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カフェテリアに行った。病室の冷たさに比べ、カフェテリアの温もりある
見た目が好きだ。いつまででもここにいられる。ぐるりとゆっくり一周して、
コップを持って病室に帰った。
きっと、家族じゃない。友人がいないと消えない寂しさだろう。
家族がいても、一人。友人がいても、孤独。
早くクスリの時間になればいい。昨日の頓服の睡眠薬、出してもらえる
ように頼みたい。ここは明るくてたまらない。

カフェテリアで温かいお茶を飲んでホッとしていたら、オヤジがジロジロと
こっちを見てくる。ゲイか?


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ゲイときいて思い出したのは、G。彼はなんだか表情が読めなくて、そのうち
僕をそういう目で見ているのでは、と思うようになった。
・・・そんなこともあったな。遠い昔の話みたいだよ。
おやすみ。その前に一回クスリがあるな。頓服頼むの忘れないように
しなければ。診察もあると思う。この虚しさを。50円と10円握りしめて泣きそうになる
悔しさを、何と表現すれば伝わるんだろう。
僕はこの程度の計算もできないのだ。

まずい僕だけど珍しく蚊やダニに刺されてしまった。そのダニや蚊は今頃死んで
いるだろう。バーカ。虫刺されの薬をナースステーションでもらう。
睡眠薬はどうしても眠れないときだけらしい。クスリ、うまいのになあ。残念。


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今日の朝食の甘納豆はうまかった。全部食べてしまった。
しかし、話はそれで終わらない。コップが残飯入れの中に落ちてしまった。
何とか手を突っ込み取り出したが、クスリのとき「コップが残飯入れの
中に落ちました」と言ったら
「向こうに洗剤があるので洗っておいで」ということで
必死に洗った。

「爽やかな朝、というが、少しも爽やかじゃない。爽やかな朝なんて・・・
それ以上は、劣等感を感じるからやめておこう。ああ、
爽やかな朝なんて・・・


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雨の中、頭にタオルをのせて外へクリーミーラテを買いに行ったら
全部売り切れていた。仕方ないので朝専用缶コーヒーというのを買った。
金の微糖には及ばないが、低糖くらいの甘さで、意外といける。
こうして、朝からずぶぬれになってしまった。金網の下の洗濯物は
大丈夫だろうか?ラジオ体操は超真面目にやった。

さっき下で黒っぽいしまネコ(僕はしまぞうという名前をつけた)を追いかけ
まわして、泥まみれ、ネコまみれの僕をかわいいという年上の女性達。
感覚が、よくわからない。女性は、自分より大きいものに対しても平気で
かわいいと言うものらしい。

今や、震える手で細々と日記を書き、独りで空笑するのが僕の日課となってしまった。
リハビリの時間なので担当の看護師が呼びにきた。行ってくるよ!

 


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僕は寂しい。リハビリ室に来てたのは全然知らない人ばかりで、
同じ方向へ帰ってった。話には入れないのに、無駄に名前を聞かれた。

カフェテリアで一人で茶を飲んでいたら、むせてお気に入りの濃い水色の
ジーンズにシミをつけてしまった。みっともないな。恥ずかしいな。
そのとき、隣でアゲハが音楽を聴いてるのに気がついた。
「何聴いてるのかな」僕は尋ねた。
「バンプとか西野カナ。ジュナンさんは何聴くんですか」
「エルレとか。あとは言っても知らないだろうな」
何となく微妙な雰囲気になって、会話が途切れた。僕は部屋に帰った。

「思うよりあなたはずっと強いからね」どこかの歌詞にあったな。
うるさい。うるさいな。みっともない。恥ずかしい。それだけだ。



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