、受精によって有性生殖することができると考えられているが、卵と精子を作り出すための、特別な生殖組織は備えていない。

 

参考 サイエンスポータル: 世にも不思議な平板動物 Wikipedia: センモウヒラムシ

 

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