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執筆オフ参加要項

【開催日の候補】

候補日:
2014年2月8日(土) または15日(土)

開始時間:
18:00 お題発表 ・ 執筆開始予定
※ 執筆オフ会場の使用可能時間につきましては、各会場幹事までお問い合わせください。


【執筆オフご参加にあたって】

執筆オフの流れ:
お題発表前までに、オフ会場に集合
ノートPCなどの接続確認
暫定18時、お題発表・執筆開始 (会場によって、可能であればハングアウト中継)
暫定19時15分、執筆終了 (ハングアウト中継そのまま継続)
作品を肴に、飲食 (ハングアウトでも打ち上げ)
会場ごとに解散

お持ちいただきたいもの:
執筆用のノートPC類
・Wi-Fi接続が可能なもの
(※会場によって回線状況が異なりますので、当日までにご確認ください)
・またはUSBメモリやメモリカード等でデータ受け渡しが可能なもの

幹事さんのみ : ハングアウト接続用マイク(お持ちであれば)

参加費用:
会場費および飲食費を割り勘の予定


【参加ご希望 & 幹事様 募集】

東京オフ:
開催地  ―― 新宿   ※ 会場および連絡先は、ご参加者にDMでお知らせします。
集合時間 ―― 17:30より会場使用可能です。遅れて到着する場合は予定時刻をお知らせください。
幹事   ―― てきすとぽい杯運営担当(予定2名)
参加費  ―― 4,000円前後を予定   ※個室、電源・Wi-Fiフリースポットのある会場です。

他都市開催:
開催地のご希望、および、幹事を引き受けてくださる方を募集
※ 幹事様には、会場費・飲食費の管理、投稿時間中のネット接続状況の確認等をお願いする予定です。

問い合わせ先:
ご参加可能な地域を添えて、てきすとぽいTwitterまでお問い合わせください。


※ 2月8日に参加可能という方が多かったため、開催日は2月8日に決まりました。
また東北オフもご希望者があり、調整しておりましたが、雪の深い季節で長距離の移動は負担も大きいため、ハングアウト中継によるご参加となりました。

企画と参加者募集の経緯まとめ : http://togetter.com/li/606045

第14回 審査結果

【審査結果】 ※得票順、敬称略

1位 ☆4.059
『ラスト・スタンディング』 晴海まどか
http://text-poi.net/vote/51/9/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:17 最終更新 : 2014.02.08 19:20
総文字数 : 2512字

2位 ☆4.000
『夏の終わりの汚れたブルー』 犬子蓮木
http://text-poi.net/vote/51/6/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:06
総文字数 : 2455字

3位 ☆3.933
『寄り道』 塩中 吉里
http://text-poi.net/vote/51/5/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:02 最終更新 : 2014.02.08 19:13
総文字数 : 2297字

4位 ☆3.875
『みんなの笑顔のために』 茶屋
http://text-poi.net/vote/51/2/
投稿時刻 : 2014.02.08 18:48
総文字数 : 1598字

5位 ☆3.812
『♪さようなら、○ちゃん』 太友 豪
http://text-poi.net/vote/51/4/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:00 最終更新 : 2014.02.08 19:02
総文字数 : 883字

6位 ☆3.714
『人類の永遠の戦い』 るぞ
http://text-poi.net/vote/51/8/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:14 最終更新 : 2014.02.08 19:18
総文字数 : 1737字

7位 ☆3.667
『ひどい話』 永坂暖日
http://text-poi.net/vote/51/10/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:18
総文字数 : 1765字

7位 ☆3.667
『国旗掲揚』 雨森
http://text-poi.net/vote/51/3/
投稿時刻 : 2014.02.08 18:56
総文字数 : 1362字

9位 ☆3.643
『監視カメラ』 ドーナツ
http://text-poi.net/vote/51/7/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:14
総文字数 : 492字

(集計外) ☆3.571
『最初に目に映ったものは』 志菜
http://text-poi.net/vote/51/12/
投稿時刻 : 2014.02.08 21:48
総文字数 : 992字

10位 ☆3.400
『バッドエンドについて』 ayamarido
http://text-poi.net/vote/51/11/
投稿時刻 : 2014.02.08 19:19
総文字数 : 1280字

11位 ☆3.312
『ハイパーメディアクリエーター(笑)』 松浦徹郎
http://text-poi.net/vote/51/1/
投稿時刻 : 2014.02.08 18:43
総文字数 : 921字




※ 執筆オフ中継中に著者インタビューを行いました関係で、執筆オフ参加作品は制限時間を5分延長し、19:20締切としております。

締切19:20対象作品:
『夏の終わりの汚れたブルー』 犬子蓮木さん
『ラスト・スタンディング』 晴海まどかさん
『ひどい話』 永坂暖日さん
『バッドエンドについて』 ayamaridoさん


※ 獲得☆票の内訳につきましては、てきすとぽい杯の会場にてご確認ください。
会場 : http://text-poi.net/vote/51/

入賞作品紹介



《大賞1作品》
獲得☆4.059
『ラスト・スタンディング』
http://text-poi.net/vote/51/9/
著:晴海まどか

サークルのみんなで、海に行くはずだった。
なのに、目覚めたのは小さな住宅街。私たちの他には、誰もいない。街の人も、誰も。
先に目覚めていた一人が言った。「俺たち、なんか死んだみたいなんだよね」
細切れに届く事故のニュースと、不意に始まる殺戮……彼らは本当に死んでいるのか?
巧みな構成で先を予測させない青春バッドエンド作品が、てきすとぽい杯2人目の連覇を達成しました!




 

《入賞3作品》
獲得☆4.000
『夏の終わりの汚れたブルー』
http://text-poi.net/vote/51/6/
著:犬子蓮木

二年前の、夏。僕は海で溺れ、そして、助けられた。明るくて、とても綺麗な人に。
それから何度か二人で会い、やがて彼女は僕の恋人になった。ハッピーエンド。……表向きには。
心の奥に秘めた本音と、失われるはずだった命の重さと。その狭間で静かにのたうつ、
ハッピーエンドの裏側の物語が、高い評価を獲得しました。果たして二人の結末は――。
獲得☆3.933
『寄り道』
http://text-poi.net/vote/51/5/
著:塩中 吉里

この物語に登場するのは、むしろ目立たない、小さな料理屋です。
毎日通る道なのに、いつからそこにあったか分からない。でも、一度看板を目にしてしまったら、
気になってその場を離れられない。そんな店にある日、一人のサラリーマンが足を踏み入れ――。
繰り返される違和感が否応にもバッドエンドを予感させる、悪い夢に酔っているかのような作品でした。
獲得☆3.875
『みんなの笑顔のために』
http://text-poi.net/vote/51/2/
著:茶屋

誰かの役に立つこと。誰かの笑顔を守ること。ヒーローに憧れ、ただそれだけを心がけているはずが、
何をしても空回りし、何をやっても裏目に出てしまう日々。
けれどある時、たった一つ、守ることのできた少女の笑顔が、青年を思わぬ運命へと導いてゆく――。
一行ごと、一段落ごとに、バッドエンドを積み重ねていくかのような、アンチ・ヒーロー物語です。




 

《特別賞》
《お題の追加オーダー賞》
『人類の永遠の戦い』
http://text-poi.net/vote/51/8/
著:るぞ

「バッドエンド」では足らず、お題メーカーにて「草」「リボン」の二題を追加し、執筆された作品でした。
《大雪の夏賞》
『夏の終わりの汚れたブルー』
http://text-poi.net/vote/51/6/
著:犬子蓮木

記録的な大雪に見舞われた執筆オフ会場で、真逆の季節「夏」を主題に描かれた作品でした。
第14回入賞とのダブル受賞となります! 
《執筆オフ・ルポタージュ賞》
『バッドエンドについて』
http://text-poi.net/vote/51/11/
著:ayamarido

東京都知事選の前日でもあった執筆オフ前後の体験を、お題に絡めて軽妙に描いた作品でした。
(後日談もお楽しみください:http://p.booklog.jp/book/3746/page/2105406





――受賞された皆さま、おめでとうございます!
素晴らしい作品をありがとうございました。

(次のページから、作品が始まります。)

『ラスト・スタンディング』 晴海まどか

投稿時刻 : 2014.02.08 19:17
最終更新 : 2014.02.08 19:20
総文字数 : 2512字
獲得☆4.059
 電車に揺られていた。
 車窓越しにのどかな田園風景が果てしなく続き、流れていく。どこまでも見覚えのない風景。以前もこの近くを通ったはずなのに。電車と車では、同じ景色でもこうも見た目が異なるのだろうか。
 面白いくらい人のいない車両の一番端っこの席で、静かに窓にもたれかかる。ガラス窓に寄せた頬が冷たい。

          ◇

 私を揺り起したのは、阪峰くんだった。私が目を覚ますと、心底ほっとしたように笑みを向けてくれる。何かにつけて私にはもったいない彼氏である。おかげで若干の混乱しかそのときは感じなかった。
 私はなぜかアスファルトの上に倒れていた。小さな住宅街の中。首をめぐらすと、阪峰くんをはじめとした見覚えのある面々。ミナちゃん、橋本くん、堂下くん。阪峰くんと私も含め、みんな同じ英会話サークルの仲間だ。
 なんだか頭がぽうっとしている。そうだ、みんなで堂下くんの運転で、海に行く予定だったんだ。水着だって新調した。あれ、私のバッグはどこ?
「俺たちさ」
 口を開いたのは橋本くんだった。ミナちゃんにずっとアプローチをかけているけど、見事なまでに相手にされていないかわいそうな橋本くん。
「なんか、死んだみたいなんだよね」

          ◇

 電車は単線で、駅に到着するたびに通過待ちがあった。ドアが開いて、少し冷涼な空気が流れ込んでくる。
 ここに一人で来ることになるなんて。
 こみあげそうになる涙をのみ込んだ。私が泣く資格なんてない。

          ◇

 私以外の四人は、先に目覚めていたらしい。先に目覚めていた、ということからもわかるとおり、彼らも私と同様意識を失っていて、気づいたらこの街にいたそうだ。みんなで乗っていたはずの車や荷物は見つからず、着の身着のまま小さな街にいたのだという。
 わけがわからない。
「誰かいないの?」
 私の言葉に皆は顔を見合せ、首を振った。
「誰もいないんだ」
 いつも冷静な堂下くんは、こんな状況でもやっぱり淡々としていた。私は堂下くんの言葉に眉間にしわを寄せた。
「誰もいない?」
 と、そのとき、ズボンのポケットに入れていたスマホが震えたのに気がついた。誰かのスマホがメールを受信した音が聞こえる。
「さっきまで電波もなかったのに……」
 そうスマホを取り出したミナちゃんが短く悲鳴を上げた。ミナちゃんが先に悲鳴を上げていなかったら、私も上げていたかもしれない。
 見たことがないニュースサイトが表示されていた。
『大学生グループ、旅行の途中で交通事故 四名が死亡』
 見覚えのある大学名。そして、死亡した四名の身元は確認中との記載。事故現場は、まさに私たちが向かおうとしていた観光地。
「……今ここにいるの、何人?」
 ミナちゃんの言葉に空気が凍りついた。

          ◇

 電車が再び動き出した。なんとなく、両手を見る。
 あのとき、最初に動いたのは橋本くんだった。
 どこにそんなものを持っていたんだろう、突然ナイフを振りかざした橋本くんは、いきなりミナちゃんの首を切りつけた。円弧を描いて飛び散った赤いものは、私の両手に飛び散った。
 悲鳴など上げる間もなく、ミナちゃんが倒れた。
 静寂を破るように、再びスマートフォンが震えた。誰かの呑気な着信メロディが流れた。
「……やっぱりだ」
 突然の凶行に走った橋本くんは、一人スマホを取り出して笑んだ。
「ここは、死後の世界なんだよ」
 ニュースサイトが更新されていた。
『死亡者の身元が判明』
 ミナちゃんの名前が掲載されていた。
 血だまりの中に横たわるミナちゃんに視線を釘づけにしていた私の手を引いたのは阪峰くんだった。
 逃げるぞ、だかなんだか言われたような気がしたがよくわからない。
 手を引かれるがままに走って、でも街の出口は見つからなかった。
「ここ、本当に死後の世界なのかな?」
「……だったら、もう全員死んでるってことだろ」
 いつの間にか、私たちの後ろに堂下くんがいた。
「生と死の世界のはざまってところだろ」

          ◇

 目的の駅に到着した。自宅から、三時間もかかった。車だともっと近かったのかもしれない。
 網棚の上に置いていた大きな花束を手に、電車を降りる。
 潮の匂いが強い。海の近い田舎町だった。
 私たちが閉じ込められていたその世界はあまりに狭かった。すぐに追いかけてきた橋本くんに見つかって、阪峰くんと橋本くんが掴み合いになった。阪峰くんはなぜか拳銃を持っていた。橋本くんが額から血を流して倒れた。
「……すごいな」
 重みのありそうな黒い鉄の塊を手にした阪峰くんは、それを私と堂下くんの方に向けた。
「ほしいと思ったら、武器が出てくるんだ」
 阪峰くんがまっすぐにこちらに銃口を向けた直後、銃声が響き渡った。
 堂下くんまで拳銃を構えていた。阪峰くんが倒れる。
 今度は悲鳴が出た。肺にある限りの空気を絞り出した。いまだ状況を飲み込み切れていなかった頭が、ようやく回り出したのかもしれない。
 何、何、何、なんなのこれ。
 拳銃片手に、堂下くんはスマホを取り出した。例のニュースサイトを見ているのだろう。身元不明者はあと一人? 一体どんなひどい事故だったんだろう。
「……俺さ」
 何を考えているのかよくわからない、なんて評されることが多い堂下くんの笑みを、私は初めてみたような気がした。
「お前のこと、わりと好きだったんだよね」

          ◇

 花束を両手で抱え、ゆっくりと歩く。
 来たことがあるはずの場所なのに、どうしてこんなにも覚えていないんだろう。
 堂下くんが自分のこめかみを撃ち抜いたその瞬間、視界がブラックアウトした。気がつくと、病院の一室に私はいた。
 私は、事故での唯一の生存者になった。
 潮の香りがどんどん強くなる。さびれた観光地。みんなと来たはずなのにどうしてこんなに――
 ――覚えていないのかって?
 ふいに、聞き覚えのある声が脳裏に響いた。
「……ミナちゃん?」
 ――ニュースサイト、よく見てみなよ。
 記事にはリンクが貼ってあった。ひとつ前の記事。
 ――君はさ、まち合わせに間に合わなかったんだよ。あの日、僕たちに合流する前に……
 今度は阪峰くんの声だった。
『女子大生、電車のホームから転落』
 潮の香りが急に遠のいた。目の前に、あの住宅街が広がっている。
 橋本くんの声がすぐ後ろでした。
 ――やっぱりここは、死後の世界だったんだよ。
 振り返る。そこには、懐かしい彼らが揃っていた。


※作品集への掲載にあたって、誤字等を一部修正しました。

『夏の終わりの汚れたブルー』 犬子蓮木

投稿時刻 : 2014.02.08 19:06
総文字数 : 2455字
獲得☆4.000


《入賞作品》
《特別賞・大雪の夏賞》
夏の終わりの汚れたブルー
犬子蓮木


 夏。海。僕は溺れて、そして助けられた。助けてもらった人と縁ができて、僕はその人と付き合うことになった。その人は綺麗な人で、僕みたいな何にも才能もなく、容姿も悪いような人間からすれば、もったいないぐらいな人だ。
 それなのに、僕の心の中には、わだかまり、もっと言えば違和感のようなものがある。
 僕はその人のことを嫌いなのかもしれない。
 なんどか会って、それから告白されて、それで返事をした。助けて貰った人に対して、断るなんていう選択肢が選べなかったのだと自分でわかっている。
 その人は僕のことを褒めてくれる。
「やさしいね」とか「ひどいことを言わないから」とか。それはいいのだけど、褒める言葉は僕を束縛するのだと僕は思っている。
 褒められたならそうしなければならないと、僕は貰った言葉を大切にしまい込んで、心の中で繰り返して、そうして、ほんとうの僕からずれていくことを我慢しなければならない。
 僕の中にはやさしくない一面がある。
 僕の中にはひどい言葉を発する一面だってある。

 XXX! XXX!

 そんな僕の我慢は命を救ってもらったという恩だけを重みとしていつまでも海の底へとゆっくりと沈んでいく。光の届かないプレッシャーばかり増えて行く海の中へと、深々と、暗く暗く。助けてもらったから。

 二年後の夏。蝉がじんじんと鳴き、汗が顔をつたって落ちていく日中に、僕とその人は駅前の喫茶店にいた。僕の実家に行って、両親に挨拶をしてきたところだった。
「緊張したね」
「そう?」僕は言う。
「それはするよ」
「あんまりそうは見えなかった」
 その人はいつも明るく。まぶしくて、どんな人ともすぐに仲良くなれる。僕の両親もすぐに気に入ったみたいで、僕になんてもったいがないと笑っていた。
「僕になんてもったいがないよね、ほんと」
「そんなことないよ」
 その人は、ほがらかに笑う。
「明日は海にいこう」
「なんで急に?」僕はたずねた。
「忘れたの? 記念日じゃない」
「僕が溺れた記念の日」
「そう。だから会えたでしょ」
 その人は、あの日のことを笑って話す。僕が死にそうになったときのことを。助かったから笑い話。それはそうなのかもしれない。僕も笑って話すことはある。だけど、そういう気分じゃないときだってある。でも、僕は笑っている。
 やさしく。
「はじめて私を見たとき、どう思った?」
「覚えてないよ、大変だったんだから」
 溺れて砂浜にあげられて、それからやっと目をあけたときにたぶんその人の顔を見たとは思う。
「天使みたいとかないの? そのとき好きになっちゃったとか」
「ないね。でもそのあとお礼に行ったときは綺麗な人だなと思ったよ」
 そういうとその人はまた笑ってくれる。いつものことだ。
 僕の頬から汗が落ちる。ふいに聞いてみたくなった。
「もし僕が嫌いだって言ったらどうする?」
「なにを?」
 僕は声に出さず。その人を見つめる。いつもみたいな笑顔がくずれて壊れそうになる。
「なんでそんなこと言うの?」
「ごめん。ただもしいつかそうなったときどうなるのかなって。未来は保証できないし、結婚は墓場だなんて言うでしょ」
「マリッジブルー?」
 またその人は笑顔を取り戻した。
 僕が不安になったら、僕を助けるのがその人の役目だって、思い込んでいるんだ。僕は僕だけで生きていけるのに、ほんとうは助けがいるのは自分のほうなのに。きっかけがあったから、役割が決まった。性格という表面的なものがあるから、周りから期待されて、束縛される。
「大丈夫だよ。私たちはそんなことにはならない」
「うん」
 僕は笑顔を作った。精一杯に笑った。それが僕がしてあげられる唯一のことだから。僕はあのとき助けられたから、消えてしまうはずだった残りの人生の使い道を目の前の人に委ねることになったのだ。
「じゃあ、明日は海ね」
「うん」

 海。都内からすぐに行ける海は基本的にきたない。黒くて、ゴミが浮いていて、それでも大勢の人が我慢して楽しんでいる。
 僕もその人もデートになんかふさわしくなく泳いでいた。僕はあの日、助けられたけど、実際のところ泳ぐのは得意だった。あのときは足がつって溺れたけど、普通に泳げば負けたりはしない。
 もし、今、隣にいる僕の結婚相手が溺れたら、僕は全力で助けるだろう。そうすれば僕と相手をつなげる重く苦しい鎖の束縛は消えてなくなるかもしれない。
 どちらが優位でというわけではなく。
 対等に。
 はじめて向き合えるかもしれない。
 そんな切なる願いも当然、叶うこともなく、僕らは砂浜にあがった。
 眩しい太陽が綺麗なその人を照らす。プロモーションのポスターみたいに美しい人間が真夏の海で輝いている。僕はそんな眩しい人を映すカメラで、記録する媒体だった。
 いつかその人が明るい過去を思い出したくなったときに僕というデバイスを動かして、「どう思った?」なんて僕のスイッチをいれる。
 そうして、僕はゆっくりと、美しい歴史の語り部となる。
 僕の人生はそのために存在している。
 僕が助けられたとき、そう決まった。
 恩がある。だから僕はそれで良いと思っている。ただ、僕はその人のことを好きではないのに、僕も好きだと錯覚したままなのは失礼じゃないかという葛藤があるだけだ。
 それでいいのかはわからない。
 たぶん近いうちに崩壊の瞬間が訪れるのかもしれない。
 そうであればいいなと思い、そうなってほしくないとも思う。
「あついなあ」僕は思わず声をこぼした。
「もういっかい行こうか」
「うん」
 僕らはまた海に向かって、僕はひとり内緒のお願いを神様にする。叶う確率はほとんどない。体にまとわりつく水分は海の水と罪悪感からの汗だろう。暑いからだなんて嘘は、内心でもつきたくはない。一番大事なところで嘘つきなくせに。
 海に走ってはいって、深くなったところで泳ぎ出す。僕はその人を追い抜いて、海の中で、汚い水に包まれて、孤独を感じる。ゴールにしていたブイに辿り着いて追いつて来たその人のまばゆい笑顔を見る。
 だから来月、夏の終わりに、僕らは契りを結ぶのだ。
 やっぱり僕は、その人のことを、好きではないままなのだけど。      <了>


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