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僕が受付まで行こうとすると、その途中に僕が解放のとき暮らしていた部屋が見えた。3階の左から
2番目の部屋。どの部屋か確かめようと思って、目立つ衣類を吊るして外を散歩したから
知っている。懐かしいなあ。
と思っていたら、駐車場に銀色の車が入ってきた。母さんの車か。そう思った。
いやそれは、まぎれもなく母さんの車だった。
しかし、窓から見える女性。少し母さんと違うような気がする。

窓を開けて出てきたのは、異国風にかたく編まれた髪、カラシ色の長いスカートを
風になびかせた、姉さん・・・
「・・・」僕には言葉がなかった。僕の言いたかった事が、一気に涙となって溢れ出した。
姉さんはあの雷の日、見たのと同じ髪型、同じ服装をしていた。
あれはやはり、姉さんだったのだ。

何も言えず涙にくれる僕を優しく包む姉さん。
「連絡がとれなくなってて、心配かけたわね。でもあんたが退院するっていうから、
なんとか帰国してきたのよ。明後日またフィリピンに帰るわ。だからそれまで・・・」
僕は自分より少し背の高い姉さんの胸の中で眠りに落ちた。重い荷物、病院での
気苦労・・・何もかもが僕を疲れさせてしまっていた。

 


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僕が目をこすって目覚めると、見えるのはカビだらけの天井。
ここは家だ。僕は確信した。
しかし病院にいたのは何だったのだろう?夢か?幻か?

母さんがケーキを買ってきてくれて、僕の退院祝い・誕生日パーティーが始まった。
父さんがマッチでロウソクに火をつけて、電気が消される。
僕はそれを一気に吹き消した。拍手がまき起こった。
久しぶりの家族の賑わい。こんな事も忘れていたな。
「おたんじょうびおめでとうジュナンくん」と書かれたチョコのプレート。
僕が当たり前だと思っていた生活がここに、すぐ目の前にある。
心が痛いほど、優しい日常。
僕は病院に入るまで、なんて幸せな生活をしてきたんだろう。
もっと日常に感謝すればよかった。
「お誕生日おめでとう!!」みんなが言った。
「そして退院おめでとう!!」クラッカーの糸が飛び交い、僕の涙を染め上げた。
これで、僕も24歳。

あとでリビングで姉さんと二人だけになった時、僕はあの事を尋ねてみた。
ある雷の日、第一病棟前の窓のところにいたかどうかという事。
「そんなわけないじゃん。私はその頃フィリピンにいたわ。帰ってきたのだって、まだ3
日前よ」
「じゃあ、僕が見たのは幻だったのか?迎えにきてくれたときの服装、本当にそのまま
だったんだ・・・」
「わからないわね。そういう事もあるのかしら。あんまりあんたが会いたがってたから、
神様が今の姿を見せてくれたのかもね」姉さんは笑った。


最後になりましたが、登場人物のモデルとなって下さった皆様、支えてくださった家族に
心から感謝します。 すとりーと


姉さんがフィリピンへ出発する日の朝、僕は思い切り姉さんを空港で抱きしめた。
人目とか何も気にしなかった。これが僕のやり方だ。
大切な人に大切な事を伝えたい時、あなたなら何をしますか?

 

 


奥付



【2014-02-23】ジュナンの入院 Empty Vessels


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著者 : すとりーと
著者プロフィール:http://p.booklog.jp/users/leavesmealone/profile


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