目次
はじめに
はじめに
宗教的表現について
研究者の方々へ - 検証中の仮説
外部リンクの表記、Android対応、訂正箇所のご指摘のお願い
概略
現在の症状
息子の誕生
さらに遠い通院へ
知らされなかった検査結果
アミノ酸分画検査結果
タンデムマス検査結果
合っているかもしれない仮説
閑話休題:創作話 トリケラお母さんの悲劇(# ゚Д゚)
DNA検査の実体験と仕組み
ミトコンドリアDNAの検査
ヒットカウント分析および共起性分析
23andMeのDNAアレイによる検査 - 販売停止命令に至る経緯
遺伝病とコモンディジーズの違い - 優性遺伝と劣性遺伝
ヒトはヒトであるが故にヒトの病を患う
コモンディジーズの検査方式 - アバウトなGWAS
23andMeの深刻な検査結果 - 統計の改善による影響
23andMeのその他の結果
エクソームシーケンシング
コモンとレアの重症度分布 - アレル頻度とエフェクトサイズ
個人向け遺伝子検査の選び方 - 罹患人口カバー率指標
閑話休題:製作物 DNAツリー
希少疾患と難病の制度および数値
希少疾患と難病の違いと制度的起源 - 日米欧比較
赤信号みんなで渡れば - 真面目な日本人の最悪の集団行動
もっとも希少な希少疾患 - 70億人にたった一人
もっとも正確な希少疾患の数 - 毎日約1つ希少疾患が増える?
希少疾患全体の罹患率 - 全部合わせると10~14人に一人
診断に至るまでの年数、または遅延 - 28年?!
GINA(ジーナ) - DNA検査時代の国民、患者を守る法制度
国民皆保険の功罪 - 患者をチェリーピッキングする医師達
節としてまとまらなかった事柄
希少疾患と感染症
感染症と希少疾患の関係 - 未診断の希少疾患という重症化因子
予防接種の健康被害としての未診断の希少疾患
希少疾患としての感染症 - 米国のAIDSの歴史
見えないところに死体の山
医師に頼らない因果関係の追求 - 脳症の本当の原因
更に複雑な感染症の話
医療訴訟が生み出す二次被害 - 無過失賠償制度の必要性
辛い記憶
両親を批判することについて
両親への間違った説明
辛かった学校生活
体育の次の時間に倒れてしまう
電車とバス
繰り返し運動による寝られぬほどの筋肉痛
食事の前後の発作
進化と感染症の間の遺伝性疾患
進化と感染症の間の遺伝性疾患
仮説の更なる展開 - 発見され増加を続ける希少疾患
卵子と精子の間の変異の導入の違い
感染症と遺伝性疾患で重度となる役割 - 男性淘汰進化説
絶滅のシナリオ - 感染症と遺伝性疾患の袋小路
進化のスピード調節 - もっとも強く訴えたいこと
進化と遺伝性疾患の「必然性の枠内の偶然性」
ダーウィンのUNdiagnosed
そして各論へ
遺伝学用語の混乱
遺伝学用語の混乱:genetic、遺伝か起源か
de novo変異 - 両親から受け継がれない優性遺伝の変異
個人向け遺伝子検査のガイドラインの乖離
みんなが保因者の劣性遺伝病? - 平均約10個の遺伝的荷重
劣性病的変異の健常者への影響 - 遺伝子プールの浄化説
あとがき
あとがき
これ以降分冊予定
▲▼そして各論へ
検証実験の山 - バッチ型検証実験の提案
希少疾患の中の更なる希少な患者群についての予測
環境因子か遺伝因子か
代謝異常についての進捗
遺伝子検査の2つの嘘
生まれの平等性または不平等性
▲▼生まれの平等性または不平等性
新型出生前診断と着床前診断 - 技術的に◯、倫理的に☓
生まれる前のDNA検査 - 科学的因果関係の追求ライン
技術としてのNIPT - 生まれのDNA検査の技術予測
我が子に故意に良くない遺伝因子を許容する親の罪
ディストピアな未来像 - 生まれの平等性が崩れた世界
不妊という社会問題 - 男性不妊と父性年齢効果
中絶による母体へのダメージ - 次の妊娠がうまくいく確率
着床前診断の問題点 - NIPTとの倫理的違和感
不妊治療としてのPGD - 不妊としての遺伝性疾患
生殖医療のリアルの写真
男女産み分けの国際比較 - 海外での生殖補助医療のリアル
着床前診断の潜在的なリスク - 子と女性へのリスク
フィルターされた人々による生まれの平等性、不平等性の支配
遺伝学用語の混乱:variation、多様性か変化性か
人権に基づく多様性、人権に基づく変化性
男性不妊と劣性遺伝病の完全予防 - 22世紀の精子起源工学
その他 - うまく分類できずとも価値のあるトピック
DNA検査の結果の公開 - シーケンシング機会の平等性
進化における神の概念
mtDNAとY染色体の永代性 - 未来の血縁者の不利益
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中絶による母体へのダメージ - 次の妊娠がうまくいく確率

 NIPTを受けるという選択肢をとる場合、中絶を前提にしている。しかし、中絶による母体へのダメージと、NIPTで陽性となった場合に、次の妊娠がうまくいく確率を計算した文献は今のところ見つけられない。だが、本来は極めて重要なはずである。遺伝カウンセラーの仕事を高度に考えれば、学術論文を読んでメタ分析により、個々の症例に対してそういった確率を計算してくれてもいいはずだと思うが、果たしてそういったことがどのぐらい困難なものかを、まずは試みようと考えた。

 

 中絶によるダメージとしては、アッシャーマン症候群だけと考える。この疾患は、一言で言えば中絶した時の傷による癒着により妊娠しにくくなることで、詳しいことは産婦人科医の方々が書いたものを探していただきたいが、日本ではこういった病名や一回の中絶による罹患率を具体的な数値として教えてこなかったようだ。様々な病名で呼ばれているようなので、グーグルを用いたヒットカウント分析を行う。2014年12月4日の結果である。

 

"Asherman syndrome" 約 101,000 件(Asherman'sを含む)

"Asherman's syndrome" 約 89,600 件

"uterine adhesions" 約 15,200 件(intrauterineを含む)

"uterine scarring" 約 12,000 件(intrauterineを含む)

"uterine synechiae" 約 9,570 件

"intrauterine synechiae" 約 8,460 件

"intrauterine adhesion" 約 7,490 件

"アッシャーマン症候群" 約 6,460 件

"uterine synechia" 約 3,890 件

"子宮内癒着" 約 3,870 件

"子宮腔癒着" 約 2,140 件

"子宮腔癒着症" 約 1,760 件

"子宮癒着" 約 1,420 件

"intrauterine scarring" 約 1,070 件

 

以降では、アッシャーマン症候群で用語を統一する。略記としてASを用いる。

 

 ASは、流産をするとどのぐらい罹患するかは明確な数値があるが、人工妊娠中絶をするとどのぐらい罹患するか、はっきりと言い切ったものは未だに見つけられない。このことが意味しているのは、中絶に対する宗教的反対運動がつよいキリスト教国の多くで、中絶によってASなどを患って不妊になるのは、自業自得だと考えられており、具体的な数値を示して中絶しようとしている女性に安心感を与えることがタブーとなっているのではないだろうか。しかし、実際問題として、キリスト教国で積極的にNIPTが行われているのにそういった数値がないことは非常に矛盾しているため、何らかの目安はどこかに記されているものと思われる。

 

 一応、Wikipedia英語版にどういった条件かを記さずに、1回の掻爬術の後16%と記してあるのを目安として信頼することにしたい。この16%という数値が記された元の文献の概要を読むと、早期の突発性流産("spontaneous first trimester abortion")と記されているが、そういう条件を省いて考えてもよいぐらいの数値だと思われたので、Wikipediaで条件が省いて記されて、訂正されずに現在まで残っていると考える。

 

 ASの結果どのくらい次の妊娠が困難になるか調べようとしたところ、中国の研究グループがASについてのかなり包括的なレビューを出していた。

 

Yu, Dan, et al. "Asherman syndrome—one century later." Fertility and sterility 89.4 (2008): 759-779.

引用元 184

 

"Outcomes of Treatment"および"PROGNOSIS"の節に、各条件で、かなり幅を持って記されているが、単純に妊娠率で評価することはできず、ASにより出生率(live birth rate)も低下すると示されている点がおそらく最も重要である。つまり、ASにより流産や死産も増えると述べられている。その上で子宮鏡を使った治療を行えば、大幅に改善すると述べられているが、どのぐらいの患者が子宮鏡治療を受けたかというのが述べられていないため、総数としては分からない。子宮鏡治療を受けて、妊娠に成功したのが74%、さらにその中から出生に成功したのが79.4%と述べられているので、子宮鏡治療トータルで60%付近に落ち着くはずである。これに何割かは子宮鏡治療を受けずに妊娠してしまうものと考えて、トータルで大雑把に半分の50%がASの後出生に成功するものと考えたい。時間経過で自然に治癒する場合があるかもしれないが、そこまで考えても、もともと人工妊娠中絶に限った研究がないので、仕方がない。

 

 一度目の妊娠で中絶をして16%がASに罹患し、罹患した半分が出生に成功しないとするとすると、中絶当たりのトータルで8%である。もしかすると日本の高度な医療ではもっと小さいのかもしれないが、学会などによるオープンアクセスの文献を見つけられないので、仕方がない。

 

 一度目の妊娠のNIPTの結果を考える際には、ASによるこの8%という確率で、二度目の妊娠・出産が成功しないのを許容するか否かということになる。

 

 ASに加えて、何年も経た二度目の妊娠の際には、35-39歳で30%といった不妊率*が上乗せされる。しかし、「一度妊娠した女性(妊娠できた)が、その次の子供をもうけられない可能性(不妊率)」と述べられているように、先述のASの8%の一部、妊娠までの成分を、この30%の中に含んでしまっているはずである。しかし、実際問題として分割できず、8%という30%と比較すると小さい数値の中身を、更に分割するほどこの試算には精度がないため、便宜上独立のものと考える。ASをパスするのが92%、年齢による不妊をパスするのが70%とすると、乗算して64%である。不妊率の中には女性・男性、両方の効果が含まれていると考える。更に、一度目の妊娠のNIPTの結果によって場合分けされる。

 

 ダウン症候群といった典型的なトリソミーで陽性となった場合は、偶発的な染色体の不分離が原因のはずで、夫婦に遺伝学的な原因が存在しないためシンプルで、二度目の妊娠・出産に成功する確率はそのまま64%である。

 

 単一遺伝子疾患までNIPTが対象疾患を拡大した場合は、de novo変異の場合を例外として、優性遺伝の疾患で陽性であれば、一度目の妊娠で中絶を行っても、二度目の妊娠でも50%の確率で同じ状況となる。劣性遺伝の疾患で陽性であれば、二度目の妊娠で25%である。それぞれ、二度目の妊娠・出産に成功するトータルの確率は、先述の数値に乗算して、優性遺伝で64%x50%=32%、劣性遺伝で64%x75%=48%である。

 

 その他の染色体異常症までNIPTが対象疾患を拡大した場合は、NIPTがそういった疾患で陽性となった後、夫婦染色体検査で異常が見つかるかどうかによって変わり、最も複雑である。夫婦のどちらかが既に染色体異常症である場合には、典型的には優性遺伝の遺伝パターンに近い32%のはずである。ただし、様々な非典型のパターンがありえて、性染色体の異常が絡むと子の性別によって事情が異なったりと、あくまで典型的な場合の数値しか示せない。ダウン症候群の方が子をもうけようとすると健常者の子ができる確率が優性遺伝のパターンよりも高くなり、およそ67%となることが知られている。だが、これは子にダウン症候群が優性遺伝的に継承して流産となる効果を込みにした数値のはずで、流産が更にその後のASの発症原因となるため、67%というように大幅に良くなるとは考えられず、優性遺伝のパターンの32%を少し上回るぐらいではないだろうか。その他の染色体上昇で夫婦染色体検査で異常が見つかった場合、二度目の妊娠・出産に成功するトータルの確率は、32%よりも少しよい数値と思われる。

 

 その他の染色体異常症でNIPTが陽性となった後、夫婦染色体検査を行っても夫婦のどちらにも染色体異常症が見つからない場合は、基本的には典型的なトリソミーと同様にそのまま64%と考えるしかないが、仮定として最も複雑であるため、ほとんど確かなことは言えない。

 

 以下に各場合の検討結果を一覧としてまとめる。

 

典型的なトリソミー 64%

優性遺伝 32%

劣性遺伝 48%

その他の染色体異常症で親から継承の場合 32%を少し上回る

その他の染色体異常症で親から継承でない場合 64%と仮定せざるをない

 

一度目の妊娠のNIPTの結果を考える際には、これらの確率で、二度目の妊娠・出産が成功するということになる。典型的なトリソミーといった場合は64%と考えられるので、それほど問題なく、中絶を検討できるが、優性遺伝とその他の染色体異常症が親から遺伝する場合は32%になってしまうので、かなり迷うところのはずである。

 

 NIPTの範囲が比較的軽度の遺伝性疾患まで拡大されたとしても、比較的軽度の疾患で陽性となった場合には、中絶を行うのはためらわれる数値と思う。どんな疾患かによって産むかどうかが分かれると思われる。この試算の問題点として誤差範囲を示していない。すでに二度目の妊娠・出産の成功率が50%を切っている場合は、もう一度自然受精で挑戦するという選択肢はないのではないかと言いたいところだが、誤差範囲を広く考えると、それもためらわれる。ともかく、成功率が低くなるにともなって、欧米のように婚外子という選択肢か、あるいは、体外授精+着床前診断(PGD)という選択肢が重要となるはずである。

 

 最終的にはASといったダメージを受ける妊婦が、NIPTで陽性となった疾患を許容するかどうかで決まる。しかし、将来に遺伝性疾患で苦しむ人口を減らそうとしてNIPTの対象疾患を拡大すると、最も重度の疾患が最初に追加される。NIPTで陽性となる可能性は非常に小さいが、万が一陽性となって、二度目の妊娠・出産が成功する確率を理解すれば、やはり中絶の方向で考えない場合よりも、考える場合の方が多いであろう。しかし、最後には、やはり胎児の生命を絶つだけの正確さがこの試算にあるのかという疑問が生じ、誤差範囲としてはどのぐらいかという話になる。現在のところ、遺伝カウンセラーの方々が上記同様の、英語文献でしか元になる数値が存在しないような試算をしているとは、正直思われず、やはり、誤差範囲を込みで妊婦に試算を示すための努力が研究者レベルでなされるべきではないだろうか。自分が誤差範囲を計算していないような試算を、他人にやってくれというのは気が引けるが、たったこれだけの試算でも実は仮定が少なくなる条件を思いつくまでにものすごく時間がかかっている。私としてはここまでが一応の限界である。

 

 その他、母体へのダメージとして、麻酔によるリスクが存在するが、ここではその存在のみ述べるだけにしたい。これはNIPTが対象疾患を拡大すればという話ではなく、一般的な話であり、単純に全身麻酔手術は麻酔科医のいる病院で受けた方が安全である。

 

 NIPTが様々な遺伝性疾患へと拡大された場合、という方向で試算を行ったが、ダウン症候群に関してだけは、[生まれる前のDNA検査...]の節で述べたように、将来的に心臓病の重症度が分かるという、症候群の中でより詳しく調べる方向にNIPTが拡張されるかもしれない。つまり、単純に陽性か陰性かという話ではなく、もっと細かい区分で1年生存率を予測できる可能性がある。ただ、倫理的な選択肢として増える方向になるため、本節の試算でも場合分けで複雑な話に思え、他で試算した例を探しても見当たらないのに、さらに選択肢を提示されてもその情報を有効に活かせるかどうかは、正直なところ分からない。ただ、技術予測としては、将来的にありうるという話である。

 


着床前診断の問題点 - NIPTとの倫理的違和感

 [中絶による母体へのダメージ...]の節で、NIPTが対象疾患を拡大した場合を想定し、一度目の妊娠でNIPTが陽性となり中絶した場合、二度目の妊娠・出産の成功率が荒い試算で32~64%と低くなるため、軽度の疾患の場合迷うところだろうと述べた。特に単一遺伝子疾患の場合や、夫婦染色体検査で陽性となった場合には、二度目の妊娠・出産を無思慮に行っても、一度目の妊娠と同じ結果になる可能性が高く、しかも、加齢とアッシャーマン症候群(AS)により状況は悪くなっていく。結局欧米で行っているように体外受精と着床前診断(PGD)の組み合わせで対応するしかない。

 

 体外授精に関しては日本はクリニックの数も実施症例数も豊富なので、問題は生命倫理に抵触しがちな着床前診断(PGD)の方である。タイで代理母を多数雇う資産家のニュースで誰もが知ってしまったように、タイはアジアでは例外的に生命倫理からの拘束力が緩く、人件費が安いため海外からの顧客を対象とした出生に関するビジネスが乱立している。日本も法的に厳しいわけではないが、事実上厳しい。基本的には、タイでも米国でも、現地を2回訪れないといけないようだ。しかし、冷凍受精卵輸送により日本にいながら米国でのPGDが可能としているエージェントが存在し、タイでのPGDでも同様のエージェントが存在する。特に後者の方は、一般に知られている相場よりもあまりにも安いことを公表しているため、鵜呑みにしていいのか全く分からない。おそらく、受精卵を冷凍すること自体は、大きな問題ではなく、現地に渡航した場合にも一度は冷凍するのではないかと思う。問題は日本から輸送すると必ず2回以上冷凍しなければいけない点ではないかと思うが、冷凍回数と成功実績の関係を数値で示していただかないことには判断材料がない。

 

 NIPTで陽性が出た場合という、稀なケースに言及してPGDのテーマに入ってしまったが、この流れからも示唆されるように、NIPTはPGDと倫理的にあまり違いがない。次の図のように、一つの図の中にPGDとNIPTの両方の手順を置いて比較してみた。こうしてみると、生命倫理のポイントとして、PGDでは「選別」という手順が入るのに対し、NIPTでは「中絶」という手順が入る。この二つを同罪とみなすか、選別の方がたくさん胚を排除するから罪が重いと考えるか、中絶の方がヒトの顔形に近いから罪が重いと考えるかということになる。これ以降は1細胞のことを受精卵と述べ、卵割して複数の細胞になったものをと記す。

 

 私は選別で排除される胚の数が、科学的な根拠のある透明性の高い基準にそって制限され、医療目的でない男女産み分けなどという実にくだらない理由のために不当な数の胚が排除されるのでなければ、PGDの方が、妊婦の受ける肉体的および心理的ダメージの両方を軽減できるという点から好ましいと思う。

 

 医療目的でない男女産み分けについて補足すると、[男女産み分けの国際比較...]の節で詳しく触れるが、ヨーロッパでは少しずつ重症度の低い遺伝性疾患までPGDを拡大しつつ、一度医療目的でPGDが認められ、胚として男女両方が得られ健康上等価であれば、付随的に男女の産み分けを認める方向にある。条件が複雑だが、非常に合理的な考え方をしている。

 

 PGDは、国内で行うか、海外で行うかにより、違いが出る。本来は国内で平等に行うべきところが、主として透明性の高いガイドラインの不在によって、事情を詳しく知る者だけが国内で利用して、それ以外の大多数は海外で利用する状況になっている。もちろん産婦人科医の方々が良心で動いて下さっているのは間違いない。しかし、結果として状況は患者のためにならない方向で動いてしまっている。NIPTの導入についても、技術的に見ればよいことだったと思うが、生命倫理の点からPGDと大きな差がないと思われるため、違和感はいっそう増した。

 

 本来ならば、NIPTが採血だけで済むというお手軽な理由でなし崩し的に実施されるのであれば、PGDも範囲を限定して実施基準を透明化すべきであった。

 

 2014年9月現在のところ、日本産科婦人科学会がPGDに対する「見解」を公表しているが、あくまでガイドラインという名称でもなければ、法的拘束力も全くない「見解」なのである。その割に「適応の可否は日本産科婦人科学会(以下本会)において申請された事例ごとに審査される」と患者にとっては不透明で、学会の立場を強めるのに都合が良い基準が導入されている。この結果、一部で学会見解の拘束力のなさを知っているクリニックだけが100例を越えるPGDに踏み切る一方で、国民の多くはこういったものは「闇」で行なわれているものなので、金を積みさえすれば海外で体外受精してPGDによる男女産み分けまで許され、国内の「闇」のものよりむしろ合法だと考えてしまっている。この結果、海外への体外授精とPGDの紹介ビジネスが基準がないまま乱立することとなり、NIPTという次の技術が登場して現在に至っている。

 

 政府が日本産科婦人科学会にPGDの見解を示すように促したという記述は検索しても出てこないので、ある意味、この見解そのものが非公式のもので「闇」とも言える。むしろ「次世代の日本国民の間引き」の基準を国民投票などの公的な手段でオーソライズするのを阻み、学会が申請を受理するかどうかという不透明な基準により、ごく一握りの権力のある産婦人科医が自分達の胸三寸のものにしようとしているかのようだ。だったら、日本産科婦人科学会ではなく、似たような名前の日本産婦人科医会の方がホームページが分かりやすいし、別の学会で基準を透明化してくれてもいいのではないかと考えるのが普通である。混同しやすい似たような名前の2つの学会が存在すること自体、公的に区別されなければならないほどの存在でないのを自ら認めているようなものだ。政府が基準を明確にせずに1990年に行われた世界最初のPGDから24年間も放置しているなら、いくらでもある地域の産婦人科学会でローカルに基準を透明化してもらった方がむしろ健全なのではないかという考え方もある。とくに先端医療開発特区が唱えられる近年は、一部地域だけが全国での特定の医療の実施よりも先行するのに不自然ではなくなった。

 

 NIPTとPGDは同じ生命倫理的基準で取り扱われるべきであり、NIPTが認可されるのにPGDが基準を明確にして認可されないのは、欧米の状況を調べれば調べるほど矛盾が大きい。結果的に、事情を知る一部の人々だけが国内で利用して、さらにお金持ちだけが男女産み分けのために海外で利用して、情報が得られずお金もない者は、遺伝性疾患を患っていても利用できない、それを許容するような見解なら、ガイドラインとさえ呼ばれていないような見解に従う必要があるのだろうか。その効力を疑うべきだと私は思う。

 


不妊治療としてのPGD - 不妊としての遺伝性疾患

 [不妊という社会問題...]の節で、日本の不妊社会の現状を調べ、[着床前診断の問題点...]の節で、着床前診断(PGD)の手順と、生命倫理として新型出生前診断(NIPT)と大差ないことを調べた。本節では、不妊治療としてのPGDについて調べる。

 

 [生まれる前のDNA検査...]の節で、トリソミーで23対の染色体にほぼ同じだけ不分離による膨大な人数のトリソミーの患児が存在し、我々は出生した患児だけしか気にしていないと述べた。これが意味するのは、流産や死産の多くが、NIPTが現在対象としている21、18、13トリソミーの重症例だけでなく、他の染色体による更に重度のトリソミーを含んでいるだろうということである。早期に流産すればするほど、また、妊娠したかどうかも気付かないぐらい早い段階のものほど、重度のトリソミーであろうという推測が成り立つ*。このことは、卵子の老化によるとされる不妊率*が、ダウン症候群の母親の年令による頻度*と、同年齢で比較すると似たような比率になっていることからも裏付けられる。つまり、不妊治療というのは、いかにしてトリソミーで流産せずに健康な子を産めるか、その高齢性への挑戦とも言える。必然的に不妊治療は体外受精を含み、最終的には体外受精と組み合わせて日本以外の先進国で実施されているPGDと結び付けられる。

 
 上記は高齢で初めて不妊となったケースだが、高齢でない時点から不妊を患っている場合は、トリソミー以外の遺伝性疾患が関係している可能性がある。[中絶による母体へのダメージ...]の節で、トリソミーと並べて他の染色体異常症や単一遺伝子疾患へと、NIPTが対象疾患を拡大する様子を調べたように、重度のトリソミーで流産するのと同じ理由で、その他の染色体異常症や単一遺伝子疾患の中の生まれることもできないほど重度で、とりあえず着床はできるほど軽度のものが、流産の中に潜在的に含まれていると考えらえる。次の図では、下の方の「患児」の部分が生まれることができた遺伝病患児であり、「着床失敗」から「胚の形成不良」を経て「死産」までの間でフィルターアウトされるのが、遺伝病による不妊であり、遺伝病以外の不妊と区別できないが故にこれまで認識してこなかったが、NIPTのようなDNA検査が発達すれば、この部分が問題になってくるはずだ。

 

 子宮筋腫子宮内膜症といった、他の婦人科疾患による不妊も多くあるため、結局のところ、不妊治療は高度になればなるほど、不妊の原因が追求される傾向があり、近年になって女性不妊から男性不妊が区別されて、精子の選別と体外受精に頼るようになったように、今後次第に、高齢による単純なトリソミーなのか、他の遺伝性疾患なのかが区別されるようになるものと思われる。そのために欧米で用いている手段が、PGDと言える。

 

 不妊治療としてPGDを導入するシナリオを具体的に想定してみる。

 

 不妊治療を、原因を探りながら1年以上続けても、原因が分からないまま妊娠できないと想定する。タイミング法、排卵誘発、人工授精、体外受精、顕微授精と、通常のステップアップは全てやったとする。次は、夫婦に対する染色体検査ということになるが、どのタイミングで実施すべきなのかは確かな記述を見つかることができなかった。不妊治療としてはあまり行うことがないとされているが、その理由の一つが「異常が出ても治療が無い事」というのは、強い違和感を感じる。検査結果が得られれば海外でPGDを受けるか、日本で諦めるか決められるので、原因不明のまま不妊治療を続けるという泥沼から抜け出せるのである。異常が出ても治療が無いからと言って、特定の検査を含まずに不妊治療を続けさせるのは、産婦人科医による打算、あるいは、悪く受け取れば、出せる夫婦から限界まで不妊治療に出費させるという種類のチェリーピッキングではないだろうか。

 

 実際に、夫婦染色体検査どころか、あるクリニックでは染色体に転座を持つ反復流産患者に対してPGDは有効と言い切っている。反復流産のことを、ウェブページによって習慣性流産、不育症とも呼んでいるようだ。反復流産の原因が、母体の全身性エリテマトーデスや抗リン脂質抗体症候群でない場合が、夫婦染色体検査、および、流産で天に召された胎児の染色体検査を最も必要とする状況のようだ。後者は、最も頻繁には"流産染色体検査"と呼ばれているようで、非常に手間がかかるがそれでも実施されているということは、やはり流産染色体検査ほど手間がかからないと思われる夫婦染色体検査までは行った方がよいと私は思う。こういった段階でも夫婦染色体検査を提案されない場合、遺伝カウンセリングを円滑に行うことができないというクリニックの事情による可能性が高い。染色体検査にも方式の違いがあり、染色体マイクロアレイ、別名比較ゲノムハイブリダイゼーションというのが最新の方法のようだ。これもおそらくクリニックがどの検査機関に送るかによって違うのだろう。

 

 だんだん状況が稀なケースになってしまうが、夫婦染色体検査または流産染色体検査まで行っても不妊の原因が分からない場合を想定すると、もうとれる選択肢はPGDしかない。

 

 将来、不妊治療からPGDに向かう過程がどうなっていくか想定してみる。

 

 夫婦染色体検査で何も問題がなかったと想定する。夫婦が、二人共エクソームシーケンシングや全ゲノムシーケンシングを受けて、病因性不明の変異を二人の同じ遺伝子に見つけ出し、それが胎児で劣性遺伝病を引き起こして流産となるために不妊なのではないかと推測する場合を考えてみる。妊娠するという以外に中間的な目標がなくだらだらイライラしながら支払いだけが増えるよりも、二人の老後設計として夫婦のどちらがどんながん保険に加入するかという検討も合わせて、エクソームシーケンシングをやってしまった方が、今後はコストパフォーマンスの点でよいだろう。

 

 [ミトコンドリアDNAの検査]で述べたように、シーケンシングによって変異が見つかっても、検証実験が既に行われている場合は少なく、しかし検証実験は患児の形で症例が出ている場合に行われるもので、変異が見つかっただけでは病因性は簡単には証明されない。だから原因不明の不妊で、病因性不明の変異が二人の同じ遺伝子に見つかった場合には、それなりにそれを不妊原因の可能性の一つとして仮定する根拠がある。もちろん、劣性遺伝は25%の確率なので、これまでの不妊の全部が一つの遺伝子のせいだったとは言えないが、すでに夫婦染色体検査まで行って問題がないと分かっているなら、比較の問題として、後は可能性の大きなものにかけるしかない。おそらく、疑わしいものから優先順位をつけて最大3つぐらいの遺伝子による劣性遺伝病を想定して、実質的には上位2つぐらいの遺伝子による劣性遺伝病を、胚の選別で排除できると期待される。2014年12月現在、次世代シーケンシング(NGS)の導入が進み、複数の遺伝子を一度のPGDで同時に検査できる体制が整いつつある**

 

 国内でPGDを行っていると公表しているのがほんの一部のクリニックだけに限られていると、そちらを持ち上げるわけにはいかないので、不本意な感じがするが、多数が利用している海外の場合を考えてみる。念のため記すが、海外でPGDを受ける場合も公式の基準があまりないという点では国内と変わらない。海外から見れば我々は外国人であり、外国人も対象とした特殊な基準が設定されていたとしても、言語が異なるため我々自身がその内容を直接知ることはできない。我々が知ることができる情報はあくまでエージェントを介してのみである。あくまで想像だが、米国では商業主義で高額ではあっても、比較的医療処置の安全性が保たれているのに対して、タイでは、途上国・中進国の常として、日本では想像できないぐらい病院の設備が異なり、富裕層病院と貧困層病院が別になっている*。特に安価なエージェントの場合、貧困層病院に連れて行かれて、日本よりも遥かに劣る医療処置を受けることになるのではないかと想像する。この前置きをした上で本題に戻ると、海外で体外受精+PGDを行い、劣性遺伝の発症パターンで変異が載っていない胚があれば、胚移植を行い、全てに載っていたなら、遺伝子の優先順位にしたがって選別するか、実子を諦めるかということになる。

 

 たとえ、実子を諦めることになっても、DNA検査の結果を眺め、自分達の老後設計を進めれば気持ちも前向きになろうというものではないだろうか。DNA検査による成人病の罹患予測確率から、加入すべき医療保険を決め、それらを支払っても余裕があると分かれば、里親および特別養子縁組という選択肢も残っている。しかし、もしも海外で二度目のPGDに挑戦しようとするならば、だんだん年齢が進んでいるはずで、無理があるのではないかと、私は思う。

 

 おそらく不妊治療の一つの問題は、患者を悩ませないつもりでリスクをリアルに説明しない過保護な医師の態度である。半分は不妊治療の利用を続けさせるための打算だが、もう半分は医師として患者の心を守るという良心から出ているため誰も強くは批判せず、終わりなくズルズルと救いがない状況が続きやすいため、どこかで意図的にピリオドを打たねばならない。前の節でトリソミーについて画像検索へのリンクで具体的に示したように、重度のことが多く、胚の潜在的な死亡原因と思われる染色体異常症や劣性遺伝の遺伝病を避けるために、一度は海外でPGDに手を出すのは、子の健康を望む親の努力として仕方がないと思われるが、その中でも劣性遺伝病の部分は、あくまで夫婦のシーケンシング結果から不妊原因への推測である。まだ日本はそういう状況になっていないが、同じシーケンシング結果に対して、分野が違う複数の医師から意見を聞けるようになれば、別の病名が次々に飛び出すということが起こりえて、最終的には単一遺伝子疾患は必然的に何パーセントかの胎児に起こってくるもので、いくら想定を厚くしたところで、一度のPGDで扱える胚の数が限られている以上、完全に避けるのは無理だということになる。

 

 不妊治療は、現在の日本で体外受精を何回までがんばるかとされているところが、将来的には一度のPGDでピリオドを打つところへと延長されることになるのではないだろうか。体外受精でピリオドとの大きな違いは、夫婦のシーケンシング結果を一つの成果として肯定的に考えることができるという点で、将来の医療保険と、里親ひいては特別養子縁組を望んでもいいぐらい自分達が本当にこれからも健康なのかどうかを、具体的に検討できる点であろうと思われる。

 

 また、気持ちとしては、海外で二度までもPGDを受けるようなお金があるのだったら、遺伝性疾患などの障害をもっているので里親のなりてなどいなくて、乳児院に預けられている恵まれない子供達*の支援に使われれば、どんなに助かるだろうかと想像する。

 

 本節の最後として、補足しておくと、不妊治療に絡むDNA検査として次世代シーケンシングに触れたが、一応23andMeによるDNAアレイの検査でも男性不妊の検査項目"Male Infertility"がある。ただし信頼性が★3つのため、あまりあてにしない方がいいと思われる。罹患予測確率を数値で示していないのは信頼性がそれほどないためと思われる。おそらく女性の方が不妊に関する検査結果の項目が多いのではないかと思うが、受けられないので分からない。以下に私の検査結果の概略を抜き出して示す。3つのSNPsが含まれ、うち3つ目のものは、日本人の研究者による成果のようである。最小限の訳を挿入する。

 

Non-obstructive azoospermia (very low sperm count)

非閉塞性の無精子症

Marker rs955988

CT Slightly higher odds of low sperm count.

Hu Z et al. (2011) . “A genome-wide association study in Chinese men identifies three risk loci for non-obstructive azoospermia.” Nat Genet.

 

Non-obstructive azoospermia (very low sperm count)

非閉塞性の無精子症

Marker rs10910078

CC Typical odds of low sperm count.

Hu Z et al. (2011) . “A genome-wide association study in Chinese men identifies three risk loci for non-obstructive azoospermia.” Nat Genet.

 

Male infertility

男性不妊症

Marker rs35576928

CC Typical odds of male infertility.

Iguchi N et al. (2006) . “An SNP in protamine 1: a possible genetic cause of male infertility?” J Med Genet 43(4):382-4.

 


生殖医療のリアルの写真

 本節では、生殖医療の写真をパブリックドメインから選んだものを示す。多少、グロテスクな部分が含まれてしまうが、高齢妊娠、高齢男性授精、不妊、遺伝性疾患について考える際には、これが産婦人科医の方々が夫婦に示さないリアルであろうと思われる。



 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


男女産み分けの国際比較 - 海外での生殖補助医療のリアル

 当初、この節では、医療目的でない男女産み分け、および、そのための海外での着床前診断(PGD)について、批判的な内容を記していたが、[仮説の更なる展開...]の節で記したように、遺伝性疾患の大多数で男子が女子よりも重度になるのが進化的に当たり前と思えるため、日本の夫婦の多くが希望すると言われている女子への産み分けについては、どうしても肯定的にならざるを得ない。現在の段階では、あくまで情報の提供、ウェブページの紹介に留めることにした。

 

“女性のいない世界”は絵空事ではない!?歪んだ未来をもたらす行きすぎた「男女産み分け」――『サイエンス』誌記者 マーラ・ヴィステンドール氏に聞く』 大野和基, 2012年8月7日, ダイヤモンド社

 

最も大規模に男女産み分けが行われているのは中国で、男子への産み分けである。中絶といった倫理的に問題のある措置がとられているとも言われる。

 

"Sperm sorting" Wikipedia

 

男女産み分けの新技術として、MicroSort社のフローサイトメトリーによる精子選別法。

 

Rorvik, David M., and Landrum Brewer Shettles. "Your babys sex: now you can choose." (1970).

 

日本で出回っているピンクゼリーが有効といった情報は、上記の文献で示されたもので、もはや古い。

  

Michelmann, H. W., G. Gratz, and B. Hinney. "XY sperm selection: fact or fiction?." Human Reproduction & Genetic Ethics 6.2 (2000): 32-37.

 

フローサイトメトリーの方が、他の方法よりも優れているが、決して100%ではない。

 

"ESHRE Task Force on ethics and Law 20: sex selection for non-medical reasons" W. Dondorp et al., Accepted March 19, 2013

 

EUでは、医療目的でない男女産み分けをこれまで否定してきたが、重度から軽度へと医療目的の範囲を広げて規制を緩和しつつある。フローサイトメトリーをPGDの前段として用いることで、男女産み分けが技術的に容易になるからである。多くの遺伝性疾患が女子より男子が重度なので、女子への産み分けが正当化しやすくなる。また、ファミリーバランシングという名称で、家族としての男子女子両方を得たいという夫婦の希望を、第二子以降に限るといった条件をつけながら、肯定する方向で話が進んでいる。しかし、まだ決定事項ではないようだ。

 

「代理出産は480万円」「男女産み分けは160万円」 年間100組以上の日本人夫婦が利用するタイの生殖医療事情』, リプトン和子, ウートピ, 2014.08.06より

 

国内でいくら規制されても、タイに渡れば生殖補助医療の多くが利用できてしまう。

 

韓国の生殖ツーリズムと生命倫理 ―日本人間の渡韓卵子売買をめぐって―』 渕上恭子

 

海外で生殖補助医療を受けた中に、日本に帰国して以降、特に患児が生まれて問題を起こすケースがあるようだ。

 

 LCCの登場で航空機運賃が安価になり、海外旅行者数が平成25年(2013年)の統計で1,747万人に上った。のべ人数を無視してざっくり試算すると実に国民の13%が1年間に一度は海外に出ていることになる。今や日本の国内で医療を国際基準よりも制限すればするだけ、日本の中だけで医療を考えている人口と、日本の外で医療の機会を探している人口の間で、巨大な格差医療が出現しようとしている。日本の医師は英語の壁にぶつかってまで国外に出ることにあまり興味がないため、多くは日本国内だけ見て、日本の平等医療を自画自賛し、自分達の苦労も報われていると考える方々が多いと思う。しかしその実、海外で医療を受けた人口は統計に出にくいだけで、毎年のように増えているのだ。その極端な例がPGDと言えるだろう。

 



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