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映像メディアと講師体験について

映像メディアと講師体験を通じて……

Q:映像メディアについて

 

【ヒカル】

先生は今では映像、漫画、音楽を組み合わせ作品作りを手がけていらっしゃいますが……大学在学中は映像メディアに進もうとは考えていなかったのですか?

 

【樹崎】

僕はチャップリンの『独裁者』に影響を受けたんです。おばぁちゃん子だったのでハリウッド映画だとか外国の映画を、おばぁちゃんと見てたんです。父親や母親にかまってもらえなかったから、おばぁちゃん子ってことでもあるんですけどね(笑)

なのでおばぁちゃんの世代でも馴染みのあるチャップリンが好きで、一緒にチャップリンの映画をおばぁちゃんと見ていました。

中学2年のときに『独裁者』でのチャップリンの演出(普段喋らないチャップリンが喋る)に刺激を受けてね。『独裁者』はヒトラーが勢力を伸ばしていた時代に、ユダヤ人のチャップリンがヒトラーを皮肉った映画を作ったんです。

チャップリンは基本的に体の動きだけで表現する方なので、普通は映画内で喋ったりしないんです(同時期の映画では、もうサイレント映画の時代ではなく俳優のセリフ付き映画があったのにも関わらず)。なのに、この『独裁者』という映画ではチャップリンは喋るんですよ。最後に一気に長々と演説をして、それが映画の締めになるんです。作品でヒトラーと戦い、平和を謳っているんです。

 

【ヒカル】

それは痺れる演出ですよね。

そういった映画から刺激をもらうことは多いですか?

 

【樹崎】

そうですね。映画からは影響を受けやすいもので。

 

【ヒカル】

そこにいくと最近、僕の周りの話になるんですが、世間一般的に洋画映画は見てないけど、アニメだけはずっと見ている人も増えているような印象を受けます。

もしくは昔の古典的な作品を見ていない人も増えているように感じます。

樹崎先生としてはやはり、映画(洋画など)をどんどん見て欲しいですか?

僕個人としては当然、アニメも好きですけど映画から学べることも多くあるので。漫画家志望の方だとか、芸術に関わる人ならば古い洋画もジャンジャン見たほうが良いかなぁとは思うんですけども……

 

【樹崎】

はい。そうですね……

僕はチャップリンの映画を見て、「こういうチャップリンみたいな生き方をしたいな」と思って、そこが自分の活動にも繋がっていると思うんです。映画を創る機会があれば、映画もしていたかもしれない。

でも、当時の日本映画って目指したいとは思えないくらいには最低……だったので(笑)

 

【ヒカル】

80年代には僕は生まれてはいないですけど、その時代は映画業界が斜陽(?)だったのかなぁと考えています。

リアルタイムで経験していないので、分からないですが。

 

【樹崎】

斜陽ですね。『セーラー服と機関銃』よりも少し前ぐらいの日本映画です。

当時は映画監督になれる人は完全に年功序列や学閥重視だったので……、その結果なのか酷い出来のモノが多かった。

映画における才能が重要視されない時代だったのかもしれないですね。その時代の邦画はB級すぎて笑えるところもあるんでタランティーノなんかには愛されてるわけだけどね(笑)

昔の邦画は今見れば、違う意味での味はあるんだけど同時期のハリウッド映画と比べると熱意に雲泥の差があって、酷かったんです。

 

【ヒカル】

海の向こう、ハリウッドでは豪華なセットや撮影機材で撮っているのに……こちらでは限られた資材で勝負。そこで創意工夫もない商業重視な作品ばかりになると、見てられないわけですね(勿論、そうでない素晴らしい出来の作品もある)。

 

【樹崎】

ハリウッド映画では『スターウォーズ』、『未知との遭遇』などでスピルバーグやルーカスが台頭してきたわけです。

『レイダース』のような格好良いアクションもありましたから。でも日本ではTさんのB級アクションなんです(笑)。

 

【ヒカル】

80年代も後半になると、海外ではCG技術も使い始めようというときでしたから、どうしても見栄えに差は出ちゃうかもしれないですね……。そこで先生は漫画で作品を表現するに至るわけですね。

 

【樹崎】

そうなんです。ハリウッド映画みたいなことを日本でするにはどうしたらいいんだろうと考えたときに

「日本人には漫画があるじゃん」って思ったんです。

 

【ヒカル】

そこが先生の漫画の原点になったのですね。

 

【樹崎】

そこが僕の原点ですね。当時は絵はそこまで巧くなかったけど。それでもクラスで2番目くらいの自信はあったけどね。高校では学校で1番巧いと思ってたけど(笑)

でも美術系の受験予備校に通いはじめてみると、僕は最下位くらいに下手くそでした。またそこの予備校が特別レベル高かったんです。

 

【ヒカル】

やはり予備校とかはレベルの高い子が集まりますもんね。当時って、そういう美術系の予備校は多かったですか?

今でこそ漫画入門コースみたいな教室もありますが……

 

【樹崎】

当時でも芸大、美大とかに行く人は、そういう予備校だとかに1年くらい通ってましたよ。

漫画の学問はありませんでしたが。それでも芸大だと7~20倍くらいの倍率だったと思います。本音を言うと、東京の大学に行きたい気持ちはありました(笑)。絵の勉強はすぐには活かせないかもしれませんが基本からやることが重要ですね。

 

 

【ヒカル】

中には美大や芸大を経由せず、漫画業界に入ってきた先生方もいますよね。次原先生も理工系の学科卒業と聞いてます。

 

【樹崎】

そうですね。芸術以外の学科卒業だと、色んな知識を得られますからね。マンガ学科に入るのは本当に得なのかっていう疑問は僕も持ってます。

でも今時の漫画学科を開いている大学はレベル高いみたいですよ。何より良い仲間に恵まれて、切磋琢磨できるメリットがありますよね。

先日、よしまさこ先生とお話したんですけどね。よしまさこ先生の教室の生徒さんは本当にレベルが高いんですよ。僕の教え子もかなりの確立で漫画家としてデビューしましたけど、よしまさこ先生の大学のデビュー率の高さには負けるなぁって思います。

 

【ヒカル】

やはり絵は良い仲間がいると、より成長しますかね?

互いの絵を見て、学びあったり。絵の力って、自分では気づけなかったりしますもんね。勘違いしてしまったり、逆に人の原稿ではあざとく弱点を見抜けたり……

 

【樹崎】

そうですね。……でもどうしても専門学校という空間では、やる気のない奴が出てくるんです。そういう子がいると、足を引っ張るんです。教室の雰囲気も大学の方が意識のレベルは高いかもしれませんね。

 

【ヒカル】

そればっかりはどうしようもないですもんね。

専門学校だと、中には大学に行けるほど勉強してないけど、働く気もないので……、とりあえず専門学校に来る人もいるでしょうし。勿論、やる気が凄い人もいるでしょうけど。

 

【樹崎】

やる気がない奴に、やる気を教えるのは不可能ですからね(笑)

 

【ヒカル】

絵にはそこまで興味ないけど、とりあえず入学だけした人も多いのかもしれませんね。今時は大学でもとりあえず入学だけしたという人が大半ですし……

 

【樹崎】

僕が講師時代もそういう人もいましたよ。

講師2年目には投稿クラスってものを作ってもらいました。本音を言わせてもらうと、講師としてもやる気がない人には教えたくはないですよからね(笑)

やる気がない人の面倒を見るのは、サービス業ですから。

漫画家を目指すということを体験してもらおう。……っていうところで終わることを教えるのはつまらないので。

 

【ヒカル】

最初からやる気がない人も多かったですか?

 

【樹崎】

ただ最初に学校に来たときは、皆やる気はあるんです。

 

そこでやる気を無くさないうちに、基礎から教えてあげれば大丈夫とは思います。最初は2年生と1年生の授業を受け持ったんですけど……2年生には既にやる気の無さが植えつけられていたんです。でも、1年生の子はかなり食いついてきてくれたので、かなりの子がデビューしましたよ。4人は連載を持って、単行本まで出した子もいますから……教え方次第だと思いますね。