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編集さんのお話

Q:編集さんたちのお話

 

【ヒカル】

漫画家さんで直談判しに行くって、なかなか聞かないケースですよね。

 

【樹崎】

やはり……ジャンプに作品を載せることができるのは特別なんですよ。僕は「40歳まで生きれたらいいわ~」っていう人間だったんですね(笑)

事実、40歳まで生きてやり残したことはあまりないんです。けれど唯一あるとすれば、ジャンプで昔できなかったベストのコンディションで作品を描くことです。それだけやり直せればと思っていて。

 

【ヒカル】

その勢いで当時の茨木編集長さんに直談判したのですね。

 

【樹崎】

僕も直談判したときは、ちょっと文句言ってやるくらいのつもりだったんです(笑)茨木さんはナカタニの担当でもあったから面識はありましたから。

 

【ヒカル】

茨木さんって、色んな漫画にゲストキャラで登場してらっしゃいますよね。明るい面白いおじさまという印象を持っています。漫画家さんが作中でいじっていますので、親しみやすい方なのかなと勝手に思っています。僕はお会いしたことはないので分からないですが。

 

【樹崎】

そうですね、実際親しみやすい方かなと思います。物凄く切れ者なんですけど、面白いキャラクターな人でもありますね。作家さんにいじられることを嫌がらない編集さんですね。古くは徳弘正也先生の『シェイプアップ乱』の頃からいじられていますから(笑)

 

【ヒカル】

担当さんって、人にいじられるの嫌がるのかと思っていました。

 

【樹崎】

まぁそこは人によるでしょうね。茨木さんは進んでいじられてくれる人ですから。

 

【ヒカル】

昔から作家さんが編集さんをいじる・登場させる文化はありますよね。

Dr.スランプ』のマシリトというキャラクターは当時、編集だった鳥嶋さんがモデルなのは一般的にも広く知られていることですし。

 

【樹崎】

いやぁ、鳥嶋さんをいじるのは恐いですよ(笑)

鳥嶋さんは怖いなぁ、僕は可愛がられてて飯とか連れて行ってもらいました。でも気に入ってない作家さんには容赦ないですから。鳥嶋さんの伝説といえば、ジャンプにコネで持ち込みに来た子が昔いたらしくて、そしたら鳥嶋さん原稿を読んで「おい、こいつさぁ……コネで持ち込みに来たんだけど誰か見てやってくれねぇ!!?」って持ち込みに来た子の目の前で原稿ほっぽったという嘘か誠か分からない伝説があります(笑)

 

【ヒカル】

あの人だけは怒らせてはいけないという噂話も聞いてます(笑)

勿論、鳥嶋さんもお会いしたことないので深くは知らないんですけども

 

【樹崎】

鳥嶋さんは目が殺し屋みたいな鋭い目をしてるんです(笑)

でも作品に対する真摯な姿勢がとても好きでした。

 

【ヒカル】

当時に比べたら、編集さんの人柄も変化したのではないでしょうか?

(昔の編集さんは硬派な印象があります。漫画とかの影響が強いですが)

 

【樹崎】

んー、どうでしょうか……

まぁ当時も僕からしたらまだ茨木さんも鳥嶋さんも1人の編集さんで、ここまで凄い名編集になるとは思っていなかったですし……。今の編集さんも後に凄く有名な編集になる方もいるのでしょう。

ジャンプにいたころ、鳥嶋さんから「作家は処女作に向かって成熟する」という言葉を頂いたんです。今考えると、その言葉はさっき話したこと「作家は1つのことを書き続けるべき」って言葉と通じてますよね。

 

【ヒカル】

なるほど納得です。

 

【樹崎】

だから僕は『ゾンビメン』で描いて納得したことは『ff』を書き上げたときと同じなんです。僕のツボはそこしかないなぁと思います。

 

【ヒカル】

いやぁ、でも分かっててもできないことですよね。

 

【樹崎】

そうなんです。

だから過去の作品の一部には悔いがあるんです。物語を描くうちに自分の描きたいものに近づきはするんですけど、最初の出だしで人のモノを借りてしまったんです。それをずっと後悔していたんです。

 

【ヒカル】

これは俺の作品であって、そうでない。そういう心残りですね。

 

【樹崎】

まぁ持ち味がなくて、特に迷うこともない人はバレないようにパクってもいいんじゃない?とは思いますよ(笑)僕はしないですけど。

 

【ヒカル】

うまいこと、色んな作品の良さをミックスしちゃう人もいますよね。

 

【樹崎】

まぁ上手に混ぜて自分の魂の部分を裏切っていなければ、それはそれでいいと思います。売れるために描くのだってありだとは思います。別に尊敬はしないですけどね(笑)

 

【ヒカル】

先生はそういう考えには若いときでも至らなかったですか?

とりあえず唐突にトーナメントや商業的なお色気要素だしたり、唐突に新展開に持ち込んだりして安易に人気を取ろうということはなかったでしょうか?

一般読者視点から見るとシリアスな暗い重厚な話で序盤苦戦するよりも、明るい展開や美少女で人気を取るほうが難易度的には下がるように思えるんです。読者的にも食いつきやすいですし。

 

【樹崎】

人気は取りたいんですけどね。

僕は描きたいものが先にあって、漫画家になったので、そこは裏切れないんです。でも人気を取るのは大切なんで、だから僕は技術本を売るほど技術にうるさいんです。

自分の描きたいことを伝えるために、僕は描きたいものがある分勉強するんで……僕はその分、損なんですよね。描きたいことがあるってことは売るという面では損なんです。描きたいものがない方が好き勝手に流行のものを描けるんで。

 

【ヒカル】

確かに実際はコツコツ練習して成長する駄目駄目な主人公の成長物語を描きたくても、それは連載になると辛いですもんね。

最初からある程度、主人公に実力が伴っていると描きやすいでしょうし。でも、それだと駄目駄目な主人公が描けないジレンマがありますもんね。

 

【樹崎】

なので僕は「あっ、この手法なら売れるな」と確信しても自分の求めるものと違えばやらないんです。

「うん。まぁこれは分かったからええわ」って感じで描かないんですよね(笑)

 

【ヒカル】

 

なるほど。けれど今も昔もやはり、主人公がコツコツ成長する漫画には難しさがありますよね。


スポーツ・努力漫画の難しさ

Q:スポーツ・努力マンガの難しさ

 

【ヒカル】

今も昔もコツコツ成長する主人公の漫画って難しいという話なんですが……『キン肉マン』も主人公キン肉マンが弱い序盤は連載苦労したと聞きますし、やはり壁がありますよね。

 

【樹崎】

スポーツや努力物がある程度、雑誌が余裕を見てくれないと人気が取れるのが遅いですからね。……ちばあきお先生の作品が代表じゃないかな。修行や努力してる間は人気出ないですから。大体、10週目くらいから人気は出るんですよ。『山下たろーくん』とかはそういう漫画の代表格だと思います。

 

【ヒカル】

ちばあきお先生の『キャプテン』のように非常にゆったり主人公が成長していくタイプの漫画は10話や20話でようやく小さな成果が出ますよね。今じゃ、そういう漫画は減りましたけど。

 

【樹崎】

そういう小さな流れが本来大事なんですけど、雑誌はなかなかそれを許してくれないんですよね。それは厳しいなと思うんですけどね。スポーツものだと、スポーツの説明だけでもページを食いますし……それでいてページ数の少ない読み切りで人気を取るのは不可能になんですよね。

僕も最後に載せた読み切りではそこの壁に突き当たっていましたね。MTBを題材にした漫画を描きたかったんですけど……そのスポーツの説明だけで、ページがかかってしまう。

まず成功するための公式としてはまずキャラクターの魅力があって、じゃあこの主人公が好きなスポーツは何だ?……っていう順番でないと人気が取れないんですね。でも、それを短いページ数でそれを全部表現するのは無理なんですよね(笑)

 

【ヒカル】

読み切りのスポーツの説明に23ページ使うだけでも、だいぶ窮屈な感じになりますよね。

 

【樹崎】

僕はジャンプでの読み切り時(8年くらい前)は50ページほどもらいましたが、それでも無理でしたね(笑)

自転車でガーッと走るワンシーンを描くだけで10ページは消費しちゃいます。普通にバトルを描くなら、単行本1冊分の情報量が必要になりますから。

井上雄彦先生の『SLAMDUNK(スラムダンク)』とかを読むと理解できると思うんですが、緊張感が増すと時間が止まったように感じるんです。読んでいても、そんな風に感じないと駄目なんです。すると、必然的にコマ割りがある程度大きくなって、スローモーションのように見せるほど熱さが伝わるんです。それを簡略化すると、熱さが伝わらないのがスポーツマンガなんです。だから短いページで熱さを伝えるのは物凄く難しいんです。それに加えて、キャラクターをしっかり描くのはさらに難しいんです。

 

【ヒカル】

ファンタジーと違って、現実のスポーツをモデルにしてる場合は余計に難しいですよね。突飛なことをするにしても難易度が高いですね。

 

【樹崎】

そういう意味じゃバトルやファンタジーの方が読み切りは描きやすいかもしれませんね。皆、そっちのジャンルに流れちゃう気持ちも分かります。

まぁ当然、ファンタジーにはファンタジーの全く違う難しさがあるんですけどね。

スポーツは何かと制約が多い。なので、そこは出版社側にもっとスポーツものに関しては余裕を見てあげて欲しい。スポーツものはページ枠が別という設定がいるんじゃないかな?

 

【ヒカル】

描写1つにしてもスポーツは(例えば、野球では)ピッチャーがボールを握って投げるまでに描くものが多すぎますもんね。

 

【樹崎】

投げて→打つでは終わらないですからね。

投げるところから野球ボールの握りから汗、空を切るボールの軌道、風向き……色んな緊張感を見せていかないといけない。どんな音でボールがミットに収まって、キャッチャーはどういう風に揺れるのか、審判はどんな風に驚くのか。そんなことを全部描かないと面白くはないですよね。

 

【ヒカル】

読者を納得させるだけの描写が重要なのですね。簡略化すると読者が納得してくれない。

 

【樹崎】

当たり前でない部分を描かないとスポーツものとしては新しくないので。

 

【ヒカル】

そこで内容を弾けすぎても読者が置いてけぼりになる可能性もありますね。

新連載見てても、スポーツものが10話くらいで終わると……あぁ、またこんな感じで終わるのかとは感じます(どれもこれから盛り上がりそうなところで終わる)。

 

【樹崎】

スポーツ漫画は30話分ぐらいネームを用意しておいてもいいとは思うんですけどね。

 

【ヒカル】

10話くらいで打ち切られる漫画を見てると、これから出てくるライバルとかが本当に描きたかったんだろうなと作者の無念を感じます。

 

【樹崎】

マガジン系列はスポーツものに関して、ゆったりめに見てくれるので描きやすい環境とは思います。

昔のジャンプはスポーツもファンタジーも同じ土俵ですからね。今はどうかは分からないですけども。スポーツものはある程度、寛容に見るっていうことはあるとは思うんですけどね。友人の先生が描いた人気スポーツ漫画も当初は人気なかったらしいんですけど、それはスポーツものだからということで誌面のアンケートでは人気がなくても連載は続いたんです(その後、その作品はテレビで大ヒットしました)。なので、ジャンプとかでも誌面での人気が全てではないですね。

 

他の作品でも誌面アンケートでは人気がなかったけど、別枠というか連載が続いていた作品もある。単純な人気ではなくて単行本の売上が良ければ連載が続くということはありますからね。


打ち切りを経験して……

Q:打ち切りを経験して。

 

【ヒカル】

これは聞いていいのか、分からないのですが……聞いちゃいます!

先生は自身の漫画が打ち切られると分かったときはどのような心境でしたか?

 

【樹崎】

うーん。僕は担当さんが「打ち切りだなぁ」って諦めモードに入ってるのに、ムカついてしまいましたね(笑)

作品が終わることは決まったけど僕は諦める気がなくて、最終回まで逆転があるだろと思っていたんです。簡単に諦めんなよ!……とは思っていたんです。

 

【ヒカル】

樹崎先生の著書『10年メシ』の中で読んだのですが、全11話の中で7話目ぐらいに打ち切りが決まったんですよね。そこから、さらに気合出して漫画を描いたら人気が上がっていったんですよね?

 

【樹崎】

はい、人気は上がりましたし僕も諦める気がなくて……11回の11回目(最終回)を描いてたら、担当さんが締切を1日早くしてきてね。その理由が自分の休暇のために締切を早めたってことが後々、明らかになってね(笑)

それ知ったときは僕は凄く怒ってね(笑)最終回のために凄く頑張ってたので余計に。なので『ハードラック』の最終回付近はかなり描き込んでいます。まぁその他の部分で、その担当さんは凄く頑張ってくれたので特に遺恨はないですが(笑)。

編集さんと漫画家では頑張るベクトルもフィールドも違うんですよね。でも当時はそう思えなくてね(笑)

 

【ヒカル】

先生的には「あぁ、駄目か」と落ち込むのではなく、そこから自分を追い込んで作品を描いていったんですね。

 

【樹崎】

人より多少ハートが強いからか、逆境に強いタイプなのか(笑)そういう状況に燃えるんで。むしろ僕は人気があると分かってるたら、「今度は違う事やってみよう」とか、ろくなことを考えないんで(笑)

 

【ヒカル】

連載が長くなる(上手くいく)と、気持ちが逸れたりもしますか?

 

【樹崎】

上手くいくと、気持ちが逸れることもあるかもですね。まぁ人によると思う。僕はそういうところが駄目な人間なので(笑)

マガジンで連載ネームしてるとき、僕が担当さんに言われたことで「樹崎くんは攻めのシーンは上手いけど、守りのシーンは凄い苦手だよね」ってのがあるんです(笑)

自分でもそのとおりだと思いました。攻めのシーン、主人公が怒りに燃えたり、アクションしたり、感情が爆発する格好良いシーンは確かに自分でも気合が入って上手く描けてると思うんです。そうじゃない逆のシーン、主人公がウジウジしたり、鬱々している守りのシーンは結構おざなりに描いていたんです。

 

【ヒカル】

言われて、改めて問題に直面したわけですね。

 

【樹崎】

それは言われるまで気がつかなくて、「だって守りのシーンはそういうもんじゃないの?」とか思っていたんです。でも作家として、技術としてそれでは駄目だなと思い、それをそのままでというわけにはいかないんで考えて……それ以後は、そういうシーンも攻めにいくことにしたんです。

担当さんから「そういうキャラがウジウジしている場面ですら、読者にそういうシーンをもっと読みたいと思わせることができるはずだ」って言われてね。それに納得して、今ではどんなシーンを描く際にもそれを描くのに最大限の必要な情報を盛り込むことを自分のテーマにしていますね。前向きでないシーンすら前向きに描くという……。

 

【ヒカル】

先生も段階を踏んで、編集さんからの助言も得て、成長していったのですね……

 

【樹崎】

こういうことを若い頃から理解できていたら苦労はないんだけどねぇ(笑)

 

【ヒカル】

でも若いときは若いときで、自分の力を過信しすぎてしまうこともありますし難しいですよね。

 

【樹崎】

昔は技術はなかったけど、今は技術があるから若い子に教えるの楽しいんで。個人的には教えるのに向いてる性格だなぁとは思います。講師するのも楽しいので。

 

【ヒカル】

けれど、90年代に連載を持った作家さんで打ち切りを経験した多くの方は、もうどこで何をしてるか分からない人も多いですよね。個人的にもうあの人の作品は読めないのかと思うと、淋しいです。

 

【樹崎】

悲惨なことになっている人も多いとも聞くけどね。当時は横の繋がりがなかった時代だから、行方をくらますとその後、どうなっているかなんて分からないんだよね。ジャンプの人は沢山生き残ってると思うんですけど。

 

【ヒカル】

読者からすると、たまに生存報告と言いますか。漫画の道を止めても、軽い絵だけでも見せてくれると嬉しいんです……

 

【樹崎】

どうなってるか分からないですよね。

 

【ヒカル】

『奇面組』の新沢先生も長い間、姿が見えなかったんですが、Jコミで作品が公開されているのを見ると、「あぁどこかでお元気なんだな」って安心しました(笑)

 

【樹崎】

新沢先生は腰、ヘルニアかな、何かをやっちゃって、漫画が描けなくなったらしいので……

佐藤正先生(代表作:『燃える!お兄さん』も全然聞かないですね。

 

【ヒカル】

Jコミで一応、作品公開はされていましたけど……ジャンプからいなくなった後は作家活動聞かないですね。Jコミで作品を公開しているということは、赤松先生と何らかの形で連絡取っているのかなぁとは思うんですけど。そこは僕には分からないところなので。

今でこそ、ジャンプ作家さんが他誌で連載を持つことも増えましたけど、90年代はそういうのは少なかったですよね。ジャンプでヒット作を出しても、他所で連載持つ人は昔は少なかったといいますか。

 

【樹崎】

佐藤先生が描かなくなった時代だと、横の繋がりもなかったし……当時の人からしたらジャンプで描いていた人が他所で描くのは落ちぶれ感(?)に近いものを感じていたのかもしれませんね。勿論、今はそんなことはないですよ。

モチベーションの問題でジャンプで描いていた人が、他所で漫画を描くというのはやはり難しいとは思うんですよね。僕もジャンプでもう一度描きたいと思ったのは、ジャンプで描くことほどに他誌の連載は燃え上がらないんです。けれど、後にアフターヌーンで連載を持てたのは素直に嬉しかった。アフターヌーンはジャンプとは対極にある漫画雑誌なのである意味頂点だったし……アフターヌーンと両方に連載したジャンプ作家は、僕と星野之宣先生ぐらいだけだ(他にもいたかもしれないですが)……っていう喜びがね。

 

【ヒカル】

ジャンプとはまるで毛色が違う雑誌ですよね。

 

【樹崎】

ジャンプが売れる面白い漫画だとすれば、アフターヌーンは売れるとか関係なく面白い漫画を載せていた。今は路線変更があってどうかは分からないですけどね。

僕が載ったときは、そういう雑誌だったので、そんなとこで描かせてもらえると分かったときは凄く嬉しかったですね。燃えて描いていました。

 

【ヒカル】

そういったとこで描けるのは作家として成長というか、実力が認められたみたいな評価の表れでもありますよね。

 

【樹崎】

そうですね。でも『ゾンビメン』が人気あったとも聞いていたけど、まぁ色々あって……なかなかうまくはいかないもんです。

 

必ずまた続き描きますけどね。


デジタルについて

Q:デジタル作品・作画について

 

 

【ヒカル】

先生はデジタル作画についてはどのようにお考えですか?中にはデジタルに関して否定的な方も多いですが(やっぱりアナログが1番と言い切る方もいます)、先生の意見を聞いてみたいです。

 

【樹崎】

まぁ言っちゃうと、新しい絵の具ですよね。まだデジタルという絵の具の使い方をマスターできてない人が多いだけで、何の疑問もなく使うべきだし……、もっと絵の具の使い方を工夫しようよというわけです。

 

【ヒカル】

先生的には使いこなせたら問題はない。そんな感じでしょうか?

線の具合とかはアナログ固有のものがあるとは思いますが……

 

【樹崎】

いや、デジタルでも手書きとほぼ同じことはできますよ。ただ、デジタル一式を揃える初期費もかかりますから新人さんにとって大変だとは思いますけどね。昔は紙とペンがあれば、一攫千金の雰囲気がありましたけどね。

 

【ヒカル】

先生的にはデジタル推奨ということでしょうか?

 

【樹崎】

工夫さえすれば、デジタルの方が優れた絵の具だと思いますので、紙にこだわるのは……紙に慣れている、もしくは時間がなくてデジタルにできない人以外はデジタルでもいいと思いますよ。使わないのはもったいないので。

 

【ヒカル】

なるほど。

 

【樹崎】

アナログの良い価値としては原稿が手元に残るって点なんですが、正直キャリアが長いベテランの家では原稿は邪魔になりますからね。昔はデータで原稿管理できなかったですけど、今はデジタルでの整理は楽ですから。

僕も正直、原稿が邪魔なので売っぱらいたいんですよ(笑)

 

【ヒカル】

場所をとるし保存状態も考えないといけないし、没原稿でさえ溜まっていきますもんね……

 

【樹崎】

それを自分の子孫に渡されても迷惑なだけでしょ?(笑)多くのベテランは今そう考えているわけです。

昔の僕は手塚治虫先生や、ちばてつや先生と自分が並ぶと思っていたから原稿を自分の魂と思っていたけど……そんな日は来ないので(笑)

つまり先生としては電子書籍などのデジタル方面をどんどん推奨しているわけですね。

 

【樹崎】

電子書籍は世界進出のために必要だし……世界に出ないと、もう日本の漫画は落ちぶれる一方なので。

電子ならではの漫画の見せ方があって、さらに漫画は進化できると思うんです。進化しないと漫画は子供も読まなくなってきてるし、少子化もありますし……読まれないということは漫画という分野が他の文化に負けてきているというわけだから電子で新しいことをしないと。紙で描いて、紙で読むのが漫画だと思っていたら過去の文化として落ちぶれてしまう。

 

【ヒカル】

そこで先生たちはDomixなどで新しいデジタルの方向性を探っているのですね。

 

【樹崎】

Domixっていうのは可能性全肯定の何でもありの電子書籍で、表現を限定した言い方ではないですよ。今は映像にこだわってますけど、アプリとして売れるならアプリでも問題ないです。本当はデジタル作品にも紙のように、ページをめくる感覚を入れたいです。そこに音楽もあり、エフェクトもあり、アニメもありを盛り込めば、もっと面白くなるはずです。まぁいつの日か必然的にそうなると思いますので。

 

【ヒカル】

世界中で電子書籍の流れ自体はできてきていますもんね。

あとは成長するのを待つといいますか。

 

【樹崎】

あとはいつできるか。その方向性がどうなっていくのかが問われるだけですね。縦スクロールでの作品公開する方がデータは少ないので、縦スクロールでの作品公開になるかなとも思うんですが……、横にページをめくる開き効果感覚も面白いし、このあたりは長い時間をかけて分かっていく感じですね。

 

【ヒカル】

まだまだ模索段階なんですね。電子書籍が本格化し始めたのも、ここ23年ですもんね。

電子コミックスを読んだことはあるんですが、作品ごとに縦スクロールだったり横スクロールだったりバラバラですよね。かつ倍率などで見えにくいコマもあったり、標準の設定を定めにくいところは確かにありますよね。

Domixなどもまだまだ苦労している点はありますか?

 

【樹崎】

まぁ苦労はしてますけど、楽しいという感情が先にあるので苦ではないですね。紙に漫画描くより楽しいね。手塚治虫先生や石ノ森章太郎先生が寝ずに漫画を描いた気持ちが、近年分かったんです。新雪を踏む楽しさが、あまりに楽しいんです。

新しいジャンルに挑戦するクリエイティブさが楽しくてね、寝る時間も惜しいんです。いい年してこんな無茶してたら早死しちゃうなとも思うけど(笑)

 

【ヒカル】

先生は近頃はどれくらい1日で活動してらっしゃるんですか?

 

【樹崎】

まぁ電子関連とかの仕事がないときは普通に7時間くらい寝たりもしますけど、電子関連などで仕事してるときは3時間くらいの睡眠ですね。

もうすぐ半世紀くらい生きてるのに、そんなことをしてたら早死しちゃうなとも思うんですけど……まぁ体に問題はないので(笑)

 

【ヒカル】

楽しい仕事のときは時間は一瞬で過ぎちゃいますもんね。

 

【樹崎】

ホントにそれなんだよね(笑)

深夜に「あぁ、もう1日終わりだ。寝るの勿体無い」って渋々寝ます。そんで翌朝、「あっ、やらなきゃ」ってすぐに作業に向かいますね。新しい表現に挑むのは楽しいので。

 

 


声優さんと漫画の可能性

Q:声優さんと漫画の可能性

 

【ヒカル】

Domixなどでは漫画に声を当てたりもしていますが、声優さんを起用することについては苦労はありましたか?

 

【樹崎】

最初は僕も声に関しては知識がないから、専門学校の声優さんのたまごさんに声をつけてもらってるんだけど、声の良し悪しが分からなかった。勉強中の学生さんだから、云わばまだまだ素人なんですけど……その中でも優秀な子の声を生で聞くと「おっ、いいんじゃない?」と思ってしまうわけなんです。加えて、あんまり良く思えない演技でも「この子はこの子なりに考えて演技したのかもしれない」と思って、口出ししにくかったんですね(笑)

そのうち、こちらも回数を重ねると「あぁ、こいつら考えて演技してないな……」というのが理解できるようになりましたけどね。

 

【ヒカル】

見分けがつくようになってきたのですね。

 

【樹崎】

二十歳前後の子供ですから・・・そんなに深くは考えてないので、こちらから演出は教えてあげないと駄目ですね。

作品に声を当てるなら、その作品の作者さんを呼んで……こっちからドンドン作品に秘められた深い部分を話してあげるようにしています。作者さんの心の根っこの部分を声優さんに話してもらって、声優さんに演技してもらうようにしているんです。その上で1人1人のキャラや作品が言わんとしていることを理解してもらうのが大事ですよね。

役者さんは自分の役に入り込めばオッケーとかんがえていて……でも、役者さんが役に入って演じるのは僕は当然のことだと考えていて、その先にある演出で何が求めらていて、どんな演技を必要とされているかまで……こちらとしては求めたいわけです。

そこの部分を作者さんや僕から直接語って解決しようとしています。Domixの中での演技はアマチュアも多いので、プロの声優さんには勝ててない部分も多いんですけど、他のアテレコ作品よりかはそういう意味で魂込めてやっているので……その魂の部分では勝ってるんじゃないかなと思ってます。事務所に受かってプロになる子も次々出てますしね。

 

【ヒカル】

個人製作のアテレコ作品はネット上にもありますけど、Domixが行っているような長い尺(15分以上)の作品はそうそう見かけないですね。

どんどん成長していく分野だと思います。何より、声を当てるということは違う言語での作品制作が可能になりますもんね。

 

【樹崎】

あとは本丸の世界戦略ですね。

韓国版の製作は決まってるので、達成できると思います。他の国だと文字を変えたり、色々な問題がありますね。これからどうやって解消するか……悩ましいところなんです。

基本、海外では文字を読む方向も違って、漫画の文法変更を余儀なくされるので悩ましい問題ではあるんですよ。映画のように漫画に字幕をつける案もあって、そういう案を出してくれる企業とかに限って原稿料、使用料とかが高いんですよ(笑)もう悪魔の囁きですよね(笑)

それでは漫画として面白さがなくなるのでお断りしたんですけど、でもそこで高い使用量を得れたら活動は楽になるし、資金源も増えるし……(笑)

まあ継続して技術的なことも含めた話し合いで妥協案を模索中です。

 

【ヒカル】

そういった葛藤があるんですね。使用料が高ければ、それだけ運営は楽にはなりますもんね。

 

【樹崎】

けれど目先の利益には飛びつかないようにはしています。負けないように(笑)

 

【ヒカル】

本質の面白さを求めて、(電子上での)漫画を進化させていくわけですね。翻訳だとか言葉の問題は難しいですよね。

 

【樹崎】

ソフトも充実してきてます。音声についても、もっと進化できると思っています。アニメとかは制作スタイルが決まってしまっていて常識に捕らわれていると思うので・・・もっと常識を壊して作品作りを作ろうとは思いますし、もっと少人数で低予算でも良いものができると思うので。それによって、どの漫画にも声を当てることができれば、声優さんの仕事が増えますからね。

 

【ヒカル】

1つのジャンルが盛り上がると、連鎖して違う職業の方のお仕事も増えますよね。

 

【樹崎】

今、声優さんのお仕事少ないんですよ。上の人がどかないから、新しい声優さんに仕事が回らないんですよ。なにに志望者は山のようにいる・・・そんな状態なんです。そこを打破したい。

才能ある子を引っ張りだしたい!

 

【ヒカル】

僕もそこは何とかしたいと思っています。僕の友人でも声優志望がいるんですけど、何せ仕事がないらしくて……そこが個人的に歯がゆいんです。

 

【樹崎】

声優さんと漫画家さんはもっと近い関係になれると思います。漫画空間で、いくつか番組をしているのは漫画家と声優を近づけるという目的もあるんですよ。漫画空間の宣伝もありますけどね。

 

【ヒカル】

漫画空間でも色々な試行錯誤を?

この前、19歳の女の子が番組してるのをチラッとみました。

 

【樹崎】

してますよ~。19歳の子は、17歳のときに主役してるんで演技力はあるんですが……それとMCの才能があるかどうかは別なんですよね(笑)今後の修行に期待してますが。

 

【ヒカル】

鈴木さんや守屋さんは慣れていますよね。

 

【樹崎】

鈴木さんはキャリアもありますし、もう脚本家としても1流なので、安心して見てますね。その1流の演出術を漫画について語るときも番組内でもっと語ってもらってもいいんだけど……そこはこちら(漫画家)へのリスペクトの関係でなかなか言えないのかなぁとは思います。

 

【ヒカル】

鈴木さんや守屋さんは場馴れしていて、MCもこなせますけど。なかなか全ての人がそううまくMCはできないですよね。

 

【樹崎】

他の子は声は出せてもMCが苦手だったり……まぁそれも才能ですよね、MCをこなすのも。面白いことを言わなきゃいけないし、わかりやすいキャラもいる。単に上手に喋るだけではないんですよね。

 

【ヒカル】

そこを伸ばさないと難しいですね。

先生としてはネット関係で、漫画業界を盛り上げていこうっていうのが当面の目標ですか?

 

【樹崎】

そうですね。ネットラジオも姉っくすもDomixの宣伝媒体に近いので、基本は電子書籍中心での活動ですね。そこにできる限り、力を入れたいですね。ネットラジオは特に人とのつながりが広がるので楽しいです。

 

【ヒカル】

樋口大輔先生(代表作:『ホイッスル!』)の回や、新條まゆ先生の回などは見ていたのですが面白かったですし、めっちゃ盛り上がっていましたよね。

 

【樹崎】

うん。人の集まり方が凄かったね。もうちょっと深いところまで作者さんと会話をしたいけど、顔出しで生放送だし……なかなか簡単にはできないよね。姉っくすとかの前に(カメラが回ってないところで)、お話しした内容の方がずっと濃ゆかったりします。

 

【ヒカル】

作家さんの担当さんとの兼ね合いがありますもんね……。けっこう凄い作家さんが出演しってますよね。にわのまこと先生はリアルタイムで見たことがあるので、感動しました。

 

【樹崎】

ジャンプ作家はそうそう人前には出なかったですからね。

 

 



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