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登場人物紹介


1

レントゲン、体重測定、心電図、血液検査をやって、その後カフェテリアで
食事をして、病棟に通された。第3病棟。それが僕の病棟の、ごくシンプルな
名前だった。317号室に通された。
部屋に着いて、看護師からこれからの説明を受けた。しかし少しも頭に入ってこない。
アフリカの言葉を使っているのかと思うほど頭に入ってこない。
終わりには、半狂乱になっていた。

苦しくて、苦しくて・・・2013年はそういう、最低最悪の年だった。
今までにこんなに苦しかった年はない。
とりあえず、病院の自販機で缶コーヒーを買って、飲んだ。
生きてる感じがするのは、こんなとき。それ以外は、しない。


2

カーテンがないのにびっくりした。今までどんな部屋にもカーテンがあるものだと思っていた。
ブラインドしかない。
外は金網が張り巡らされている。

シャワーを浴びたら、水しか出なかった。おまけにバスタオルを忘れてしまった。
タンクトップで体を拭いて、部屋で着替えた。

窓の外に広がるのは、N市の街。やや町外れだが、あこがれていたN市の街並み。
こんな形で入りたくはなかったが。

数ヶ月前までは、自分が統合失調症なんてただのジョークだと思っていた。
『治療計画書』のコピーを見る。担当の看護師が置いていったものだ。
『幻聴・妄想』にマルがつくのは自分でもどういうわけかわかる。でも『自閉・無為』にマルがつくのは
なぜだ?自閉って何なのだろう?僕は普通に人と話しているじゃないか。引きこもったりしてないぞ。

 


3

時々、ナースステーションのあたりをうろうろして若い女の子でもいないかウォッチングするんだけど、
誰もいない。僕より若いのは二つか三つ隣の部屋の女の子だけで、あとはみんな三周り以上年上の
人ばかりだ。

窓のところに金網があって、天井まで続いている。死のうとしても、死ねないようになっている。
最も、僕はもうそこは諦めてしまったけど。

この病院、若い人に人気がないのかもしれない。前の病院には自分より若い人がちらほらいた。
内装は、誰もが考えるような普通の昔からの病院の雰囲気で、古い棚とベッドが一つ、おしゃれな感じが
少しもなく、古い。
僕はとりあえずコーヒーが飲めたらいいか、と思う。自販機の、それも病室から一番近いやつに
微糖のコーヒーがあるんだ。

 


4

看護師の男女三人と患者三人でトランプを始めたものの、
気が向こうの方へ飛んでいて集中できない。簡単なルールがわからない。

入院がこんなにいいところだったとは知らなかった。僕の燃えかすのようだった
生きる気力に、火はつかなかったが、少し煙が立ったように感じる。
何かよく知らないものに、大きな手で守られているんだ。
その力は、凄い。目に見えないくせに頭痛も幻聴も今日はおさまっている。

もうこのまま何もせずに眠っていたい気分。食事もいらない。起きたくもない。ただ、寝ていたい。
本を持ってきたが、読みたいとも思えない。
疲れたのかどうかもわからない。ただ、寝させてほしい。

 



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