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ある星の天文図書館へ行ったときのことだ。

 

そこで僕は、遠い宇宙にあるゴウという赤い星と、マンという青い星の記録を読んだことがある。

 

この二つの星は、遠くから見ると大きさはほぼ同じで、まるで仲のよい兄弟のように見えたので、双子星として知られていた。

 

 

ゴウ星の人たちは、大胆でとても勇気があり、そしてとても気さくな心をもっていた。

 

男たちは、狩や、レスリングや技や力を競うことが誰も大好きだった。競争したあとは、お互いの結果はただ笑い合っただけだった。

 

女たちは、お花の装飾や、庭園の美しさや、着物の生地の色などの出来を競うことをこよなく愛し、やはり、結果はすぐに忘れてしまうようだった。

 


マン星の人たちは、繊細で優しく、そしてとても寛容な心をもっていた。

男たちは、星読みや石たちや森に関する知識の深さや、薬草の作り方などを誇り合うことを何より好んだ。

 

女たちは、文字の書き方や、美しい詩や歌を作り、演奏したり歌うことを何よりの楽しみとし、また競い合ってその技を磨くのを好んでいた。

 

男も女も、必ず相手のよい点を評価することを忘れなかった。

 

 

ところが、ゴウの星の一部の男たちが、競争の結果に少しずつこだわりを見せるようになった頃から、人々の

気さくさは消え、星の赤い色も何となくよどんだように見えはじめた。

 

すると、少し離れたところにあったマン星の女たちの一部が、自分たちの才能に相応しい、他に優れた男たち以外は、まるで相手にしないようになった。

 

人々の寛容さは徐々に色あせ、それと同時に、鮮やかなインディゴプルーの星は、日に焼け褪せた、くすんだ青に変わっていった。


どちらの星の人々も、競争好きが高じて、他に対する優越を一番の目標とするようになっていった。

 

人々の目の色も、星の色と同じに濁りはじめていた。それで、道を踏み外していることに、ひとりとして気づく者がいなかった。

 

いや、その天体専門書には、一部にはそうした人々もいたが、どうすることもできなかったとの記載があった。

 


人々の間には、争いや疫病が蔓延し、洪水、噴火などの天災が頻発するようになっていった。

 

二つの星の人々の競争意識、優越思考はますます激化し、互いに対する自分たちの星の優越性を主張するようになっていった。

 

どちらの星も、自分たちの星のほうが大きいと主張したが、実際は同じ大きさだった。自分たちの星から見たら、相手の星の方が小さく感じられただけだった。

 

ゴウ星は、マン星の青を馬鹿にし、くだらない色だとののしった。

 

マン星は、ゴウ星の赤を狂気と呼び、やがて燃え尽きるとあざ笑った。

 

どちらの星の人々も、比較することでゴウマンになっていたのだった。

 

 

ゴウ星とマン星は、次第にその距離が縮まり、人々は慌てふためいたが、傲慢さを止めることはなかった。

 

双子の星たちはやがてくっつき、遂にはひとつの別の星になってしまった。

 

その大変化にすべての生き物は死に絶え、人々もいなくなってしまった。

 

 

その書によると、この星は二倍の大きさとなり、赤と青を合わせた、ヴァイオレットの星へと生まれ変わったらしい。

 


そこにはいま、どんな人たちが住んでいるのだろう...。

 


この本の内容は以上です。


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