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7

夜の薬を飲んだ。コップに水をいれて、持って並んで、
袋に入ってる謎の薬を飲む。それだけ。
何か効果があるのかわからないが、明日は寝れるだろうか。

今日の午後の事。
「蒼月ジュナンさん」と呼ばれて、自分がいつの前に名前を教えたのだろうと
思った。
看護師の女性が言った。「都会的な感じの患者さんって珍しいですよね」
「都会的・・・?」
もう一人の看護師が言った。まだ20歳過ぎに見えた。「都会的というか、かわいい感じかな」
かわいい・・・?僕には理解ができなかった。
彼女らとトランプをやった。誰もが知ってる、ババ抜きと7並べ。
少しも理解ができなかった。心がここじゃない遠くへ飛んでいってしまってる
みたいだった。看護師たちがなぜ笑っているのかわからない。
あげくの果てには「大丈夫ですか」と気遣われた。

フラフラしながら眼鏡ケースを探す。僕はコンタクトは持ってこず、黒ブチ眼鏡で
来ていた。睡眠薬が効いてきたらしい。

 


8

寝れねえ。とにかく寝れなかった。
睡眠薬は入っていたのに少しも寝れない。午前4時半に起きてこれを書いている。
始めは、頭の中が声でいっぱいになって寝れなかった。こんなにたくさんの
声を聞いたのは初めてだった。次は、とにかく目がさえて寝れなかった。
それに、N市の街は明るい。窓にカーテンがないから、電気を消しても
十分すぎるほど明るい。

本を持ってきた。でも読む気にならない。ただ寝たいというのがあるだけで。
あ”--本も音楽もない生活より、コーヒーのない生活のほうが耐えられない。
コーヒーをよこせ。

ええと、朝食の前にまずコーヒーを飲んで・・・だめだ、
昼間の楽しみが減ってしまう。でも飲みたいや。

結局、コーヒーを買ってしまった。
朝日はまだ見えないんだけど、朝の雰囲気の中で冷たい微糖コーヒーを
飲むとやっぱりおいしい。
まっとうに生きる気力もないけど、なんとか今日一日だけなら
やれそうな気がしてきた。

 

 


9

ラジオ体操に行ってきた。入院して長そうな女性について行った。
スリッパで来てしまったので、階段はスリッパを脱いで降りた。スタッフの30代くらいの女性に
「次からは靴で来るといいね」と言われる。

看護師が病室に入ってきて脈を計り、トイレの回数や食欲を尋ねた。
「ほとんど食べてないです」と告げると、彼女は
「食べ物は薬で、ガソリンみたいなものだから食べなきゃだめよ」とメガネを上げながら言った。
そのとおり、そうなんだけど僕はどうも食べられない。頑張って食べなければ。
生きる力が燃えようにももうガソリンがないぞ。
「あと・・・」僕は尋ねた。「看護師さん、コーヒーは飲んでもいいですか」
「あまり飲むと胃にもたれるけど・・・許してあげるわ」
よかった、僕の生きる意味は守られた・・・


10

朝食は、ほとんど手につかなかった。入院患者の
タイラーという男と話して、自分が彼より重症であることに気がついた。

僕は、とことんウザイ奴になってやろうと思う。キツい看護師、そういうものに
負ける気がしない。いろいろナースステーションに訪ねに行った。
うるさがられた。高校や中学校よりずっとマシな世界だ。

心の痛みは、なぜか消えてなくなった。そして、生きる気力に火がついた。
あの生意気な憎たらしい看護師が、逆に生きている感じにさせてくれる。
あまり食べてないのも、逆にいいのかも知れなかった。

 


11

僕が入れられたのは解放病棟だった。だから階段を降り、下で
植物を育てている医療スタッフと話をすることができた。
何という植物だったか忘れてしまったが、初めて見た変わった花だった。
僕は植物オンチだ。キキョウと言われたが、キキョウがどれなのかわからない。
植物に関する知識が必要だな。

カフェテリアでタイラーと喋りながら食べた。タイラーに「夢遊病?」と言われる。
僕が「いつの間にか座ってる」話をしたからだ。
やっと胃に少し食べ物が入って、重い。
その後は僕の何もせずに寝たい気持ちが復活して、寝ることにした。

 



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