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 自室に戻った明姫は床に突っ伏して泣くだけ泣いた。これだけ泣いてもまだ涙が出るのが不思議なほど泣いた。あまり泣いてばかりいると、身体中の水分がなくなって、干からびてしまうのかもしれないなどと、馬鹿なことを考えたりしながら。
 いっそのこと、それも良いかもしれないと思う。ユンがいないこの世で生きていても、愉しくも何ともない。だからといって、いざとなると死ぬ勇気もないのだから、つくづく自分は情けない人間なのだろう。
 どれだけの時間が経ったのか。いつしか泣きながら眠っていたようで、目覚めたときは既に黄昏時だった。障子窓を通じて蜜色の陽光が床に差し込んでいる。窓に填った格子模様がそっくりそのまま床に模様を描いていた。
 訳もなくその床にできた格子模様を指でなぞっていると、廊下の向こう側から秘めやかな声が聞こえた。
「明姫、起きているのか?」
 崔尚宮の声である。明姫は慌てて居住まいを正した。乱れた髪を手でささっと直す。
「はい」
 応えると、ほどなく扉が開き崔尚宮が入ってきた。
「一刻ほど前に覗いたら、よく眠っているようだったから」
 また出直してきたということだろう。
「申し訳ありません」
 慇懃に頭を下げると、崔尚宮が溜息をついた。
「そなた、また騒動を起こしたようだな」
「―」
 応える言葉もなくうなだれていると、崔尚宮が笑った。
「そのことについては、心配は要らない。国王殿下おん直々のお声がかりで、こたびの件は不問に付されることになった。しかしながら、あれだけの衆目の手前、そなたをお咎めなしとすれば、中殿さまのご威光にも拘わることになるゆえ、そなたは自室で三日間の謹慎ということにあいなる。まあ、骨休めと思うて、この際ゆるりと致せば良い」
 つまりは、事実上、お咎めなしということだ。今更ながらに、ユンの国王という地位と立場の強さを思い知らされた瞬間だった。
 それにしても、あれほど怒り狂っていた大妃がよくも納得したものだ。たとえ国王といえども、なかなか一筋縄ではいかない大妃である。
 明姫の想いが伝わったのか、崔尚宮が微笑んだ。
「このたびばかりは、国王殿下が引き下がられなかったのだ。大妃さまは相変わらずご立腹のご様子だが、母君さまとはいえ、殿下がお決めになったことなら、大妃さまでも覆せぬゆえな。恐らく殿下が大妃さまにこうまであからさまに逆らったのは初めてのことと、朝廷でも後宮でも大変な噂になっているそうな」
「そう、なのですか」
 ユンがそこまでして―大妃と対立してまで庇ってくれたのは嬉しい。だが、それで現実が変わるわけではないのだ。
 明姫がうつむいていると、崔尚宮が側に寄り、そっと抱き寄せられた。
「可哀想な小姫」
 身体をすっぽりと包み込む温もりに、また涙が溢れる。
「泣きたければ、好きなだけ泣きなさい」 
 こういうときは、いつもは厳しい上司が本当は血の繋がった伯母なのだと実感できる。六歳で死に別れた実の母はもう顔さえ思い出せないほど、記憶は朧になった。崔尚宮こそが、明姫にとっては母であった。
 後宮に上がったばかりの頃、崔尚宮は内緒で明姫を自室に呼んで一緒に眠った。夜半に例のあの夢―紅蓮の焔に飲み込まれる夢を見て泣いて起きた時、伯母はいつも幼い明姫を腕に抱いて髪を撫でてくれた。 
 そう、丁度今のように、抱きしめ、髪を撫でてくれたのだ。
―小姫。怖がらなくて良いのですよ。
 優しく頬ずりしてくれた記憶は今も鮮明に残っている。
 そういえば、ユンは言っていた。
―大勢の家庭教師や高価な玩具よりも、母の温もりが欲しかった。ただ抱きしめて頬ずりをして欲しかった。
 思えば、実の母が身近にいながら、ユンは母を失った明姫よりもはるかに孤独で淋しかったのかもしれない。明姫にはまだしも伯母がいてくれた。だが、ユンには誰もいなかったのだ。
 桜草の咲き乱れる殿舎に住んでいたお妃は、世子が懐きすぎたという理由で大妃の嫉妬と怒りを買い、憎まれた。ユンはその出来事を王から聞いた話として明姫に話したけれど、あれはユン自身の体験談だった。


 実の母から与えられなかった愛情をユンは別の女性に求めたのだ。ユンがその女性を慕ったため、彼女は大妃からいじめ抜かれ、やがて自ら生命を絶つという哀しい末路を辿った。
 自分が一途に慕ったお妃が実の母に殺されたも同然だと知った時、ユンは何を思い考えたのだろうか。小さな胸を痛めたに違いない。優しい彼のことだから、泣いただろう。
 まだ幼い王子が一人、誰もいないあの殿舎で泣いている姿が見えるようだ。
 王たる者は孤独だと聞いたことがある。どんなに大勢のお付きの者に囲まれていても、常に玉座に一人で座っていなければならない。ユンは幼いときには母の愛を欲しても与えられず、長じては王として常に孤独であらねばならなかった。
 王として生まれて、幸せだと思ったことがかつて一度でも彼にあったのだろうか。そして、そんな彼の悲哀と孤独を心から理解している人が、この宮殿には一人でもいるのだろうか。
 これからもずっと彼はたった一人で生きてゆかなければならない。そんな彼のことを考えると、あれほど手酷く騙されたというのに、何故か心が痛む。
 一体、自分はどれだけお人好しで、どれだけ彼を愛しているのだろう。いまだに彼を嫌いになれないとは。
 明姫が想いに沈んでいると、崔尚宮が静かに言った。
「あの服(チマチヨゴリ)をそなたに賜ったのは殿下なのだ」
 伯母の腕の中で明姫は弾かれたように面を上げた。
「伯母上さまはご存じだったのですか?」
 崔尚宮がそっと頷いた。
 何ということだろう。伯母は知っていたのだ。あの華やかなチマチョゴリの贈り主が国王イ・ユンであることも何もかもを。
「何故、教えて下さらなかったのですか? 私だけが何も知らずにいたのですね」
 この場合、咎めるような声になってしまうのは致し方ない。
 崔尚宮は哀しげに微笑んだ。
「殿下のお気持ちを察して差し上げて。そなたを大切に思うからこそ、真実をどうしても伝えられないのだと仰せだった」
「私にはユンの気持ちが判りません。ユンは私に言いました。私だけを生涯かけて愛し抜くと。でも、現実は違った。ユンには中殿さまがいらっしゃるし、私の出る幕はないんです。私は後宮でたくさんのユンのお妃方と寵愛を争うのはいや。その他大勢もいやなのです」
「そなたの言い分にも確かに一理はある」
 崔尚宮はひっそりと笑った。
「女としては、いつも自分だけを見て欲しい、愛されたいと願うのは当然のことだ」
 伯母らしからぬ発言に、明姫は眼を見開く。と、崔尚宮は肩をすくめた。
「何を愕くことがある。私だって、これでも女なのだぞ? かつて若かりし頃は男前の内官とひそかに恋を語らっていた時期もある」
「伯母上さまが? 信じられません」
 愕きも露わに言い返すと、〝失礼な〟と伯母がまた笑った。
「だが、明姫。今のそなたの物言いは己れの立場しか見えてはおらぬ。仮にそなたが殿下のお立場であったとしたら、そのように割り切った物言いはできぬはず」
 明姫はハッとした。昼間のユンの言葉が甦る。
―私は国と民の父なのだ。たとえ不甲斐なき王だとしても、私はこの国と民を棄てることはできない。
「良いか、よく聞くのだ。明姫。殿下がこの国の王でおわす限り、今の宿命から殿下は逃れることはできない。殿下が中殿さまをお迎えになられたのはご即位されて半年後、まだほんの子どもにすぎない砌の政略結婚だったのだぞ。そなたと出逢うはるか前のことを今更、どうすることもできないのは、そなたも判るであろう。殿下に限らず、王とは一生、孤独だ。先代の王さまもまたそれ以前の歴代の王さま方もそうであった。殊に聖君と崇められる優れた王ほど、より孤独な道を歩まねばならない。その殿下のお寂しさを理解してさしあげられるのは、そなたしかおらぬと私は思っている」
 自分の人生でありながら、自由には生きられない。けして思いどおりにはならない運命をユンは背負っていた。彼はまだ二十一歳なのに、あまりにも厳しい茨の道を歩んでいる。
「殿下は、後宮に入れることがそなたを苦しめることになるとご存じであった。お気持ちが真剣だからこそ、そのことを誰よりもよくお判りだったからこそ、ご決断できなかったのだ。殿下のそなたへの並々ならぬお心は、畏れ多いことながら、この私がよく存じておる」


 崔尚宮はしばらく明姫の背を撫でていたが、やがて立ち上がった。
「私は私なりの今の気持ちをそなたに伝えた。後は、そなた自身が自分でよく考え、応えを出すが良かろう。だが、私は、そなたに後になって後悔するような人生を歩んで欲しくはない。ご幼少の頃からお心淋しくいらせられた殿下にお幸せになって頂きたいのと同じくらい、そなたの幸せをも願っている。それだけは忘れないで欲しい」
 扉が静かに閉まった後、明姫はいつまでもその場に座り込んで宙を見据えていた。
―後になって後悔するような人生を歩んで欲しくはないと願っている。
 崔尚宮としてではなく、伯母として与えてくれた言葉が明姫の心を烈しく揺さぶっていた。
 ユンの幸せ、私の幸せ。いいえ、私の幸せなんて、この際、どうでも良い。私はユンに幸せになって欲しい。あの孤独で淋しがりやの彼を一人にしておくなんてできない。
 でも、国王としての彼についてゆくことはできそうにもない。第一、自分は何の後ろ盾も持たないし、ユンの妃になれたとしても、実家が彼の力になることはできないだろう。
 それに、これから彼は更に多くの側室を迎えるに違いない。権門の両班の娘との縁組みは王としての彼の将来に大いに役立つに違いない。また、一人でも多くの御子を儲けて王室の血筋を繋いでゆくのも国王の大切な仕事の一つだ。それはユンが望むと望まざるに拘わらず、国王としての彼の義務でもある。
 今後、ユンが新しい妃を迎え、その妃たちに優しく微笑みかけたり、寝所で情熱的に求めたりしているのを想像しただけで、胸が張り裂けそうだ。
 明姫は唇を噛みしめた。
 やはり、自分にはできない。彼の傍にいて、彼を支える役目は自分には荷が重すぎる。
 ひとすじの涙が明姫の白い頬を流れ落ちていった。


別離という選択

   別離という選択

 

 王は先刻から何度繰り返してきたか判らない科白をまた口にした。
「母上、明姫のどこが気に入らないと仰せなのですか? その理由を教えて下さい」
 だが、大妃は頑なに唇を引き結び、王の方を見ようともしない。王はひそかに溜息をついた。
 この日の朝、王―ユンは大妃殿を訪ねた。国王が母を訪ねてくることなど、極めて珍しい。最初に王の訪問を尚宮から告げられた時、とても嬉しそうに見えた。実際、彼が明姫を側室として迎えるという話を切り出すまでは終始、機嫌が良かったのだ。
「母上」
 更に呼びかけると、大妃があからさまに吐息をついた。
 やれやれ、溜息をつきたいのは、こちらなのに。ユンは内心、辟易としながら、それでも態度だけは丁重に言う。ここで気難しい母を怒らせてつむじを曲げられては困るのだ。
「殿下は私の申し上げたいことがまだお判りにならないようですね」
 黙りを決め込んでいた大妃がやっと口をきいたので、ユンはホッとして頷いた。
「申し訳ございませんが、私には皆目見当もつきません」
「理由はただ一つ、殿下の御子を生むのはペク氏の娘でなければならないのです」
 大妃はひと息に言い切ると、王の顔を真正面から見据えた。
「中殿はまだ若い。これからまだまだ子が生まれる可能性はありますよ」
 そのひと言に、大妃は舌打ちした。
「殿下は私が何も知らないとお思いですか?」
「何のことでしょう? 私は別にお叱りを受けるようなことは致しておらぬと存じますが」
「この際ですゆえ、はきと申し上げまする。殿下と中殿が有り体に申せば、褥を共にせぬようになって、何年になりますか? ただ一人の妻とは別居同然の状態、更に折角、側室を迎えても、いまだにこちらにも一度のお渡りもないときては、御子など生まれるはずもありませんでしょう」
 ユンもまた大妃の視線をしっかりと受け止めて応えた。
「それなら私もはっきりと申し上げますが、私は惚れてもいない女を抱きたいとは思いません」
 大妃が呆れたようにユンを見た。
「私は殿下をそのように愚かにお育てした憶えはありませんよ。あれほどの大罪を犯した娘をお咎めなしというだけでも正気の沙汰とは思えませんのに、更に側室に迎えるなどと、到底認められるはずもありません。殿下があの娘によほどのご執心とは判りますが、母としては真に情けないことです」
「大罪というほどのことではないではありませんか。たかが花のことです。それに、あれは何も明姫がやったわけではないでしょう。あれだけ大輪の花であれば、花自身の重さに負けて花冠が落ちてしまうことも十分あり得る」
「とにかく、このお話は何度繰り返しても、同じことです。私はあの娘を殿下の側室と認める気は毛頭ありません」
「何故ですか! 明姫の実家は確かに権門ではないが、それでも、れっきとした両班の娘です。家柄に不足はないはず」
 あくまでも食い下がる息子に、大妃は冷たい一瞥をくれた。
「何度同じことを申し上げたら良いのです。あの娘はペク氏の一族ではありません。それがすべての理由です」
「―判りました」
 ユンは低い声で言った。
「母上があくまでも反対なさるというのなら、私は私で自分の意思を貫きます」
「殿下―」
 大妃が驚愕も露わにユンを見た。
「一体、何をなさるおつもりです?」
 ユンは母を無表情に見つめた。
「明姫を側室として迎えます」
「この母の申すことに逆らうおつもりか?」
「私はこの国の王だ。たとえ母上といえども、私の意思に異を唱えることはできないのでは?」
 母と息子の間で見えない火花が散る。
 烈しいまなざしとまなざしが一瞬、絡み合い離れた。
「情けなや。一国の王がそこまで、あのようなつまらぬ小娘に籠絡されておしまいになるとは。殿下がどうしても母の言葉に従って下さらないというのなら、私にも考えがあります」
 ユンは燃えるような眼で大妃を見た。
「それで、どうなさるのですか。また、あのときのように明姫をも殺すのですか?」
「何を仰せられているのやら」


 厚化粧をした面でも、大妃が蒼白になるのが判った。ユンの整った顔に拭いがたい翳りが差す。
「できれば、こんな話はしたくなかった。ですが、母上、忘れたとは言わせない。母上が孔淑媛(コンスクウォン)を殺したのではありませんか」
「偽りを申すでない。孔淑媛は自ら生命を絶ったのです。それは、殿下ご自身もよくご存じのはず」
「確かに、彼(か)の御方は自害された。しかしながら、彼女を追いつめたのは母上ではないのですか? とことんまで追いつめて、しかも淑媛が懐妊した身と知りながら、鞭打つという酷い所業をなさった。彼女の流産の原因が母上の度を過ぎた体罰のせいではないと誰が言えましょう」
「よくもこの母にそのようなことが仰せになれるものです。確かに、あなたは国王ですが、私はその王を生んだ母ですよ。その母に逆らうというのですか?」
 大妃はいつもの切り札を出した。どんなに言うことをきかないときでも、この科白を繰り出せば、王は渋々ながらでも母に従ってきたのだ。それは王が幼いときから変わらない。
 だが、ユンは平然とその言葉を交わした。
「母上、好きな女を守るのに、国王であるかどうかなど関係ありません。私は今、王としてではなく、一人の男として母上にお願いしているのです。そして、母上がどうしても私の願いを聞き入れて下さらぬというのなら、私は私自身の意思で生涯の伴侶を選ぶまでです。母上が孔淑媛のときのように明姫をまた追いつめるというのなら、私は全力で明姫を守る。あの時、私はあまりにも幼く、孔淑媛を守れなかった。だが、今は違う」
「なっ」
 大妃はいささか派手すぎる紅を塗った唇を戦慄かせた。あまりの衝撃に言葉も出ないようだ。
「それでは、これにて失礼いたします」 
 息子は最早、母の方を見ようともせずに部屋を出ていった。
 大妃の脳裏にある一つの光景が浮かび上がる。記憶が巻き戻されてゆく。
 そう、ずっと以前にも、たった今とまったく同じ光景を見たのではなかったか。
 十四年前のあの日、珍しく良人である国王が大妃の許を訪れた。丁度、当時は世子だったユンもその場にいた。国王はしばらく幼い息子の相手をしてやり、滅多にないことに中宮殿にはユンの笑い声が響き渡った。
 そこに女官が血相変えてやってきて、孔淑媛の自害を伝えた。あのときの良人の冷たい視線を彼女は生涯忘れないだろう。まるで汚らわしく厭わしいものでも見るかのような冷え冷えとしたまざしが全身に突き刺さるようだった。
 国王は大妃を余計に刺激してはまずいと知らないふりをしていたのだが、実は大妃が孔淑媛を中宮殿に呼びつけて鞭打ちの刑を与えたことを知っていたのだ。更に、それが原因で流産したことも。
 嫉妬深く気位の高い妻には愛想が尽きていたが、捨て置けばまた孔淑媛や他の寵妃たちに対して何をしでかすか判らない。だから、その日は妻の機嫌取りもあって中宮殿を訪れたのだ。
―殿下、お願いです。行かないで。
 中殿としての誇りも何もかもかなぐり棄て、去ろうとする国王の脚にしがみついたのに、王は彼女を振り払うようにして足音も荒く去っていった。あの後、孔淑媛の許に駆けつけたのは判っている。
 足蹴にされたも同然の彼女は茫然自失の体で良人を見送るしかなかった。傍では幼かった世子―ユンが声を上げて泣きじゃくっていた。だが、息子は実の母が父から足蹴にされて泣いたわけではない。姉のように慕っていた孔淑媛が亡くなったことを哀しんでいたのだ。 
 何故なのだ? 自分のどこがいけなかったのだろう。自分はただ良人を愛していただけなのに。良人に振り向いて欲しくて、他の側室たちのように優しく微笑みかけられたかったのだ。
 良人が孔淑媛ばかりを寝所に召しているのが堪らなかった。良人の夜の訪れを待ちながら、幾夜も独り寝の寝床で涙を流したことか。
 今し方、彼女の許を去っていった息子の瞳は、あのときの良人のまなざしとそっくりだ。凍てついた氷のように彼女の心を刺し貫いた。
 皆、私の許から去ってゆく。良人も息子も、誰もが私を一人残して、他の女の許に行くのだ。一度も私に逆らったことのない子が、親孝行で優しい殿下が生まれてめて私に背いた!
 許さぬ。けして息子の心を奪った女を許しはしない。大妃の心に新たな憎しみの焔が燃え上がった。



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