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てきすとぽい杯について
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各夜のお題
第17回 募集要項
第17回 審査結果
入賞作品紹介
《大賞》
『百鬼夜行の客商売』 みお
《入賞》 ※得票順/シリーズ作品は並べて掲載
『ヘッセ』 犬子蓮木
『高速道路』 粟田柚香
『集合住宅』 粟田柚香
『シーサイド・ヒル』 大沢愛
『ルーインズ』 大沢愛
『スタティック』 大沢愛
『クリスタル・ムーン』 大沢愛
〈候補作品〉 ※得票順/シリーズ作品は並べて掲載
『The Friendly Ghost』 碧
『The Not-Friendly City』 碧
『創造主の箱庭』 kenrow
『生々しさ』 フィンディル
『幽霊アカウント』 muomuo
『男死病』 muomuo
『名無しの少年』 muomuo
『絆』 muomuo
『そうやって大人になっていく―丁稚安吉の場合』 志菜
『せやせや』 せせせ
『曲り角奇譚』 茶屋
『幽霊屋敷に住むものは』 永坂暖日
『便利な家』 ◆BNSK.80yf2
『助手席の彼女』 永坂暖日
『できごころ』 しゃん@にゃん革
『幽霊屋敷の浴室』 山田佳江
『桜屋敷』 茶屋
『幽霊の生業』 豆ヒヨコ
『幽霊船』 小伏史央
『幽霊屋敷の記憶』 三和すい
『記憶喪失になった俺が大学受験に挑むのだ』 ひこ・ひこたろう
『館長さん』 晴海まどか
『怪談は幽霊屋敷で』 松浦徹郎
『幽霊空き家』 永坂暖日
『九朗右衛門事件帳』 茶屋
『幽霊屋敷の一件』 碓氷穣
『歌声』 茶屋
『ぼくがいまよみたいしょうせつてきすとぽいばーじょん』 ひやとい
『歴史の勉強』 しゃん@にゃん革
『新幹線の中で』 ひこ・ひこたろう
『ぼくとお屋敷』 犬子蓮木
『紅白歌合戦の舞台に俺は立ったのだが』 ひこ・ひこたろう
『幽霊屋敷から出て来たのは古切手』 ひこ・ひこたろう
『大学祭』 ひやとい
『薔薇の香り』 げん@姐さん
『Haunted Horizon』 木野目理兵衛
〈集計外作品〉 ※投稿順
『柿のお供え』 高田@小説垢
『僕がオトコノコを止めた理由』 文才無い魔女
『変な旅』 鳥居三三
〈関連作品〉
関連作品のご紹介
終わりに
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『変な旅』 鳥居三三

第四夜エントリー
※お題「幽霊屋敷」が不足

投稿時刻 : 2014.05.06 23:43
総文字数 : 2336字

獲得☆2.833
 東急バスの横についたこの会社のロゴは、長らく図鑑か写真などでしかみたことがなかった。特急や電車ではたまにお目に掛かっていたが、都心の郊外に調査で出かける、というシチュエイションは、縁がなければバスの横についているロゴを間近に見る、というのは下手をすれば一生縁がない話ではある。
 大学の先生や都内に支部のある営業、もしくは知り合いがいれば違うかもしれないが、30年以上、びうびうと地吹雪を立てて雪の降る10万人都市しか知らなかったヤモメの中年男性、つまり私みたいのがふらりと辿り着くとは思わなかった。
 銀色の背景に赤く映える一つ目玉と三つ襟。それが今自分をにらみつけている。その目玉は、きっと強盗慶太の眼鏡の下にあるものに違いない、と文学かぶれのような世迷い言を思いつきながら、かといってそれをつぶやくのも味気なく、そのバスに乗り込んだ。

 なんでも東京に自分の親戚がいるらしく、今回は、そこにうちの父の死去を伝えに来た。
 「らしく」というのは実のところ、子供の頃に話に「あいつは大金持ちの立派なヤツだ」としか聞かされず、それがどんな顔をし、性別、年齢をしていたかすらとんと検討がつかない。ただ、その時に頭を撫でる手の、なんとも緩やかでやさしいこと、そして同時にどこまでもはるか遠くを眺めていた父の目を今でも覚えている。
 父の遺言状らしき端書きには「東京のHのところへ渡してほしい手紙がある」とあり、それを手にした母が「どうしたものだか」というので、なにも考えず「では、渡してきましょう」というと、私の眼をじぃっと見た後、いままでに聞いたこともないような重たいため息をはぁと深くつく。そして電池の切れたようにだらりなった体を、急に忙しく動かしだし、私にいくばくかの路賃を渡し、支度を整えさせ、すっかり追い出す準備を整えた。
「結局、思い出の中に行ってしまったねえ、あの人は」などといった後、「気をつけていってらっしゃい」といって家の奥に引っ込んだので、まあこれで私は出発するしかないのだろう、とおずおずと家を出ることになった。

 バスに乗ったのは、その親戚Hからのハガキに従ってのことである。といってもそのハガキの投函されたのは悠に20年以上前。そこに「駅から04系統のバスで、『屋敷前』で降りてください。すぐにわかります。」と書いてあったのを素直になぞっているのだ。電話番号ぐらいあればいいものを、ご丁寧にそれだけはそれまでの書簡の、どこにも載っていなかった。電話帳にも、父のメモにも載っていない。むしろ父も私も、実は母も、だまされているのではかろうかと思ったが仕方がない。
 屋敷前、というところに着くと、確かに屋敷が建っている。いやこれほどご丁寧に建っている洋館というか、古いビルというか、というもなかなかない。窓には無骨な鉄格子、大きめの窓は網目の入ったすりガラスで、鉄扉はかつて青色で塗られていたのかもしれないがガリガリと随所に錆が彩っている。まだらな灰色な壁面は、銃弾がばらばらとめり込み、そのままうらぶれた姿でそれはそこに佇んでいた。

 「ほう、手紙を封も開けずに持って歩くとは、君もとんだお人好しか、さもなくば馬鹿だね」
 突然後ろから声を掛けられた。
「なんで封を切ってないってわかるんです?」
「開ければその封筒は真っ赤に染まるようになっているからさ。ハトロンにおさまらないほどの血糊が溢れだし、それはそれはいい見物になる」
「やな趣向ですね。僕はそういうのは好きじゃない」
「そうかい? 君の父君も、まあそういう真面目な方だった。その真面目さが遺伝するとはちと意外だったな。あの母君から変な仕込みをされているものとすっかり思ったものだから」
といって近づいてきたのは、まだあどけなさが残る、はずの少年だった。もうさっきのセリフを聞いて、あどけなさがどうという油断は捨てるほうが身のためだという警報の鐘がカンカンとなっている。

「まあ、そんなに固くなるなよ。慎重かつ老獪な君の母君を持ってしても、ボクと君の父君の企みのほうが上を行った、ってことさ。だからこそその格好で君を送り出したのだからね。」楽しそうに、私の襟についたバッチを指さす。そういえばなんでこんなバッチをつけているのだろう。

ああ。目の前にいるのは少年だとか、いろいろな矛盾とかを押しのけることにした。間違いない。私はこう尋ねる。
「あなたが、H、さんですね」
「そうだ。直感を信じてそう発言した君の勇気を讃えよう。いいぞ、いいぞ。まさにあい つの子だ。そしてこれから一緒に行動するに文句ない。君はこれからいろいろな目に合う。そしてそれは半分は昔から定めてあったことなのさ。まあ、非難する権利ぐらいくれてやる。ただ、君の喧嘩相手はボクじゃない。もっと恐ろしいモノを相手にするのだよ。」
「二十面相かガリガリ博士か、それとも深淵の神とかいうんじゃないでしょうね?」

「全部さ」

なるほど、これは思い出の中に迷い込んだに違いない。いつから迷い込んだのか、それも探さないと。ひとりつぶやいたつもりであったが、

「賢明だ。もうバスに乗ったあたりではすっかり『こっち側』さ。でもボクは誓う。君は絶対にきちんと返す。だからそれまではボクと一緒にいてほしい」
「そう、簡単に信じると思ってるんですか?」
「信じるさ。君の目は、父君とよく似ているし、かつて、まさにこういう瞬間に、同じセリフを言ってくれた。」

鈍い銀色一色になる冬のあの街より、この世界を歩くほうがよっぽどましなだけではあったが、それを含めて見透かしているのだろうとは思った。

そうしてこのHとの旅を始めることになり、まあ、母さん、まだ当分戻れそうにありませんが、家のことをもう少しよろしくお願いいたします。

関連作品のご紹介

 お題の「幽霊屋敷」「大金」などを取り入れたTwitter小説を書いてくださった方がいらしたので、Togetterにまとめページを作成いたしました。ぜひこちらの作品もあわせてお楽しみください。

てきすとぽい杯のお題でTwitter小説 - 2014
http://togetter.com/li/654769
 

※ 他にも関連作品がございましたらリンク追加いたしますので、見かけた方はご連絡くださいませ。

終わりに

 第17回てきすとぽい杯、GW特別編、お楽しみいただけましたでしょうか。
 今回は、四夜連続・お題積み上げ式レースと題しまして、大型連休の終盤5月3日~6日、四日間に渡って毎晩1時間15分制限の即興執筆会を連続開催させていただきました。
 複数日をまたいでの改稿や連載、連作形式も可、ということで、いつもよりも幅広い長さ、構成、作風の作品に恵まれたように思います。最終的に、改稿形式1、連載形式5、連作形式4シリーズを含む、なんと49もの作品をお寄せいただきまして、充実の第17回となりました!

 お題につきましても、いくつか新しい試みをさせていただきまして、一夜につき1つずつ追加となる積み上げ式には、思ったよりも抵抗なくご参加いただけたかな、という印象がありましたが、作品をご覧になってはいかがでしたでしょうか。
 ただ、最終夜、ペンネーム頭文字の予測変換に関しては、ペンネームそのものが出てしまったり、既出のお題(幽霊屋敷)が出てしまったり、居住地や訪問先など、個人情報に近い情報が出てしまったりと、課題も多く、ご参加の方々には困惑させてしまうことにもなってしまったかと思います。
 一方で、読者視点としましては、作品のバリエーションが幅広くなる楽しみもあり、課題に対しては対策を検討した上で、こういった、ご参加者ごとに異なる語となるお題も、時折取り混ぜてゆければと考えております。

 審査結果を拝見しましては、やはり長さ、物語の複雑さに優位性があるためか、連載・連作の形を取った作品の多くに、高い評価がついた印象がありました。
 また、☆投票による評価では見えづらいものの、今回は、それぞれに一味、工夫の凝らされた作品、個性や特徴の感じられる作品が非常に多く、特別賞の選考に迷う回でもありました。
 最終的に8つの作品を特別賞とさせていただきましたが、他にも幾つも特別賞を贈りたい作品がありましたこと、ここに書き添えさせていただきたいと思います。


――最後になりますが、各夜、お題も条件も違う四夜連続、連載あり、連作あり、という、あまり公平とは言えない条件の下で、それでも様々な工夫の籠められた、楽しい作品を多数お寄せいただきましたこと、毎月のてきすとぽい杯開催の何よりの原動力でありますとともに、ご参加くださった全作者さまに感謝を、そしてまた、投票・感想・チャットへもご参加くださった皆さまへも、この場をお借りしてお礼申し上げます。

 てきすとぽい杯、次回からはまた通常開催に戻りまして、毎月中旬、土曜夜の開催を予定しております。
 お時間ございましたら、またぜひ、お気軽にご参加くださいませ。

2014年6月25日
てきすとぽい杯 運営担当

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最終更新日 : 2014-06-25 22:07:54

奥付



てきすとぽい杯 作品集
〈第17回〉


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編集まとめ : てきすとぽい
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てきすとぽい プロフィール
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表紙デザイン : 蟹川森子
てきすとぽい杯コピー : 茶屋休石


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最終更新日 : 2014-06-25 22:09:43

この本の内容は以上です。


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