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神聖かまってちゃんアメイジング・スパイダーマン2

 

愛されなかったすべてのふつうの者たちへ


アメイジング・スパイダーマン2はリア充映画ではなかった。

ボンクラ映画だった。

 

 

内容はざっとこうだ。スパイダーマンとしてニューヨークの平和を守るピーターは恋人グウェンがいた。彼女の亡き父親と交わした「彼女を危険に巻き込まないために別れる」という約束のはざまでピーターは苦しんでいた。見かねたグウェンは、彼と別れることを決意する。その頃、事故で電気人間となってしまったエレクトロは人びとから人気のスパイダーマンを憎み、倒そうとしていた。

 アメイジング・スパイダーマンの主役ピーター・パーカーを演じるアンドリュー・ガリューは男前である。恋人グエン・ステーシー役のエマ・ストーンも画になる愛嬌あるかわいさだ。劇中では学校一のカワイさとなっている。

 これはどう考えても、われわれ弱き者が共感する隙間がない。戦闘パートが目的、その他のドラマパートはそれを展開させるためのあれこれだ程度に考えていた。しかし、それはまったくちがっていた。

 

 ピーターはグエンの愛にたいして踏み込みきれないでいた。

グエンの家族と一緒に食事する場面、直前になってピーターは店に入ることができない。それはグエン父の「巻き込まないために別れろ」と言い渡されていたからだ。その罪悪感で彼は押しつぶされそうになっていた。

 

 

 どうしたの?と尋ねられても答えられないピーター。「父のことね」と顔をみただけで一瞬で察するグエンだった。

 

 こういう場面は劇中で何度もあった。イギリスに留学するという話をするグエンにピーターは動揺しながら「え…ああ、すばらしいね…!それは。……アッハッハ…」なんて祝福しようとする。

 グエンにたいする愛が伝えられないピーター。それはグエン父との約束以前に原因があった。

 ピーターは幼い頃に両親がいなくなってしまった。親戚夫婦に愛情いっぱい育てられたが、それでも彼の心には両親にたいするひっかかりがあった。

劇中では、育てのおばさんに、「両親がいなくなった理由を何度も聞いてきたがいつもはぐらかして教えてくれない」というセリフがある。

 ついにおばさんはピーターに本当のことを告げる。ピーターの両親は科学者だった。お金のために貴重な実験データを盗んで、ピーターを置いて出ていったというのだ。

 愛されていなかったことを知ったピーターは絶望する。

 そのあとグエンに会うが、やはり気持ちを伝えられず、イギリス留学を応援してしまう。家に帰り、自分のどうしようもなさで部屋のものをぶちまける。人を失っていくことに彼は苦悩する。そもそも失っていく以前に、両親から何も受けとってなかったことに絶望していた。空洞なのだ。だからグエンに会っても気持ちを口に出せないのだ。

 それは、ピーターが受けとっていないからである。受けとっていないから人に与えられないのだ。

これは表現物でしばしば出てくるテーマである。アニメなら幾原監督の劇場版「セーラームーンR」や「廻るピングドラム」、庵野のTV「新世紀エヴァンゲリオン」で描かれる。

 人間愛を根底で与えられなかったという意識の者たちの物語だ。

 

 しかし、物語後半、あることがきっかけでピーターは両親のほんとうの意志を知る。開発データは政府が目をつけるほど危険度が高く、それを持って家を離れることはピーターを守るために仕方がないことだった。彼は自分が愛されていたことを知って涙する。

 ピーターは空港に向かうグエンをギリギリで呼び止めて、ついに自分のほんとうの気持ちをつたえる。

 グエンに愛のことばをいえるようになったのだ。両親に愛されていたということを知ったことによって、自分も人を愛していいんだということを知ったピーター。

 愛という感情を与えられたから、それを人に与えることができるようになったのだ。

 人々に希望も与え、愛も兼ね備えたスーパーヒーロー完全版スパイダーマンの誕生である。

 

 

 

 ここからが言いたいことだ。ラストを思い返してみる。

 スパイダー不在のニューヨークでサイ型のパワースーツを着た敵が現れた。人間を超えた圧倒的パワーに警察たちはなすすべがなかった。そこに立ち向かった幼いこどもがいた。その子はホビーショップで売ってそうなだぼだぼのスパイダーマンスーツに身をつつみ、敵と対峙する。ガトリング砲を撃ちまくって街を破壊してる敵と素手の子どもである。圧倒的な力差の前に周囲や母親が戻ってくるよう叫ぶ。じつはその子は映画冒頭で助けたこどもだった。

人は受けとったことを人に与える法則がある。かれはスパイダーマンから希望をうけとったからこそ敵の前に立ったのだ。

しかし、思い出してみてほしい。

そのこどもはいつスパイダーマンに救われた? まだ愛を覚えてない時点のスパイダーマンである。これは熱い。

ようするに、われわれは愛を、I LOVE  YOU をもってなくても(知らなくても)人に希望を与えることができるってことなのだ。

たとえば、われわれボンクラは人を愛せない集団である。人を好きになれるかもしれないけど、最後の最後までは踏み込めないわけだ。だから西野カナやエグザイルとかああいうヤンキー的な人が歌う「愛」が信じられない。なぜなら、そこに罪悪感や闇などがなく、一辺倒だからだ。きれいごとにしかないように思えてしまう。だから「愛」というものが苦手だ。

 しかしその一方で、われわれは愛というものに絶対的な力を感じている。さまざまな表現物で愛というものがはるか昔からいまのいままでずっと語られているのを見ているからだ。

それはボンクラにとってすんなり受け入れられるものではない。憧れの一方ですごく憎んでいる。知らない・よく分からないゆえの憧れと、自分だけが知らないという焦りからくる憎しみだ。たとえば、童貞に似ている。セックスにたいする憧れと、一方で周りが済ましていくギャップに憎悪がうまれてケッと思ってしまう。

 で、「愛」ってすごい力があるような気がする。「気がする…」なんですね、わたしたちは。ぶっちゃけよく分からないんですね「愛」というものが。

 アメイジング・スパイダーマン2っていうのは「愛を知らないわたしたち」にたいする回答だと思った。

 ピーターは愛を知って愛を与えられる人に成長した。しかし、子どもが敵に立ち向かう勇敢な心は愛を知る前のピーターの行動によって与えられたものだ。愛を覚えてない状態のヒーロー活動で人に希望を与えることができた

つまり、わたしたちは「愛を知らなくてもいい」ってことなのだ。知らなくても人の希望になれるのだ。

 

アメイジング・スパイダーマン2からみえることは、愛を知らなくても人に希望を与えることはできるが、それは行為が必要ということである。

 劇中ラストで、敵に立ち向かった子どもは素手だった。武器をもっていなかった。子どもにとって希望が「強さ」なら、バットでもオモチャの銃でももって出てくるはずである。その子は映画冒頭でスパイダーマンに助けられたとき自作で風車を作っていた。工作が好きな子なのだ。得意の工作で武器を作っていてもおかしくなかった。風車の伏線を活かすならそうするだろう。

 でも素手なのだ。

 つまり、その子にとってスパイダーマンは強さの象徴ではない。「希望」そのものなのだ。武器もなにも持たずに立ち向かったということは、その子にしたらスパイダーマンからうけとったもの、希望とは、“立ち向かうこと ”なのだ。

 愛を知らないわたしたちが人にできることって与えられることって“立ち向かうこと ”をみせることなのだ。それしか教えられない。でも、それができる。

 西野カナやエグザイルみたく愛の世界にいけない(知らない)われわれの戦い方っていうのは、それなのだ。

 

 神聖かまってちゃんが与えてくれる希望も戦う姿勢である。

彼らはロックシーンに殴り込みにいっている。しかし、シーンからは認識されているにもかかわらず「ああ、あれは別物だからね」とスルーされている。

 だからといって自分たちをシーンに合わせて戦いを挑まない。自分の持っているカードをつかって、自己満足に浸っている腐ったロックシーンを飛び越えて10代の少年少女にうったえかけている。

 彼らは成功しようとかいう以前に、10代にとっての希望そのものになろうとしている。それはいまの閉じた日本のロックシーンに背を向ける行為だ。ロック好きにウケるよう活動していればそこそこ活動していけるのがいまの日本だからだ。フェス文化の台頭がそれを証明してる。ロックは儲からない? そんなことはない。儲かる。儲からないとしてもかならず何かうま味があるのだ。でないと、ロックフェス乱立が説明できない。

 しかし、ロックをまだ知らない10代の少年少女に向けないでなにがロックンロールというのか。かれら神聖かまってちゃんはそれを分かっている。

 かれらは愛や恋を歌わない。ロマンを歌う。希望を歌う。人生の報われなさを歌う。それでいい。愛なんかなくても、知らなくても、人びとに希望を与えられる、希望そのものになれることをアメイジング・スパイダーマン2が証明している。それしかわたしたちのような人間の戦い方はない。

 

 神聖かまってちゃんの立ち向かう姿はわたしたちの希望そのものである。


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

うおお


奥付

 
 
 
 
 
 
 



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この本の内容は以上です。


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