目次
はじめに
はじめに
宗教的表現について
研究者の方々へ - 検証中の仮説
外部リンクの表記、Android対応、訂正箇所のご指摘のお願い
概略
現在の症状
息子の誕生
さらに遠い通院へ
知らされなかった検査結果
アミノ酸分画検査結果
タンデムマス検査結果
合っているかもしれない仮説
閑話休題:創作話 トリケラお母さんの悲劇(# ゚Д゚)
DNA検査の実体験と仕組み
ミトコンドリアDNAの検査
ヒットカウント分析および共起性分析
23andMeのDNAアレイによる検査 - 販売停止命令に至る経緯
遺伝病とコモンディジーズの違い - 優性遺伝と劣性遺伝
ヒトはヒトであるが故にヒトの病を患う
コモンディジーズの検査方式 - アバウトなGWAS
23andMeの深刻な検査結果 - 統計の改善による影響
23andMeのその他の結果
エクソームシーケンシング
コモンとレアの重症度分布 - アレル頻度とエフェクトサイズ
個人向け遺伝子検査の選び方 - 罹患人口カバー率指標
閑話休題:製作物 DNAツリー
希少疾患と難病の制度および数値
希少疾患と難病の違いと制度的起源 - 日米欧比較
赤信号みんなで渡れば - 真面目な日本人の最悪の集団行動
もっとも希少な希少疾患 - 70億人にたった一人
もっとも正確な希少疾患の数 - 毎日約1つ希少疾患が増える?
希少疾患全体の罹患率 - 全部合わせると10~14人に一人
診断に至るまでの年数、または遅延 - 28年?!
GINA(ジーナ) - DNA検査時代の国民、患者を守る法制度
国民皆保険の功罪 - 患者をチェリーピッキングする医師達
節としてまとまらなかった事柄
希少疾患と感染症
感染症と希少疾患の関係 - 未診断の希少疾患という重症化因子
予防接種の健康被害としての未診断の希少疾患
希少疾患としての感染症 - 米国のAIDSの歴史
見えないところに死体の山
医師に頼らない因果関係の追求 - 脳症の本当の原因
更に複雑な感染症の話
医療訴訟が生み出す二次被害 - 無過失賠償制度の必要性
辛い記憶
両親を批判することについて
両親への間違った説明
辛かった学校生活
体育の次の時間に倒れてしまう
電車とバス
繰り返し運動による寝られぬほどの筋肉痛
食事の前後の発作
進化と感染症の間の遺伝性疾患
進化と感染症の間の遺伝性疾患
仮説の更なる展開 - 発見され増加を続ける希少疾患
卵子と精子の間の変異の導入の違い
感染症と遺伝性疾患で重度となる役割 - 男性淘汰進化説
絶滅のシナリオ - 感染症と遺伝性疾患の袋小路
進化のスピード調節 - もっとも強く訴えたいこと
進化と遺伝性疾患の「必然性の枠内の偶然性」
ダーウィンのUNdiagnosed
そして各論へ
遺伝学用語の混乱
遺伝学用語の混乱:genetic、遺伝か起源か
de novo変異 - 両親から受け継がれない優性遺伝の変異
個人向け遺伝子検査のガイドラインの乖離
みんなが保因者の劣性遺伝病? - 平均約10個の遺伝的荷重
劣性病的変異の健常者への影響 - 遺伝子プールの浄化説
あとがき
あとがき
これ以降分冊予定
▲▼そして各論へ
検証実験の山 - バッチ型検証実験の提案
希少疾患の中の更なる希少な患者群についての予測
環境因子か遺伝因子か
代謝異常についての進捗
遺伝子検査の2つの嘘
生まれの平等性または不平等性
▲▼生まれの平等性または不平等性
新型出生前診断と着床前診断 - 技術的に◯、倫理的に☓
生まれる前のDNA検査 - 科学的因果関係の追求ライン
技術としてのNIPT - 生まれのDNA検査の技術予測
我が子に故意に良くない遺伝因子を許容する親の罪
ディストピアな未来像 - 生まれの平等性が崩れた世界
不妊という社会問題 - 男性不妊と父性年齢効果
中絶による母体へのダメージ - 次の妊娠がうまくいく確率
着床前診断の問題点 - NIPTとの倫理的違和感
不妊治療としてのPGD - 不妊としての遺伝性疾患
生殖医療のリアルの写真
男女産み分けの国際比較 - 海外での生殖補助医療のリアル
着床前診断の潜在的なリスク - 子と女性へのリスク
フィルターされた人々による生まれの平等性、不平等性の支配
遺伝学用語の混乱:variation、多様性か変化性か
人権に基づく多様性、人権に基づく変化性
男性不妊と劣性遺伝病の完全予防 - 22世紀の精子起源工学
その他 - うまく分類できずとも価値のあるトピック
DNA検査の結果の公開 - シーケンシング機会の平等性
進化における神の概念
mtDNAとY染色体の永代性 - 未来の血縁者の不利益
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予防接種の健康被害としての未診断の希少疾患

 おそらく、[感染症と希少疾患の関係...]で述べた、未診断の希少疾患がインフルエンザの重症化因子であるのと似たような理由から、予防接種によって健康被害を起こした患児も、アナフィラキシーや、ギラン・バレー症候群の他に、大型のDNA検査で調べればCPT2といった希少疾患と同じ遺伝子によるものが存在するのではないかと推測できる。ただ、温度依存性という意味では、それほど発熱していない予防接種の状態でCPT2が影響するとは考えにくい。しかし、CPT2と似て異なる代謝経路の疾患で、重症度があまり閾値によらず軽度まで可変なものとして、私の場合も疑ったようにミトコンドリア病がよく当てはまると思う。

 

 特定の患者さんの症例ばかりを何度も引き合いに出して申し訳ないが、[ミトコンドリアDNAの検査]の節で述べた診断されていなかったミトコンドリア病患者が、2001年に報じられた有名な「仙台筋弛緩剤事件」にからんで、筋弛緩剤の投与で死亡しかける医療過誤が起こったのも、これが筋弛緩剤ではなくインフルエンザワクチンであってもそれほど不自然ではない気がする。予防接種でもサイトカインという物質によりミトコンドリア内での代謝回路が大きく切り替わるので、そのタイミングで何か悪いことが重なれば、ミトコンドリア病を発症した状態になるのではないだろうか。なお、このミトコンドリア病患者は、詳しい状況は分からないが、現在も適切な治療を受けられていないようだ。このことも、軽度のミトコンドリア病の診断は、そういった患者の存在を理屈の上で推測することはできても、実際問題として遠い大学病院やNCNPの一部の医師しか出せないことを表していると言えるだろう。ただ、おそらく数値として潜在的なミトコンドリア病の罹患率を推定することは可能だ。そういったことをしてくださる研究者がいれば、インフルエンザワクチンについての悪い評判によって無用に医師が攻撃されるのを緩和する一助となるだろう。

 

 CPT2がインフルエンザの重症化因子であることが近年になってようやく明らかになったこと、ミトコンドリア病が診断されずに薬剤で重度の有害事象を起こしていること、この2点を考え合わせると、インフルエンザワクチンでアナフィラキシーでない健康被害を起こした患児が大型のDNA検査を受ければ、非常におおざっぱに言って半数で、何らかの疑わしき変異が検出されると思われる。その病因性を証明するのは時間がかかるだろうが、将来のことを考えると受けさせないよりは受けさせておいた方がいいに決まっている。もっと幅広く考えると、やはりサイトカインによりミトコンドリア内の代謝回路が切り替わることはどのワクチンでも同様だと思われるので、あらゆる予防接種の健康被害の中に、ミトコンドリア病由来のものが混在しているという推測が成り立つ。ミトコンドリアDNAのヘテロプラスミーによる障害は、重度のミトコンドリア病から単なる老化まで重症度が幅広いので、予防接種の健康被害として代表的な、ギラン・バレー症候群の中にもミトコンドリアの障害が紛れ込む可能性はありうる。

 

 その場合、極軽度のミトコンドリア病であってもギラン・バレー症候群の重症化因子となるであろうことは想像に難くない。なぜならギランバレー症候群の自己免疫疾患の抗原であるガングリオシドもまた、糖脂質としてミトコンドリアによる代謝の対象と・・・思われるからだ。あまり自信がないので共起性を調べるとそれらしき結果*が得られる。ガングリオシドの一つのタイプであるGD3などに限っているようだが、そられしき学術論文GD3などに限っているようだが、そられしき学術論文も出版されている。また、英語でミトコンドリアとギラン・バレーの共起性を評価すると、20141217日時点で約 784,000 といった強い関係性が示される。[ミトコンドリアDNAの検査]で調べたように、mtDNAがヘテロプラスミーとして僅か変異すると、代謝が悪くなって活性酸素がまし、増した活性酸素によってmtDNAの変異がより促進されるという悪循環が存在するので、極軽度のミトコンドリア病をもともと患っていた場合は、ギラン・バレーを発症してガングリオシドがミトコンドリア内に蓄積されている急性期に、mtDNAの損傷が進んで特に神経細胞で著しく老化が促進された状態となり、その程度がもともと健常者であった場合よりも大きいのではないかと推測される。

 

 実際、子宮頚がんワクチンでミトコンドリア病を発症したというような主張が重度の健康被害を負ってしまわれた患者の間にあるようだ。こういった場合は、極軽度のミトコンドリア病をもともと患っていて、それが予防接種によるギラン・バレー発症により重症化したと考えた方が適切ではないだろうか。ただ、学術報告ではないため詳細は分からず、リンク先のサイトで限られた人がツイッターなどにもミトコンドリア病と子宮頸がんワクチンの関係を送信しているようにも見受けられる。先述のGD3およびGM1の学術論文の方が、信ぴょう性が高いと思われる。20153月時点までに調べた範囲では、子宮頸がんワクチンについては、感染症のワクチンとは事情が異なり、感染症がシーズン前に打たないと効果がないのに対して、そもそもがんという対策の緊急性が要求されない年単位のタイムスパンの疾患に対する接種である。もっと丁寧に問診し、接種前の検査を拡大する余裕はあったように思われる。

 

 いずれにせよ、感染症の予防接種の前に、極軽度の希少疾患の稀なリスクについて、医師が説明しなかったとすればその点については責任があるが、そういった希少疾患をその場で診断すること自体はDNA検査の普及なしには不可能であることを「仙台筋弛緩剤事件」の記事や報道から我々はよく知っている。繰り返しになるが、子宮頸がんワクチンに関しては例外で、感染症ほど緊急性がないので、もっと丁寧に接種前の検査を行う必要があるのではないだろうか。

 

 また、風邪の罹患や薬の内服などを契機として亜急性に四肢脱力、嚥下障害を発症するミトコンドリアミオパチーの一種があり、MIMECKmitochondrialmyopathy with episodic hyper-CK-emia)と命名されたそうである。こちらも残念ながら詳細が入手できず、学術論文の本文がオープアンアクセスになっていないのが非常に残念だ。風邪の罹患や薬の内服という二つの条件を、予防接種はかなり満たしていると思われるので、予防接種を契機として発症するのに不思議はないように思われる。

 

 このように考えると、感染症の予防接種による健康被害の半分ぐらいは、その場に立ち会った医師ではなく、希少疾患という特異体質を診断できなかったそれ以前の成長過程における医療にあると、そういう風にも考えることができるのである。現在の段階ではDNA検査がまだ大型化していないのであまり関係がないが、数年後に大型のDNA検査が普及すれば、そういった医療をご両親が積極的に受けさせてきたかどうかという点も、過失割合の争点になっていくであろうと思われる。理想を言えば、希少疾患の診断はたとえ軽度であっても、人生の初期であればあるほど有益なのだ。そういったリスクを考えずに、いきあたりばったりに予防接種を受けるという時代は早くに終わらせた方がよいに決まっている。しかしリアルとしては、あまりにも予防接種が裁判にのぼりすぎたために、いきあたりばったりに受けられるほどの種類の感染症の予防接種は、すでに日本に残っていないのである。たとえDNA検査で全く疑わしい変異がないと分かっても、国際基準の予防接種を受けたければ韓国に行かなくてはならない国になってしまった。もちろん、万が一飛行機の中で発熱しては間が悪いとエボラ患者といっしょに隔離されかねないので、そんなかえってリスキーなこと実際問題できるわけがない。

 

 感染症と希少疾患は正反対の概念ではないかと思われていた方も多いと思うが、実は診断できない希少疾患が、感染症の重症化因子であったり、ワクチンで重度の健康被害を引き起こすであろうという点で、両者は強く関係している。恒常性の中では希少疾患としては軽度でも、医療行為により恒常性が崩れれば当然重度で発症するのである。そしてその責任はまっさきに恒常性を崩す行為を行った医師の方に向かう。稀だからといって無視していいというわけでは全くない。実は、ミトコンドリア病患者の例で分かるように筋弛緩剤や麻酔薬とも関係しているのだが、「仙台筋弛緩剤事件」の経緯としてすでに一度は別の節でふれたので、ここでは触れない。

 

 

 何度も繰り返すが、子宮頸がんワクチンに関しては、感染症の予防接種と異なって、現在知られているほど大規模な健康被害が出る前に、問診と検査を拡大する時間的な余裕があったはずである。


希少疾患としての感染症 - 米国のAIDSの歴史

 [感染症と希少疾患...]の節で、診断されていない希少疾患が感染症の重症化因子であると述べたが、本節では、特に米国において罹患率の低い感染症が希少疾患として扱われていることを、AIDSの場合を例として述べる。また、AIDSについて、オーファンドラッグ過剰保護問題との関連を述べている記事を示す。

 

 最初に、用語の揺らぎを押さえるため、ヒットカウント分析を行う。

 

オーファンドラッグ

"orphan drug"  478,000

"オーファンドラッグ 36,400

"希少疾病用医薬品 34,100

"希少疾病医薬品 2,170

"希少疾患用医薬品 1,560

"希少疾患医薬品 397

 

AIDS

"AIDS"  288,000,000

"エイズ 5,330,000

"後天性免疫不全症候群 160,000

 

顧みられない病気

"neglected disease"  133,000

"顧みられない病気 3,230

"neglected drug"  2,380

 

(グーグル検索、20141218)

 

 顧みられない病気についても調べたのは、AIDS、エボラと、途上国から持ち込まれる感染症が先進国でも大問題になることが多いのに、途上国での感染症対策に先進国からの支援が意外なほど少ないことを示すためである。要するに、国境なき医師団という団体に任せきりである。最初に発生した時点でコントロールできないことにより、地球規模的感染、つまりパンデミックとなってしまうリスクが増しているのであって、先進諸国が最初から途上国の感染症対策にもっと協力するべきなのである。もちろん、協力を受け入れる体制があればの話で、かと言って、米国ほどの軍事力によるゴリ押しはいけないことだが。途上国からの感染症が先進諸国でも問題になるのは、お互いに一様なDNAを持っていることの証明である。ヒトは感染症と闘うにはあまりにも均一なDNAを持ちすぎてしまった。[ミトコンドリアDNAの検査]の最後に示したように、あまりにも単一起源、同一家系すぎるのである。同一家系であるからこそ、同じ感染症が大問題となるのであって、それこそが、同じ巨大家族の一員として、先進諸国がより大きな支援を組むべきことの証明なのではないだろうか。

 

 米国の法令での希少疾患の定義を用いると、患者人口20万人未満という、とても画一的な条件なので、AIDSといった今では一般的な感染症でも、性感染で米国人口に広がる前のステージでは、アフリカから持ち込まれた、頻度は低いが重症度の高い感染症という希少疾患だった。おそらく、これは米国という国がツーリズムや人類学的調査研究などの文化を通じて、第三世界から未知の病原体に暴露して帰ってくる、つまり、現在米国がエボラ対策に自国とアフリカの両方で必死になっているのと関係がある。

 

 米国の希少疾患の歴史に登場する感染症の中で、特に存在感があると思われるのはAIDSである。この疾患について述べたいのは、米国の希少疾患の幅広い定義では、日本の難病の比較的狭い定義とは違った問題を生じていることである。つまり、AIDSはやがて希少疾患の条件を外れて、20万人以上が患う疾患となった。2011年のものと思われる調査結果で、1,155,792人がAIDSと診断されたとCDCのウェブページにあるHIV感染ではなくAIDSと記されているので発症済みの統計のはずである。日本の平成266月の未発症のHIV感染込みで23,699人という統計§と比較すると、世間で言われているように多少の違和感を感じるが、感染研のウェブサイトでも日本の患者人口は同じような数値*になっている。日本と米国は米軍が日本に駐留していることもあり、とても国際結婚が多いのに、100万対(多くても)2万と罹患率は少なくとも50倍違いで、こんなに米国の性感染症が日本に入ってこないのは不自然だが、日本の複数の感染症当局は一致してこのように主張しているため、その数値を日本の罹患率として信頼する以外に方法がない。もしかすると、同性愛者にAIDSが多いという偏見に基づいて、保守的な伝統の米軍でAIDS感染者を厳しく排斥しているという効果なのかもしれない。米国人口3.2億人*、日本人口1.3億人*、米国で希少疾患として認められる人口比200000/320000000=0.06%、日本でHIV/AIDSの人口比23699/130000000=0.02%となるので、0.06%>0.02%により、すでに米国ではAIDSは希少疾患の範囲を大きく外れているにも関わらず、もしも日本で米国の希少疾患の基準を用いるなら、AIDSは日本で希少疾患ということになる。架空の場合の比較であるが、要するに日本と米国は、難病と希少疾患にものすごく違う基準を用いていることを、数値として確認した。基本的には米国の方がドライで透明性が高く民主主義的な基準だが、同時に、AIDSといった場合は問題を生じた。それが、オーファンドラッグの過剰保護の問題である。

 

("Orphan Drug Law Spurs Debate" ANDREW POLLACK, Published: April 30, 1990 より)

 

Amgen Inc.'s new drug for anemia, the latest biotechnology blockbuster, might set an industry record for first-year sales. Yet Amgen is shielded from competition by a law meant to encourage development of drugs for which there is supposed to be only a small market.

アムジェン社の貧血症に対する新薬、近年のバイオテクノロジーのヒット作、は初年の売上として産業レコードを打ち立てるかもしれない。小さな市場しかないと思われる薬剤の開発を奨励しなければならない法律により、アムジェン社が競争から保護されているにも関わらずである。

()

''You can't look at three drugs and throw out the baby with the bathwater,''said Abbey S. Meyers, the executive director of the National Organization for Rare Disorders in New Fairfield, Conn., a lobbying group representing patients with rare diseases.

3つの薬剤を大事にせずに、無用なものといっしょに捨ててしまおうとしているんです」とAbbey S. Meyers、コネチカット州ニューフェアフィールドにある米国希少疾病団体(NORD)の執行役員は言う。NORDは希少疾患の患者を代表するロビーグループである。

 

She was referring to three drugs at the center of the controversy.

彼女は議論の最中にある3つの薬剤を引き合いに出そうとしていた。

One is Amgen's drug, known as E.P.O., which is used to treat anemia in patients with kidney failure. Treatment costs $4,000 to $8,000 a year. First-year sales of the drug, which came on the market last June, are headed toward $200 million.

一つはアムジェンの薬剤、E.P.O.として知られるもので、腎不全患者の貧血症を治療するのに用いられる。治療費は年間$4,000から$8,000にのぼる。昨6月に市場に登場した同薬剤の初年の売上は、2億ドルに登ろうとしている。

Another is human growth hormone, marketed in different forms by Genentech Inc. and by Eli Lilly & Company; it is used to treat dwarfism in children. A year's treatment can cost $10,000 to $30,000, depending upon the size of the child.

2つ目はヒト成長ホルモンで、Genentech社およびEli Lilly社により異なった形で市場に供給されている。小児の低身長症を治療するのに用いられる。年間の治療費は小児の身長によって$10,000から$30,000にのぼる。

The third is pentamidine, sold by Lyphomed Inc. of Rosemont, Ill.; it is used to fend off pneumonia associated with AIDS. Since Lyphomed began selling the drug in 1984, it has quadrupled the price to more than three times what it sells for in Britain.

3つ目がペンタミジンで、イリノイ州ローズモントにあるLyphomed社により販売されている。AIDSに併発する肺炎の発生を防ぐものである。Lyphomed1984年に同薬剤の販売を開始し、英国で売られている価格の3倍を超えて、当初の価格から4倍の価格へと引き上げた。

AZT, used to treat AIDS, is also an orphan drug, despite being one of the best-selling drugs in the pharmaceutical industry. The manufacturer, the Burroughs Wellcome Company, has been the target of protests from AIDS patients and has twice reduced the price, from $10,000 a year to $6,500 a year. But AZT has not called as much attention to the Orphan Drug Act because the North Carolina-based Burroughs has a patent that would allow it to retain exclusivity even if the orphan status were revoked.

AIDSの治療に用いられるAZTもまた、製薬産業の中で最もよく売れた薬剤の一つであるにも関わらず、オーファンドラッグである。その製薬会社、Burroughs Wellcome社は、AIDS患者からの抗議の対象となり続け、価格を年間$10,000から$6,500へと2度にわたって引き下げた。しかし、AZTは希少医薬品法に対する関心を呼ばなかった。なぜなら、ノールキャロライナに本拠地を置くBurroughs社はたとえオーファンドラッグとしての扱いが取り消されたとしても、独占的を可能にする特許を有しているからである。

 

 

平たく言うと、製薬業界の一部にとって有利な方向に資本主義的なやり方で過剰に保護された結果、企業間での不公平が生じたのである。特にAIDSの場合には、その性感染力により、完全に希少疾患の希少の条件を上回ったので、不公平感は大きかったであろうと思われる。このことが未だに続いている、オーファンドラッグ保護無用論の根っこを作ったのかもしれない。


見えないところに死体の山

 AIDSといった感染症と戦ってきた国、また現在エボラと戦っている国、米国から見た時に、日本の感染症対策がどれだけ信用できないかというのは、想像に難くない。予防接種が国際基準から後退するということは、天に召される国内の患児の数に直接的に影響を及ぼし、ひいては、高齢者や、近隣諸国の患児の死亡率にさえ潜在的に貢献してしまっていると考えられるからだ。日本人はきれい好きなどと恥ずかしげもなく言えたのは既に過去の話で、米国や韓国の感染症当局から見れば、日本人というのは、「ばっちい国」から来た「ばっちい迷惑な観光客」なのである。日本人の購買力をあてにしている観光当局に言われて、いやいや受け入れているだけに過ぎない。米国では日本が麻疹輸出国の第1なのだ。こんなことは日本を含めて近隣諸国で、感染症を診ている医師の方々の間では常識なのだが、目に見えない感染という現象について数値で説明して理解を得るのが大変なので、患者の不安を煽って逆にマスク無しで頻繁に病院にやってこられては困るから黙っているだけなのだ。病院はある意味、感染症の集積所なのである。

 

 LCCの登場で航空機運賃が安価になり、海外旅行者数が平成25年(2013年)の統計で1,747万人に上った。のべ人数を無視してざっくり試算すると実に国民の13%1年間に一度は海外に出ていることになる。安いアジア旅行が売りだされる現在では、海外旅行でたくさんの人口が出かける国の感染症対策と足並みを揃える必要がある。はっきり言ってしまうと、遺伝性の希少疾患に関しては、他の国と足並みを揃える必要は感染症ほどではない。遺伝性の希少疾患を軽視してくれるなということは訴え続けるつもりだが、それでも、近年になればなるほど、国外から持ち込まれる感染症で、大きな屍の山が築かれてしまうリスクの方が増している。近隣諸国の方が日本から入ってきたらBSL-4が運用できない国だからややこしいことになると警戒していると思うが。遺伝性の希少疾患によって天に召される患児の人数は、相変わらず新生児は酷いことになっているはずだが、それには診断率の向上によって統計が正確になりつつある影響もあるだろう。感染症ほど危機的に今になって大問題というわけではない。

 

 日本の感染症対策を近隣諸国が信用していないのと同時に、日本で予防接種を批判している方々は、欧米の資本主義的なワクチンビジネスに強い不信感をいだいている。これも過去のB型肝炎訴訟や、MMRワクチン訴訟をみれば不信感を抱くのも無理なからぬところだ。何しろ、政府が危険性を認識しながら注射針の使い回しを放置していたのは、実に40年もの長きに渡るのである。これで無条件に信用せよという方が無理である。政府が40年間見捨ててきたなら、国民も40年間政府を無視して当然という数値的根拠さえ与えてしまっている。

 

 将来、予防接種前にかならず大型のDNA検査を受けさせる、または過去に受けた大型のDNA検査の結果を予防接種前に参照する体制が整備できれば、希少疾患や特異体質をいくらかは診断して、現状よりは改善されると思われる。それでも、せいぜい半数がいいところで、ゼロには程遠いはずである。報道や記事で言われているように、なによりもまず、小児のインフルエンザなど任意接種の救済金額を、定期接種や臨時接種となるべく同額まで引き上げ、最終的には、どんな予防接種でも種類を気にせず受けられて、たまたま予防接種を頼まれただけの医師が訴訟を起こされてしまうケースを減らすために無過失補償制度へと移行べきであろう。診断できない希少疾患が存在する以上は犠牲者は絶対にゼロにはならない。健康被害に対してすばやく幅広く救済が行われることだけが、唯一の救いと考えられる。

 

 日本で希少疾患が5000以上もあることが認識されていないことの影響は、欧米と比較して、おそらく予防接種で健康被害を起こす症例数と、インフルエンザで重症化する症例数の両方を引き上げている。しかし、どのぐらい引き上げているのか見積もるのは、おそらく非常に時間がかかるため、別の機会としたい。

 

 

 日本の病院での感染症対策はみんなが監視しあっている大学病院ではまともだが、末端の病院ほど酷いことになっている。軽度のCPT2欠損症や軽度のミトコンドリア病といった希少疾患の患者が、診断されない間に次々に亡くなるのは今後も避けられないと思われる。この節のタイトルに含めた「見えないところに死体の山」とはそういう意味である。統計には絶対に出てこないが、軽度の希少疾患の患者は現在も別の病名で亡くなり続けている。この推測に辿り着いてからは、正直私自身も怖くなった。そんな感染症などという病名で突然死ぬなど、いったい何のために確定診断を得ようとこんな著書まで書いて努力しているのだろうか。想像するだけでも、虚しくてやっていられない。


医師に頼らない因果関係の追求 - 脳症の本当の原因

 本著の冒頭で述べたように、科学的因果関係の追求はヒトの心を決して救ったりはしない。それでも『チームバチスタ』シリーズの著者で医師の海堂尊さんが指摘するような「死因不明社会」のまま、訴訟だけが増えることの方が、とてもよくない傾向である。インフルエンザ脳症やライ症候群については、アセチルサリチル酸を投与された場合は医師と行政の両方を訴えるのは当然と思われるが、そうでない場合は、医師に明確な過誤がなければ、なるべく医師ではなく行政の過失按分を大きくなるよう訴訟を起こす程度の工夫しかできない場合の方が多いように思われる。予防接種についても、任意接種の方はあきらかに救済金額が低すぎるので、救済を受けるためには選択の余地がない状態であり、かなり強引に医師や行政の過失を追求する形の訴訟になるのは仕方がない。しかし、定期接種、臨時接種で予防接種法による救済が認められた患児で更に訴訟となる場合は、できることなら、科学的因果関係を追求する方向で考えていただいた方がよいであろうと思われる。その方が、ご兄弟姉妹が同じような特異体質をもっておられて、予防接種だけでなく筋弛緩剤や麻酔薬でも同じ目に合うリスクが軽減されるはずだ。私も似たようなリスクを負っているはずなので、多少言葉尻が厳しくなるのはご容赦いただけるとありがたい。

 

 もしもこれからインフルエンザ脳症、ライ症候群、予防接種でお子さんを亡くされた方、障害を持ってしまわれた方が医師を訴えようと思っておいでだったら、先にできるかぎりの証拠保全だけ行って、一旦踏みとどまって情報収集を行うことをお勧めする。定期接種、臨時接種であった場合以外は、2014年の現時点では救済制度が全く充実していないので、その余裕もおありにならないかもしれないが。DNA検査を受け続けている立場から言うと、インフルエンザはRNAウイルスなのでそれまでも含んで保存できるかどうかは分からないが、ヒトのDNA自体は医師の手を借りずとも約5年間は保存可能である。お子さんが希少疾患や特異体質であったため亡くなったのかどうか、専門のしかるべき機関に検体を持ち込めば、既存の技術でも分かる範囲で調べることは、技術的には可能であり、年々少しずつ精度が上がっているので、5年後には更に高い精度で分析することもできるはずだ。医療録の保存義務も5年間である。

 

 髪の毛や爪といったサンプルでもミトコンドリアDNAであれば核DNAより長持ちするので数年後でも解析はできるが、それではミトコンドリア病のうちミトコンドリアDNAを原発性の病因とする15%しか診断できないので、市販の範囲で一番よいと思われるのは、やはりDNA検査会社が販売しているのと同じ採取キットによる方法と思われる。23andMeの方法は、唾液によるもので、DNA Genotek社のOrageneという採取キットである。このキットは幼児やお年寄り用にスポンジを用いて唾液を採取できるOG-575という姉妹製品がある。この姉妹製品が入手できればそれに越したことはないが、医療用の滅菌綿棒と普通のOrageneでも、清潔で汚染されていなければ、同じことができると思われる。MYCODEGenequestともに新しくDNA検査を開始したところは唾液方式なので、Family Tree DNAのオムニスワブで頬の内側の口腔上皮細胞を採取するよりも、唾液の方が、別の物質が混じるといった採取の失敗が少ないものと思われる。Orageneが製品として保証している保存期間は室温で30ヶ月§である。製品として100%に近く保証できるのがこの期間という意味で、実験結果としては24°C5年間という報告がある。-20°Cで保存すれば永久に保存できるというような報告もあるが、これについてはよく分からない。一般論としては、冷凍解凍を繰り返すにつれてDNAは破壊されるので、冷凍するとしても一度入れたら停電するか必要になるまで出さないつもりで行った方がよいと思われる。室温で紫外線のあたらないように厚い袋か黒い袋にしっかり包んで保存すれば、約5年間は保存可能と思われる。ただし、万が一何らかの強い細菌が紛れ込んでしまう、フタを強く締めすぎて漏れるといった事故もありうるので、こういった作業に慣れていない我々は2セット用意した方がいいはずである。そして、感染症の症状としていつの検体か、つまり、ウイルスが残っていそうかどうか、検査者が安全なものとして扱っていいかどうかの判断材料をメモしておく。

 

 より確実を期すのであれば、他にも法医学で用いられている専用の採取キットやサービスが存在しないわけではない*。しかし、そこまで行おうとすると、とても大げさな話になるため、私としてはおすすめはしない。OrageneDNA検査を受けるつもりがないのにDNA検査会社から購入するか、それとも別のルートから入手するかということになるが、これも日本で2つの代理店**があるようで小売先を尋ねれば教えてもらえるのか今のところ分からない。Oragene自体は、3000円ぐらいのものらしい。

 

 感染したインフルエンザウイルスが、重度の症状を引き起こす変異したものであったのか、普通のものであったのかについては、一応、Orageneの姉妹製品として研究用試薬細菌/ウィルスDNA採取キット OMNIgeneDISCOVERというものが販売されているらしく、RNAウイルスだとOM-505を選ぶようだが、インフルエンザウイルス対応と明記されているわけではない。明記されているのはC型肝炎ウイルスとHIVウイルスである。また、約3週間しか保存できないようだ。ここまで特殊な手順を行うべきかどうかという話になるのだが、数値としてはっきり言い切った学術論文が見つけられないものの、ヒトからヒトへの感染の間に変異が起こるのはRNAウイルスであるため確率的にはありうる§§。しかし、抗インフルエンザ薬といった既存の対処法が通用しなくなってしまうほどの大きな影響へと幾つもの変異が積み重なるのは、小さいお子さんをお持ちのご両親の方が私よりよくご存知と思うがうつ伏せに寝ていただけでSIDSで突然亡くなってしまうのと、非常におおざっぱに言うと同程度の確率と考えられる。SIDSもまた、5%以上が何らかの先天性代謝異常症§といった希少疾患によるであろうと言われている。SIDSと同程度の小さな可能性まで考慮するのであれば、インフルエンザの迅速検査キットの感度は悪くすると8割、特異度は悪くすると9割しかないため*、変異したインフルエンザウイルスで重症化するよりも、RSウイルス、ヒトメタニューモウイルスやアデノウイルスといった別の感染症を誤診し、間違った投薬で重症化した可能性の方が高いと思われる。あるいは病院の待合室といった場所でインフルエンザの別の型かもう一つ別の感染症に重複して感染した可能性(重複感染§)もありうる*。アデノウイルスの誤診であった場合だけ、DNAウイルスなので比較的長期間保存できるはずだ。逆に考えると、強引にでもヒントを得るならば、長期保存後にDNARNAもうまく抽出できなければ、アデノウイルスではなく何らかのRNAウイルスであった確率の方が高いと思われる。

 

 さらにウイルス採取の見通しを悪くするのは、インフルエンザウイルスは感染後2週間ぐらいまでしか、放出されないらしく、採取キットを得ようとする間に時間が経ってしまっていると唾液中にどのぐらい残っているか分からない点である。この期間に間に合いそうであっても、各都道府県の保健所の感染症担当部門で、こういった検体をRT-PCR**やウイルス分離で分析してもらえるかどうかは分からない。ただ、これらの職員の方々は都道府県の地方公務員であり、誤診とみられるインシデントが私立病院で起こっていて、行政を訴訟の対象と全く考えていない場合には、それなりに協力してくれる可能性もある。または、地方自治体の運営している病院であっても、地方自治体を訴えずに厚生労働省の方を訴えた場合、保健所は訴える対象には含まれないため、多少は態度が軟化すると予想される。いずれにせよ、勝訴を得るために、こういった方々の協力を仰ぐのが有利になるかリスクになるかは、弁護士に尋ねないと分からない。

 

 抗体としてであれば、インフルエンザの予防接種が短ければ3ヶ月長ければ5ヶ月有効と言われているように、長く体の中に残っていはいるようだ。しかし、血清抗体検査による診断のためには、発病後7日以内と、回復した頃の2回、血液を採取することが必要で、2回血液を採取するのでペア血清*とも呼ばれ、一回目はなるべく早い段階で採血した方が精度が高いはずだ。この場合は医師か看護師の手を借りなければならないため、やはりまずは保健所に相談する方がいいはずである。「長ければ5ヶ月」というのと「7日以内」との違いが起こるのは、CFHIといった抗体検査の種類からなるべくどのウイルスか同定しようとするためで*、一回目の採血が遅くなればなるほど何らかのウイルスに感染されたことしか同定できなくなる。抗体は血液だけでなく唾液などにも含まれ、実際に迅速検査キットの場合には、鼻からの吸引液や洗浄液、拭い液、のどからの拭い液などを検体として抗体検査を行っているが、いまのところ、唾液といった血液以外での抗体を保存する目的の採取キットというのは、日本には存在しないようだ。迅速検査キットがその目的にもっとも近い手段だが、通信販売を探しても流通していないようだ。HIVBC型肝炎といった非典型な感染症の検査キットが通信販売され*、インフルエンザといった一般的な感染症の検査キットが通信販売されていないのは、前者が血液感染で感染速度が遅いのに対し、後者が飛沫感染により感染速度が著しく速いためと思われ、公衆衛生的リスク管理の観点から、今後もインフルエンザの検査キットは感度特異度が100%近いものが開発されるまで通信販売されないと思われる。また、現在の迅速検査キットの技術水準では手技にも依存し、詳しく調べれば調べるほど、迅速検査キットに依存せざるをえない現状が誤診を誘発している、医療現場の姿が浮かび上がる。

 

 インフルエンザを対象としてRT-PCRを改変した原理による、ウイルス検出キットというものがモニター募集として販売されており、驚いたことに唾液を検体とする方法のようである。201410月現在5000だそうだが、モニターということは、完成間近だけれども正規の製品ほど安定的に利用できるわけではないのかもしれない。ともかく、唾液でRT-PCRの原理によりインフルエンザウイルスを医師の手を借りずとも検出するサービスというのは、日本国内に存在はしている。

 

 もうすでに話が複雑化しているのだが、RNAウイルスが変異を起こしていた可能性を含めると更に複雑になる。ご自分で手順を検索されると極めて手間がかかる複雑な話であることが分かっていただけると思うのだが、ウイルスが厳密に何だったかという99.9999%といった正しい診断には、検査する方々や周囲の人口が病原体に感染しないようにBSL-2以上の施設で、シーケンシングのための抽出を行うことが必要と思われるので、健康なヒトのDNAシーケンシングよりも非常に手間もコストもかかる。もしかすると保健所でのRT-PCRの測定作業の中でシーケンシングのための抽出を行える場合もあるのかもしれない。99.9999%というのは根拠がなさすぎる例なので、具体的に調べてみると、インフルエンザH1A1(A/turkey/Ontario/FAV110/2009(H1N1))型とされている塩基配列上の全部の遺伝子の長さを足し合わせてみると2341+2341+2184+1777+1565+1452+1027+890=13577塩基となった*。他の患者のウイルスのシーケンシング結果があれば、それとお子さんのウイルスを比較すれば、RNAウイルスについては変異がどのぐらい起こっているかにより、原理的には感染ルートが推測できるはずである。しかし実際上は他の患者のものは、新型インフルエンザかと疑われた症例のものだけを保健所や感染研が把握しているはずなので、あまり絞り込めないはずである。

 

 より正確に感染ルートを推測するには、指紋の油の中からヒトのDNAを採取するといった技術*を、混合物の中から目的のDNA/RNAを取り出す環境サンプルと呼ばれる技術*に組み合わせて、推測されるルート上から採取した当該RNA同士で塩基配列を比較すればいいはずだが、RNAウイルスは壊れやすいはずで果たして何日ぐらいルート上に残っているのかは分からない。基本的には紫外線の当たらない日陰で、掃除が行き届いていないがヒトが頻繁に触れる、手すりやドアノブの凹みといった部分のはずであるが、予想される感染ルートが早期に限定できる特殊な場合しか成功しないだろう。もしも保健所が味方になってくれた場合、保健所のRT-PCRや血清抗体法で検査して普通のインフルエンザだと同定されたらその結果を信頼した方がよいと思われる。保健所が味方になってくれなかった場合、RT-PCRのウイルス検出キットは超高感度だそうなので、もしかすると3週間後といった比較的遅くでもインフルエンザウイルスを検出できるのかもしれない。ただ、ウイルスを採取しようとする最大の目的は、インフルエンザを他の感染症と誤診した可能性を疑っているので、キットで検体を送付してインフルエンザウイルスが検出されなかったという検査結果が出ても、もう日数が経ってしまっているため実質的には何もできない。その場合には、やはりご兄弟姉妹のために、お子さんが軽度の希少疾患であった可能性の方を詳しく調べた方がいいということになるのではないだろうか。

 

 想像以上に話が複雑化して、ある意味、医師の方々のご苦労を追体験しているような気分になったが、問題の中核部分として、現在の技術水準の迅速検査キットでは誤診を完全に排除するのは不可能だということがよく分かった。迅速検査キットは、保健所や検査会社にRT-PCR検査を依頼すると最短でも1週間かかるところが*15と極めて速いのでありがたがられているのであって、正確だからもてはやされているわけでは決してない§§§。検査者の手技にさえ依存しているため、インシデントが起こった場合に医師と患者の両方にとってタチが悪く、PL法的にこのキットの製造管理上のばらつきで敏感度が不足して被害を受けたと立証することは、おそらくは困難である。海外からは感度62%とのメタ分析もあり、日本の医師が記したとみられる文書の中にも、10人に一人は見落とすと明記されているものもある§日本のキットと同じものが海外では感度が10%70%といった低い値であるという報告もあるようで、これは日本人の手先が器用という単純な問題ではなく、日本の場合にはインフルエンザの予防接種の普及が進まないので、迅速検査キットに頼るしかなく医師達は必死で測定しているのではないだろうか。

 

 インフルエンザ予防接種が普及した欧米では、敏感度6割しかないような迅速検査キットにあまり依存していないと思われる。その代わり彼らはワクチンに依存している。もちろん、ワクチンにより最初からコントロールする方が対処としてやりやすいからで、日本の場合は医師達が欧米では6割しか敏感度のないキットをほとんど限界まで努力して8割に持ってきているとも考えられる。言ってみればそれだけで8/6で他国の医師の130%の努力をしているようなものである。そうやって他の国々と同等程度にインフルエンザを抑えているのが現状である。しかし、結局のところ、過重労働のつけは患者の方にも返ってきており、最終的に末端の医療現場でのずさんな衛生管理に表れている。

 

 さらに、訴訟にさえ上らなければ、CPT2の場合のように天に召されたお子さんや、重度の健康被害を起こしたお子さんを調べて、どういったDNAを持っているお子さんをDNA検査によって避けて予防接種を打てばいいのか徐々に分かってくるところを、訴訟になってしまうがために巻き込まれるのが怖くて調べられないという悪循環が存在する。しかしそれでも、保健所自身がどう考えているかは分からないが、保健所を仲介するといった形で、お子さんの血液検体や発症時の検査値などが大学病院の研究者へ届けられて、できるだけ分析されるべきではないだろうか。その結果、CPT2の場合と同様に時間はかかるだろうが、ご兄弟姉妹にも同じリスクがあると分かれば、やはり予防接種を打つのはやめておこうとか、抗インフルエンザ薬のあの種類は体質が合わないとかいう話になり、そういった具体的なことが分かってくる方が、社会としてよくなっていく方向性なのではないだろうか。

 

 これは決して天に召されたお子さんや健康被害を負ったお子さんに対して、社会から精一杯の感謝こそすれ、リスクを知ることになったご兄弟姉妹が罪の意識を覚えるようなことではない。[劣勢病的変異の健常者への影響...]の節で述べるように、我々は元々、ほんの一部の患児が天に召されることで、遺伝的荷重に押しつぶされずに健康を保って生きているのである。病気の変異を持ったまま誰も天に召されなかったとしたら、その変異は未来へとどんどん溜まっていくだけで、世界には病人しかいなくなってしまう。そうならないのは、ほんの一部の患児が致死的な病気の変異を引き受けて、それを持って天に召され続けているからなのである。誰かが引き受けねばならないのであって、罪の意識を覚えるとしたら社会全体で覚えるべきであって、ご家族だけが覚えるべきではない。

 

 今回ウイルス採取について調べた限りでは、あまりにも仮定が多く、保健所に尋ねてもっと広く情報を教えてもらえなければ、私だったらよほどでなければウイルスの採取までは行わない。・・・しかし正直、自分でもそういう状況でどう行動するかわからない。

 

 

 ともかく、技術としては昔より遥かに安価な製品が利用できる。それによって情報収集して考える時間も稼ぐことができるようになりつつある。お子さんのDNAだけに絞れば、約5年間、考える余裕ができる。多くの方々にはその間にお考えを変えていただくことを願ってやまない。


更に複雑な感染症の話

 感染症対策としての予防接種の義務、任意の話は、公共の利益、あるいは国益と言い換えてもいいと思うが、あるいは個人の自由かという、義務と権利の話になるため、もともと比較的複雑である。しかし、日本の現状では次の3点が新しく加わっている。

 

(1) 天に召されたり、障害をもたれたりした両親による訴訟が、他の小児の首をしめ、さらに被害を大きくしている。予防接種の国際基準からの後退が起こっているが、感染という見えない現象だけに、数値で理解しなければどのぐらいの被害が起こっているか非常に分かりにくい。

 

(2) 末端の病院では、小児科医自身が、ウイルスや細菌を媒介させている。患児が怯えずに素直にいうことをきくようにマスクをせずに患児を診ているが、その自己犠牲の精神は結構なのだが、周囲はその意味を理解していないことが多く、感染症対策に穴ができている。経営安定化のために患児だけでなく高齢者も診る病院だと、患児に囲まれてマスクをしていない高齢者が狭い待合室で待つことになる。この高齢者は、医師がマスクをしていないので自分もマスクをしなくても大丈夫なのだと思い込んでいる。

 

(3) 日本で感染症対策が杜撰であるにも関わらず、100歳を超える長寿者、センテナリアン10万人あたり35人と世界ダントツに多いという現象があるため、日本の医療そのものに問題があるとは皆が考えていない。これはおそらく逆で、センテナリアンとなるような免疫がもともと強い体質の者だけにとって、周囲が予防接種を受けておらず感染症が適度な頻度で起こることが有利に働いている可能性がある。何度も抗原にふれた結果アレルギーを患うのと逆の現象で、免疫系が重症度の低い感染症のウイルスや細菌にわずかずつふれつづけることで、致死的な病原体に対する免疫が強化されているのではないだろうか。つまり、エンドトキシンによりIgGを活性化するようなもので、ヒトがかつて住んでいた原始的環境に近い状態に免疫系を保つという、言ってみれば弱い病原体が天然のワクチンとして働いているのではないか。たとえ、小児にとっては必ずしも弱いとは言えず、他国では予防接種を義務化しているような感染症であっても。

 

 もっとも問題なのは(3)の場合で、もう、これは、誰の寿命を短くして、誰の寿命を長くするかという議論になるので、単純に予防接種を国際基準にすればいいという話ではなくなっている。もう1段階複雑な話なので、予防接種を国際基準にすればセンテナリアンがどのぐらい減るか予測した上で、あるいは、齟齬を残さぬようあえて一切予測を出さずに、国会かできれば国民投票で決めるべきなのかもしれない。もちろん私は遺伝病と疑わしい変異を持っている立場からは、センテナリアンに不利でも、小児にとって有利であれば、国際基準の予防接種は実施すべきだと思う。それ以上に、どうやってこの現象を証明すればいいのだろうか。感染症対策が非常に緩いということと、センテナリアンが非常に多いという現象が日本で両立しているという状況証拠はあるが、日本の中の海で隔離された沖縄の島などを特区に指定して、他から感染症が混じらないようにしながら、国際基準の予防接種を実施するなどしなければ、証明することはできないと思われる。いや、全国的に予防接種を国際基準まであげてしまって、センテナリアンの希望者のみ、予防接種を現在の基準のまま残した暖かい気候の特区に移住してもらった方が、国として長寿の記録を維持する意味でも、いいように思われる。しかし、そこまで高齢になってから移住すること自体が逆にマイナスなのかもしれない。

 

 血液中の抗体をELISAにより測定し、交叉性から推測することができるのだろうか。

 

 一応、調べた中でもっとも関係すると思われる学術論文を示しておく。

 

(免疫力弱い方が長生き? 百寿者に免疫応答弱い遺伝子変異が多く存在中沢真也, 日経メディカル, 2004.11.24 より)

 

衛生状態が良く、抗生物質によって感染症の脅威から守られている現代社会では、免疫力の強さが長生きにむしろ不利に働く場合があるようだ。イタリアの住民を対象とした観察研究で、100歳前後の健康な超長寿者では対照群に比べ、免疫応答が弱い遺伝子変異を持つ人が有意に多いことが分かった。イタリアのPalermo大学免疫老化学教室のCarmela Rita Balistreri氏らの研究研究成果で、米国医師会誌のJournal of American Medical AssociationJAMA)誌20041117日号にリサーチレターとして掲載された。

()

本研究の結果からBalistreri氏らは、感染の機会が少なく、仮に罹患しても抗生物質によって重症化を免れることができる現代の(先進国)社会では、Asp299Gly多型は、むしろ長寿に有利に働くと指摘している。

 

 本論文の原題は、「Role of Toll-like Receptor 4 in Acute Myocardial Infarction and Longevity」。

 

 もう一つの情況証拠としては、失礼ながら比較的感染症が多い地方であるにも関わらず、発展途上である国々からもセンテナリアンがそれなりに多いという数値がある。逆に、先進国で予防接種が国際基準で行われているにも関わらず、センテナリアンが少ない国もある。ただし、例外もあって、その最も大きいのが米国なのだが、これについては国として大きすぎてきっと事情が違うのだろう。

 

国 平均寿命 センテナリアン人口(人口10万人当たり)

ブラジル 74 12.46

中国 76 1.32–3.63

アルゼンチン 76 8.69

ペルー 77 5.58

日本 83 34.85

 

(国の平均寿命順リスト WHO(2011)による表 Wikipedia日本語版より数値を抜き出し)

 

調べた範囲で、平均寿命とセンテナリアン人口の食い違いがもっとも大きいのはブラジルのようだ。ブラジルの予防接種と日本の違いを具体的に調べられたら何か分かるかもしれないが、ただ、日本と同じで裁判などで負けた時だけ一時的に義務化が解除されたりと、時代によって異なった予防接種政策をしてきた可能性があって、それがセンテナリアン人口に免疫の履歴として残っていて、しかもその上に過去のパンデミックの影響が載っているはずなので、そこまで詳しく数値を調べても、もしかしたら、複雑すぎて何もわからないかもしれない。

 

 当初、多くが希少疾患である遺伝性疾患に比べると、コモンディジーズである感染症は情報が多くて結論が出ているかのように思えたが、実はとんでもなく複雑だ。感染症の健康被害として診断されていない遺伝性疾患が載ってくるので、結局はどちらも独立で考えることができない。ヒトという存在を、遺伝性疾患と感染症、希少疾患とコモンディジーズというように、分けて考えようとする長く続いてきた西洋医学のパラダイムが、あまり通用しない。昔は因果関係など考えずに健康被害と認識していたものが、DNA検査によって健康被害の原因である特異体質や未診断の遺伝性疾患がある程度見抜けるようになりつつあるからだ。すべて一人のヒトの体の中で同時進行する話だという前提で、考える必要があるが、学ばなくてはならない範囲は膨大だ。言ってみればこの領域では誰もが素人なのだろう。

 

 

 感染症の話には制度の柵の中で互いに首を締めあった結果、人死にばかり多くて未来が見えないため、本当に救いがない。これ以上扱っても希少疾患、遺伝性疾患の全体像を見失いそうなので、ここで一旦筆を置かせていただきたい。



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