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規制を考える

規制について考える

Q:規制条例についての議論

 

【ヒカル】

樹崎先生と言えば、僕が思い当たるのは先生が自身のホームページ上でも公開している「規制条例への反対声明」ですね。規制条例に関してはここから先はどうなると思いますか?既にコンビニから徐々に18禁の本は消えていってますよね。

 

【樹崎】

規制があった方が作家は燃えると思うんです。なので実のところ、そこまで規制には反対派ではないんです。ただ僕は単に規制を仕掛けようとしている人たちの心根が嫌いでね(笑)

 

【ヒカル】

「文学なら(エロも)大丈夫」という猪瀬元知事の発言などが該当するのでしょうか?

今、猪瀬さん大変なことになってますけど……

 

【樹崎】

そこが特にということはないですが、あぁいうところは本当にムカつきますね(笑)

「ざまぁみろ」と思ってます(笑)

 

【ヒカル】

猪瀬さんに関しては実際悪いことをしましたからね……

あんだけ色々言うてたのに、自分がそういうことをしてると……まぁそういう評価になりますよね。

 

【樹崎】

そういう人ですよね。行動に表れたというか。

うーん。政治をする人も最初の頃は正しい志であったはずだろうに……こうなってしまうんだね。多くの人の支持を得るには、多くの人が言ってる方に合わせる方が楽ですからね。石原慎太郎さんもそうだった。

 

 

【ヒカル】

マイノリティー側の意見保護が大事かもしれませんね。マイノリティーな立場を否定するということは、政治家が声明を上げて述べるところの「差別撤廃」とは相反しますもんね。

 

【樹崎】

石原慎太郎さんなんて差別ばかりでしたよ……、けれど石原さんを慕う高齢層にはそれが受けますから。お年寄りも困ったものです(笑)

若者が選挙に行けばこれも解決するとは思うんですが、若者は選挙に行かないですもん。……とか言いつつ、僕らが若い時も若者は選挙にさほど参加してなかったから全然責められない(笑)

 

【ヒカル】

僕は多少、規制はあっても良いかなという意見なんです。エロはあっても良いんですけど、小学1年生にエロ本見せつけるのは気が引けますし(笑)

日本の学生は理解があるので、中学生になればエロに関しても自己責任で何とかなると思うんですよね。

 

【樹崎】

僕は小学生の頃から、『デビルマン』読んでましたけどね(笑)

敵や子供の首がスパーーーンって飛んだり過激な表現はありましたし、セリフも過激な作品でしたね。「人間こそ悪魔だ」ってセリフやテーマがね(笑)

 

【ヒカル】

今だったり完全に規制が入りますよね。でも、『デビルマン』を読んで犯罪を犯した人も聞かないので規制することはないと思うんですけどね。

 

【樹崎】

僕はそういう作品を小学生時代に読めて良かったと思ってますよ。人間の本質について考えることができました。そういうものを読まないで生きている方が僕としては恐いですね。

常識を疑わない人間は簡単に操作されますからね。

規制する側はそうしたイエスマンを増やしたいわけですね。

 

【ヒカル】

過激な作品を読むことでしか得られない知識もありますもんね。そこは教科書みたいな作品には真似できない個性ですから。

僕も高校生ぐらいのときにジョージ秋山先生の『銭ゲバ』が復刻したので読んだんです。あの作品には考えさせられるところが沢山ありました。でも連載してからずっと規制されていた漫画なので、この漫画が規制されていたのは勿体無いと感じましたね。

 

【樹崎】

僕はほとんど規制はすることはないと思います。

子育て経験ある人にはいくらか分かる話をしますね。子供の好き嫌いをなくすには食卓に色んなメニューを出さなきゃいけないんですね。食べなくてもあきらめずに食卓に並べる……そうすると個人差があれど、いつの間にか色んなモノを食べるようになるんです。

子供のうちは自分に必要なものを見分ける能力があるんです。子供は自分の体に必要なものを美味しいと感じるので、自分で選別して食べていくんです。それを続けていくと好き嫌いはなくなるはずなんです。

 

【ヒカル】

なるほど。

 

【樹崎】

そこで「何で食べないんや!」と無理やり押し込むと駄目です。僕はされましたけど(笑)

すると、一生の好き嫌いが起こるんです。そういうことが規制をすることによって起こると思うんです。子供は自分に必要なものを選別する能力を持っているんで……。子供にはそれだけの力があります。「これはエロいから、暴力的だから」と規制をすることには凄く危険なことだと思います。

 

【ヒカル】

少なくとも……文学だからセーフ、漫画だからアウトになるのはおかしな話ですよね。

 

【樹崎】

めちゃくちゃおかしい理論ですよ(笑)

太宰治さん読んで誰が得するんですか。

 

【ヒカル】

昔の小説ではえげつない表現がありなのに、漫画で人の腕が吹き飛ぶ表現がアウトになるなんて説明になってないですよね。

 

【樹崎】

そうなると、三島由紀夫さんだって「大事なモノは火をつけて燃やしてしまえ」とか言うてるんですよ(笑)

大江健三郎さんは、死体を沈めるバイトの話を描いているけど、実際はそんなことないんだよね。だから現実を知って、その小説を読むと「おい!そんな死体を沈めるバイト実際何かないじゃないか。大嘘つきめ!」とは思いもするけど、小説もそういう実際はそんなことないことを描くから面白いんですよね(笑)

 

【ヒカル】

漫画だって同じですよね。人の手からは普通、かめはめ波は出ないし……人の手刀で腕は吹き飛んだりしない。でも、そこが面白い。

 

【樹崎】

ねぇ……腕が吹き飛ぶ描写なんて金閣寺に火をつける描写よりマシじゃないですか(笑)。太宰治なんて女と自殺しようとして、女だけ死ぬような話を書いてるだけじゃなくて実際やってるんですよ。

「そんな話がありで、漫画で殴り合いで腕が吹き飛ぶという、どう見ても架空の話がアウトなの?」って思いますよ。まぁそもそも違うジャンルですから、比較するのもおかしな話ですけどね。詰まるところ、何でもありでいいと思うんです。

ダメって言われたら、それで作家は燃えるのでそれもいいとは思いますけどね。

 

【ヒカル】

ここから先は規制は激しくなるでしょうし、作家さんの工夫が試されますね。

 

【樹崎】

その工夫が楽しいですよね。工夫さえ封じる世の中じゃ終わりですけど、

僕もジャンプ連載中も規制の壁に突き当たったことがあったんです。

「これは表現のしようがないなぁ」と思いました。

悪者が市民を陥れる言葉で「たかが●●のくせに」という言葉の「たかが」がアウトだったんです。これを言われると、表現のしようがないんです。「百姓」って言葉を作品に使おうとしても差別表現として「農民」という言葉に変更されたり、昔の人は農民なんて言葉使わないですからね。

 

【ヒカル】

時代背景的に「百姓」という言葉を使わないと、違和感を感じるとは思いますし……話が飛躍すると教科書の「百姓一揆」という単語はオッケーなのか。「時代劇はどうなんだ」という話にまで飛び火しますよね。

違う表現を使うと言葉のニュアンスが変わったり幼稚な発言になってしまいます。意図しないところで作品の質が下がってしまう。そこを含めて漫画業界で考えて行く問題かもしれません……

漫画業界は貸本時代から見るともう少し長い歴史ですけど、今の形になったのは戦後から現在まで。大体70年くらいですから、まだまだ100年経っていない、まだまだ動いていきますね?

 

【樹崎】

もう20年もすれば漫画をずっと読んでいた世代が中心になりますから、表現に関しても多少は変化すると思います。実際に時間が経たないと何とも言えないですけどね。何かしらの宗教に負けることもあるでしょうし(笑)

 

【ヒカル】

漫画家さんで表立って意見を公表できる人材があまり多くないですよね。そもそも漫画家さんは忙し過ぎて、政治まで干渉できないですから。

 

【樹崎】

そうですね……。政治まで参加してるのは赤松先生くらいなもんですよ。

 

【ヒカル】

スポーツから政治家になる人がいるくらいですし、漫画家からも政治家が出る時代が来ても良いかと。

 

【樹崎】

ちばてつや先生としても、もっと若い人に意見を求めてるんだよね。本当は若い漫画家さんが声を出さなきゃいけないんだけど……若い人は飯を食うのに精一杯で、影響力のあるヒット作家は時間がないんだよね(笑)

漫画家ほど、時間がない職業あんまりないんだよね。そうして漫画界では椅子取りゲームが始まって……椅子が減る一方だけど、何もできずにいるっていう人が多い現状ですよね。

 

【ヒカル】

 

漫画家をサポートできる人が必要なワケですね。それが恐らく、現状では赤松先生くらいしかいないのかもしれません(勿論、僕が知らないだけで他にもいるかもしれません)。ただ、そういう人材には法律にも精通した知識や弁論術も必要になってきますから難しいですよね。そういう人は一般でも多くないですし。