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足あと。その②

 昨日遊びに来ていたウサギちゃん。

 

その足あとを追うように、今朝、畑の上には点々と細く続く

別の生き物の足あとがありました。

キツネの足あとです。ウサギを狙ってその跡をずっとつけ歩いて

いるのでしょうか。

 

「ウサギちゃん、大丈夫かなぁ・・・」

この辺ではめずらしいウサギがせっかく来るようになったのに、

キツネがあんまり追い回したら、来なくなってしまう・・・。

 

以前からこのあたりで暮らしているキツネがいて、

すっかり顔なじみ的ではあるのですが、

ウサギを追いかけるのはやめてほしいなぁ・・・。

 

といっても、それが自然なのですから

仕方が無いことなのですが・・・。

 

いろいろ心配していましたが、夕暮れ前、小屋の裏手にキャベツの小さな塊りを

置きに行ったところ、またちゃんとウサギが来ていたので、ホッとしました。

 

ウサちゃん ポ^ン.png

 

「無事だったんだなぁ・・・」

昨日よりは幾分警戒心が薄らいだようで、こちらを見ては何度も立ち止まり、

幾度も幾度も振り返りながら跳ねていきました。

 

夕日に包まれながら帰っていくそんなウサギの姿を見ているうち、

あぁ、まだまだこの辺にも、ウサギが暮らせる自然が残っていたんだなぁ、という

安心感にも似た喜びを、私はウサギさんからおみやげに頂いていたのでした。

 

 

ところで、ウサギの足って、とっても早いんですよネっ。

 

昔、冬の河原へ遊びに行った時、堤防近くをウサギが跳ねていたのですが、

やがて車並みのスピードで、あっという間に堤防の上を駆け抜けて行ってしまったのを

見たことがあります。

 

ウサギさん.png

 

また、聞いた話ですが、近くのおじさんが軽トラックで冬道を走っていたところ、

突然ウサギが横に並んで走り出し、やがて先を越して行ったかと思うと、

車の前を左右にジグザグ走行して、煽られたそうですっ!

 

その後一気に距離をあけられ、道の先にある止まれの所で、ウサギさんは、

 

「オレの勝ちだな」

 

と言わんばかりに待っていたというのです。

その後、近くの林の中へ悠然と勝ち誇ったようにウサギさんは消えていった

との事ですが、ん~っ、いくら足自慢のウサギさんでも、そこまでやるか、

といった感じです。^^

 

雪の上では、ウサギの足の方が断然埋まりにくいので、

そう簡単にキツネも捕まえることは出来ないでのでしょう。

あまりウサギにえさを与えすぎても、却ってキツネにウサギの居場所を定められ

狙われやすくなるとも考えられます。

様子を見ながら、ほどほどな感じで付き合っていきたいと思います。

ウサギもキツネも、そしてみんなもわたしも

この冬を無事元気に暖かく越せますように・・・。

 

!cid_E10BFE3E5DF7420C86366E58549DE82D@sintarouPC 雪こんこんキツネ七色.png

 

 

 


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カラスのカルル君っ。 その②

家の裏手に立つ大きなエゾ松の木の上から、

いつも私とネコたちを見守ってくれている頼もしい仲間、

 

カラスのカルル君。

 

その松の木の中ほど辺りにある古い鳥の巣で

カルル君は兄弟と共に生まれ、そして育ちました。

 

お父さんお母さん、そして兄弟たちと一緒に、毎日毎日

カァーカァー ワイワイ言いながら、にぎやかにとても楽しそうに

過ごしていたのでした。

 

だんだんと大きくなり、カラス君たちは一羽二羽と巣から飛び立ち

自在にこの辺りを飛び回って遊んでいましたが、

一羽だけ巣立ちが出来ずいつまでも巣の中からワーワー鳴いては、

親鳥だけではなくカルル君たち兄弟にまで

エサを運んでもらっているのがいました。

 

ほかのみんなが飛びまわれるのに、その子ガラスだけがどうしてもそこから

飛び立てず、ヒャ~ッ、ヒャ~ッと奇妙な声で泣き叫んでは

カルル君たちを呼んでいるのでした。

 

もうこのままずっと飛べずに終ってしまうのでは、そう思うほど

巣立ちまでには期間がかかりました。

 

そして、ついに巣立ちの日、というより、巣から落ちて、

そのカルル君の弟?は、無事巣離れ出来たのでした。

 

しかし、それからがカルル君たち兄弟親子の大変な毎日の始まりでした。

 

うまく飛ぶことの出来ない弟カラス君に、カルル君やほかの兄弟、

お父さんカラスお母さんカラスが、エサを口元へ運んでやっては

与えていました。

 

飛び立った弟カラス君が屋根の上に転げ落ちれば

 みんなそこへ行ってそばから離れることもなくいつも一緒でした。

 

カラスが、あんなにも親子兄弟思いのある鳥だとは知りませんでした。

 

障害を持って生まれても、懸命に生きようとしているその姿、

そしてそれを必死になって守ろうとする家族の絆って、

人間だけでなくほかの生き物たちもみんな

同じなんですね・・・。

 

その後も弟カラス君はしっかりと飛ぶことが出来ずに、

家の屋根や壁、周りの建物にぶつかってひっくり返ったり、

夜中に突然カァーカァー鳴いて飛び回ったりと、異常な行動が続き、

目つきや素振りがだんだんおかしくなっていったのでした。

 

その弟カラス君をかばうように、カルル君も親ガラスたちも

いつもぴったり寄り添って決して見放すようなことは

すこしもありませんでした。

 
「かわいそうに・・・。いくら知恵達者のカラスさんといえども、

これではひとりで生きていくことは難しいだろうなぁ・・・」

 

私がそう思ったことはすぐに現実のものとなりました。

 

何度もその弟カラス君をハヤブサが襲いに来るようになったのです。

 

いくら私が石を投げつけても、カルル君たちが追い払っても、

ものすごい勢いで弟カラス君がハヤブサに追いかけ回される日々・・・。

 

秋の深まったある日、突然、カルル君たちが

大騒ぎを始めたので外へ出てみると、

またもやハヤブサがやって来て、弟カラス君に襲い掛かり

深手を負わせたのです。

 

そして、私やカルル君たちの攻撃を交わしながら、ハヤブサは、

畑の方へ逃げるように飛び立った弟カラス君を空中で捉えると

そのまま畑の中へ真っ逆さまに落下し、

青々と生い茂る甜菜畑の茂みの中へ

消えていったのでした。

 

あっという間の出来事でした。

 

収穫間近にせまった、よその畑の中に入っていくわけにもいかず、

カルル君も親ガラスたちも、畑の上を何度も何度も旋回し

グァー、グァーッと泣き叫びながら、弟カラス君を探し回っていました。

 

ハヤブサはそれっきり姿を見せません。 

 

カルル君は、弟カラスを守ろうとハヤブサと戦っていた時に、

どうやら翼を傷めたようです。

 

この時からカルル君は、羽根をバサバサさせるようになったのでした。

 

しかしこのままだと、次はカルル君やほかの者たちが襲われるかもしれない・・・。

そう判断したのか、カルル君たちは、弟カラス君への気持ちを断ち切るように

突き抜けるような甲高い声で鳴いたかと思うと、サッと空高く舞い上がり、

夕暮れ間近の霞む山の彼方へと静かに飛び去って行ったのでした。

 

それからしばらく経ったある日、カルル君たちがまた帰って来たのでした。

ハヤブサにやられてしまった弟君一羽以外、全員そろってのおかえりです。

 

そして、また家の周りの高い木々に揃って止まり、

収穫の終わった畑を見下ろしていたのでした。

 

カルル君は、それからしょっちゅう左の翼をばさばさバサバサと

伸ばしてみたりたたんでみたりしていますが、飛び回るのには

支障をきたすことはなさそうで安心しました。

 

 

やがて、すぐそこまで冬がやって来ている、そんな気配を感じたある日、

カルル君一羽を残すように、親ガラスたちはその年の冬を前に

どこかへ飛び去っていきました。

 

カルル君のやさしい鳴き声だけを此処に残して。

 

カルル君は、ずっとそれから育った元の古巣近くで住んでみたり、

別の木に新たな巣を作ったりして、この地で暮らしています。

 

もしかするとカルル君は、一人で暮らしているこんな私を見て

寂しかろう、とでも思っているのでしょうか。

 

時おり、私が一人道端で、沈んでいく夕日を見ていると、

決まって高い木のてっぺんから、

 

「 カルル・ア~、カルル・ア~ 」

 

と静かな声で歌うように鳴き始めるのでした。

 

・・ひょっとするとカルル君は、ハヤブサと戦ったあの日々を通して、

私を自分たちの家族の一員みたいに思ってくれているのかもしれませんね。

弟カラス君を決して見放なそうとしなかった、あの頃のように・・・。

 

翌年、カルル君に良いお相手が出来て、仲むつまじく

毎年子育てもがんばり、今に至っています。

 

そんなカルル君の飄々とした日々を、これから時々思いついたように

綴っていければと思います。

 

!cid_A4A07E095F294F54BE73A3396D0D4681@sintarouPC カラス君 夕日 大.png

 

 

 

 

 


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カルル君、そしてみんな・・・。その①

カラスのカルル君は、冬になると、ここからずっと離れた山の方から

毎日飛んでやって来ます。

 

そして、家の裏手に立つ大きな木のてっぺんで、

氷のように光りきらめく朝日を受けながら

じっと下界を見下ろしているのでした。

 

カルル君も、冬の間は食べるものが欠しいのでしょうね、

時々私の近くに降り立ってきては、何か欲しそうに

後ろを付いて歩くのでした。

 
スズメたちが餌台の上で、にぎやかにエサをついばんでいます。
庭に捨てた残飯を時々カルル君は食べに来ていましたが、

外に置いてある袋類を突いたり破いたりといった悪さは

決してしないのでした。

 

パンの耳をちぎって上げたところ、

サッといくつかくわえては、近くの土手にいるもう一羽のカラスに

持って行って上げていました。

 

カラス君のラブラブのお相手です。

 

お相手は人見知り?な性格のようで、カルル君は

せっせと彼女の元に餌を運んであげているのでした。

 

そんなアツアツの、ちょっとヤケるような場面を見せ付けられていた

ある日のこと。

 

突然、カルル君たちを追い回す、よそ者カラスが現れたのです。

 

「 ここはオレのナワバリだーっ! 」

 

と言わんばかりに、どこまでもしつこくカルル君を追い回す

よそ者カラスっ。

ダーリンを助けようと懸命に抗戦している彼女っ。

今度はその彼女を追うよそ者に、体当たりでぶつかっていくカルル君っ。

 

そのよそカラス者は、かなりのツワモノらしく、

一日中カルル君たちを追い散らし続け

とうとうカルル君たちは日の暮れないうちから

山の方へ飛び去っていったのでした。

 

後に残ったのは、よそ者カラス。

 

カルル君専用の止まり木の上で、まるで勝ち鬨を上げるように、

 

グァ~ッ、グァ~ッ

 

といつまでもしつこくダミ声で鳴いていたのでした。

 

うわ~、やだやだっ。

 

カルル君とはあまりに正反対な、見事なまでのワルっぷり。

 

悪党カラスをおもいっきり地で行っているような、

強烈なキャラクター性を放っています。

 

「あ~あ、あんなのに、ずっとこの辺に居座られて飛び回られるなんて

考えただけでもイヤだイヤだっ! どうにかならないかなぁ・・・」

 

その後、よそ者カラスが更におかしな奇声を上げているので見に行ったところ、

カルル君たちの思い出の古巣の中に入って暴れていました。

 

「コラーッ、それ壊したら承知しないぞーっ!」

 

下から石を投げてやっても、ちっとも届きません。

巣の上からこちらにお尻を向けてフンを

落としてきました。

 

もう許せないっ!明日ロケット花火でも買ってきて

アイツに飛ばしてやろうっ!

 

カルル君たち、もう戻って来ないのだろうか・・・。

 

夜、私は、布団に入ってもなかなか眠りに付くことが

出来ませんでした。 

 

 

その②につづく。

 

 

 

 


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猫のメダマ君とキツネ。

家の外で「メダマ君」という名前のネコを飼っています。

 

キョロっとした大きな目が特徴で、この名前をつけました。

 

他の猫たちと一緒にのんびり楽しく気ままに暮らしているのですが、

アカトラ系の毛色でふっくらしており、顔つきといい見た目の感じといい、

どこかキツネの子に似ているのです。

 

その為なのか以前、本物のキツネの子と一緒に

なんとエサまで仲良く食べていたのでした。

 

それは去年の夏の頃のお話です。

 

ある雨の降る日に、家の裏手にあるネコの住む小屋へエサを与えに行ったあと、

何気なくもう一度小屋を覗きに行ったところ、どこから入って来たのか、

いつの間にか小屋の中で、キツネの子がメダマ君と一緒に仲良く並んで

エサを食べているではありませんか。

 

他の猫は警戒してか、どこにも姿がありません。

 

相当おなかがすいていたのでしょう、キツネの子は

私に気づかず夢中になってエサをほおばっているのでした。

 

のん気でお人よしタイプのメダマ君だけは、

相手がキツネだろうと誰だろうと気にする風もなく、

一緒に顔をくっつけるようにして食べている姿に、

びっくりするよりも何だか可笑しくなって、

気づかれないようにしながら

そっと見ていたのでした。

 

そしてそのまま音を立てないように、そお~っと家に戻ると

カメラを持って小屋の中を覗いて見ましたが、

キツネの子の姿はもうありませんでした。

 

そして去年の暮れあたりから、若いキツネが

時々家の近くまでやって来るようになりました。

 

カラス君に何度もからかわれたり、粘着式のねずみとりを

くっ付けて行ったキツネ君です。

 

でもそれがあの子狐だったのかはわかりません。

 

その後、幾度かネコの小屋をそお~っと覗いているキツネの姿を

茶の間の窓から見かけたことがありました。

 

他の猫たちはその時警戒しているようでしたが、メダマ君だけは

外に出て行ってまるでキツネのように鼻先を伸ばし、

無言で何かを伝え合っているかのようにも見えました。

 

きっと同じ釜の飯を食べた者同士ですから(笑)、

おたがいの、その後の近況報告でも

仲良く話し合っていたのかもしれませんね。(笑)

 

 

 

!cid_140DC7865A824FF7981331D9E04CB5FC@sintarouPC ふゆぽか 白系.png

 


 

 

 

 

 

 

 

 


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雪の結晶。

夜中じゅうギラッギラに晴れて、おもいっきりシバレ上がったあと、

お日様が昇るころからボンヤリと曇ってきたので、

今日の日中は、家の中にいても体がしんしん冷え込んでくるようでした。

 

関東や東北に雪と風による深刻な被害をもたらした低気圧が、

これから私の住むこの北海道方面へと近づいて来ます。

 

屋根が飛ばされたり家がつぶされたりしないか今から心配

しています。

 

隙間風の抜けていくような古い家であるのと、省エネ・節電のため、

ほとんど家の中でも着たきりすずめになっていた冬のジャンパー。

 

洗濯するため、替わりの黒いジャンパーに着替え、ふと外に出た時です。

 

ちらり ちらり と、数えるほどに雪が舞い落ちてきました。結晶ok.png

 

(  もうやって来たのか、困らせ者め・・・)

 

黒いジャンパーの上にそっと落下したその雪の結晶っ。

 

どんな小さなものでもパッチリと見える、ステキな私の眼(笑)に映ったのは、

写真などでよく見る、あの完璧で芸術的な美しい造形美そのものでした。

                                            

「うわっ完璧っ! すごいっ! きっれぇ~いっ!」          

 

雪の粒など、いつもは気にも留めていないような物なのに、

久々に着たジャンパーが黒い色だったので、その結晶の形が

私の眼には浮き上がったようにハッキリ見えたのでした。          

 

他の雪つぶもひとつひとつ見てみましたが、

それぞれが違う形をしていて、雪印のマークそのものであったり、

八角形のリングが幾重にも描かれた幾何学的な模様であったり、

それらが見事に重なり合ったりと、思わず見惚れてうなってしまうほどの

まさに『 造形美 』と呼ぶにふさわしいものでした。

 

 

どこまでも果てしなく降り積もっている雪の一粒一粒が、

それぞれこんなにも繊細で、まさに『 神の細工 』というより他には

無いような造られ方をしていることに

何だか気が遠くなりそうで、

途方も無い不思議な感覚に陥りそうになりました。(笑)

 

それが雪というものだ、と言ってしまえばたしかにそうなのですが、

ふと子供の頃そんな不思議や謎を、気が済むまで観察したり調べたり

夢中になっていたことを思い出していました。

 

各地で被害をもたらせ、やがてもうすぐここへもやって来る次の雪・・・。

 

冬の そのにっくき相手が ひとつぶひとつぶ

こんなにも繊細で芸術的な姿形をしていることに

そしてそれが 誰の手にもよらずにそっと空から

舞い降りてくるまま造られゆくことに

                                    結晶ok.png

わたしは何だか

 

ぼんやりとした気持ちになって

 

久々に子供へ返って

 

雪降る夜空を

 

じっと眺めていました。

 

そしていつの間にか

 

どこまでもどこまでも

 

雪舞い降りる夜空に向かって

 

子供の頃のように

 

ぐんぐん ぐんぐん

 

昇っていったのでした・・・。

 

!cid_B3C4FE3EF0524F01A03A891CDDC211B8@sintarouPC 雪降る夜.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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ネズミのサッカー。

夜。

突然、、

 

ガラガラガラガラッ !  ゴロゴロゴロゴロゴローッ ! 

 

というすごい音が天井裏でし始めました。

 

「あっ、しまったーっ!入られたっ !」

 

音の主は ネズミです。庭に転がっているクルミを持参で、
家のどこかから侵入して来たようです。

 

しかもその音からするとやや大きめサイズで、数匹はいるようです。

 

「やられちゃったぁ~。用心していたのに・・・」

 

いったいどこから入って来たのでしょう、床下の隙間は
板をしっかり当てて、石や杭で固定してあったはずなのに・・・。

 

ガラゴロゴロッ ダダダダーッ

 

天井ではネズミたちが、おもいっきりクルミの実を転がして遊んでいます。
人間だけではないのですね、こういうことをして楽しむのは。
まさに「ネズミのサッカー」の始まりです。

 

「あ~あ、これはもう、今夜は寝られないわ。・・・それにしてもおかしい、
床下の板はちゃんと固定しておいたのに・・・。んっ、まてよ、あいつだっ、
1太郎だっ。あいつのしわざだな~」

 

ネコの1太郎 。外で飼っているアカトラ系のネコで、背中に数字の

1の字のような模様があるのでその名をつけました。

暇さえあればとにかくひたすら爪ばかり研いでいる
オスのネコで、あっちでガリガリ、こっちでガリガリ、

目新しいものを見つけてはそこでガリガリ。
ネズミにはまったくの無関心です。

 

「きっとあいつだ。時々家の周りでやたらガリガリやっていたものっ。

ここ最近、床下周りを見回っていなかった。あいつ、板を外したなぁ~」

 

ネズミを捕らないばかりか、ネズミの進入を手助けするなんてっ。

プンプンッ。(・\ /・)/

 

耳栓をして寝れば良いのですが、古い電機配線が天井裏を走っているため、
万一ネズミがガリガリやってショートした時、火事になっても
私はたぶん気がつかないでしょう。(笑) ^^;

 

「明日しっかり直さなきゃ。今夜だけ、がまんがまんっ」

 

スッコーーンッ! カーーーンッ! ゴロゴロゴロゴローーーッ!

 

それにしても本当にすごいにぎやかさです。

何年もこの音に付き合っていると、天井裏というフィールドで
どのような熱戦が繰り広げられているかが想像出来て、
その光景が目に浮かんで来るようです。(苦笑)

 

ガラガラガラッ ダダダダダだッ

 

クルミのサッカーボール を追いかけ、ネズミたちが駆け巡っています。

 

そしてシュートッ! カーンッ

 

狙いが外れ、ボールは壁の端っこに飛んで行き、狭い縦壁の中を
あちこち カンッ コンッ カンコンッカンコン、 カラカラッ カッカーンッ
・・・ そして ポトンッ!

 

一番下まで落ちてしまいました。

 

と、ここからがネズミのプレーヤー根性の見せ所なのでしょう。

 

カサゴソガサゴソッ ガ~サガサ ゴソゴソゴソゴソゴソ~~ッ

 

と、何としてもひたすらそのボールを追い求め、どこまでもどこまでも
狭い壁の間を突き進むその執念っ!

 

ガサゴソッ ゴリゴリッ ボキボキ~ッ 

 

何だかこちらの体が痛くなってくるような音を立てています。

 

そして、やっとボールを見つけたそのプレーヤーは、
ガッとそいつをくわえると、早く仲間のところへ戻ろうとばかり、
また来た道をムッチャクチャなくらいガサゴソゴリゴリッ
狭い隙間を無理っくりくぐって行くのが目に見えるようです。

 

そして彼は、やっと天井裏の広いフィールドが見渡せる所まで登って来ました。

 

クルミをくわえて戻ってきたそのプレーヤーは、大歓声が沸き起こる中、
他の選手が待つその足元へ、ポッ と誇らしげにボールを口から飛ばし、
また再びのアツイ熱戦が開始されたのでした。めでたしめでたし・・・。

 

と、そんなことを想像するでもなくしていた私は、いつしか眠りの世界に
誘われていて、夢の中でネズミたちと一緒にクルミのサッカーボールを
追いかけていたのでした・・・。

 

次の日、朝一番で家の床下周りを点検してみると、やはり板が一枚大きく傾き
ネズミちゃんいらっしゃい、とばかりに広い隙間が出来ていました。

 

板にはネコが爪を研いだあとが無数にあります。。

1太郎が板を外したのを見たわけでもないし、たとえそうだったからといって
叱ってもしょうがありません。

 

地面のシバレにつれて変形していく床下の板を常に直していくしかありません。

 

それにしても、以前直した時から見ると、どの板もかなり湾曲していました。

床下の造り上、当てている板がどうしても地面の盛り上がりによって

壁の出っ張り部分にぶつかってしまうからなのです。

 

毎年のことですが、シバレ上がりの力には本当に驚かされます。

どうしても隠し切れない隙間の所には、その内側に新しい粘着式ネズミ捕りを
仕掛けて置きました。

 

その日の夕方。

 

床下の方から「キィ~キィ~」という声が聞こえてきたので行ってみると、
仕掛けてあったネズミ捕りに、見事立派な大ネズミがくっ付いていたのでした。

 

「やったーっ・・・」

 

けれど私は、ネズミちゃんがつぼらな瞳をクルクルさせ、次第に弱っていく姿を
見ているうちに、何だかかわいそうになってしまいました。

 

・・・音が騒々しいとはいえ、無邪気にクルミのサッカーボールを
蹴って遊んでいたのに・・・。ゴメンネ・・・。

 

明日明るくなってから庭のどこかに埋めてあげよう、
そう思い、また元に戻すと板を当てて隠しておきました。
以前のように、またキツネ君がくっついてはいけないので。

 

夜、またうちのネコが爪を研いでいるのか、外の床下辺りでいつまでも

ガリガリと音がしていました。
行ってみると、やはり1太郎でした。

 

まったくもうっ、少しはネズミを捕りなさいっ。
寒気が緩んでいるとはいえ、この寒い夜にいつまでも歩き回っているなんて
変なネコっ。

 

深夜になってからも、また来てガリガリやっていました。(怒っ)

 

そして次ぎの日、ネズちゃんの所へ行ってみると

床下に当てておいた壁板の一枚が すっかり倒れていて、

床下のネズミ捕りが無くなっているではありませんか。

 

ひぇ~っ。何かまたいやな予感が~。

 

あちこち探してみると、家の裏の木立の根元に、キミョーな物体が・・・。
よく見てみると、それはすっかり汚れきった粘着式ネズミ捕りでした。が、

 

「なにこれ~っ!?」

 

ボロボロ状態のそのネズミ捕りには、大量のネコの毛と共に
カラスの羽根が、これまたびっしりとくっ付いていたのでしたっ・・・!

 

( カルル君、受難っ!? につづく )


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キツネ君 大受難っ!

パーン パーンッ
 

 

どこか遠くで、ライフル銃を打つ、乾いた銃声音が響いています。
 

 

パーン  パーンッ パパーンッ
 

 

今朝はその音で目が覚めました。
 

キツネを駆除するため、ハンターがまたこの辺りへ

やって来ているようです。
 

最近、うちの家の周りでも頻繁にキツネの姿を見かけるようになっていました。
庭に埋めた残飯などを、時々掘り返していることがあります。
人を警戒している様子が無く、私の姿を見てもちっとも逃げようとしません。
 
以前うちのネコと一緒にエサを食べていたキツネ君でしょうか。

はた又、粘着式のネズミ捕りにくっついたキツネ君でしょうか。
 
それはよくわからないのですが、随分と人の住居近くで
生息の場を深めていることは確かです。
 
この周辺で、時々牧場の子牛がキツネにかじられるという話を
幾度か聞いたことがありました。
 
ほかにもいろいろと悪さをするということで、時折ハンターが
こうしてキツネを駆除しに来ているのです。
 
こんな時、私は何だか気持ちがドキドキして居ても立ってもいられなくなり、
今日もまた急いで外へ飛び出して行ったのでした。
 
私が出て行ったところで、何の意味も無いのですが、
キツネ君の身に危険が迫っているということに、
ただじっとしていることが出来ないだけです。
 
たしかに、大切に育てている家畜をかじられたりなんかしたら
飼っているひとは大変でしょう。
 
一方キツネも生きていくのに必死です。ことに冬は餌も無く
なんだってかじっちゃいたくなるのでしょう。
 
ただ、ひとつはっきり言えることは、
人間は動物たちから、その棲みかと生きる場である

広大な自然を奪い破壊してきたという事実です。
 

 

雪解けが進み、昨日まで黒々と表土を見せていた周りの畑も
今朝方降った雪で、また一面真っ白な銀世界に変わっていました。
 
これではキツネも、歩いていればその姿がハンターの眼に
ハッキリ映ってしまいます。
 
気の毒に・・・。もちろん、こういう時を狙って相手方も
やって来ているのでしょうが・・・。
 
「あっ、あそこにハンターがっ」
 
家の前の道路に立ってみると、そこから少し行った所にある
小さな雑木林の周りに、数台の車とハンターらしき人影が
ありました。
 
その雑木林は、昨日散歩をしていた時
ウサギが跳ね回っているのを見た場所でした。
 
「まさかウサギを撃っているんじゃっ!? 行ってみようっ!」
 
かわいいウサギちゃんを、そしてキツネさんを守りたいっ、
そんな思いがわぁーっと沸いてきて、いつの間にか
私は小走りになって駆けていました。
 
「ウサギを撃っているんですかっ!!?」
 
キモチが熱くなっていたのと、ずんずん駆けて来たのとで、
湯気が上がりそうなくらい、すっかり私は体中がぽかぽか状態でした。
 
「えっ、ウサギっ?」
 
優しそうな感じのハンターが、微笑むように言いました。
 
「まさかっ。この辺りでそんなことをしたら怒られちゃうよ」
 

「あっ、いたぞっ!向うへ走って行ったーっ!」
 

「追えーっ!」
 
茂みの中に隠れるようにしていたもう一人のハンターがそう叫ぶと、
みんなバタバタとそれぞれの車に乗り込みました。
 
そして畑の中を、遠く一目散に走っていくキツネを追って
挟み撃ちをするようにそれぞれの車が左右に別れ、狭い農道を
ブオォーッとぶっ飛ばして追いかけて行きました。
 
「キツネくーんっ、負けるなーっ! 絶対に撃たれたらダメだよーっ!」
 
私はキツネ君が走って行った方向を見つめながら、ぐっと唇をかみ締めつつ
心の中でそう叫んだのでした。
 
家の近くにやって来るいつものキツネ君は、どこかひょこひょことした

ちょっとクセのある歩き方をしています。
 
ですが、今必死になって逃げていくあの姿からは、いつものキツネ君かどうかは
わかりませんでした。
 
「ひょっとして私、ここに居たら撃たれるっ!? 危ないかもっ。
さっきの車、もう向うに回って、車内からこっち向きに銃を構えてるっ」
 
流れ弾にでも当ったらコワイので、私はもと来た道をトボトボと引き返し、
悔しいけれど、何か遠くの方で大声を上げながらキツネを追っている

そんな光景を、ただ横手に見ながら戻ってきたのでした。
 
「あぁ、こんなこと無きゃいいのに・・・」
 
家に入ってからも、キツネのことが気がかりで、私は窓辺に立ったまま
じっと外の光景を眺めていたのでした。
 
庭の中で、ネコのメダマ君がぽっちゃりとしたその体つきで、
ぶきっちょそうな格好をして、スズメを捕まえようとしながら
逆にからかわれていました。
 
小さい時、キツネ君と仲良くエサを食べていたネコです。
 
「メダマ君、君もキツネに生まれていたら、今ごろ鉄砲玉の飛んでくる中を
逃げ回っていたかもしれないんだよ・・・」
 
そんなやるせない思いを抱きながら、私はいつまでも窓辺に立ったまま
ため息をついていたのでした。
 
「んっ? あれは、さっきの車・・・」
 
窓から見える遠くの広い農道を、さっきの車がゆっくりゆっくり
走っては止り走っては止りしていました。
 
キツネが逃げていった方とは正反対の方向です。
 
「キツネ君、うまく逃げたんだなっ。やったねっ! あっ、でもそうとは言えないよね。
他のキツネを追っているのかもしれないし・・・」
 

外へ飛び出し家の前の道へ歩いていくと、その車がゆっくりと道を折れて
私のいる道へと走ってきました。
 

ノロノロ運転をしながら、キツネがいないかを探しているふうです。
 
やがて私の前をゆっくり走りながら、さっきの人とは別な人が
苦笑いをしながらこちらを睨んでいるようにも見えたのでした。
それは、私がめい一杯睨み返していたからなのかもしれませんが。
 

そのうち車の動きが慌ただしくなってきました。

 

わたしのいる道を挟むように、南に走る道と北を走る道路とに
何台もの車が走っては止り、動いては引き返したりをしています。
 
そして車から降りるなり、ハンターが道路わきの茂みに向けて
何発もライフルを発射していました。
 
私には良く見えませんが、この広い一角の中のどこかに
キツネ君がいるようなのでした。
 
遠く離れていますが、私も前と後ろから挟まれた格好です。
 
私とキツネ君、ピンチッ!
 
しかし、人がそこにいる以上むやみやたらに
撃ったりなんかはしないでしょう・・・たぶん・・・。
 
こうなったら邪魔してやれ~っ。(^^  コワイけど・・・。
 
案の定、車が一台こちらにやって来ました。
 
「ここにいたら危ないですよぉ~っ」
 
サングラスのおじさんがやんわりとそう私に言いました。
 
「私は毎日ここで体操するんですょ」
 
と言いながら、私がいつまでもそこで体をのびのびさせたりしていたので、
やがておじさんは、他の車と一緒に雑木林の方へ行ってしまいました。
 
と、思っているうち、私の家の裏あたりからキツネが突然現れ、
すごいスピードでこちらへ向かって走って来るではありませんか!
 
「あっ、だめだよ、キツネ君っ、今姿を現しちゃっ!まだ向うにいるんだ
見つかっちゃうっ!」
 
いつもだと、わたしの姿を見つけても、じっと逃げずにこちらを見ていたのに、
今は殺気走ったすごい眼をして、キツネ君は、両手を広げて止めようとしている
私の脇近くを猛然と突っ切って行ったのでした。
 
「あっ」
 
そのまま畑の中を突っ走っていくキツネ君を私が振り返って見た時、
獲物の姿をすかさず捉えたハンターたちの車が、
駆けて行くキツネ君をすごい勢いで追跡するように走っていきました。
 
そして畑の中を行ったり来たり、必死に走って逃げ惑うキツネ君を
何台もの車が徐々に徐々に追い詰めるようにしながら、
やがて、またあの雑木林の方へと両者がなだれ込む形となりました。
 
そして、
 
パーン パーン  パパパパパーーンッ 
 
乱れ撃ちに撃ち続くライフル音が、林の中でこだまになって炸裂し、
その後し~んとなりました。
 
「・・・キツネ…くん・・・」
 
やがてハンターたちは車に乗り込むと、ゆっくりノロノロ
またそれぞれ左右の道に分かれて走っていきます。
 
どうなったんだろう・・・。
 
私は、遠くからしばらくその様子を見ていましたが、
ハンターたちは、何度も首を傾げる様なしぐさをしながら、
どこかすっきりしない素振りを見せつつ、
日が暮れかかってきた辺りの様子を見回すと
これ以上は危険と判断したのか、( 私がチョロチョロしているし・・・)
今日のところはこれで帰ろう~、みたいなことを言いながら
やがて、連なるように走り去って行ったのでした。
 
「キツネ君は、どうなっただろう・・・」
 
私は雑木林の方へ行ってみようと途中まで歩いて行ったのですが、
やがて歩みを一歩一歩進めるたびに、何だか悲しく切なくなってきて、
それ以上前へ歩いて行くことが出来無くなったのでした。
 
そこに生えていた大きな木の幹に寄りかかり、

私は沈んでいく夕日をしばらくじっと眺めたまま

瞼の中に浮かんでくるキツネ君の小さかった頃の姿を

いつまでも心の中で追っていたのでした。
 

と、その時、
 
「あっ!」
 
畑の中をひょこひょこと歩いてくるキツネの姿がっ。
 
( やったっ、やったっ、生きてたんだっ!生きてたんだっ! )
 
立派な冬毛をふかふか揺らし、精悍な顔つきのキツネが
ひょひょいと小走り気味に、私のすぐ目の前を
横切っていくではありませんか。
 
( キツネ君だっ、絶対にうちに来るキツネ君だっ )
 
木の陰になっていて、キツネ君は私に気が付かないようでした。
あのひょこひょこと歩くクセは、間違いなくキツネ君です。
 
「良かったぁ、無事で・・・」
 
夕日に染まった橙色の畑の上を、キツネ君はうつむき加減で
どこまでもトボトボと走って行きました。

 

キツネ君.png

追いに追われて、肝を冷やし、つらかっただろうなぁ。
 

ずっと逃げ通しだったから、きっと何も食べられず、おなかも減っているだろうなぁ・・・。
 
キツネ君、今日一日おつかれ様でした・・・。
 
今度追いかけられたら、ネコの小屋の戸を開けっ放しにしておくよ。
 
そこに逃げ込めばいいっ。私の家の戸も全開にしておくからっ。
 
どこへでも飛び込んでおいでっ。絶対だよっ。
 
 
キツネ君の姿はやがて小さな黒い影となって
藍色に包まれた遠くの景色に溶け込み
消えていきました。
 

 

「たとえみんなが悪者扱いをしても、私は絶対に君の見方だからねっ!」
 

 


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