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守備の評価UZR

 守備はこれまで数字による客観的な評価が難しいとされてきた分野である。野手がどれだけアウトを獲得したかはわかっても、その対象となる機会の数(近くに打球が飛んできた数)を推定する手段が存在しなかったことがその主な理由である。

 しかし映像データを用いてどこにどれだけ打球が飛んだかを直接的に計測するZR(Zone Rating)及びその応用版としてのUZR(Ultimate Zone Rating)の登場によって、かなり筋の通った形で合理的に数値評価が行えるようになった。UZRはWARの構成要素としてだけでなく、単独でもこれまで主観的にしか語られてこなかった守備の部分に客観的な評価の光を当てる極めて有意義な指標である。

 守備に関して言えば、野手個人の仕事は近くに飛んできた打球をできるだけ多くアウトにすることや、送球によって走者の進塁を防ぐことだろう。これらの働きに得点期待値をベースにした得点価値を掛け合わせることで、個人が守備でどれだけ失点を防いだかが評価できる。

 ZRは守備位置の周辺に一定の責任範囲を決めて、そこに飛んできた打球のうち、どれだけをアウトにしたか、その程度で守備者を評価する指標である。例えば周辺に飛んできた打球のうち70%をアウトにする遊撃手と80%をアウトにする遊撃手とでは、後者のほうが優秀な働きをしたと評価することができる。

 ZRはわかりやすい上に有効な指標だが、一定の範囲に含まれる打球を全て同じように扱うところに問題がある。近くに飛んできた打球といっても、定位置から2歩のところに緩く飛んできたゴロとある程度離れたところに鋭く飛んできたゴロとでは難易度が全く違う。ZRそのままで評価すると、たまたま簡単な打球が多かった選手が有利になってしまう。

 こういった問題に対処し、より詳細な評価を行うのがUZRである。UZRは全ての打球を均一に扱うのではなく、打球の種類・位置・速度からプレーごとに理論的な価値を算出して評価する。各種のプレーに得点価値を掛け合わせて評価するのは打撃のLWTSと同様だが、守備のプレー1つひとつを細かく見てプレーごとにプラス/マイナスの評価を与える点が特徴的だ。

 難易度を算出する基礎となるのはグラウンドを細かく区分したゾーンである。UZRではまずグラウンドを多数のゾーンに分割し、それぞれのゾーンにどれだけどんな打球が飛んだかを集計する。例えばFの方向に距離6だけ飛んだ速度の速いフライ、といったように打球の種類、位置、速度ごとに細かく分類されていく。

 各ゾーンに対してプレーの価値を計算する材料は、その打球が「平均的にどれだけアウトになるか」と「どれだけ得点価値を持っているか」である。例えば三遊間に飛んだある種類のゴロは、リーグ全体のデータを見ると50%の割合で遊撃手に、10%の割合で三塁手によってアウトにされるとする。すなわちこの打球は通常60%の割合でいずれかの守備者によってアウトにされる。

 このとき遊撃手がこの打球をアウトにしたなら、60%(アウトの期待値では0.6)だった確率を100%(アウト数1)にしたということで差分の0.4アウトをプラス評価として遊撃手に与える。先述した各プレーの得点価値を用いてヒットなら0.45点、アウトなら−0.27点の価値があると見なすと、ヒットになる打球をアウトにすることには差し引き0.72点の価値があることになる。0.72点の価値があるアウトを0.4個稼いだのだから、遊撃手は得点の意味では0.72と0.4の積である0.288点だけこのプレーによって失点を防いだことになる。これがUZRによる当該プレーに対するプラス評価である。

 元々三塁手にも10%はアウトを成立させる見込みがあったが、遊撃手がアウトを成立されたからといって三塁手がマイナス評価を受けるわけではないことに注意してほしい。これは「打球の奪い合い」による評価の歪みを少なくするための計算上の工夫で、近くを守る守備者の能力によって各人の評価が左右されないようになっている。外野への緩いフライなどを考えてもこの方式は重要である。

 一方この三遊間への打球がヒットになってしまった場合、遊撃手と三塁手の両方にマイナス評価が与えられる。まずチームとして見ればこの打球で通常0.6アウトを獲得できるはずだった。それがヒットが生まれると得られるのは0アウト。0.6アウトの損となる。そして、50%が遊撃手に期待されることから0.6アウトの損失の83%(50%÷60%)は遊撃手の責任である。残りの17%(10%÷60%)は三塁手の責任になる。

 遊撃手はアウト数では0.6に0.83を乗じた0.5のマイナスであり、これに得点価値0.72を掛け合わせた0.36が得点の単位でのマイナス評価になる。三塁手も同じように、チームとした失った0.6アウトの17%を責任として被り、0.072点のマイナス評価となる。これがUZRのマイナス評価である。

 このような方式で、UZRは打球の分類ごとにアウトの見込みと得点の価値を算出しそれに基づいて選手の各守備プレーを評価するものだ。一般的にどれだけアウトが見込まれるかという平均的な水準を比較対象とする。そのため、選手ごとにプラス評価・マイナス評価を集計したUZRの値は「同じ出場機会を同じ守備位置の平均的な選手が守る場合に比べて、どれだけ失点を防いだか」という意味の数字になる。

 打球の難易度を詳細に考慮していることや、被安打の損失も一般的な責任に応じてシェアしていることなど、守備の評価として説得力のある指標と言える。いくら技術論のレベルでうまいと表現される野手でも、他の守備者がアウトにできる打球をヒットにしていれば意味がない。

 計算方法からわかるように、UZRはただ単にアウトを取った、ヒットを許したという結果ではなくそのプレーの価値を評価している点が大事なところだ。同じアウトの成立でも、通常95%アウトになるような打球なら、選手に与えられるプラスは非常に小さく、逆に普通10%しかアウトにならない難しい打球をアウトにすれば大きなプラスが与えられる。プレーそれぞれの価値を厳密に評価することによって、守備の価値を突き詰めて表現している。

 なお、UZRは内野手を評価する際にはゴロの打球のみを対象としている。内野フライはほとんど100%アウトになるものであり、計算に含めてもたまたま誰のところに飛んできたかによって評価が歪む結果になるだけと判断されるためである。他方、外野手ではフライとライナーが対象になる。

 また、外野手に関してはアームレーティングと呼ばれる選手の肩の強さによる「進塁抑止」効果の評価も打球の処理とは別に行っている。一般的には外野手はホームを狙う走者を送球で刺す「補殺」によって肩の力を発揮するが、肩の強い外野手の貢献はヒットで進塁を狙う走者を警戒させて塁に留まらせるという要素もある。これは決して数字に表れない要素ではなく、得点期待値の差と平均的な割合から計測可能である。

 具体的には、走者一塁でライト前ヒットが出たとき、走者が右翼手の肩を警戒して二塁に留まった場合、一三塁の得点期待値になる可能性があったところを一二塁の得点期待値に抑えたことになる。この期待値の差分が失点抑止効果だ。通常一定の割合で三塁に進まれてしまうとすれば、その割合と得点価値を掛け合わせた分が進塁を抑止させた外野手の貢献値である。外野手の肩で結果が分かれる局面についての進塁抑止効果(補殺によるアウト獲得も含む)を集計したものがアームレーティングである。

 捕手についてはUZRによる打球処理ベースの評価はなじまないため、盗塁阻止の数字を基礎として評価を行っている。

 なお、今回のUZR評価に関しては12球団通しての評価となっている。これはリーグでの評価では同ポジションの比較対象選手の数が限られる点を考慮したためである。全体のサンプル数を優先したことでリーグ間で守備力に差のあるレフト及びライトの評価は、他のポジションより数字が極端に出てしまっている。これは注意していただきたい点である。


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最終更新日 : 2014-04-02 04:26:55

守備位置補正

 UZRによる守備の評価は、あくまで同じ守備位置の選手の中での比較である。異なる守備位置の選手を比較することを目的としていない。WARは最終的には異なる守備位置の選手同士の比較も目指すため、異なる守備位置のUZR同士をうまく比較するための調整が必要になる。それが守備位置補正である。

 例えば遊撃手の守備は一般的に難易度が高く、能力の高い選手が集まっているため「平均的な遊撃手」の守備は「平均的な野手」が遊撃を守る場合に比べてチームの失点を減らす。貢献は大きなものとなる。その「減らしている分の失点」を「平均的な野手」と比較する場合には出場による価値として評価する必要がある。1年間の出場に対しての各守備位置の補正値は表3のようになっている。

 この数字は、守備指標の比較と集計によって求められる。仮に遊撃と三塁を両方守った選手がUZRのような数字で遊撃では−3、三塁では+3だったとするなら、同じ守備力の選手が2つの守備位置で6点の差を出していることから、遊撃手のUZR±0は三塁手のUZR±0に比べて6点分価値が高いのではないかと考える。1人の選手だけから結論を出すことはできないが、このような比較を全ての守備位置について膨大なサンプルを対象に行うと表に示したような補正値が出てくる。なお、本書のWARではMLBについて算出された数値にNPBに合わせた若干の調整(二塁手の数値を上げるなど)をして使用した。


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最終更新日 : 2014-04-02 04:27:46

リプレイスメント・レベル

 ここまで打撃・走塁・守備・守備位置と各要素について評価を説明してきたが、これらの評価はいずれも「リーグ平均」との対比で表現されていた。しかし選手の価値を比較する基準としてリーグ平均は有効なものなのだろうか。

 平均値は確かに数理的には明確で扱いやすく、指標を構築する上でのモノサシとしては大活躍する。しかし現実の野球の事情を考えると、チームはリーグ平均レベルの選手を好きなだけ用意できるわけではない。またレギュラー選手がリーグ平均と比べマイナス評価の選手だったとしても、その選手が故障し控えの選手が出てくる場合に比べれば、まだチームにとっての悪影響は小さい、というケースも多いはずである。というより、そう考えられるからこそ選手は出場機会を与えられていると言える。平均を基準にすると、平均的な能力の選手はどれだけ出場しても評価がゼロにしかならず、平均的な選手でも「出場することがチームにとって利益になる」というチーム運営の実態が反映されない。

 ここで登場するのが選手を平均ではなく「リプレイスメント・レベル」と比較するというアイデアである。リプレイスメント・レベルとは出場しているレギュラーが故障などによって失われた場合、ほぼ確実に使用することができる代替手段の能力水準のことだ。一般的には「最小のコストで得られる選手に期待される働きの水準」と定義される。出場している選手がいなくなったとき、代わりに出てくるのはリーグ平均の選手ではなく控えの選手なのだから、選手の価値・貢献度を評価するにあたって評価基準をリプレイスメント・レベルにすることは現実に即している。もちろん細かいことを言えば控えのレベルもチームによって異なる。だが控えの層の厚さで評価が変わるという不公平を避けるため、一般的なリプレイスメント・レベルを定めてそれを基準にする。

 おおまかなリプレイスメント・レベルの概念で揉めることは少ないが、、はっきりした答えはなく、詳細な定義となると研究者の数だけ定義が存在すると言えるほどである。本書のWARで用いるリプレイスメント・レベルはあまり議論を複雑にせず、過去のNPBについて各守備位置で最も出場が多い選手をレギュラー、残りを控えとした場合の控えの選手の成績を集計したものとしている。こうして集計すると、控えのレベルのwOBAはリーグ平均の0.88倍となる。これが数字的な意味でのリプレイスメント・レベルの定義である。やはり控えの選手の成績はリーグ平均よりも劣るものとなっている。

 リーグ平均と比較してきた打撃・走塁・守備の評価をリプレイスメント・レベルと比較した評価に直すために、平均とリプレイスメント・レベルとの差を評価に加算する。

打撃における「平均的」「リプレイスメント・レベル」両選手の差=(リーグ平均wOBA−0.88×リーグ平均wOBA)÷1.15×打席

 この数字は600打席では約20点になり、平均的な打者とリプレイスメント・レベルの打者との差はフルシーズンで約20点であるとわかる。

 選手個別の働きの差は個別の各項目の評価で考慮されている。ここでの「20点」は、出場機会の多さに応じた「リプレイスメント・レベルの選手を出場させなかったことによる利得」だけがカウントされている。すなわち単純に打席数に比例する数字となり、リプレイスメント・レベルを評価基準に用いるということは、実際的には出場機会の多さ(頑健さ)を積極的に評価することを意味する。なお、過去の研究からリプレイスメント・レベルの選手は守備・走塁に関しては平均的と考えられているため、計算上は打撃の部分だけを考慮する。


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最終更新日 : 2014-04-02 15:07:14

計算手順

 以上が野手のWARの考え方と算出方法である。実際にどういった過程でWARが算出されるのか、計算方法に架空の数値例を当てはめてみよう。

 まず打撃は「600打席でwOBA.350(リーグ平均.330)」であれば

(0.350−0.330)÷1.15×600=10.4

 となる。走塁は盗塁成功20、失敗5の選手であれば

0.18×20−0.32×5=2.0

 守備はUZRによるが、シーズンを通じて三塁と右翼を半々で出場してそれぞれのUZRが-1.0と+4.0だった場合、守備評価そのものは-3.0、補正値は三塁手の補正値である+2.5の半分(+1.25)と右翼手の補正値である-7.5の半分(-3.75)の合計で-2.5と計算される。守備の働きと補正値を合わせた利得は  

3.0−2.5=0.5

である。ここまでで打撃・走塁・守備(補正値)の数値が求められ、平均的な野手が出場する場合に比べて稼いだ利得の合計は

10.4+2.0+0.5=12.9

となった。そしてここにリプレイスメント・レベルの選手を出場させなかったことによる利得を加算する。リーグ平均wOBAを.330と仮定しているから

(.330−0.88×.330)÷1.15×600=20.1

と計算される。最後に平均に比べて上回った貢献値の12.9と平均とリプレイスメント・レベルの差である20.1を足した33.0が、この選手が「同じ出場機会をリプレイスメント・レベルの野手が出場する場合と比べ改善させたチームの得失点差」として求められる。

 WARの計算上、最終的には得点数で計算されているこの数値を勝利数に計算するが、その方法は何得点で1勝が稼げるかを示すRPW(Runs Per Win)という数字で割るというもの。RPWは対象とするリーグの平均得点によって異なるが、一般的には10前後の数字である。33.0をこの10で割った3.3がWARの最終値となる。

 仮に計算例の選手のパフォーマンスが完全に平均的であった場合、平均と比較する部分の数値は全てゼロとなるため、リプレイスメント・レベルと比較した部分だけが残り、WARは2.0となる。このことから平均的な選手がフルシーズン出場した場合のWARはだいたい2.0くらいであることがわかり、WARを見るときのひとつの目安と考えることができる。


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最終更新日 : 2014-04-02 04:54:01

投手のWAR計算

 投手に関してもLWTSの方法を応用して評価を行うが、まず問題になるのは、どこまでが投手個人の責任範囲かという問題である。

 三振・四死球・本塁打の3項目に関しては守備側の野手が介入する余地がなく、守りの誰かに責任を与えるとすれば投手に与えることになる。問題は、バットに当たってグラウンド上に飛んだヒットや凡打である。

 優秀な投手は被安打が少ないと一般的には考えられているが、本塁打以外のフェア打球がアウトになるか否かに関しては、統計的には投手ごとの一貫性がほとんどない。ある年奪三振率が高い投手は次の年も高い傾向があるのに対して、フェア打球がアウトになる割合に関してはそういった傾向がほぼ認められない。

 これはすなわち、投手ごとに「ヒットを少なくする」能力はほとんど存在せず、被安打の多さは運や守備によるものであることを意味している。また何より、実際に打球を処理してアウトを成立させるのは野手である。計算上も、守備による安打の阻止はUZRの形で既に考慮している。ここでまた投手の被安打の少なさを評価すると、評価の体系として被安打の部分をダブルカウントすることにもなってしまう。

 突き詰めれば(被本塁打以外の)被安打に関しては投手の責任と守備の責任が混在するものである。完全に明確な取り扱いはできないと考えられ、その中でどのように対処するかは議論の余地もあると思われる。だが本書のWARでは奪三振・与四死球・被本塁打の3項目によって投手を評価することとしている。このような形式はトム・タンゴが開発したFIP(Fielding Independent Pitching)という指標に倣ったものである。

 実際の計算としては、投手の責任範囲を奪三振・与四死球・被本塁打の3項目と定め、打撃について行ったのと同じように、得点期待値に基づき機会あたりの失点の多さを評価する式を構築する。便宜上四球と死球はまとめている。

投球回あたりの失点の多さ(平均に対して)=(0.30×四死球+0.46×単打+0.75×二塁打+1.03×三塁打+1.40×本塁打−0.27×アウト)÷投球回

 プレーの得点価値の値が打撃で用いたものと異なるが、先述したように得点期待値や得点価値はリーグによって変わるものであり、こちらのほうが発表されているFIPの式に沿っているため便宜上こちらを使う。

 これらの項目のうちボールインプレー(BIP)である単打・二塁打・三塁打・凡打(アウト)の結果は投手にまつわるものではない。投手の評価にあたっては、個別の結果は無視し全ての投手にそれぞれが一定の割合で生じたものと見込むことになる。この処理によって、全ての投手を「平均的な守備をバックに投げた場合」という平等な条件で評価することができる。

 具体的な計算は、単打・二塁打・三塁打・凡打それぞれの得点価値を割合に応じて加重平均する。そうすると-0.04となり、BIP=単打・二塁打・三塁打・凡打(アウト)の合計に一律でこの得点価値を乗じる。すると式は次のように書き直される。

守備から独立した投球回あたりの失点の多さ(平均に対して)=(0.30×四死球+1.40×本塁打−0.27×三振−0.04×BIP)÷投球回

 これで、守備から独立した形で投球回あたりにどれだけ失点する投手かを評価する式になる。平均的な投手ならゼロとなり、プラスなら失点の多い劣った投手、マイナスなら失点の少ない優れた投手になる。この状態でも実質的には評価として成立するのだが、数字の感覚としてはなじみがない。そこで打撃においてwOBAが数字の見た目を出塁率に合わせることでわかりやすくなったように、投手の評価も防御率に合わせる。

 防御率に合わせるためにはまず、1投球回あたりになっている数字を9投球回あたりにするため全体を9倍する。そして平均をゼロとしたプラスマイナスの数字になっているため、最後に平均防御率を足すことで9回あたりの自責点の形にする。

守備から独立した防御率=(0.30×四死球+1.40×本塁打−0.27×三振−0.04×BIP)×9÷投球回+リーグ平均防御率

 9回あたりの失点が平均的な投手より0.50少ない投手がいたとして、平均防御率が4.00であれば、その投手の評価は3.50になる。

 ここで評価は結局、三振・四死球・本塁打の3つだけによって決まるのだから、計算を簡便する意味でBIPの項を式から除く。BIPの得点価値-0.04をその他の項目から引いて、BIPに対する得点価値の形式にする。

守備から独立した防御率=(0.34×四死球+1.44×本塁打−0.23×三振)×9÷投球回+リーグ平均防御率

 さらに得点価値に乗算している「×9」も、全ての選手について同じ計算をするだけである。これを得点価値に掛け合わせてしまう。

守備から独立した防御率=(3.06×四死球+12.96×本塁打−2.07×三振)÷投球回+リーグ平均防御率

 ところでこの計算では、投手がBIPで防げる失点をゼロとした関係上、数字が防御率より大きくなってしまうため、最後に定数でその分を減算して調整する。この定数を-1.00、平均防御率を4.20とすれば、最終的な式は以下になる。

守備から独立した防御率=(3.06×四死球+12.96×本塁打−2.07×三振)÷投球回+4.20−1.00

 最後に影響が少ない小数点以下の部分を四捨五入して定数の部分をまとめれば一般的に流通しているFIPの式ができあがる。

守備から独立した防御率(FIP)=(3×四死球+13×本塁打−2×三振)÷投球回+3.20

 計算の手順を細かく見ていくと、やや複雑にも思えるかもしれない。だが最終的な式はシンプルな形になる。内容としても、投手個人の責任範囲を奪三振・与四球・被本塁打に絞り、それらの項目をLWTSで評価するというわかりやすいものである。結果的な選手個人のパフォーマンスがどう勝利に影響したかを評価するため、責任範囲の項目に得点価値を与えるという指標の成り立ちとしては、打者のwOBAとも共通しているので、統一的に理解することができる。

 上で求めたFIPの式は防御率4.20が基準となっているが、リーグ平均防御率は年によっても異なる。実際にはその部分は調整しながら使うことになる。また、故意四球を対象外として扱う場合も多い。

 本書掲載のWARの計算にあたっては、FIPの考え方をベースとして、防御率ではなく失点率のスケールで評価を行っている。

FIP(失点率スケール)={3×(四球−故意四球+死球)+13×本塁打−2×三振}÷投球回+補正値 ※補正値(値はリーグ全体の値を用いる)=失点率−(3×(四球−故意四球+死球)+13×本塁打−2×三振)÷投球回

 こうして計算される数字が、失点率の意味でどれだけ優秀かを表す。防御率ではなく失点率を使うのは、最終的に勝敗を決定する要素として意味のある数字は自責点ではなく失点であり、また守備の影響に関しては失策という記録とは違う形で分けて扱っているからである。

 ここからWARへの変換に進む。WARがリプレイスメント・レベルとの対比によって貢献度を求める指標であることから、失点率スケールのFIPを使って同じ投球回をリプレイスメント・レベルの投手が投げる場合に比べ、どれだけ失点を防いだかを計算する。なお、この計算は先発投手と救援投手別々に行う。先発と救援でリプレイスメント・レベルの失点率が異なるからである。一般的には「短いイニングに力を集中できる」などの理由から同じ投手でも救援登板のほうが失点は少なくなる。今回は過去のデータに基づき先発投手のリプレイスメント・レベルは失点率がリーグ平均の1.39倍、救援は1.34倍と定義している。先発投手がリプレイスメント・レベルに比べて防いだ失点は次の式で計算できる。

先発投手がリプレイスメント・レベルに比べて防いだ失点={1.39×リーグ平均失点率−FIP(失点率スケール)}÷9×投球回

 これをRPWで割れば得点数を勝利数に変換でき、WARが計算できる。仮にリーグ平均失点率を3.50、FIPに基づく失点率を2.80、投球回を140とすれば防ぐ失点は32.1点(WAR 3.2)となる。失点率がリーグ平均と同一なら21.2点(WAR 2.1)である。救援投手についても、リプレイスメント・レベルを計算する係数を変えるだけで同じ計算を行う。

 WARの計算構造から言えば、投手がチームに貢献する方法は「失点を少なくする」「多くの投球回を投げる」のいずれかである。さらにFIPの考え方に基づけば自身の責任範囲で失点を減らす手段は三振を奪う、四死球を与えない、本塁打を与えない、の3つとなる。


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最終更新日 : 2014-04-02 15:08:06


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