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編集さんのお話し

編集さんのお話

Q:編集さんたちのお話

 

【ヒカル】

漫画家さんで直談判しに行くって、なかなか聞かないケースですよね。

 

【樹崎】

やはり……ジャンプに作品を載せることができるのは特別なんですよ。僕は「40歳まで生きれたらいいわ~」っていう人間だったんですね(笑)

事実、40歳まで生きてやり残したことはあまりないんです。けれど唯一あるとすれば、ジャンプで昔できなかったベストのコンディションで作品を描くことです。それだけやり直せればと思っていて。

 

【ヒカル】

その勢いで当時の茨木編集長さんに直談判したのですね。

 

【樹崎】

僕も直談判したときは、ちょっと文句言ってやるくらいのつもりだったんです(笑)茨木さんはナカタニの担当でもあったから面識はありましたから。

 

【ヒカル】

茨木さんって、色んな漫画にゲストキャラで登場してらっしゃいますよね。明るい面白いおじさまという印象を持っています。漫画家さんが作中でいじっていますので、親しみやすい方なのかなと勝手に思っています。僕はお会いしたことはないので分からないですが。

 

【樹崎】

そうですね、実際親しみやすい方かなと思います。物凄く切れ者なんですけど、面白いキャラクターな人でもありますね。作家さんにいじられることを嫌がらない編集さんですね。古くは徳弘正也先生の『シェイプアップ乱』の頃からいじられていますから(笑)

 

【ヒカル】

担当さんって、人にいじられるの嫌がるのかと思っていました。

 

【樹崎】

まぁそこは人によるでしょうね。茨木さんは進んでいじられてくれる人ですから。

 

【ヒカル】

昔から作家さんが編集さんをいじる・登場させる文化はありますよね。

Dr.スランプ』のマシリトというキャラクターは当時、編集だった鳥嶋さんがモデルなのは一般的にも広く知られていることですし。

 

【樹崎】

いやぁ、鳥嶋さんをいじるのは恐いですよ(笑)

鳥嶋さんは怖いなぁ、僕は可愛がられてて飯とか連れて行ってもらいました。でも気に入ってない作家さんには容赦ないですから。鳥嶋さんの伝説といえば、ジャンプにコネで持ち込みに来た子が昔いたらしくて、そしたら鳥嶋さん原稿を読んで「おい、こいつさぁ……コネで持ち込みに来たんだけど誰か見てやってくれねぇ!!?」って持ち込みに来た子の目の前で原稿ほっぽったという嘘か誠か分からない伝説があります(笑)

 

【ヒカル】

あの人だけは怒らせてはいけないという噂話も聞いてます(笑)

勿論、鳥嶋さんもお会いしたことないので深くは知らないんですけども

 

【樹崎】

鳥嶋さんは目が殺し屋みたいな鋭い目をしてるんです(笑)

でも作品に対する真摯な姿勢がとても好きでした。

 

【ヒカル】

当時に比べたら、編集さんの人柄も変化したのではないでしょうか?

(昔の編集さんは硬派な印象があります。漫画とかの影響が強いですが)

 

【樹崎】

んー、どうでしょうか……

まぁ当時も僕からしたらまだ茨木さんも鳥嶋さんも1人の編集さんで、ここまで凄い名編集になるとは思っていなかったですし……。今の編集さんも後に凄く有名な編集になる方もいるのでしょう。

ジャンプにいたころ、鳥嶋さんから「作家は処女作に向かって成熟する」という言葉を頂いたんです。今考えると、その言葉はさっき話したこと「作家は1つのことを書き続けるべき」って言葉と通じてますよね。

 

【ヒカル】

なるほど納得です。

 

【樹崎】

だから僕は『ゾンビメン』で描いて納得したことは『ff』を書き上げたときと同じなんです。僕のツボはそこしかないなぁと思います。

 

【ヒカル】

いやぁ、でも分かっててもできないことですよね。

 

【樹崎】

そうなんです。

だから過去の作品の一部には悔いがあるんです。物語を描くうちに自分の描きたいものに近づきはするんですけど、最初の出だしで人のモノを借りてしまったんです。それをずっと後悔していたんです。

 

【ヒカル】

これは俺の作品であって、そうでない。そういう心残りですね。

 

【樹崎】

まぁ持ち味がなくて、特に迷うこともない人はバレないようにパクってもいいんじゃない?とは思いますよ(笑)僕はしないですけど。

 

【ヒカル】

うまいこと、色んな作品の良さをミックスしちゃう人もいますよね。

 

【樹崎】

まぁ上手に混ぜて自分の魂の部分を裏切っていなければ、それはそれでいいと思います。売れるために描くのだってありだとは思います。別に尊敬はしないですけどね(笑)

 

【ヒカル】

先生はそういう考えには若いときでも至らなかったですか?

とりあえず唐突にトーナメントや商業的なお色気要素だしたり、唐突に新展開に持ち込んだりして安易に人気を取ろうということはなかったでしょうか?

一般読者視点から見るとシリアスな暗い重厚な話で序盤苦戦するよりも、明るい展開や美少女で人気を取るほうが難易度的には下がるように思えるんです。読者的にも食いつきやすいですし。

 

【樹崎】

人気は取りたいんですけどね。

僕は描きたいものが先にあって、漫画家になったので、そこは裏切れないんです。でも人気を取るのは大切なんで、だから僕は技術本を売るほど技術にうるさいんです。

自分の描きたいことを伝えるために、僕は描きたいものがある分勉強するんで……僕はその分、損なんですよね。描きたいことがあるってことは売るという面では損なんです。描きたいものがない方が好き勝手に流行のものを描けるんで。

 

【ヒカル】

確かに実際はコツコツ練習して成長する駄目駄目な主人公の成長物語を描きたくても、それは連載になると辛いですもんね。

最初からある程度、主人公に実力が伴っていると描きやすいでしょうし。でも、それだと駄目駄目な主人公が描けないジレンマがありますもんね。

 

【樹崎】

なので僕は「あっ、この手法なら売れるな」と確信しても自分の求めるものと違えばやらないんです。

「うん。まぁこれは分かったからええわ」って感じで描かないんですよね(笑)

 

【ヒカル】

 

なるほど。けれど今も昔もやはり、主人公がコツコツ成長する漫画には難しさがありますよね。