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青天の霹靂

青天の霹靂

2014年6月19日鑑賞

映画監督「劇団ひとり」に注目!

 

いい作品つくってくるねぇ~。以前劇場で観た「陰日向に咲く」も僕は大好きだ。あの時は原作者としての映画参加だったけど、今回は遂に監督デビュー。一般ピープルは「芸人がつくった映画なんてねぇ」という色眼鏡で見てしまうが「劇団ひとり」の才能は侮れない。

僕は「陰日向に咲く」のストーリーの面白さ、作品の完成度の高さもあって、今回の「晴天の霹靂」も躊躇する事無くチケットを買った。

主人公の売れないマジシャン、轟晴夫(とどろきはるお)を大泉洋が演じる。

オープニングのシーン、晴夫役の大泉洋が見事なマジックを披露する。吹き替えではない証拠に、ここ、ワンシーンワンカットの長廻しなのだ。相当練習したんだろうなぁ~。

さて、主人公晴夫に、行方不明になっていた父親が死亡した、と警察から連絡が入る。父親はホームレスになっており、誰にも看取られる事も無く、河原で亡くなっていた。父親が息を引き取った河原にたたずむ晴夫。そのとき彼は突然激しい雷とともに、父親がかつてマジック芸人として活躍していた1970年代にタイムスリップしてしまう。やがて、何の因果か、晴夫は浅草の大衆劇場で、支配人に気に入られ、こともあろうに、実の父親、正太郎(劇団ひとり)とコンビを組んで、マジックを披露する事になるのだった……。

この浅草の大衆劇場。その支配人を風間杜夫が演じる。

この人がなんともいいのだ。

名作「蒲田行進曲」で演じた「銀ちゃん」

あの雰囲気、テイストで演じているのである。べらんめぇ調で、男気があって、気っぷがいい。(銀ちゃんは手下に奢る事に、独特の美学と、ちょっとシブチンなところがあったね)

「蒲田行進曲」ファンは、この風間杜夫の演技をスクリーンで観るだけでも十分「モトはとれる」作品だと思う。

主役の大泉洋。僕はこの人、はっきり言って嫌いだった。映画やテレビに出て来るだけで、もう、どこかふざけていて、チャラい感じが漂って好きになれなかった。ところが……。

本作では、父親や、自分を残して失踪したと聞かされている、母親(柴咲コウ)の姿、生き様に、そして、こんなくだらない自分はどう生きたらいいのか?と苦悩する人物を、実に誠実に演じている。そこに一切の悪ふざけは無い。こんなに大まじめに、真摯に映画と向き合う人なんだなぁ~、と爽やかな感動を残す演技なのだ。

初監督としての「劇団ひとり」はどうだろう。

けっして奇をてらったり、観客のウケを狙ってやろう、と言うような下衆なところは全くない。実に正攻法で映画を作っている印象がある。

コツコツと良い脚本を作り、的確なキャスティングをし、映画に必要とあれば、俳優にマジックも習得させる。用意周到に、じっくり作り込まれた作品である事は間違いない。

並の監督作品でもなかなか、ここまでの完成度に仕上げてゆく事は難しい。現代の日本映画界を牽引する多くの監督の皆さん、大変な強敵が現れましたよ。今後も映画監督「劇団ひとり」にご注目を!!

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆☆

総合評価 ☆☆☆☆

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作品データ

監督   劇団ひとり

主演   大泉洋、柴崎コウ、風間杜夫

製作   2014年 

上映時間 96分

予告編映像はこちら

https://www.youtube.com/watch?v=6l438JVN-4k

 

 


円卓 こっこ、ひと夏のイマジン

2014年6月24日鑑賞

命をイマジンしてごらん

 

芦田愛菜ちゃん主演ということで、54歳のおじさんは、にやけ顔で観に行った訳です。まさか、ここまで哲学的なテイストに仕上げられた作品だとは思いもよりませんでした。

この作品は、もとより、芦田愛菜という女優(この人に子役と言う言葉は失礼)ありきで作られたのは明らか。

きっとラブリーで可愛い映像に仕上がっていると、オジサンは勝手に思い込む訳です。

それにしても、芦田愛菜の演技力は、他の子役達とケタ違いだぞ、これは……、なんてオジサンが思ってると「こっこちゃん」は

「うっさい!!ボケ!」

とスクリーンから強烈なカウンターパンチを食らわせてくれます。

主人公のこっこちゃん、まあ、とにかく口が悪い、悪態をつく、毒を吐く。ハスに構えて大人を皮肉な眼で眺める。

気になった単語は、いつもジャポニカ学習帳に書いておきます。

ちなみに大好きな言葉は「こどく」

こっこちゃんは人間に降り掛かる「不幸」だとか「不運」だとか「宿命」だとかが大好物!! 憧れさえ抱いています。

「めばちこ」になったり「不整脈」で倒れたクラスメートを見て

「めっちゃ、カッコええやん!!」と真似してみたりします。

そんなこっこちゃんを、おじいちゃん(平幹二朗)が優しく包み込むように語りかける言葉。

「他の人が何を思うてるか、想像してみぃひんか? それがイマジンや」

この作品を象徴する言葉です。まさに本作を鑑賞するには「イマジン」が必要。想像と空想、大人が思い至らない、子供の心。

こっこちゃんのクラスには友達も作らず、孤立した女の子がいます。「死ね」と書いたノートの切れ端を山盛り一杯、ある場所に隠し持っています。この子はどんな気持ちで学校に来ているのだろう?

さて、夏休みになりました。宿題の自由研究は何にしよう?

こっこちゃんの研究テーマは、毎日何匹の蚊が自分の血を吸うのか? 蚊をバシバシ叩き殺して、毎日記録を取り始めるこっこちゃん。今日は何匹の蚊を叩き殺したのかな? この蚊もひとつの命なんだよね。

学校で世話しているウサギを散歩させるこっこちゃん。ウサギを顔に載せてみると、あったかい。息をしている。心臓が動いている。

生きてるってどういう事だろう?

こっこちゃんの家族は、みんなで食事をします。それを象徴するのが中華料理店でおなじみの「円卓」

ここに並べられた美味しそうな料理。これもいろんな命を頂いている訳ですね。ここでヒラ社員のお父さん(矢嶋智人)から大発表。お母さんのお腹に新しい命が宿りました。

こっこちゃんは、もうすぐお姉ちゃんになるのです。

産まれて来るのも、死ぬのも、病気も、人生にふりかかる宿命も、ぜ~んぶひっくるめて、やっぱり生きてるって素晴らしい事なんだ。こっこちゃん、忘れずにジャポニカ学習帳に書いておこうね。

 

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆☆

美術 ☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   行定勲

主演   芦田愛菜、伊藤秀優、矢嶋智人、平幹二朗

製作   2014年 

上映時間 113分

予告編映像はこちら

 

https://www.youtube.com/watch?v=XrO29NUZahM


超高速!参勤交代

超高速参勤交代

2014年7月4日鑑賞

値千金!いわきの大根侍達

 

先入観と言うのは恐ろしいものだと思う。

何ヶ月か前、映画館で本作のポスターを見たとき、

「佐々木蔵之介主演?! ヒットする訳無いだろう」

と思っていた。こちら神戸の映画館では、当初一日3回上映。まあ、様子見と言うところだろう。

ところが、口コミで面白さが伝わったのか、来週には一日四回上映が決定! なんと上映回数を増やしたのだ。

この場をお借りして、主演の佐々木蔵之介氏と、本木克英監督にお詫び申し上げたい。

本作のキャスティングを見て真っ先に僕が思ったのは、

「予算だな」ということだ。

時代劇はカネがかかる。やむ終えず、有名俳優を使うより、演技力のあるリーズナブルな中堅俳優達で固めよう。そういう意図が見えるキャスティングなのである。その中「硫黄島からの手紙」でハリウッドデビューを果たした伊原剛志氏と、深田恭子氏が出演し、本作に華やかさを与えている。

 物語は東北の貧乏な小藩、湯長谷藩でのお話。参勤交代を終え、ほっとひと息。江戸時代、この参勤交代と言う制度は、各藩にとって大変な財政的負担となったようである。湯長谷藩のお殿様(佐々木蔵之介)は領民に優しく、年貢の取り立ても、それほどきつくはない。数年前に起こった飢饉の影響もあって、家老である、相馬(西村雅彦)から「もっと年貢を取り立てては」というアドバイスも頑として受け付けない。

民百姓は苦労しているのだ、我々、武士が我慢すればよい。ということで、お殿様自ら一汁一菜、大根の漬け物を食べて我慢しているのである。

そこへ江戸藩邸から急な知らせが入る。

「殿、一大事です!! 五日以内に再び参勤しなければ、我が藩はお取り潰しです!!」

城内大騒ぎ。

通常、湯長谷藩から江戸まで最短10日間はかかる。しかし、五日以内に参勤しなければ、領地召し上げだ。無茶苦茶で理不尽な話である。実はこの無理難題、幕府の老中(陣内孝則)の画策なのだ。彼の目当ては、この弱小藩を取り潰し、領地を我がものにする事にあった。極秘に仕入れた情報では、この弱小藩には、秘密にしている金の鉱脈があると言うのだ。

湯長谷藩の殿様は決断する。やるしかない。カネも物も、人材も少ない弱小藩。彼らは知恵の限りを尽くし、参勤交代を「超高速」で行う方法にチャレンジするのだった……。

と言う訳で、彼らの悪戦苦闘ぶりを助けることになる、忍びの者に伊原剛志氏。彼の切れのいいアクションシーンや、藩主演じる佐々木蔵之介氏の殺陣シーンなど、これはハリウッド映画がやってみたい、と思っている事を、言っちゃあ悪いが、日本のB級俳優達が、ぬけぬけとやってしまった感があり、それ自体が実に痛快!

予算をガブ飲みして、ファミコンゲームの亜流みたいな”映画ならぬ”「映像コンテンツ」を量産している、メジャー映画界への、切れ味鋭い批判とも受け取れる。

なにより、本作の背景には「福島・いわき」がある。

中央から搾り取れるだけ搾り取られ、嫌な原発も押し付けられ、挙げ句の果てに、愛する自分の故郷もめちゃくちゃにされてしまった(もちろん沖縄県はその代表だ)そういう「地方」から「中央」への強烈な「ちゃぶ台ひっくり返し」「百倍返し!!」の映画なのだ。

本作は「水戸黄門」を観た後の、予定調和なんだけど、でもやっぱりホッとする、そういう感覚がある。

米の飯を食った後には、梅干しであったり、大根の漬け物がないと、何となく物足りない。同様に、エンターテイメント映画であっても、その根底に批判精神を持ち合わせている作品でないと、やはり物足りない。

その点、本作は紛れもなく、地方から中央への痛烈な「異議申し立て」の批判精神を持ち合わせた作品なのである。

その志にこそ「値千金」の価値がある。

いちど、いわきの大根漬けを食べてみたいものである。

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天見谷行人の独断と偏見による評価(各項目☆5点満点です)

物語 ☆☆☆☆

配役 ☆☆☆☆

演出 ☆☆☆

美術 ☆☆☆☆

音楽 ☆☆☆

総合評価 ☆☆☆

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作品データ

監督   本木克英

主演   佐々木蔵之介、深田恭子、伊原剛志

製作   2014年 

上映時間 119分

予告編映像はこちら

 

https://www.youtube.com/watch?v=RngrAI-263I


奥付



映画に宛てたラブレター2014・7月号


http://p.booklog.jp/book/87114


著者 : 天見谷行人
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/mussesow/profile


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