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午前早くに運動も兼ねて階段を降り、自販機まで走った。
ついに念願のクリーミーラテを手に入れ、一人で乾杯。
味はそこそこだったが、まあいいとしよう。

今日は、自分が凄く惨めに感じた日だった。吐き気をこらえながら
掃除をしていたが、ついに限界が来て、モップを置いて座ってじっと耐えていた。
そのうちに、涙がこぼれてきた。僕ほど惨めな人間は、この世界にいないんじゃ
ないかと思った。「金の微糖」で隠し、飲み干してしまう。
この後から運動プログラムがある。頑張らなければ。

 


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鏡を見ると、僕も彼ら、彼女らと同じ虚ろな目をしている。いやそれ以上かな。
いつか、印象は薄いって言われてたけど、後輩の女子に告られたこともあったかな。
遠い昔のようだ。いま、こんな僕を見てくれるのはアゲハくらいだ。
アゲハは僕のファンなのかもしれない。男子用の洗面所は女子のそれより大きいらしいので、
女性もたまに来るのだが、僕が顔を洗っているとき、たまに後ろにいる。
「こんにちは」と軽い挨拶をしたり、微笑み合ったりするだけなのだが、何か特別な目で
僕を見ているようだ。
こんな虚ろな僕に何の魅力があるというのだろう。


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金髪もだんだん根元が黒くなってきた。プリン。切ないなあ。
お気に入りのカラコンも持ってこなかったから、今は何のおしゃれ感もない。
おまけに消えてしまいそうなほど、印象が薄い。
女子に自分から話しかけられない。ただの黒ブチ眼鏡のおっさんだ。
入浴は週二回。汚いことこの上ない。

男のくせにすぐ泣くし、筋肉とか、力もない臆病者。
アゲハは変わった女性だと思う。
僕はアゲハのことをよく知らない。きららの友人で、わりと友達同士では強気な
女の子のような気がしていた。それだけだ。
僕の何がいいのだろう。少し聞いてみたい気もする。


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そういえば、きらら、は・・・?

(きららをご存じない方は「寂しがりやのジュナン8」以降をご覧ください)

きららは僕の何が好きなのだろう。僕は昔は見た目だけよくて、中身は
無能で鬱で、弱かった。まあ言ってしまえばの○太くんみたいな感じか。
いやし○かちゃんとか、世の女性は、案外そういうのも好きなのかもしれなかった。
弱くて、守りがいがあるから?

「きららに、手紙でも書こうかな」
住所はうろ覚え、郵便番号もなんだっけな?しかし、携帯が使えないし、
電話番号など完全に知らないから、他に連絡手段がない。
文通というのは、苦手だ。字が汚い。何を書けばいいかわからない。
が、数行くらいなら書けそうな気がした。
きららに、何も言わずに入院してしまった。今どこで何してるのだろう。
寂しく思っているだろう。
「葉書にでも、何か書いてみるか・・・」


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売店に行ったら、葉書が偶然売っていた。2,3枚だけ買った。

『今○×病院に入院している』

こんなんで良いのか?

 

『何かききたいことでもあったら、返事してくれ』
だめだ、これじゃ文が終わってしまう・・・

 

寂しく思っている、とかは書かなかった。

『ここの連中は皆、虚ろな目をしてる』
そうだ、ちょうど入院前の僕みたいにさ・・・

きららが見ていた、僕の目。
きっとお互いに寂しさに耐えていたんだろう?
愛する人の目が死んでいく寂しさってどんな感じなんだ?


そして、そんなわけないけど。
『今、元気か・・・?何してる?』



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