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超高速!参勤交代

超高速参勤交代

2014年7月4日鑑賞

値千金!いわきの大根侍達

 

先入観と言うのは恐ろしいものだと思う。

何ヶ月か前、映画館で本作のポスターを見たとき、

「佐々木蔵之介主演?! ヒットする訳無いだろう」

と思っていた。こちら神戸の映画館では、当初一日3回上映。まあ、様子見と言うところだろう。

ところが、口コミで面白さが伝わったのか、来週には一日四回上映が決定! なんと上映回数を増やしたのだ。

この場をお借りして、主演の佐々木蔵之介氏と、本木克英監督にお詫び申し上げたい。

本作のキャスティングを見て真っ先に僕が思ったのは、

「予算だな」ということだ。

時代劇はカネがかかる。やむ終えず、有名俳優を使うより、演技力のあるリーズナブルな中堅俳優達で固めよう。そういう意図が見えるキャスティングなのである。その中「硫黄島からの手紙」でハリウッドデビューを果たした伊原剛志氏と、深田恭子氏が出演し、本作に華やかさを与えている。

 物語は東北の貧乏な小藩、湯長谷藩でのお話。参勤交代を終え、ほっとひと息。江戸時代、この参勤交代と言う制度は、各藩にとって大変な財政的負担となったようである。湯長谷藩のお殿様(佐々木蔵之介)は領民に優しく、年貢の取り立ても、それほどきつくはない。数年前に起こった飢饉の影響もあって、家老である、相馬(西村雅彦)から「もっと年貢を取り立てては」というアドバイスも頑として受け付けない。

民百姓は苦労しているのだ、我々、武士が我慢すればよい。ということで、お殿様自ら一汁一菜、大根の漬け物を食べて我慢しているのである。

そこへ江戸藩邸から急な知らせが入る。

「殿、一大事です!! 五日以内に再び参勤しなければ、我が藩はお取り潰しです!!」

城内大騒ぎ。

通常、湯長谷藩から江戸まで最短10日間はかかる。しかし、五日以内に参勤しなければ、領地召し上げだ。無茶苦茶で理不尽な話である。実はこの無理難題、幕府の老中(陣内孝則)の画策なのだ。彼の目当ては、この弱小藩を取り潰し、領地を我がものにする事にあった。極秘に仕入れた情報では、この弱小藩には、秘密にしている金の鉱脈があると言うのだ。

湯長谷藩の殿様は決断する。やるしかない。カネも物も、人材も少ない弱小藩。彼らは知恵の限りを尽くし、参勤交代を「超高速」で行う方法にチャレンジするのだった……。

と言う訳で、彼らの悪戦苦闘ぶりを助けることになる、忍びの者に伊原剛志氏。彼の切れのいいアクションシーンや、藩主演じる佐々木蔵之介氏の殺陣シーンなど、これはハリウッド映画がやってみたい、と思っている事を、言っちゃあ悪いが、日本のB級俳優達が、ぬけぬけとやってしまった感があり、それ自体が実に痛快!

予算をガブ飲みして、ファミコンゲームの亜流みたいな”映画ならぬ”「映像コンテンツ」を量産している、メジャー映画界への、切れ味鋭い批判とも受け取れる。

なにより、本作の背景には「福島・いわき」がある。

中央から搾り取れるだけ搾り取られ、嫌な原発も押し付けられ、挙げ句の果てに、愛する自分の故郷もめちゃくちゃにされてしまった(もちろん沖縄県はその代表だ)そういう「地方」から「中央」への強烈な「ちゃぶ台ひっくり返し」「百倍返し!!」の映画なのだ。

本作は「水戸黄門」を観た後の、予定調和なんだけど、でもやっぱりホッとする、そういう感覚がある。

米の飯を食った後には、梅干しであったり、大根の漬け物がないと、何となく物足りない。同様に、エンターテイメント映画であっても、その根底に批判精神を持ち合わせている作品でないと、やはり物足りない。

その点、本作は紛れもなく、地方から中央への痛烈な「異議申し立て」の批判精神を持ち合わせた作品なのである。

その志にこそ「値千金」の価値がある。

いちど、いわきの大根漬けを食べてみたいものである。

**************

天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

**********

作品データ

監督   本木克英

主演   佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志

製作   2014年 

上映時間 119分

予告編映像はこちら

 

https://www.youtube.com/watch?v=RngrAI-263I


奥付



映画に宛てたラブレター2014・7月号


http://p.booklog.jp/book/87114


著者 : 天見谷行人
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/mussesow/profile


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