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店に通い始めた頃、マスターには問わず語りに結婚の話をしたこともある。早くおかあさんを喜ばせてあげられるといいですね、と心配そうに言ってくれた顔を思い出した。

 

――そうだ。マスターにも会わせないと――

 

さっそく千春は池田を “スノーフレーク”に誘うことにした。

 

 

 

「いらっしゃいませ。おや、千春さん。珍しい! カップルで」

「ええ、マスターにも色々()()を言って心配かけたけれど、今度結婚することになったから、彼を紹介しようと思って」

「いやあ、そうなんですか? とうとう結婚決まったんですか?」

マスターがうれしそうにカウンター席に座ったふたりの顔を交互に見た。

 

「はじめまして。池田です。千春さんとは同じ会社で働いています。以前から千春さんに恋していたんですが」

“ドーン!”

音が鳴ったとたん、池田はビクッとしたようにあたりを見回した。

 

 

「ああ、なんでもありません。店が古いもんですからね。木がきしんで音が鳴るんですよ。耳触りで申し訳ありません」


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“ドーン!

「ほらね」

 

「そうなんですか。そういえばインテリアもアンティーク調でいい感じですね」

池田がそう言うと、どこからともなくいい香りが漂ってきた。

 

「千春さんの結婚が決まったなんてうれしい限りですよ。お祝いに僕のおごりでシャンパンを抜きましょう」

「マスターったら。まだお式の日も決まってないのに」

「そうですよ。もっとも僕の中ではもう決まっていますけどね。実は僕、バツイチなんですけど、千春さんとこうなってわかりました。僕は千春さんと結婚するために生まれてきたんだって! 僕は死ぬほど千春さんに惚れてるんですよ」

“ドーン!”

 

それから店を後にするまでの二時間足らずのあいだ、池田が甘い言葉を並べ立てるたびに天井から  “ドーン!” と音がした。千春は、次第に疑惑の念が湧いてくるのをどうすることもできなかった。

 

次のカップルが来店したのを(しお)に店を出た。公園に差しかかったところで、どうしても彼の気持ちを確かめずにはいられなくなった。

「ねえ、雅樹さん、本当にわたしと結婚したいと思ってるの?」

 

「えっ? どうしてそんなこと言うの?」


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奥付



天空から降りてきた世にも奇妙なお話 Part 1(Renewal)


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著者 : サラ・シリウス
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