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ちょっとした事で鬱になり、ナースステーションの前に座り込んでいた。
僕はもう何をするかわからないから、そこにいれば保護してもらえる
と思ったんだ。でもしばらく待っても誰も来なかった。
僕など大して重要ではないんだ。

今日は風呂の日だった。嫌いな奴と一緒だったけど我慢した。ちょっとだけ
頑張ったから、金の微糖を買って飲んだ。ハーゲンダッツを買って帰る
知り合いの気持ちがよくわかった。

今日ははやみんにまだ朝一度しか会えていない。僕が寂しがっていると思うか?
まあ露骨に言ってしまえばそうだ。でも期待、つまり次会った時に何話そうか
妄想しているから、そんなに激しく寂しいとは思わない。

ヨガを習わされて、ますます鬱になる。後半はあきらめて座り込んでいた。
リスパダールを飲みにいったところ、看護師長の確認がいるとか何とかで
待たされる。その間に少し鬱が退散してくれたが、飲んだ。


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実は、ここ一時間半の記憶がまったくない。腹が減ったのでカフェテリアに
行ったら「食事はもう済んだよ。ジュナンさん爆睡してたね」と看護師に
笑いながら言われた。
しかし食事はとっておいてくれたようで、何とか食事にありつく。しかし寝てたなんて
少しも覚えていないのだけど。

今日看護師に言われたのは、「ジュナンさん、軍隊みたいに返事したり、ペコペコ
頭下げなくてもいいんだよ。ここ病院なんだから」
自覚症状は、ない。僕は軍隊のように厳格に礼儀正しく返事をしたり、頭下げまくって
いるのか・・・自分は礼儀作法や敬語のできない、だらしないやつだと思ってた。
就職活動の失敗がまだ根っこのところにあるのかな。

 


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一人黙々と食べようとすると、はやみんが入ってきて、前の席に
座った。何か話したそうな感じでこちらを見つめていた。
「やめてよ」僕は断った。「今日はごめん、どいてくれないかな」
嫌いになったわけじゃない。嫌いになれればいいのに。
はやみん・・・そんなに見つめられたら
食べられないじゃないか。

今日もいろいろあったけど、一日の終わりが気持ちよくて良かったよ。
Missingを聴いていると、心まで共鳴して同じリズムで鳴り出す。
今日は泣いてなんかいないさ。

夢の中で、ある男性スタッフがなぜかうどん屋をやっていたので、僕は
財布を逆さまにしてぶちまけた。いくらでも持っていけ。どうせ
夢の中でしか使えないお金だ。うどんは超美味しかった。数秒しか食べられなくて
目が覚めたけど、いい夢見れたな。

 


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僕に生きる希望を与えてくれるもの。あるとすれば、コーヒーだね。
家にいた頃は、フェイスブックとかオンラインゲームの類、読書、家事とか
そういう楽しみもあったけど、今はやりようがない。
もう文字を書く事すら厳しくなってきてるけど、金の微糖飲んでる時はやっぱり生きてて
よかったと思う。金の微糖のために、生きたいという気持ちが煙が立つように
出てくる。

はやみんを抱きたいとか、そういう欲求もないわけではない。僕はこれでも男だから。
でもここは病院だし、僕にはきららがいる。いろんな妄想もするけど、
たとえ病気でも理性的でありたいよ。でもそういう枯れてしまったと思っていた
欲望も、僕を生きる気にさせてくれるもののひとつだ。

さて、夜明けを見ながら聴くエルレのRed Hotは最高だ。誰もいない部屋で
踊りまくっていた。監視カメラとかついてないよな?

 


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今朝もはやみんと会った。「今日の赤いセーター、かわいいね」
「・・・ありがと」
それだけで、会話が止む。僕は緊張していたし、はやみんもそうだったのだろう。
「あたし、行かなくちゃ」
しばらくして、少しはやみんが微笑んで、手を振って去っていった。
寂しくない、と前書いたような気がするが、このところはやみんがあまり
かまってくれない。やっぱり寂しいよ。

外を散歩していると、しまぞうに会った。いつの間にか季節は進んで、外は
寒いくらいになっていた。
しまぞう、お前はかわいいなあ。この前の狂暴な名前の知らない猫(「寂しがりや
のジュナン」に登場した猫)と大違いだよ。こっちをじっと見てミャアミャア鳴くのが
本当に癒される。
ジュナンがしまぞうを持ち上げると、しまぞうはまた短く「ミャア」と鳴いて、
腕の中から飛び出して逃げていった。
ああ、女心というものがまったくわからない。なぜ笑っているのに、すぐ去って
いくんだろう?
僕のことを避けているのか?はやみん・・・



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