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スポーツ・努力漫画の難しさ

スポーツ・努力漫画の難しさ

Q:スポーツ・努力マンガの難しさ

 

【ヒカル】

今も昔もコツコツ成長する主人公の漫画って難しいという話なんですが……『キン肉マン』も主人公キン肉マンが弱い序盤は連載苦労したと聞きますし、やはり壁がありますよね。

 

【樹崎】

スポーツや努力物がある程度、雑誌が余裕を見てくれないと人気が取れるのが遅いですからね。……ちばあきお先生の作品が代表じゃないかな。修行や努力してる間は人気出ないですから。大体、10週目くらいから人気は出るんですよ。『山下たろーくん』とかはそういう漫画の代表格だと思います。

 

【ヒカル】

ちばあきお先生の『キャプテン』のように非常にゆったり主人公が成長していくタイプの漫画は10話や20話でようやく小さな成果が出ますよね。今じゃ、そういう漫画は減りましたけど。

 

【樹崎】

そういう小さな流れが本来大事なんですけど、雑誌はなかなかそれを許してくれないんですよね。それは厳しいなと思うんですけどね。スポーツものだと、スポーツの説明だけでもページを食いますし……それでいてページ数の少ない読み切りで人気を取るのは不可能になんですよね。

僕も最後に載せた読み切りではそこの壁に突き当たっていましたね。MTBを題材にした漫画を描きたかったんですけど……そのスポーツの説明だけで、ページがかかってしまう。

まず成功するための公式としてはまずキャラクターの魅力があって、じゃあこの主人公が好きなスポーツは何だ?……っていう順番でないと人気が取れないんですね。でも、それを短いページ数でそれを全部表現するのは無理なんですよね(笑)

 

【ヒカル】

読み切りのスポーツの説明に23ページ使うだけでも、だいぶ窮屈な感じになりますよね。

 

【樹崎】

僕はジャンプでの読み切り時(8年くらい前)は50ページほどもらいましたが、それでも無理でしたね(笑)

自転車でガーッと走るワンシーンを描くだけで10ページは消費しちゃいます。普通にバトルを描くなら、単行本1冊分の情報量が必要になりますから。

井上雄彦先生の『SLAMDUNK(スラムダンク)』とかを読むと理解できると思うんですが、緊張感が増すと時間が止まったように感じるんです。読んでいても、そんな風に感じないと駄目なんです。すると、必然的にコマ割りがある程度大きくなって、スローモーションのように見せるほど熱さが伝わるんです。それを簡略化すると、熱さが伝わらないのがスポーツマンガなんです。だから短いページで熱さを伝えるのは物凄く難しいんです。それに加えて、キャラクターをしっかり描くのはさらに難しいんです。

 

【ヒカル】

ファンタジーと違って、現実のスポーツをモデルにしてる場合は余計に難しいですよね。突飛なことをするにしても難易度が高いですね。

 

【樹崎】

そういう意味じゃバトルやファンタジーの方が読み切りは描きやすいかもしれませんね。皆、そっちのジャンルに流れちゃう気持ちも分かります。

まぁ当然、ファンタジーにはファンタジーの全く違う難しさがあるんですけどね。

スポーツは何かと制約が多い。なので、そこは出版社側にもっとスポーツものに関しては余裕を見てあげて欲しい。スポーツものはページ枠が別という設定がいるんじゃないかな?

 

【ヒカル】

描写1つにしてもスポーツは(例えば、野球では)ピッチャーがボールを握って投げるまでに描くものが多すぎますもんね。

 

【樹崎】

投げて→打つでは終わらないですからね。

投げるところから野球ボールの握りから汗、空を切るボールの軌道、風向き……色んな緊張感を見せていかないといけない。どんな音でボールがミットに収まって、キャッチャーはどういう風に揺れるのか、審判はどんな風に驚くのか。そんなことを全部描かないと面白くはないですよね。

 

【ヒカル】

読者を納得させるだけの描写が重要なのですね。簡略化すると読者が納得してくれない。

 

【樹崎】

当たり前でない部分を描かないとスポーツものとしては新しくないので。

 

【ヒカル】

そこで内容を弾けすぎても読者が置いてけぼりになる可能性もありますね。

新連載見てても、スポーツものが10話くらいで終わると……あぁ、またこんな感じで終わるのかとは感じます(どれもこれから盛り上がりそうなところで終わる)。

 

【樹崎】

スポーツ漫画は30話分ぐらいネームを用意しておいてもいいとは思うんですけどね。

 

【ヒカル】

10話くらいで打ち切られる漫画を見てると、これから出てくるライバルとかが本当に描きたかったんだろうなと作者の無念を感じます。

 

【樹崎】

マガジン系列はスポーツものに関して、ゆったりめに見てくれるので描きやすい環境とは思います。

昔のジャンプはスポーツもファンタジーも同じ土俵ですからね。今はどうかは分からないですけども。スポーツものはある程度、寛容に見るっていうことはあるとは思うんですけどね。友人の先生が描いた人気スポーツ漫画も当初は人気なかったらしいんですけど、それはスポーツものだからということで誌面のアンケートでは人気がなくても連載は続いたんです(その後、その作品はテレビで大ヒットしました)。なので、ジャンプとかでも誌面での人気が全てではないですね。

 

他の作品でも誌面アンケートでは人気がなかったけど、別枠というか連載が続いていた作品もある。単純な人気ではなくて単行本の売上が良ければ連載が続くということはありますからね。