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別記 原発は石油をがぶ飲み

 2013年12月6日共同通信は、次の記事を配信しました。

 

 経済産業省は6日、中期的な政策の指針となるエネルギー基本計画の素案を総合資源エネルギー調査会基本政策分科会(分科会長・三村明夫新日鉄住金相談役)に提示した。原発を 「重要なベース電源」 と位置付け、原子力規制委員会が安全性を確認すれば再稼働を進めると明記した。

 焦点となっていた原発の新増設や、既存の原子炉を新型炉に置き換えるリプレースについては記述しなかった。電力全体に占める将来の原発の割合を示さないこととの整合性などを考慮したとみられるが、将来の新増設の可能性は残った。

 

 原発の再稼働を急ぐ自民・公明党は、経済産業省を焚きつけて原発再稼働の答申を出させました。原発は過酷事故が起こると取り返しがつかない、核燃料と原子炉のゴミ処理ができないなどの重大問題を無視した答申です。更に、科学的思考の欠如により経産省は、エネルギーの量を考えてもエネルギーの質を考えずに、エネルギー基本計画の素案を分科会に提示しました。

 偽りの安全神話から福島第一原発は、過酷事故を引き起こし放射能が飛散したため末代まで苦しみが続きます。人間はもとよりあらゆる生命が、放射能で傷つく恐れがあります。原発に関してはこの放射能問題以外にも多くの方が警鐘をならしておりますが、田村八州夫著の 『現在石油文明の次はどんな文明か』 を参考に、原発の化石燃料依存性を述べます。

 原子力発電所は、 「建設」  「運転」  「廃炉」 というライフサイクルをたどります。建設では多量のセメント、コンクリート、鉄鋼、その他資材を使います。これらのセメント、コンクリート、鉄鋼、その他資材の生産に多量の石油を使い、長い建設期間中は建設機材を石油で動かします。運転ではウラン燃料が必要です。ウラン燃料はウランを採掘し、輸送し、精製し核燃料棒にします。核燃料棒にするまでに多量の石油を使います。原発の定期点検時は当然原子炉を停止していますが、火力発電の電気で核燃料棒を冷やし、火力発電が停止中原発の代用もします。廃炉は、使用済み核燃料と放射能まみれの原子炉の廃材のゴミ捨て場がないため実績がありません。廃炉は建設の逆と考えれば、廃炉期間中は石油を使った資材と機材を運び、建設機材を石油で動かします。使用済み核燃料は、フィンランドのオンカロを想定すれば、地中深く核のゴミ捨て場を作ることになります。これは建設と同様ですから多量のセメント、コンクリート、鉄鋼、その他資材を使います。これらのセメント、コンクリート、鉄鋼、その他資材の生産に多量の石油を使い、長い建設期間中は建設機材を石油で動かします。つまり、経済的な石油がなければ原発の建設・運転・廃炉に加えて最終処分場建設が困難です。

 現在、福島第一原発の事故拡大防止で躍起になっていますが、大量の石油を使わなくては事故収束ができません。福島第一原発のエネルギー収支を考えると、発電エネルギーよりも建設、燃料棒の製造に加えて事故収束と廃炉で消費するエネルギーの方が多くエネルギー損失になっています。つまり、原発は過酷事故を起こすとエネルギーのブラックホールになります。

 放射性廃棄物管理期間は最低で1万年、長くて10万年を要しますが、原子力委員会がコスト等検証委員会に提出した核燃料サイクルの処分スケジュールでは、最終処分場を決めないまま2036年から使用済み核燃料のゴミを最終処分場に持ち込み、2086年に使用済み核燃料の最終処分場を閉鎖します。つまり、50年間で全原発の核のゴミを最終処分場に持ち込む計画です。図6から、2036年のイージーオイルは激減しており、石油の高騰は想像を絶します。石油が経済的に使えてこそ運転・廃炉が実現しますが、使えなければ廃炉できず野ざらしになるかもしれません。

 経済産業省は経済成長を目指していますから、廃炉の発電量を賄う発電所を考えねばなりません。原発を重要なベース電源(電力全体に占める割合不明)と位置付けていますから、火力発電が重要な電力負荷調整用電源です。しかも、2009年以降イージーオイルは減耗進行中ですから、中期的に火力発電の燃料高騰が予想できます。経済成長を望むも、原動力の安い大量のエネルギー源が見当たりません。

 


あとがき

 中国が、日本の領海を侵犯した中国漁船員逮捕の抗議とも思えるレア・アースの輸出停止措置に、日本、米国、西欧の工業国はハイテク製品の生産に支障をきたすため対応に追われました。G20は米国、日本のような工業国家を目出していますが、はたして鉱物資源、エネルギー等が持続的に賄いきれるか、誰もが漠然と不安になります。さらに西欧文明は、環境を年々悪化させており、その影響が異常気象、自然の荒廃、生物多様性の毀損等が顕著になってきました。また、組織における経済成長一点張りの目標が、優勝劣敗競争に直結し個人の精神性はもとより社会集団に崩壊の悪影響を及ぼしています。私たちは、西欧文明というロープの上を歩いているのかもしれません。

 私は、西欧文明の将来に不安を抱き、地元の本屋や図書館で西欧文明に対する批判の本を見つけては読みました。いすれもが、 「脱経済成長」 で一致しています。しかし、経済成長はあらゆる組織の目標であり、組織に所属している人からすれば論理的に抗するのは困難です。更に、経済成長の価値観から脱却するとしても、どうしたらメシを食べていけるかの答えは、非常に困難な課題であり、漠然とした答えにならざるをえません。私は、無謀にも経済成長の価値観から脱却した場合のメシの食べ方を、新たな文明勃興で解決するのではないかと論じました。逆に、経済成長の価値観から脱却しない限り、西欧文明のまばゆい魔力に捉われるでしょう。

 文明勃興に着目すると、日本では現在に至る室町文化が精彩を放っています。その室町文化が、いかなる歴史背景において、誰が作り上げたのか歴史書などを読み検討しました。室町文化は、ゆるい縛りの社会秩序における移動技術者の組織に縛られない価値観が、文明勃興の土壌になっていると思われます。

 歴史は繰り返されると言われるように新たな文明は、南北朝時代から室町時代にかけての時代背景に似てきた、平成時代以後の移動技術者に期待するのです。組織に捉われない価値観を有した移動技術者は、組織人の経済成長一点張りの価値観とは異なり、自由奔放な思考が可能であり新たな文明勃興の第一歩を踏み出すのではないでしょうか。

 

                                                   2014年4月26日


参考文献

第1章 文明の起伏

  ・ 吉村 仁著   強いものは生き残れない 環境から考える新しい進化論  新潮社

  ・ 村山節著,浅井隆共著   文明と経済の衝突  第二海援隊

  ・ 高山岩男著   文明の哲学 「没落の問題をめぐって」  東海大学出版会 ←*A

 

第2章 東西文明の起源

  ・ 安田喜憲著   一万年  イーストプレス

 

第3章 西欧文明の成り立ちと発展

  ・ 高山岩男著   文明の哲学 「没落の問題をめぐって」  東海大学出版会

  ・ 水野和夫著   終わりなき危機   日本経済新聞出版社 ←*B

 

第4章 西欧文明の黄昏

  ・ 田村八州夫著   現在石油文明の次はどんな文明か

  ・ 高山岩男著    文明の哲学 「没落の問題をめぐって」  東海大学出版会

 

第5章 日本文明の歴史

  ・ 安田喜憲編   対談 文明の原理を問う  麗澤大学出版会

  ・ 梅原 猛著    森の思想が人類を救う  小学館

  ・ 会田雄次著   日本人材論 ー指導者の条件ー  講談社

 

第6章 次期日本文明の黎明に向けて

  ・ 安田喜憲著    一万年    イーストプレス

  ・ 田村八州夫著   現在石油文明の次はどんな文明か

  ・ 井沢元彦著    逆説の日本史 中世王権編  小学館文庫

  ・ 井沢元彦著    逆説の日本史 中世混沌編  小学館文庫

  ・ 河宮信郎著    近代経済システムにおける化石燃料燃焼  中京大学 ←*C

  ・ 槌田 敦著     弱者のための 「エントロピー経済学」 入門  ほたる出版


この本の内容は以上です。


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